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アインシュタインのおもちゃ (An old man's toy)

アインシュタインのおもちゃ『アインシュタインのおもちゃ』 (An old man's toy)
著者 アンソニー・ズィー (Anthony Zee)
訳者 松田卓也、二間瀬敏史
TBSブリタニカ


 地上の喧騒から遥か離れた宇宙空間に、超然として浮かぶスペースシャトル。 内部では宇宙飛行士が宙に浮かびながら作業を行い、時には船外に出て広大な宇宙空間を独り占めするかのように悠然と浮かんで見せる。 それもこれも、無重力だから可能なことだ ・・・ と思うのは甚だしい誤解で、彼らは落下し続けているというのが正しい。

 どういうことなのか? ・・・ シャトルは地上 200 〜 500 キロメートルの高さを高速で進んでいる。 シャトルや飛行士は夜も昼も落下し続けているが、ご承知のように地球は丸い。 この丸いことがポイント。 1 メートル落下する間に地面が 1 メートル下がる距離まで前方に進むから、結果として落下してないように見える ・・・ つまり、自由落下 (すなわち無重力状態) が延々と続くのである。 なるほど理屈である。 この理屈を証明して見せるのが物理学。

 そんな物理学 (重力) をニュートンの築いた古典物理から紐解いて、アインシュタインに代表される近代物理までを平易な表現で語っている。
 実際に感じることができ、容易に想像することができる重力 (引力) の話から出発し、宇宙の始まりや構造といった極大な世界、物質の最小単位である素粒子の極小の世界、そして最近主流になってきた量子力学の世界まで案内してくれる。

 人間の知りたいという欲求は際限がない。 苦労してゴールに着いてみると、そこは新たな出発点というのが物理学の世界らしい。 それにしても人類は真理に辿り着くことができるのか。

 著者が最後に記している言葉 ・・・
   「人間は考え、神は笑う」と諺はいう。 考えてばかりでなく、我々も笑いたい ・・・。

 我々はアインシュタインの言葉を借りれば、神の考えを知る一歩手前なのか、 それとも我々の理論はまだまだ幼稚なのか。 神と一緒に、なんとうまく宇宙はつくられたのかと笑える日が来るだろうか。



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