小説「まもって守護月天!」(知教空天楊明推参!番外編)

≪楊明と星神達≫


その10『楊明と天鶏』

「ふあ〜あ、退屈だなあ・・・。」
一つ大きなあくびをしてソファーに寝っ転がって天井を見つめる。とにかく暇だ。
シャオと太助は何処かへ出かけた。買い物とか言ってたけど、デートっぽいな。
邪魔しちゃ悪いと思ってあたしは遠慮したんだけど、ルーアンは後を追って行った。
たまには心を広くして見送ってやれっての。
キリュウとヨウメイはなにやら庭でごそごそやってるみたいだ。
興味が無いから別に気にもならないけどな。
「あ〜あ、翔子でも遊びに来ないかな〜。」
再び大きなあくびが出る。あんまりにもあくびをしたんで、涙がつつつーっと。
もうこうなったら昼寝でもしようかな。でもなあ・・・。
しきりに何をしようかと考え出したその時、庭のほうから声が聞こえてきた。
「すいませーん。那奈さん、ちょっと来ていただけませんかー?」
ヨウメイだ。あたしになんの用があるって言うんだ?
でもまあ丁度いいや。退屈な時を崩す絶好の機会。早速行ってやろう。
体をよいしょと起こす。そして庭のほうへと歩き出した。
で、庭に辿り着いてあたしが見たものは、なにやら下半身がすっぽり地面に埋まっているキリュウ、
そしていつものごとくにこにこ顔のヨウメイだ。
「・・・何やってんだ?キリュウ。」
「那奈殿!・・・分からぬ。ヨウメイ殿が試練ですよなどと言ってこんな状態に。
短天扇も取り上げられ、しかも自力で出られないようにヨウメイ殿が細工を・・・。」
「試練だって?」
疑問の顔でヨウメイを見る。と、ヨウメイは喋り出した。
「ちょっと那奈さんに審判をして欲しいんです。
これから私と天鶏さんで競争みたいなものをするんです。
それで、どっちが勝っているかを那奈さんが決めてください。
天鶏さーん!!」
説明が終わると共に叫ぶヨウメイ。と、家の屋根から一羽の鳥が舞い降りてきた。
天鶏ってのはたしかシャオの星神だったよな。高温の炎に包まれた火の鳥だ。
その天鶏は、ヨウメイの傍に待機。周りのものが燃えない様に、多分細工してあるんだろうな。
「それじゃあ始めましょうか。天鶏さん、勝負のほどよろしくお願いします。」
天鶏とヨウメイがお辞儀をする。何かの試合か?まあ競走って言ってたよな。
「それで、どんな競争をするんだ?」
「那奈さん、ここまでセットを作ってるんですから分かってくださいよ。」
言われて見回すと、目に付いたのは埋まったまま硬直しているキリュウ。
なるほど、キリュウに対して暑さ合戦でもやろうって訳か。
「一目瞭然でしょ?それにキリュウさんも鍛えられるし、これこそ一石二鳥です。」
「やる事はわかったけどどういうルールなんだ?」
「私と天鶏さんが交代でキリュウさんを攻めます。
キリュウさんがどのくらいで参った宣言を出したか、それを判断してください。」
「分かった。当然短い方が勝ちなんだよな?」
それにこくりと頷くヨウメイと天鶏。いざ始めようかという時、キリュウがようやく叫んだ。
「ちょっと待った!なぜ私でそんな競争をするのだ!
別の人でやれば良いではないか!」
「キリュウさん、わがままはいけませんよ。それじゃあまず天鶏さん、どうぞ。」
一声天鶏が鳴いたかと思うと、キリュウめがけて飛んで行った。
キリュウに当たる!・・・というぎりぎりの所をぐるぐると飛びまわっている。
その影響で気温が上昇してるんだろうな。なんだか陽炎みたいなものが見え出した。
「暑い!!もういい!!やめてくれー!!」
キリュウが叫んだ所であたしはストップの合図をする。
ぐったりとしたキリュウを残して天鶏は元の位置へと戻って行った。
「ふーむ、意外とあっさり・・・。よーし、負けないぞ。」
なんだか気合を入れるヨウメイ。あれ?そういえば時間を計ってないぞ。
何気なくキリュウを見ると、ぐったりとしながらも抗議してきた。
「だからなぜ私を巻き込むのだ!!私が暑さに弱いと知っての狼藉か!?」
するとヨウメイは統天書をぱらぱらとめくる。
「狼藉ってのは乱暴な事や無法な事という意味だそうです。
一つ勉強になったところでいきますよ。来れ、灼熱!」
キリュウを無視して灼熱を呼ぶヨウメイ。
嫌な無視の仕方だなあ。いい性格してるよ、まったく。
「あ、暑い―!!やめろー!!」
一瞬にして根を上げたキリュウ。またもやあたしはストップをかけた。
パタンと統天書が閉じられると共にぐたっとなるキリュウ。
なんだか可哀相な気が・・・。
「あのさ、ヨウメイ。キリュウのいう通り、なにもキリュウで競わなくても。」
それを聞いた天鶏とヨウメイがこちらを見る。けれど怒っている様ではない。
「では那奈さんがやりますか?私はどちらでも構いませんが・・・。」
こんな事を言ってきやがった。一瞬迷ったものの、やはり首を横に振る。
退屈はしてたけどいやな目に遭うのはお断りだ。
「な、那奈殿〜。ヨウメイ殿を止めてくれ〜。」
「キリュウ、相手が悪いからあきらめろ。あたしはここで声援を送るよ。」
「そ、そんな・・・。」
悲痛な顔になったかと思ったら“きっ”とヨウメイを睨むキリュウ。
なんだ、結構元気じゃないか。これなら大丈夫かな?
