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2010/02/07(Sun)
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早稲田に住んでいる。 家の裏手の神田川を挟んで、ほとんどすぐとなりが雑司ヶ谷だ。
四谷怪談で識られる街。 鬼子母神があることでも有名だ。 夏目漱石や竹久夢二、東條英機ら様々な著名人が眠っていることで有名な雑司ヶ谷霊園もある。
高低が激しくまた古い地形なので、両脇が切り立ったおそろしく暗い小径があったり、幸福の科学のやたら豪勢な教会があったりと、夜中に歩くにはブレイブハートが必要な土地だ。 だいたい、池袋へ抜ける動脈である明治通りからして、すぐ脇に鬱葱としだれるような木々の生い茂る丘があり、明かりが少なくやたらと怖い。月をバックにするとサマになりすぎて五滴は漏れる。藤田和日郎なら、まず間違いなく人ならざる何かの影が空中を飛び跳ねる描写を入れてくる光景が目の前に現出するのだ。
面白いことに、この雑司ヶ谷では節分の豆まきの際「鬼は外、福は内」と云わない。「鬼は内、福は内」と、双方を呼ぶ。 土地の祭神である鬼子母神を“やらう”訳にはいかないからだ。
なる程。 お隣ではあるが、少しくらいあやかりがあってもいいだろう。 何の気なしに、云ってみた。
「鬼は内、福は内」
魔を滅するマメをおざなりに撒き、 喰らい、その日は酒を聞こし召して眠った。
以来、数日が経つがどうやら何かに憑かれている。 身体がだるい。
身体が赤くなり、あるいは青くなるオニとは、 病の人格化であるとも云う。つまり──伝染病・感染症だ。
雑司ヶ谷の鬼子母神は本来“鬼”の字の角を取った常用外の文字を表記として使用する。 もしかすると、ただ心の中で“鬼”を浮かべた俺には、本物の、郊[のら]に姦[かだま]しき“隠”[おに]が憑いてしまったのだろうか。
高熱が続いている。 ニュースでは、ワクチンの効かない新型インフルエンザの出現を報じている。
身の内で増えたウィルスは、 果たして“我が子”と定義できるものだろうか。
ほどなく、赤オニでもなく、青オニでもなく、 モノ云わぬ黒いオニが現れるだろう。 さようなら。 この苦しみが消え去るのなら、それはそれで福なのだろう。
福は内。
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