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アホでマヌケなアメリカ白人 (Stupid White Men)

アホでマヌケなアメリカ白人『アホでマヌケなアメリカ白人』 (Stupid White Men)
著者 マイケル・ムーア (Michael Moore)
訳者 松田和也
柏書房


 アメリカは好きかい。 自由で、平等で、誰でもその気になりさえすればチャンスが与えられると信じられている夢のような国。

 そんな夢のような国の大統領を決める選挙で、ちょっとした悶着があったのは記憶に新しいところ。 なにやら胡散臭い状態のまま決着がついてブッシュ坊やが 1 等賞になっていましたが。

 市民は政治に参加し、2 大政党が相互の政策を牽制しあい、うまい具合にチェック機能が働いている。 誰もが平等で、人権は擁護され個性は尊重される。 食料は豊富だし医療も充実している。
・・・と思っていた。 もちろん、もちろん、まったくのウソだなんて言いません。 一部の金持ちには、食いきれない贅沢な食事・十分な医療・つまらぬことでは逮捕されない権利まであるのだから。

 マイケル・ムーアの検証実験 ・・・・・ ここでちょっと、テレビで "CNN" を見ていることにしましょう。 事件が起きたようですよ ・・・ アメリカのある州で銃を持った強盗がコンビニ店を襲ったらしい。 さて、あなたはこの犯人をどんな奴だと思う? 想像してください・・・・・。
 もしかして黒人の男を想像しなかっただろうか。 どうしてこんな心理が働くのだろう。 白人の起こした事件のほうが圧倒的に多いというのに。

 アメリカは超・超巨大な国になってしまった。 ナンバーワンになろうと努力して、とにかく色々なことでナンバーワンになった。 どんなに凄いか、以下をご覧あれ。

 今の時代、企業は (特に大企業は)、まともな企業活動で正当な利潤を求めるというよりも、株主の利益を最優先し株主の利益のためならどんなことでもやってしまう株主利益至上主義になっちまってる。 社会への還元とか環境にやさしいなんて美辞麗句は単なる隠れ蓑、もしくは計り知れない環境破壊への免罪符に過ぎない。
 そして超巨大なアメリカ株式会社を経営しているのがオーバルルームをオフィスとしている面々であり、その株主が大富豪、資産家たちというわけだ。 毒を垂れ流し、戦火を広げ、環境破壊で全生物の生存を脅かしてでも金を儲けようとする。 なんとオゾマシイ。
 この図式は共和党だろうと民主党だろうと本質的に変わらない。 ただやり方や見せ方が違うだけだ。

 マイケル・ムーアは振り下ろす刀でブッシュを八つ裂きにし、返す刀でクリントンをバッサリ切り捨てている。 ブッシュが就任後数ヶ月で福祉や弱者を切り捨て、教育を蔑ろにし、地球環境を救うチャンスを葬り去った事実を、そしてクリントンが民衆の味方の振りをした隠れブッシュだった事実を暴いている。
 こんな国を世界の指導者としているうちは、人類ばかりか地球上のあらゆる生物に未来はない。 絶滅へマッシグラ ・・・・ なんて俺いらはゴメン蒙りたい。

 マイケル・ムーアは怒っている。 怒り心頭に発している。 これはアメリカ白人であるムーアが、アメリカ白人に対して、愛するアメリカのために、身の危険を冒して書いた告発の書だ。
 おっと、告発ばかりでなく様々な提案もしている。 語り口は毒舌を交えて冗談ぽく、他愛のない世間話のような体裁になってはいるが、言ってることはスジが通って (多分) 真剣そのものなのだ。

 「アホでマヌケなアメリカ白人」てなタイトルになっているが、タイトルそのままの内容ではない。 アメリカ白人が日本人に比してアホだと言っているのでもない。 「テメーら、いい加減に気づけよ! 手遅れになる前にさ!」とアメリカ白人に向かって言っているのである。 だからって日本人には無関係かというとトンデモナイ。 日本人も大いに読んで啓蒙してもらう必要があるんじゃないだろうか。 日本にも同じような事例はゴロゴロ転がっているのだから。

 この本を読むと、きっとあなたはこう思う ・・・ 「俺いらの力の及ばないところで俺いらの平穏な生活を揺さぶる奴がいる、なんとバチあたりな・・・ 俺いらにもアメリカ大統領選の選挙権をヨコセ〜!!

 それにしても何でこんな表紙にしちゃったのか。 内容とはトンデモなく乖離しているんだよな。 表紙を見て手を引っ込めちゃった人もいるかも知れない。 今からでも遅くはない、書店に行って確かめてごらん。

 マイケル・ムーアは映画監督でもある。 彼が 2002 年に作成した「ボウリング・フォー・コロンバイン」も是非見ましょう。 コロンバイン高校での銃による虐殺事件を題材にしたドキュメンタリーで、事件の背景となった銃社会アメリカについて考えさせられます。

≪追伸≫
 ボブ・ウッドワードの「攻撃計画」で描かれるジョージ・W・ブッシュは、マトモな指導者像になっています。 果たしてどちらが実態に近いのでしょうか。 間接的な情報しか持ち得ない私は、なるべく多くのソースから情報を得て推論するしかありません。 あなたの判断はどうでしょうか?
 ちなみにボブ・ウッドワードは、ニクソン大統領退陣のきっかけとなったウォーターゲート事件をスクープしたジャーナリストです。



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