「ヨウメイ殿!絶対に私は許さぬからな!!なぜこんな目に遭わせるのだ!!」
「おお怖い。分かりましたよ、少し手加減しますから。
まったく、どうして私と天鶏さんがこんな目に・・・。」
ぶつぶつと自分の被害を訴えている。なんでおまえがそんな事言うんだ?
それにしっかりと中止の意志を見せないでいる。ヨウメイ、おまえって奴は・・・。
「それじゃあ今度は私から。来れ、微熱!」
微熱?これまた手加減っぽいものだなあ。それより微熱って自然現象か?
少しばかり引っかかりながらもキリュウを見る。と、へにゃへにゃとなっていった。
「あ、暑い・・・。だからなぜ私が〜!!」
暑いと言いながらも抗議してるな。まだまだ大丈夫そうだ。
で、しばらくはキリュウだけの叫び声が。それもすぐに止んじゃったけど。
なんだかキリュウはぐったりとして汗だくの様だ。どうなってんだろう。
「なあヨウメイ、いつまでやるんだ?」
「それを那奈さんが判断してくださいよ。ちなみにあそこの気温は約四十度です。」
「・・・暑そうだな。でも耐えられそうな気も・・・。」
要はサウナよりも温度は低いわけだから・・・とは言ってもあの格好じゃ・・・。
というよりは、もともと三十度前後でもぜえぜえ言ってたよな。
相変わらずぐったりと前に倒れているキリュウ。こりゃもう限界だな。
合図を出し、ヨウメイが熱を解く。汗でびしょびしょになった服、顔のまま、キリュウが体を起こした。
「も、もういい・・・。これ以上は・・・。」
「なに言ってるんですか。天鶏さんがまだなんです、後少しですよ。」
そういやそうだった。けどなあ、これ以上やると死んじゃうような・・・。
「では天鶏さん、どうぞ。」
一声天鶏が鳴く。と、キリュウの周りを少し距離を置いて飛び回り始めた。
当然気温が上昇する。それでもそんなに暑くない様だ。
キリュウがすぐに根を上げてないからな・・・って、上げられないのか?
「なんだかものすごくだるそうだな、キリュウの奴・・・。」
「ただの夏バテですよ。それにしてもやるなあ、天鶏さん。
微妙に飛ぶ角度を変えて気温を調節。すごーい。」
夏バテ?おいおい、いくらなんでもそれは無いだろう・・・。
なんだか感心しているヨウメイに呆れながらも、キリュウの様子をしっかり見る。
全然微動だにしないな。ひょっとして気絶してるとか・・・?
「うう・・・あ・・・あつ・・・。」
うめき声が聞こえてきた。なんだ、気絶はしてないんだ。でもさすがにこれ以上は・・・。
というわけであたしはストップの合図を出す。天鶏はそれに気付いてこちらへ戻って来た。
「お疲れ様でした!天鶏さん、いい勝負でしたよ・・・。」
なんだか熱血した瞳でお互いを見つめるヨウメイと天鶏。
これのどこがいい勝負なんだ?だいたいあたしは審判なんてやってないじゃないか・・・。
「あのさ、ヨウメイ。結局何をやりたかったんだ?」
「熱い友情ですよ。天鶏さん、これからもよろしくお願いします。」
と、ヨウメイと天鶏が、手と羽で握手。一瞬“うわっ!”と思ったけど。
ヨウメイはどうやら燃えない様に細工をして握手したらしい。(まあ普通そうだろうな)
それにしても熱い友情?しゃれのつもりかなあ。それのためにダシにされたキリュウって一体・・・。
そのキリュウは放心状態で地面にうつぶせに。後で慰めてやろうかな・・・。
「そうそう、ちゃんとお礼をしないとね。天鶏さん、ちょっと協力してくださいね。」
そう言ってヨウメイは統天書をめくり始め、天鶏が一つ鳴いて、なにやら態勢を整える。
と、キリュウが重苦しい表情で顔を上げた。
「ヨウメイ殿、これ以上何をしようというのだ・・・。」
「試練ならやめとけよ。キリュウが死んじまう。」
「静かに・・・。」
随分と真剣な目つきだ。なるほど、試練って訳じゃなさそうだな。
とすると、一体何をするつもりなんだ?
