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創世の守護神 (Keeper of Genesis)

創世の守護神『創世の守護神』 (Keeper of Genesis)
著者 グラハム・ハンコック、ロバート・ボーヴァル (Graham Hancock, Robert Bauval)
訳者 大地 舜
翔泳社


 エジプト、ギザ・ネクロポリス。 ここに、スフィンクスと 3 つのピラミッドが横たわる。 ここは、あらゆる点からみて、並外れた建築学上・考古学上の謎だ。
 この謎に『神々の指紋』のグラハム・ハンコックと、『オリオン・ミステリー』のロバート・ボーヴァルが挑む。 彼らは既成概念に囚われず、天文学を駆使して伝承を読み解き、地質学と数学を用いて検証を行い、コンピュータ・シミュレーションで実証を試みる。 そして、壮大な仮説を打ち立てる。

 ここには、スフィンクスやピラミッドのほかに、いくつかの神殿が点在している。  スフィンクス以外は石を組み上げて造られており、しかもどの石も 200 トンぐらいの重さがあり、いちばん小さな石でも 50 トン以上はある。
 古代エジプト人たちは、このような重い石をどのように持ち上げ、所定の位置に取り付けることができたのだろうか。 限られた区域で 200 トンの石を持ち上げ、複雑な構造物を組みたてるなど、現代技術をもってしても不可能に近い。 しかし、はるか悠久の昔、巨石を積み上げて複雑な構造物をなした文明があったのだ。

ピラミッド
 大ピラミッド (クフ王のピラミッド) の計測値を天文学的に検証すると、今まで無視されてきた特徴*1が浮かび上がる。 地球の北半球を 43200 分の 1 の割合で縮小した数学的モデルとして機能しているのだ。 建築的にも数学的にも北半球の空のモデルになる。 これほどの一致は、偶然ではあり得ない。 なぜ、これほど精密なのか。 なぜ、これほど厳格なのか。

 大ピラミッドの内部には、通称「通気孔」と呼ばれている口径 22 〜 23 cm の 4 本のシャフトが通っている。 このシャフトを詳細に検討すると、それぞれが再生と不滅、妊娠と懐胎、女神イシス、主神オシリスに結び付けられた星に照準を合わせている*2ことが判明する。

 また、3 つのピラミッドの設置場所や相互の位置関係、大きさは、オリオン座のベルトを成す 3 つの星を、そのまま地上にコピーしたように造られている*3。 古代エジプトにおいて、オリオン座は特別な星座であったことを考慮すると、すべては意図されていたのではないだろうか。

スフィンクス
 スフィンクスはギザ・ネクロポリスの東西の軸に正確に沿って造られており、正しく真東の方向を凝視している。 永遠に、春分の日に太陽が昇る方向を見つめているのである。 その精度はずば抜けていて、偶然ではあり得ない。 計画に基づいているのだ。 それは、超人的な精度と知性を持つ、太古の壮大な天文学的プランの一部なのではないか。

 スフィンクスは首の辺りまで激しく侵食されている。 地質学者の調査によれば明らかに「数千年にわたって、石灰岩構造物が雨に打たれた場合に生じる典型的なケース」であった。
 「太古の降雨*4がスフィンクスを浸食した」という事実は、スフィンクスがそれ以前に作られたことを意味する。 スフィンクスの建造は紀元前 2500 年が常識とされているが、地質学的な特徴はそれよりもずっと古く、紀元前 5000 〜 7000 年あるいはもっと古いことを主張する。

 太陽の直前に昇る (ヘリアカル・ライジングという) 星座は、太陽が休まる場所とされる。 その星座は太陽を「運ぶ者」であり、天空の主要な「柱」といわれる。 現代、春分の日の太陽は魚座を背景に昇る。 魚座の時代である。 重要な役目を負う星座は、地軸が微妙に揺れる歳差運動*5のため、2160 年ごとに次の星座に移る。

 それでは、スフィンクスが体現している獅子座の時代はいつだったのか。 それは紀元前 1 万 500 年頃であった。 その時代の春分の日に、日の出前の地平線上に獅子座を目撃することができる。 真東を向くスフィンクスは、獅子座を背景に太陽が昇るのをじっと見据えているのである。

再びピラミッド
 スフィンクスが暗示した紀元前 1 万 500 年頃、春分の日に太陽が昇る瞬間、オリオンベルトの 3 つ星は子午線上で最高点に達する。 この時、天の川と子午線上のオリオンベルトの 3 つ星のパターンは、地平線を軸にしてそのまま写し取ったように、地上のナイル川の流れと 3 つのピラミッドに正確に一致する。

