『ワカメの味噌汁』

「あれ?まだあったのか?」
最後がやってこない事に驚きを隠せない。
てっきりワインで終わりだと思ってたのだが…。
でもまあこのタイトルなら納得がいく。たしかにワインより後だ。
そして簡単である分良心的だと言えるだろう。
「多分本当はこっちが最後だったんだろうな…」
早速秋子さんに頼むことにしよう。

『●ワカメの味噌汁
ワカメを具にしたお味噌汁
日本人なら朝のお供に』

…とか思っていたら、なんと朝食に既に用意されていた。
「おはようございます秋子さん。良かったです、今回はワカメの味噌汁なんですよ」
「おはようございます。良かったですわ、もしかしたらと思いまして作ったんですよ」
そのもしかしたらをずばり的中させている。
なんということだろう、さすが家主の秋子さんだ。
喜んで席に着きご飯をいただこうとする。と、ここで俺はおかしなことに気が付いた。
「あの、朝食これだけなんですか?」
「何がですか?」
「ご飯が無いんですけど…」
「ごめんなさいね。お米はもうきれちゃって…」
…嘘でしょ?間違いなく嘘でしょ?
毎週あれだけ買ってるのに…ついこの前何袋も買ったはずなのに…。
「それにね、ちょっと金銭的にピンチになってきてしまって…」
「は?」
「ごめんなさいね、ワインで張り切りすぎたみたいなんです。
ですから、しばらくは質素な食事で我慢してください」
「………」
…秋子さん…家主失格ですよ、絶対…。
「祐一さん」
「なんですか」
「このくらいでは私はめげませんよ。祐一さんにお酒を飲ませるためなら…」
「秋子さん!」
「冗談ですけどね」
くすくすと笑う。
ううー、頼むからそういうのはやめてほしいー。
そしてまた、秋子さんが金銭的にピンチだと言ったのも冗談だと後に発覚した。
それでもその日の朝ごはんは味噌汁オンリーであった俺であった。

<うまかったからよしとしようか…>


『1upプディング』

「…まだやんのかよこんちくしょう」
いいかげんしつこいこの本にむかっぱらが立ってきた。
ふざけんな。いつまで俺に苦労をかけるつもりだ。
早く自立して一人前の大人になってくれ。いいかげん親のすねをかじるのはよしてくれ。
「…自分こそふざけてないでさっさと食べておくか」
というわけで早速秋子さんに頼みにゆくことにした。

『●1upプディング
死人も生き返るほどのエネルギーに
満ち溢れたミラクルプリン』

「祐一さん、とんでもない品を要求してきましたね」
「いや、これは別に俺が要求してるわけでは…」
「このプリンの効能を確かめるためには…一度死んでみないといけませんよ?」
「いや、無理に死ななくても…」
「実践しないといけませんね…」
「は!?」
恐ろしいことを秋子さんは言い出した。そして懐をごそごそと探る。
まずい!包丁か何かを出すつもりか!?
思わずあとずさる。と、秋子さんが懐から出したのは一つの瓶であった。
秋子さん印がついている。ジャムの瓶だ…。
「さあ祐一さん、このジャムをどうぞ」
「………」
いくらなんでもジャムで人は殺せないと思うが…しかし、秋子さんなら可能であろう。
「この日のために開発した死のジャムです」
なんてもの開発してんですかあなたって人は。
「宣告を受けて30カウント後に死亡なんて面倒な方にお勧めですよ」
間違ってもそんなもの人に勧めちゃだめです。
「さあ祐一さん」
ずいっと秋子さんがにじみよってくる。
本気なのは目を見れば明らかだった。っていうか俺を殺す気か!?
ここは…。
「食べるが勝ち!」
「そう、よかったわ。では早速…」
バタン!
ドタドタドタドタ…
「…あら?フェイントですか…やるようになりましたね、祐一さん…」
背後から秋子さんの呟きが微かに聞こえてきた。
そう。食べると宣言して体は逃げ出したのだ。
もちろん本も手に抱えてきた。こうなったら別の人間に頼むしかない…!
決意を固め、俺は街へと飛び出したのだった。

気が付けば、俺は公園に来ていた。
綺麗な噴水で有名な、ちょっとしたデートスポットでもある。
切らしていた息を整えるため、俺はそこにあるベンチに腰をおろした。
「ふぅ…」
寒さが少し身にしみる。一体何故俺はこんなところにいるのだろう…。
しばらく経ってからそっこー疑問を感じ始めた。
しかしその疑問はあっという間に消え去った。何故なら…
「…って、食べ物のためにタマとられちゃあかないまへんがな」
…俺は何を喋ってるんだ。少しは真面目に考えよう。
しかし、この状況でも余裕をかますのがヒーローの条件だ。
「んなヒーローが居てもなりたくねえ」
ま、いいかげん一人で呟くのは置いといて、この食物をなんとかして食べないとな。
…とはいえ、どうしたものだろう?
既に秋子さんには頼れなくなっている。だからといって誰かに頼ろうとするのも…。
「とりあえず予想してみるとしようか」
今まで培った経験を元に、頭の中で反応をシミュレーションしてみることにした。
まずは…