「契約に基づき、天鶏より炎の力を借りん。彼の者の耐熱度を上げよ・・・。炎熱順応!!」
と、キリュウの体がぱあっと光る。なんと、天鶏の体もだ。
しばらくの間それは続き、やがて小さく小さくなり、そして消えた。
そこでパタンと統天書を閉じるヨウメイ。天鶏と顔を見合わせてにっこりする。
「これでキリュウさんの体が、少しの高温に耐えられるように成りました。
多少の事では火傷したりしないはずですよ。
あ、それから、もうそこから出られる様になってますから。
そうそう、短天扇もお返ししておきますね。では天鶏さん、行きましょう。」
早口で説明を終えると、ヨウメイは天鶏とともに何処かへ歩き去って行った。
キリュウの方を見ると、なにやら複雑そうな表情を浮かべている。
「そうか、ヨウメイ殿は私の為に・・・。」
「暑さに耐えられるってことなんだな。良かったじゃん、キリュウ。」
あたしが声をかけると、キリュウはにこりと笑ってそこから出てきた。
なんだかさっきまでの試練の疲れも取れてるみたいだな。いやー、良かった良かった。
今回の事で、あたしは少しヨウメイを見直したのだった。

後日、やっぱりヨウメイは厄介な奴だという事が判明。
キリュウが暑さに弱いという事がまるで直っていない。扇風機占領、涼しい部屋でダラーっと・・・。
とにかくその事で、キリュウと一緒に部屋にいるヨウメイへ抗議しに行った。
と、ヨウメイは涼しい顔であっさりこう言ってきた。
「私が行ったのは、キリュウさんの体の耐熱性向上ですよ。
言ったじゃないですか、少しの熱でも火傷しないって・・・。
本当なら性質も直せるはずだったんですけど、途中で手加減しろなんていったから・・・。
ついでに言っておきますけど、あれは一回しかできないんですからね。」
なるほど、そういう事か。確かにそういう説明しかしてないな。
けどさあ、それって詐欺じゃないかなって思うんだけど・・・。
「だったら最初に目的を言えばよいではにないか!」
「言うと効果が無くなるって仕組みなんです!!」
そこでだんまりとなった。面倒だなあ、それって。
簡単に物事は運ばないって事なんだ・・・。
「こうなった以上熱がりを直すのはキリュウさんなんです。頑張ってくださいよ。」
「しかしヨウメイ殿・・・。なぜ天鶏殿とこの部屋でくつろぐ必要があるのだ!!」
キリュウの言う通り、キリュウとヨウメイの部屋にはなぜか天鶏が居る。
周囲のものは燃えないで居るものの、暑い事には変わりない。気温三十度超えてるぞ・・・。
「だって、契約なんですもの。熱い友情を得たのなら仲良くしないと。
キリュウさんの熱の耐性を上げるのに一役かってくださった天鶏さんですもの。
それにいい機会じゃないですか。頑張って暑さに慣れましょう。」
ちなみにヨウメイは平然と長袖。つまり春服・・・って感じかな。
で、キリュウは半袖の夏服。それでもかなり暑いらしく、わざわざはだけさせている部分も。
「だからといって夜まで一緒に居るのは困る!暑くて眠れぬではないか!!」
「それじゃあキリュウさんは別の部屋で眠ればいいじゃないですか。」
「もともとここは私の部屋だぞ!別の部屋で寝るのべきなはヨウメイ殿ではないか!!」
おいおい。言っておくけどここはもともと・・・まあ別にいっか。
「なんて冷たいんでしょ。分かりました、私達は別の部屋で寝ますからね。
行きましょう、天鶏さん。」
あっさり言って部屋を出て行こうとするヨウメイ。なんだ、随分素直だなあ。
・・・と思ったら、去り際に突然叫んだ。
「来れ、灼熱!!・・・ああすっきりした。」
その瞬間、部屋の気温がおもいっきり上がる。
温度計の液がぐーんと上がったかと思うと、パリンと割れた。
「「あ、暑い―!!」」
二人同時に叫んで慌ててその部屋を飛び出す。どうやらこの部屋だけの気温を上げた様だ。
「ヨウメイ殿!!一体なんのつもりだ!!」
「お土産ですよ。私達は別の部屋で寝るんですから、キリュウさんはそこで寝てくださいね。」
なんつー嫌な奴だ。気温を上げるなんて土産を残して行くなよな・・・。
そして何時間かの話合いの後、結局三人一緒に寝る事になったようだ。
つまり、キリュウ、ヨウメイ、天鶏がキリュウとヨウメイの部屋で寝るっていう事。
やっぱり寝苦しい事に変わりが無いキリュウにはいい迷惑だよな。
その後ヨウメイと天鶏はさらに毎日の行動を共にして、
太助の友達、某N君の魂より熱い友情を築きあげたとかあげないとか。
あたしはこいつらになんだか振り回されただけって気がするな・・・。

<おわり>


その11『楊明と軍南門』

前々から思ってたんですけど、どうしてあの小さい輪っかからあんな大きい星神さんが?
