構成ファイルの zone ステートメントで定義したドメイン名は、指定ゾーンファイル内において資源レコード名とドメイン名の
起点名として認識される。
起点名は、資源レコード名およびドメイン名の末尾がドット ( .) で終わっていない場合に、それを補完する目的で使われる。
例えば次のようなネットワークと DNS (named) 関連ファイルがあったとする。
ドメイン名 | project.ed.jp |
ネーム サーバー ホスト (ドメイン) 名 | dns.project.ed.jp |
DNS (named) 構成ファイル | named.conf |
正引きゾーンファイル | project.zone |
逆引きゾーンファイル | project.rev |
この時、資源レコード名は次のように省略できる。
構成ファイル (named.conf) の正引き用 zone ステートメントの記述は、概ね次のようになる。
zone "project.ed.jp" in {
type master;
file project.zone;
};
一方、ゾーンファイルに記述する A レコードは、正規な書式で表すと次のようになる。
( ネーム サーバーに関する部分 )
dns.project.ed.jp. IN A 10.2.3.234
この A レコードを、起点名を利用して記述すると次のように省略できる。
dns IN A 10.2.3.234
PTR レコードの場合も、正引き A レコードと同様で、構成ファイルの逆引き用 zone ステートメントの記述が
zone "3.2.10.in-addr.arpa" in {
type master;
file project.rev;
};
となっていたとすれば、ゾーンファイルの PTR レコードは次のように省略可能である。
234.3.2.10.in-addr.arpa. IN PTR dns.project.ed.jp.
[ 省略 ]
|
234 IN PTR dns.project.ed.jp.
資源レコード名に
FQDN を使うときは、最後のドットを忘れないように注意が必要である。
もちろん、省略することもできない。
最後のドットを忘れると、次のようなレコードは
dns.project.ed.jp IN A 10.2.3.234
資源レコード名が補完されることで
dns.project.ed.jp.project.ed.jp.
と解釈されてしまい、名前解決ができなくなる。
資源レコード名が
起点名と同じである場合には、@ 記号で代用することができる。
主にゾーンファイルの SOA レコードで使われる。 次のようになる。
project.ed.jp. IN SOA dns.project.ed.jp. master.project.ed.jp. (
1234 | ; シリアル番号 |
・・・・ | ; |
1h ) | ; ネガティブ キャッシュ TTL |
|
[ @ で代用 ]
|
@ IN SOA dns.project.ed.jp. master.project.ed.jp. (
1234 | ; シリアル番号 |
・・・・ | ; |
1h ) | ; ネガティブ キャッシュ TTL |
|
資源レコード名が空白またはタブである場合には、直前の資源レコード名が適用される。
省略例を以下に示す。 起点名は project.ed.jp. とする。
@ IN SOA dns.project.ed.jp. master.project.ed.jp. (
|
; | @ |
1234 | ; シリアル番号 |
・・・・ | ; |
1h ) | ; ネガティブ キャッシュ TTL |
| | |
|
IN NS dns |
; | A |
IN A 10.2.3.234 |
; | B |
dns IN A 10.2.3.234 |
; | C |
www IN A 10.2.3.99 |
; | D |
IN A 10.2.3.100 |
; | E |
|
それぞれの資源レコード名等は次のように適用される。
- @ @ 記号による代用
@ の位置は起点名で置き換えられ、資源レコード名は project.ed.jp. に補完される。
- A 空白の資源レコード名 & 起点名を利用する省略
直前の資源レコード名 (補完後の SOA 資源レコード名 project.ed.jp.) が適用される。
右辺のネーム サーバー名は、起点名を追加した dns.project.ed.jp. が適用される。
- B 空白の資源レコード名
直前の資源レコード名 (SOA から引き継いだ project.ed.jp.) が適用される。
- C 起点名を利用した省略
dns に起点名を追加した資源レコード名 ( dns.project.ed.jp. ) が適用される。
- D 起点名を利用した省略
www に起点名を追加した資源レコード名 ( www.project.ed.jp. ) が適用される。
- E 空白の資源レコード名
直前の資源レコード名 (起点名で補完された www.project.ed.jp.) が適用される。
ドメイン名、ホスト名については、[ DNSの概要 U.2.ドメイン、ドメイン名、ホスト名 ] を参照。