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本はエンタメ

神々の指紋 (Fingerprints of The Gods)

神々の指紋『神々の指紋』 (Fingerprints of The Gods)
著者 グラハム・ハンコック (Graham Hancock)
訳者 大地舜
翔泳社


 昨今の古代史、それも古代文明の発祥・変遷を取り巻くある種のブームは、本書あたりがきっかけになっているのではないか。 この本はそれほどのインパクトがある。

 一枚の地図がある。 1513 年に描かれたピリ・レイスの世界地図だが、そこには 1818 年に発見された南極大陸の、氷結していない姿が描かれていた。 そしてその地形は、1949 年にスウェーデンと英国による氷原の上から行われた地震波測定の結果と、驚くほど完全に一致していた。 とするとこの地図の原型は、南極大陸が氷原に覆われていなかった紀元前 1 万 3000 年 〜 4000 年のあいだに描かれたことになる。

 本編は一枚の地図の調査から始まって、ペルー、ボリビア、中央アメリカの遺跡を調査し、世界各地に残されている神話が共通の経験を物語り、同じ文学的題材、同じ様式の脚本、覚えのある登場人物、同じ筋立てであることを検討し、そこに隠されたメッセージが潜んでいることを立証する。

 もちろん、取材はエジプトにも及ぶ。 ギザのピラミッドは多くの示唆に富んでいる。 置かれた位置、方位に正確に合わされた底辺、地球の北半球の正確な縮尺になっている寸法、歳差運動(地軸の傾きが円を描くように回転する)を暗示する縮尺比率、そして紀元前 1 万 450 年の天空のパターン (特にオリオン座) と正確に一致する地上の配置パターン。

 話はスフィンクスにも向く。 スフィンクスの身体に刻まれた大量の雨による侵食の跡は、地質学的調査の結果 1 万年から 1 万 5000 年前に建造されたことが明らかになる。 スフィンクスは何故ライオンなのか。 紀元前 1 万 450 年頃、春分の日の太陽は獅子座を背景にして昇った。 スフィンクスはその時、ピタリと太陽を見据えているのである。

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 恐ろしいほどに一点に集約される失われた文明の指紋。 有史以前、高度な文明があったが突然滅んだ。 彼らの生き残りが他の大陸に渡った時、彼らは神になった。 彼らは自分達の生きた証を、滅びゆく理由を、失われない形 (神話や遺跡) で後世に伝えることを意図した。 過去からの警告を真摯に受け止め、世界規模での調査検討が必要な時なのではないか・・・。 これがグラハム・ハンコックが 5 年に及ぶ調査の結果導き出した仮説である。

 本書は物語ではない。 5 年間にわたる世界各地での調査に基づいて書かれたリポートである。



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