統天書を調べたものの、それについては載っていない・・・。
全ての知識って割には肝心なものは載ってない事が多いんですよねえ。
というわけで・・・。
「シャオリンさん、軍南門さんをちょっと呼んでみて下さい。」
「あの、ヨウメイさん・・・。」
「なんですか?」
「今はちょっと・・・私はお風呂に入っているところですし・・・。」
そういえばここはお風呂場だったっけ。いけないなあ、気にしすぎると周りが見えなくなっちゃう。
「どうも失礼しました。それじゃあ私はリビングで待ってますから。」
「あ、はい・・・。」
そっか。お風呂場で軍南門さんを呼ぶわけにはいかないもんね。
難しい顔をしたままそこを退散。と、廊下で呆れ顔になっているルーアンさんが。
「あんたねえ、状況ってもんを考えなさいよ。真剣な顔で聞いてくるから何かと思ったら・・・。」
「すいません。私って気にしすぎると周りが見えなくなるもんですから。」
少し頭を下げて一緒にリビングへと向かう。と、リビングではやはり呆れ顔のキリュウさんが。
「ヨウメイ殿、別にルーアン殿に尋ねずとも統天書を調べれば良いではないか。」
「あ、それもそうですよね。あははは・・・。」
笑ってごまかすと、二人とも更に呆れ顔になった。
別にいいじゃないですか、私だってそういう時が有りますよ。
なんとなくそんな事を思いながらソファーに腰を下ろす。
と、キリュウさんがお茶をすすりながら口を開いた。
「そうやってわざわざ人に聞いた事も何回目なのだ?
もう少し落ちついて行動されよ。教えてもらう事を嫌うくせに・・・。」
当然私はそれに“ぴくっ”と反応する。
「いちいちうるさいですねえ。別にいやいや教えてもらってるわけじゃないんですから。」
少しふてくされていると、ルーアンさんがため息をついた。
「“あんまり聞きたくないですけど”なんて最初に言ってきたのはどこの誰かしら?
どう考えてもあれは人にものを尋ねる態度じゃないわよ。」
「うっ、すいません・・・。」
二人そろってけなさなくったっていいじゃない。私には私の考えがあるんですから。
やはりふてくされて黙り込む。と、ルーアンさんが尋ねてきた。
「ところでヨウメイ、軍南門なんか呼んでもらって何しようっての?」
話を聞かれちゃってたか。まあしょうがないよね。
「どのくらい大きいのかなって思いまして。」
「ふーん・・・?」
なんとなく疑問のある顔で納得してくれるルーアンさん。
しかし、それを崩す様にキリュウさんが横から言ってきた。
「それはたてまえだろう?真の目的はなんだ?」
「べ、別に何も有りませんよ・・・。」
「え―?やっぱり他に目的があるのね?教えなさい!」
「だから何も無いですって・・・。」
せっかく納得していたルーアンさんを揺り起こす様なこと言って・・・。
相変わらず疑惑の眼差しで見る二人に耐えきれなくなり、結局本当の目的を話す事に。
「・・・という事なんです。」
「なるほど、そういえば考えもしなかったわねえ・・・。
けどね、ヨウメイ。そういうことは気にしない方が良いと思うんだけど。」
「ルーアン殿の言う通りだ。だいたい万象封鎖とやらと同じ原理ではないのか?」
「それが統天書によると違うらしいんです。だから気になって・・・。」
そして三人黙り込む。なんだ、二人とも気になるんじゃないですか。
とりあえずいろいろいちゃもんつけられなくて良かった。
しばらくそのままで居ると、お風呂から上がったシャオリンさんが顔を出した。
「あの、ヨウメイさん。一応お風呂上がりましたから・・・。」
「ああすいません。先ほどはどうも失礼しました。というわけで軍南門さんを庭に呼んでください。」
一つ頷いて四人一緒に庭へ出る。そしてシャオリンさんが支天輪を構えた。
「来々、軍南門!」
その瞬間、私はさっと支天輪へ注目する。
と、なんとも言えないような、軍南門さんの体がぐにゃ〜っと・・・??
気付いた時には軍南門さんが庭に立っていた。
「それじゃあ私は夕飯を作りますから。軍南門、ヨウメイさんに迷惑をかけちゃあ駄目ですよ。」
「迷惑をかけるとすればヨウメイ殿のほうだ。シャオ殿も軍南門殿も気にされるな。」
一言多いんですよ、キリュウさんは!!