☆美坂姉妹の場合…。
「1upプディングですか?」
「ああ、栞の力でなんとかならないか?」
「うーん、プリンいっきはこの前見たってあゆさんが言ってましたし…」
「栞、お前の頭はいっきのことしか頭にないのか」
「ひどいです。そんな事言う人嫌いです」
事実を言ったまでだと思うんだが…触れてはいけない事実なのか?コレ。
「しょうがない、香里に頼むとしようか」
「お姉ちゃん、ですか?」
「あたしはパスするわ」
言った瞬間、香里がひょこっと姿を現した。
最初から会話を聞いていたみたいに。
「うわっ!いきなり出てきてお前なんだ!」
「なんだはないでしょ。で、料理のことだけど…」
「良かったですね、祐一さん。お姉ちゃんが作ってくれるそうです」
「そうか。すまないな、香里」
「勝手に決めない!…たく、どんな料理なの?」
やれやれと呆れ顔になりながらも、香里は本を手にとった。
やる気になってくれるのかもしれない。

『●1upプディング
死人も生き返るほどのエネルギーに
満ち溢れたミラクルプリン』

「…へえ。面白そうじゃない。これは是非相沢君に食べてもらわないと」
ぎらりと香里の目が光った。
やばいかもしれない…。
「お姉ちゃん、やる気になったの?」
「ええ。一度相沢君に死んでもらって、そして食べてもらえばいいんだしね」
「え?祐一さんに…死んでもらう!?」
「冗談よ、冗談。でもねえ、この説明書きだと死んでもらわないと効果が発揮できないのよねー」
「なるほど…。だったら仕方ないね、私はおねえちゃんに協力するから」
美坂姉妹の目がぎんぎんに怪しく光っている。
これはまずい展開に…!!



「…却下だな」
ぶんぶんと俺は首を振った。
あの後俺はつかまって襲われてそして…いや、もう想像はやめておこう。
さっさと別の人物でシミュレーション開始だ。
次なる人物は…



☆真琴と天野の場合

『●1upプディング
死人も生き返るほどのエネルギーに
満ち溢れたミラクルプリン』

「なるほど…。真琴、これはいいチャンスですよ」
「ええっ?どうしたの?美汐」
「相沢さんに恩を売るチャンスです。相沢さんが瀕死の状態の時に見事この料理を食べてもらえば!」
「もらえば?…そうか!復活した祐一は真琴に大感謝ってわけだね!」
「ええ、そうです」
やいのやいのと二人が騒ぐ。
恩を売るだとか動機自身好ましくはないのだが、俺的にはまあまあなシチュエーションだ。
瀕死の状態なんてものが果たしてあるかどうかはわからないが、俺を救おうとしている。
「さて、早速作りましょう」
「うんっ!…でもどうやって?」
「ですが作る前に…真琴」
「なに?」
「折角作っても食べてもらう人が瀕死という状態じゃなければ作る意味はありませんね」
「あ、そうか!」
…雲行きがあやしくなってきた気がする。
「丁度ここに相沢さんがいらっしゃいます」
「うんうん」
「そして丁度ここには特注の爆竹があります」
「うんうん!」
「なんという偶然でしょう。これも運命ですね…さあ真琴、いきますよ…」
「うんうん!!」
うんうんじゃねー!!



「…まったく駄目だな。っていうかなんでこの二人のシミュレートなんかしちまったんだ…」
さっさと別の奴を考えるとしよう。
ええと、次は…



☆北川の場合…
「おお相沢!俺に任せて…」



「却下だな」
そっこーで俺は考えるのをやめた。
いざという時にはまるで頼りにならない。
それは俺の経験が十分語っていた。
さて次は…



☆名雪の場合
「ええ〜?こんな難しそうなのを作れっていうの?」
料理名を見ると、名雪は開口一番に情けない声をあげる。
いきなりなげるなどと、そんなことでは困るではないか。
「なんてやつだお前は。本当に秋子さんの愛弟子か?」
「祐一、わたしはお母さんの弟子じゃないよ」
それもそうだな…。
「で、どうする?」
「う〜ん…やっぱりお母さんに頼るしか…」
それができるならとっくに頼ってる。
「頼ってあのザマだったから名雪に頼んでるんじゃないか」
「でもね…これって、死んだ人を生き返らせる現場を見ないと…」
「無理にそんなことはしなくていい」
「けど、それじゃあ料理食べた証拠にならないと思うよ?ペンギンになっちゃうよ?」
相変わらずのんびりした声であったが、忠告めいたものであるのは間違いなかった。
たしかに…

