for e's laboratory
本はエンタメ

NEXT

NEXT『NEXT』
著者 マイクル・クライトン (Michael Crickhton)
訳者 酒井昭伸
早川書房



 2003 年 6 月、ヒトゲノムの解読が終了した。

 病気あるいは体質に関係する DNA の部位を特定した遺伝子情報は特許が認められ、それらは多額の富をもたらすものと思われている。



 フランク・バーネットは自身の体組織に存在する特殊な細胞株のお陰で、死の病 (T 細胞性白血病) から解放された。
 だが、特殊な細胞株を持つが故に、娘や孫までが体組織目当ての何者かに狙われることになる。

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 このままでは処分される ・・・
ヘンリー・ケンドールはベセズダにある霊長類研究所からチンパンジーを連れ出してしまった。
 チンパンジーにはデイブという名がある。 デイブはヘンリーのことを「ママ」と呼ぶ。 デイブはヘンリーの遺伝子を組み込んで生まれたトランス・ジェニック (遺伝子導入動物) だった。

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 ジョッシュ・ウィンクラーは誤って持ち出した新薬実験中の「成熟遺伝子」スプレーを、薬物依存症の兄アダムに吸引されてしまった。
幸いにもアダムの薬物依存症は改善に向かうようだった。 が、異変が起こりつつあった。

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 雛の時期にヒトの遺伝子を導入されたオウムのジェラールは、ゲイル・ボンドの家で育てられた。
珍しい成功例となったジェラールは、物まねばかりか会話や計算までこなせる知能を持つようになった。
 だが、ゲイルの夫リチャードはこのオウムが大嫌いだった。 お土産と称してアメリカ人の顧客へ渡してしまった。

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 シカゴで内科医を営むマーティン・ベネットの元へ、赤ん坊を連れたエリザベス・マーフィーと名乗る女性が現れ養育費や慰謝料の請求を仄めかした。
 彼女はマーティンが研修医時代に精子バンクに売った精子で、マーフィーの母親が人工授精して生まれたマーティンの娘だというのだ。



 併行して語られる様々なエピソードは、現に起きていることであり、起きつつあることであり、起こり得ることである。
 それ等は別々な場所で同時進行し、その多くは何の関連もないまま別々な方向へ展開する。
しかし何の脈略もない複数のエピソードも、俯瞰して捉えれば一つの方向性を暗示する。

NEXT -- 次 (遺伝子操作) の時代は、人類に何をもたらすのだろう。

 法的にも倫理的にも医学的にも未成熟なまま、遺伝子研究・工学の進行速度は驚くほど速い。 
遺伝子情報は誰のものか。 人類には何処までが許されるのか。

人類はパンドラの箱を開けてしまったのだろうか。
答えが出るのは遠い将来ではないだろう。


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