それよりも、あんまり分からなかったなあ。
けど、もう一回ひっこめて呼んでもらうなんて事は頼めないし・・・。
「あの、ヨウメイさん?」
うーん、どうしたものか・・・。
「ほっときなさいよ、シャオリン。それより今晩のおかず何?」
「え―と、麻婆茄子の予定ですけど。」
へーえ、麻婆茄子ですか。とと、そんな事より、なんとか確かめる方法は・・・。
「シャオ殿、あまり辛くはしないで欲しいのだが・・・。」
そこで私はぴくっと反応する。辛いものが食べられないのはキリュウさんの所為なのか。
私は麻婆茄子は辛いのが好きなのに・・・。
「シャオリンさん、おもいっきり辛くしてくださいね。
心配しなくてもキリュウさんは辛くても試練だとか言って耐えるはずですから。」
「なんだ。そう言えばそうよね。
シャオリン、あたしもむちゃむちゃ辛いのが好きだから、そう作ってね。」
「は、はい・・・。」
そしてシャオリンさんはキッチンへと。慌ててキリュウさんが後を追う。
と、更にルーアンさんも何やら叫びながらそれに続いた。
やれやれ、考えが途中になっちゃった。うーん、どうしよっかな・・・。
ふと軍南門さんを見上げると、何やら不思議そうな顔で見下ろしてくる。
うわ―、やっぱり大きいなあ。私の100倍はあるかも・・・。
「軍南門さん、支天輪から出る時はどんな感じですか?」
「うーん、そう言われても・・・。」
へ?あ、そうか。軍南門さんは喋る事が出来たんだ。
でもあんまり分からないみたい。うーん、困ったな・・・。
例によってぱらっと統天書をめくり、あるページでその手を止める。
「こうなったら・・・の前に、ちょっと私を肩に乗せてくれませんか?」
「うむ。」
なんだか喋り方がキリュウさんっぽいような・・・まあ気にしない気にしない。
軍南門さんは私を片手でひょいっと持ち上げ、肩にぽんと乗せてくれた。
「ありがとうございます。・・・ひゃ―、絶景かな絶景かな♪」
せっかく呼んでもらったしね。こういう事一度やってみたかったんだ♪
さすが背が高いだけあって、町内が見渡せるほど。
飛翔球とかに乗って見るのとは違って、また別の感動があるなあ。
しばらくの間、すっかりお上りさん状態であちこちを見回す。
見回すだけでは飽き足らず、軍南門さんの頭付近でルンルンとはしゃぎまわる。
・・・と、そうしているあいだに西の空がだんだん赤く。
え―?もう夕方なんだ。時間の経つのってあっという間・・・いけない!すっかり忘れてた!
「ちょっとやる事忘れてました。済みませんが再び下ろしてください。」
「それよりもなぜ呼び出したのか?まさか景色を見るためではないでしょう?」
「え?」
あ、そうか。せっかく呼んでもらったのに真の目的を告げてなかったっけ。
「とりあえず下ろしてください。下で説明しますから。」
「出来たらそこで・・・。」
なんでだろう?あ、そうか、下からだと聞こえにくいですもんね。
って、最初は平然と話をしてたような・・・。
・・・はっ、軍南門さんの顔が赤い?そんなあ、私を好きになっちゃったとか?
え―、困っちゃうなあ。そりゃあ私は頭も良くって可愛いけど、そんなそんなあ・・・。
一人で照れて適当に喜んでいると、軍南門さんがなんだかこちらを見てきた。
もう、やだなあ、そんなに照れちゃ・・・あ、そうか夕日で赤いんだ。
・・・まったく、一人で浮かれてたのが馬鹿みたいじゃないですか。
まあいいや、気を取り直して・・・っと。
「最初に言ったと思いますが、軍南門さんはこんなに大きいながらも、
あの小さな支天輪から出てきますね?」
「うむ。」
「それってどうしてなのかなあって思いまして。
だから出てくる瞬間を見てたんですけど良く分からなくて。」
「うむ。」
「で、今から一つ思いついた事をやろうと。というわけで地面に下ろしてくださいますか?」
「う、うむ。」
なんだか最後は戸惑った返事みたい?
