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戦争中毒 (Addicted to War)

戦争中毒『戦争中毒』 (Addicted to War)
著者 ジョエル・アンドレアス (Joel Andreas)
監訳 きくちゆみ
翻訳 グローバルピースキャンペーン有志
合同出版


 1 分ごとに 100 万ドル。 それも休日・昼夜を問わず一時も止まることなく支払い続ける。
 この途方もない金額は、国防総省予算やエネルギー省の核兵器予算、NASA の軍事関連予算、外国への軍事援助等々でアメリカが支払い続けている軍事費である。

 アンクル・サムの手は、吐き気を催すほどのおびただしい血に汚れている。 それは開拓とともに始まり、冷戦終結後も止むことなく現在まで続いている。 アメリカが行った他国への直接的・間接的な軍事介入は、いったい幾つあるのだろう。

 ホワイトハウスは戦争や軍事介入の正当性を主張し、マスコミは敵対勢力を悪者とするイメージを流しつづける。 そして愛国者は銃を取るべきだとの世論が作られていく。
 アメリカが軍事行動を起こす場合、それは常に正義の味方であり、世界秩序の維持であり、国民の安全と民主主義を守るためだとされる。 彼らの論理では、多額の経費と消費される兵士の生命は、そのために必要とされているのだ。 アメリカの市民たるものは愛国的義務を果たさねばならないのだ。

 著者は、巨額な軍事費の負担と押しつけられる犠牲が、一般市民の家計や日常生活に如何に大きな影響を及ぼしているかを報告している。 本書はアメリカ市民の手でアメリカ市民に向けて書かれたものだが、全世界への強烈なメッセージでもある。
 マンガの形態を借りてあっさりと書かれているので、その内容を咀嚼する間もなくページを繰ってしまい勝ちだが、飛ばし読みするにはあまりに重い事柄である。

 取り上げられている数字や企業名・氏名は、ジックリと吟味しなければならないだろう。 そして彼らの本当の目的が彼らの言葉通りなのか、これまでの彼らの行いと結果から検証されねばならないだろう。 私たちの隣人が銃を持って争いを始める前に。



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