 この時代のオリオン座は、歳差運動によって生じる位置のずれが最も低い位置になる。 これから 1 万 2960 年かけて最高点まで昇り、さらに 1 万 2960 年かけて戻ってくるのである。 つまり、紀元前 1 万 500 年は、「最初の時」に最もふさわしいパターンを示しているのである。

隠された地図・秘密
 著者は、ギザの建造物、その上を覆う過去、現在、未来の天空、そしてそれらを結びつける古代の埋葬テキストは、はっきりとしたメッセージを伝えているという仮説を唱える。

 3 大ピラミッドの参道が暗示する、紀元前 1 万 500 年の春分と冬至の間の 4 分点の日。 この時の日の出をシミュレートすると、次のようなことが起こる。
1. 太陽は真東の南 14 度、参道の先から昇ってくる。
2. そのすぐ左、スフィンクスが見つめる先には獅子座があり、頭と肩、背中の一部が見え、地平線の下に身体が埋もれている。

 一方、地上に目を移しギザ大地のスフィンクスを下から眺めると、頭、肩、背中の一部だけが見え、身体のほとんどは地面に沈んでいる。 天空のイメージと地上のイメージが完璧に一致するのだ。

 コフィン・テキストに、ギザの建造物の下に隠された部屋があり、オシリスの偉大な「秘密」が隠されていることを示唆する一節がある。
 伝承の暗示するところに則り、コンピュータ・シミュレーションを使い、天空のイメージと地上のイメージを重ね合わせると、重大な結果が見えてくる。

 これは、時間と星とを使って巧妙に隠された地図なのだ。 オシリス王国の隠された「究極の至宝」は、われわれがメッセージを正しく読み、発見するのを待っている。


*1 ピラミッドの天文学的特徴
1. ピラミッドの寸法は 43200 対 1 の関係で、地球の寸法と一致している。  高さは地球の直径に、周辺の長さは赤道の長さに対応する。
43200 という数字は重要で、歳差運動*5を意識した数値 (2160 × 20 = 43200) になっている。
2. 高さ(146.73m)と周辺の長さ(921.46m)の比は 2 πである。
3. 設置場所は、大気の屈折を計算に入れた天文学上の緯度 30 度になる。
4. ピラミッドの基底は明らかに真四角で、建造物は地球の東西南北の方位を正確に捉えている。
5. 本来の入り口は正確に子午線に照準を合わせてあり、内部の通路はすべて完璧に南北に走っている。
*2 星に照準を合わせている
シャフトはそれぞれ 2 本ずつ真北と真南を向いており、紀元前 2500 年頃の子午線上の星を指し示している。
1. 女王の間からの北シャフトは、宇宙の再生と魂の不滅に結び付けられていた、小熊座のベータ星を指し示す。
2. 女王の間からの南シャフトは、エジプトの王たちにとって宇宙の母である女神イシスを表す、大犬座のシリウスを指し示す。
3. 王の間の北シャフトは、宇宙の妊娠と懐胎と見なされていた、龍座のアルファ星を指し示す。
4. 王の間の南シャフトは、復活と再生の主神オシリスと見られていた、オリオン座のベルトのもっとも明るい星アルニタクを指し示す。 オシリスは、最初の時と呼ばれる悠久の太古に、ナイル流域に文明をもたらしたとされている。
*3 コピーしたように造られている
1. オリオン座のベルトを成す 3 つの星の並びは、一直線ではなく微妙にずれている。 これは地上のピラミッドの位置関係にそっくりである。
2. 3 つの星の明るさの比率は、3 つのピラミッドの大きさにそのまま反映されている。
3. 古代エジプト人は天の川を「空のナイル川」と見ていた。オリオン座は天の川の西側から、土手を見下ろしているようであり、地上のピラミッド群も、ナイル西側の土手に位置している。
*4 太古の降雨
スフィンクスの身体に残る特異な浸食を引き起こすような豪雨は、最後の氷河期が終わった時代に始まり、スフィンクスが建造されたとエジプト学者が主張する紀元前 2500 年より数千年も前に、降りやんだとされている。
*5 歳差運動
地球は、太陽のまわりをほぼ一定の平面上(横道面)でまわり、自転軸はこの平面の垂線に対し、約 23.4 度傾いている。 この角度は横道傾斜と呼ばれ、季節変化の原因となる。
この横道傾斜の横道面に対する方向は一定ではなく、こまの軸が振れるように回転している。 これが歳差運動であり、その周期は 2 万 5920 年である。 そのため、春(秋)分の日に日の出の太陽が背にする星座は、2160 年毎に次の星座へ移って行く。


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