ともかくそういう事で、軍南門さんは私を肩から地面へと下ろす。
ちょっと手が震えてたみたいだったけど・・・気のせいよね。
「ありがとうございます。それではいきますよ・・・。」
統天書を開けて念じ始める。と、軍南門さんがしゃがみこんできた。
「・・・?どうしたんですか?何か心配事でも?」
「い、いや!」
慌てて手を振ったかと思うと再び立ちあがった軍南門さん。
わかんないなあ。まあ後でそれなりに聞いてみることにしようっと。
「では・・・。時の精よ、空の精である我に力を貸したまえ。時空・・・」
「はっくしょん!!」
「うわっ!」
いきなりの軍南門さんのくしゃみに不意を突かれ、念を止める。
じろりと上を見ると、済まなさそうに頭を掻く軍南門さんが。
「もう、突然どうしたんですか。」
「少し寒くなってきたもので・・・。」
この程度で寒いなんて、キリュウさんじゃあるまいし・・・。
まあしょうがないか。また今度調べてみることにしようっと。
パタンと統天書を閉じ、軍南門さんににこやかに告げる。
「試す事はまた今度にしますから。お疲れ様でした。」
「い、いや、なんの・・・。」
ほんっとキリュウさんみたいな返事。ただ少し似てるってだけなのかもしれないけど。
「それじゃあシャオリンさんを呼んできますから、ちょっと待っててくださいね。」
「あ、あの・・・。」
「え?まだ何か?」
「い、いや、なんでもない・・・。」
なんでも無いのに呼びとめるわけがないでしょうに。
そうだ、さっきの事もかねてちょっと聞いてみようっと。
「軍南門さん、さっきしゃがみこんできたのはどうしてなんですか?」
「そ、それは、別に・・・。」
別に・・・なんて訳ないでしょうが!もっとちゃんと喋って欲しいなあ・・・。
でもこれ以上追求してもしょうがないか。もういいや。あ、でも一つだけ。
「すみませんがもう一度肩に上げてもらえますか?夕日が見たいなって。」
「ええ、どうぞ。」
にこりとして私をやさしく持ち上げてくれる軍南門さん。
・・・にこりと?軍南門さんてそんなに愛想のいい人なのかなあ。
ちょっと疑問にかられながらも宣告通り夕陽を見つめる。
うーん、壮大だあ!やっぱり夕日っていいよね・・・。
「軍南門さんていっつもこんな視線でお空を見てるんですよね。
なんだかうらやましいなあ・・・。」
「いつもというわけではないが、ありがとう・・・。」
「あはは、ありがとうだなんて。面白い方ですね。」
すると、なんとなく軍南門さんの顔が赤くなったような・・・。
夕日の所為・・・じゃないかも?なんて、やっぱり夕日だよね。

日が沈んだ後に、軍南門さんは支天輪へ。いつまでも居るわけにはいかないから。
夕飯の麻婆茄子は、ものすごく辛いものに。ルーアンさん頑張ったんだあ、さすがさすが。
キリュウさんはずうっと涙を浮かべてそれを食べていた。それでも、
「美味しいぞ、シャオ殿・・・ぐすっ。」
と、お料理を誉めていた。へえ、涙が出るほど美味しいなんて・・・。
後でキリュウさんに聞いてみると、あれは辛くて涙が出ていただけの事。
しかし、いつも通り美味しい事には変わりが無いので自分なりに誉めたとか。
要はやせ我慢って事でしょうが・・・。
そんな事より今度はいつ軍南門さんを呼んでもらおうかな。
シャオリンさんに聞いても結局真相は良く分からなかったし・・・。
いつかあの謎を解き明かすぞー!

<おわり>


その12『楊明と天陰』

「ちょ、ちょっと待ってください、ルーアンさん!」
「いいえ、待たないわ。覚悟しなさい、シャオリン。陽天心召来!」
ビカーッ!!
久しぶりにシャオリンと決闘よ!!理由は忘れちゃったけど。
「さあ、やっておしまいなさい、陽天心ソファー!!」
ズンズンズンズン!!
「やめろ―、家の中で暴れるな―!!」
「ああっ、たー様!!」
「太助様!!」
突然たー様がシャオリンの前に入る。と、たー様にソファーの攻撃が!!
「ぐわっ!!」
たまらず床に倒れるたー様。慌ててあたしは陽天心を解いて傍に駆け寄る。
その頃にはすでにシャオリンがたー様を腕に抱いてたけど・・・。
「太助様をこんな目に・・・許しません!!」
「わ、悪かったって。だから落ち着いてって、シャオリン。」
なだめようとするもシャオリンの目はマジ。支天輪をさっと構える。
「来々、天陰!!」
「い!?」
天陰ですって―!?やばい、完璧に切れてんだわ。逃げなきゃ!!
素早くリビングを後にしたけど、後から天陰がものすごい勢いで追ってくる。
まずいまずいまずい!!こんなんじゃああっという間に追いつかれちゃう!!
と、玄関のドアがきいっと音を立てて開いた。
「ただいま戻りましたあ。」
ヨウメイ!!渡りに船とはこの事だわ!!
「ヨウメイ、早く飛翔球出して!!」
「ええ?なんでまた・・・って、なんで天陰さんに追いかけられてるんですかあ!!!」
「説明は後よ、早く!!」
「わ、わかりました!」
ヨウメイが素早く飛翔球を絨毯に変え、それに二人して乗りこむ。
危機一髪で天陰の攻撃をかわして大空へくりだ・・・さない!
「ちょっとヨウメイ、なんで低空飛行なのよ―!」
「今日はそういう日なんです!利用回数が多いから、そう制限をつけて・・・うわあ!追って来てるう!!」
ヨウメイの言う通り、天陰の奴ってば絨毯の後を速度を落とすことなく追跡している。
高さはどっちも似たようなもんだから追いつかれたらアウトだわ!
「ヨウメイ!もっと速くできないの―!?」
「だから今日は飛翔球を酷使しない日なんですってばー!!
そんな事よりどうして天陰さんに追っかけられてるんですか!!」
「ちょっといろいろあってね、あはははは・・・。」
笑ってごまかすと、ヨウメイはじろっと睨んだ後に統天書をめくり出した。
あるページをふむふむと見てパタンと閉じ、再びじろっと睨む。
「なんてことを・・・主様を傷つけるなんて!!」
「だからあ、あれは事故なんだって。とりあえず天陰から逃げないと、ね?」
するとヨウメイ。飛翔球を飛ばしながらも天陰のほうへと向く。
と、次第にスピードを落とし始めた。ちょっとお!!
「天陰さん、ルーアンさんを明渡したら追うのを止めて下さいますか?」
「よ、ヨウメイ!!」
ヨウメイの問いに天陰は走りながらこくりと頷く。そしてヨウメイは更に言った。
「ついでと言ってはなんですが、私もいろいろお手伝いして良いですか?」
「ちょちょちょ、ちょっと待ってよ―!」
やはり天陰はこくりと頷く。
これはやばい!乗る船を間違えたみたいだわ!
早いとこ、ここから逃げないと・・・そうだ、あれを使えば!
「陽天心召来!」
慌ててゴミ置き場(丁度横を通った)にあったカーペットに陽天心をかけ、それに素早く飛び移る。
ヨウメイと天陰が“あっ!”なんていう顔をした時には、あたしはすでに空高く。
ふう、危なかったあ・・・。思わず冷や汗を拭う。
見ると、下でぴたっと止まった二人が何やらごにょごにょと。
飛翔球も小さくして懐にしまったみたい。何をするつもりかしら・・・?
と、ヨウメイが天陰の背中にちょこんと乗っかった。げ?まさか・・・!!
「来れ、上昇気流!!」
途端に強い風が巻き起こり、ヨウメイを乗せたまま天陰が上昇した!!
ちょっとー、そんなのありー!!?
急いでカーペットの速度を早めてその場から立ち去る。
その時にはヨウメイは更に次の行動に出ていた。
「来れ、強風!!」
と、途端に後ろからあおるような風が。それにのって、天陰がこちらへ!
「ひ、ひええ!!」
慌てて急降下。けれども、それはすでに読まれてたみたい。
「来れ、上昇気流!」
「きゃあっ!」
降下しようとした途端に下から強烈な風邪が。
それにあおられて再び天陰と同じ高さに・・・。
「こんにちは、ルーアンさん。天陰さん、ゴー!!」
「う、うわああ!!」
ドオオオン!!
結局逃げられず、あたしは天陰の攻撃をくらったって訳。
空中に居るあいだ中ずっと!天陰の執拗な攻撃がずっと!!
おまけにヨウメイったらゆっくりと下降させて空中待機時間を長く!!!
というわけで、地上に降り立った時にはあたしはずたずたのぼろぼろ。
ほんと、ろくでもないわ・・・。
さすがに歩ける状態じゃなかったので、帰りは天陰の背中に乗せてもらったけど。
「いやー、楽しかった。天陰さんってすごいですねえ。
風に乗ってまで追いかける事を承諾するなんて。かっこいい!」
ヨウメイが誉めると天陰はなんだか照れたみたい。
あのねえ、かっこいいとかそういう問題じゃないでしょ。
そらを飛べない奴はおとなしく地上のものを追えばいいのに・・・。
風を使って空まで追っかけてくるなんて非常識よ。
「今度から誰かを追いかける時は言ってくださいね。喜んで協力させていただきますよ。」
すると天陰は少し困ったような顔をした。
当然よねえ。シャオリンに呼び出されて出てくるのに、ヨウメイにいちいち知らせてられないもの。
「心配なさらなくても、天陰さんが呼び出された時点ですぐに私が駆けつけるようにしますよ。
つまり天陰さんはとにかく私の力と共に追っかければいいんです。」
それに天陰はなるほどと言わんばかりに頷き、笑顔で返した。
うわあ、ますますろくでもないわ。それこそ鬼に金棒ってやつじゃないの。
ますますあたしは脱力感に襲われてくたあっとなる。
と、ヨウメイがにこにこしながら(毎度毎度何がそんなに可笑しいのよ)こっちを見てきた。
「ルーアンさんはなんだかだるそうですねえ。どうしてですか?」
「うるさいわね、どうだっていいでしょ・・・。」
まったく、人の気も知らないで・・・。天陰に追っかけられる身にもなってみなさいよ。
ただでさえこいつは恐い星神なのに・・・。
と、ヨウメイは例のごとくぱらぱらと統天書をめくったかと思うと一言。
「なるほど、ルーアンさんが主に追っかけられる対象となってるんですね。
仕方がありませんよねえ。シャオリンさんが切れる様な事をしてるんですもの。」
「・・・・・・。」
やっぱむかつくわ。天陰といい、ヨウメイといい、シャオリンといい・・・。
あれは不慮の事故だって言ってるじゃないの!
こうなったらキリュウに愚痴を聞いてもらおうかしら。
でも“試練だ”なんて言われたらますますむかついちゃうわね。
そうだ、おね―様に聞いてもらおうっと。きっとやさしく・・・やっぱりた―様ね。
たー様なら絶対・・・。
(ルーアンがそんな大変な目に遭ってたなんて・・・。今度から俺がいつでも慰めてあげるよ。)
(ありがとう、たー様。あ〜ん、ルーアン幸せ〜・・・。)
となる事間違いなしだわ!うんそうしようっと♪
天陰とヨウメイがなんだか呆れ顔でこっちを見ているのにも気付かず、
天陰の上でルンルン気分になりながら鼻歌を歌っていたルーアンでした。

で、家にやっとの事で到着。早速たー様に慰めてもらおうと思ったら・・・。
「ルーアン!これに懲りて二度と家の中で暴れるんじゃないぞ!!」
と、おもいっきり怒られちゃった・・・。
え〜ん、どうしてなの〜?あたしが何したって言うのよ〜?(実際やってるけど)
けれどあたしのぼろぼろになった姿を見て、シャオリンとヨウメイも少し怒られてたみたい。
ふふん、いい気味だわ。あたしをこんな目に遭わせた罰よ!
それよりたー様から慰めてもらうのは無理みたいね・・・。
しかもおね―様ってば不良じょーちゃんの所へ泊まりに行ってるって言うし。
こうなったら・・・。
「・・・で、私の所へ来たという訳か?」
「そうなのよー。もう、ヨウメイったら酷いのよ〜。あたしに協力してくれてたかと思ったら、
途中からいきなり天陰側についちゃって、とんでもない奴だわ〜!」
「・・・・・・。」
「ちょっと、何か言いなさいよ。一人で喋ってるあたしが馬鹿みたいじゃないの!」
「試練だ・・・」
「なんですって!!?あんたねえ、何かあったら試練試練って・・・。
もうちょっと他に言うことないの!?せっかくあたしは慰めてもらいに来たってのに。」
「だからなぜ私に・・・。」
「あんたしか残ってないからじゃないの!!なんだか知らないけどヨウメイの傍に天陰が居るし。
危なくって近づけやしないじゃないの!何とかしなさいよ!!」
「・・・それは私の所為なのか?」
「あったりまえでしょ!!あんたヨウメイと一緒の部屋で寝てるんならそれくらい言いなさいよ!!
だいたいねえ、あんた無愛想過ぎるのよ。ヨウメイが来てから少し変わったかと思ったら、
全然無愛想じゃないの!!もうちょっと愛想良くしなさいよ!!」
「・・・ルーアン殿。私に慰めて欲しかったのではなかったのか?」
「へ?ああそうだったわね。でももういいわ、気が変わったから。」
「そうか、ならば・・・。」
いそいそと立ちあがろうとするキリュウをあたしは慌てて止める。
「ちょっと、まだ話は終わってないんだから。最後までちゃんと聞きなさいよ!!」
嫌そうな顔をするキリュウを座らせ、たっぷりと話をする。
ちなみにここはキリュウとヨウメイの部屋だったので、途中からヨウメイと天陰が入ってきたけど。
でも二人ともおやすみを言って先に寝ちゃった。
そんでもってヨウメイったら寝る前にこんな事を・・・。
「いくら愚痴ったところで私は手を緩める気は有りませんからね。」
だって。いちいち五月蝿いわねえ。そんな事関係無いわよ!
というわけで、あたしはそんな事はお構いなしにキリュウに愚痴をたらたらと言い続ける。
いいかげん憂さ晴らしになったところでおやすみを言って退室。
ぐったりとなったキリュウ。そして気持ちよさそうに眠っているヨウメイと天陰を見ながら・・・。
それにしてもたった一日協力し合ってただけだってのに、随分と仲が良さそうね。
まあ、これから先協力して追っかけをするってんだから当然と言えば当然かも。
みてらっしゃい。今度は今日みたいに上手くいくなんて思わないことね。
あたしが慶幸日天の名にかけて返り討ちに遭わせてやるんだから!
心の炎を燃やしながら、あたしは眠りにつくのであった。

<おわり>