『●1upプディング
死人も生き返るほどのエネルギーに
満ち溢れたミラクルプリン』

なんて説明書きにあろうものなら、その条件を満たすのが妥当であろう。
いや、そうでなくてはならないのだ。
今までもそうしてきたのだから…。
「くっそう、なんて料理だ…」
「しょうがないよ、諦めるしか」
「…名雪、お前は俺に死ねというのか?」
「そうは言わないけど…。あ、他の人で試せないかな?」
「他の人で?」
「そ。たとえばお墓とか行って…」
「いや、墓の中の人間はもうプリンなんて食べられる状況じゃないだろ」
慌ててツッコミを入れてやる。まったくとんでもない案を出すな、名雪は。
「いや待て…葬式ならどうだ?」
「お葬式?」
「そうだ。棺おけの中の人間の口を無理矢理開かせて…」
「親族の人達に怒られるよ」
「それもそうだな…」
「そうだ。病院にある遺体の安置所とかどうかな?」
「なるほど!」



「…って、なるほどじゃねー!」
納得しながらシミュレートしていたが、どれもこれもろくでもない案ばかり。
死体と触れ合うなんてまっぴらだ。
なんて贅沢言ってたら多分一生無理っぽいが…。
しかしもっといい案があるはずだ。妥協することもない。
きっと皆も俺も満足できるいい案が…



☆あゆの場合
「わかった、ボクが作るよ」



「…やーめた」
決断が早すぎる気もしたが、何故かあゆに頼ってはいけない気がした。
だいたい、作るとか言い出してる時点で絶対いい結果にならない。
となると次は…



☆舞と佐祐理さんの場合
「わかりましたっ。佐祐理と舞で頑張って作りますっ。ね、舞」
「…頑張る」
いきなり二人はやる気になってくれた。
和気藹々と、今晩の食事は豪勢にだとか、デザートにプリンだとか。
なんだ、最初っからこの二人に頼めばよかったんだ。
ほっと一息ついていると、舞が真剣な面持ちで尋ねてきた。
「祐一」
「なんだ舞」
「刃物と鈍器と、どっちがいい」
「は?」
俺には質問の意図が分からなかった。
「だって、これに書いてあるから」
言いながら舞が指し示したのは…

『●1upプディング
死人も生き返るほどのエネルギーに
満ち溢れたミラクルプリン』

本の説明の箇所であった。
「祐一。私に奇跡は起こせないけど、死人にするくらいはなんとかできるから」
「………」
「大丈夫ですよ、祐一さん。佐祐理と舞が精魂込めて作ればきっと奇跡は起きます」
「………」
「それで祐一、鈍器と刃物と、どっちがいい」
「………」
「材料はありったけ奇跡的なものを用意しますからね」
「………」
もうどうでもよくなった。
結局俺の選択肢は間違っていたんだ…。



「…はあ、どうしよ」
自分で考えてて嫌になってきた。
もう選択肢は残されていない。俺一人の力ではどうにもできない。
いや待て、まだ選択肢はあるんじゃないのか?



☆久瀬の場合
「断る」



「ふざけんな」
結局選択肢はなかったみたいだ。
もはや途方にくれたままでいるしかない。
何もできない。何も足さない。何も引かない。何も変わらない…。
ベンチに座りただボーっとしているうちに…俺はいつしか眠ってしまった…。





「祐一さん、祐一さん」
「ん?…あれ、秋子さん?」
意識を取り戻すと、目の前に秋子さんが居た。
そしてその向こうに見えるは白い天井。
ここは…どこだ!?
がばっと体を起こす。とりあえずさっきまで自分は横になって寝ていたのだと分かった。
と、そこは病院の一室…つまりは病室だと認識した。
「俺…なんで病院に?」
「祐一、凍死寸前だったんだよ?」
「名雪?」
声がした方を向くと、そこには名雪がいた。
いや、名雪だけではなかった。俺のベッドを取り囲むように見知った顔が並んでいた。
栞に香里に真琴に天野に北川に佐祐理さんに舞に久瀬に…早い話がシミュレーションに登場させた人物達だ。
「…いや、あゆが居ない」
「ん?あゆちゃんなら、ほら、私の後ろよ」
「え?」
独り言のつもりで呟いたそれに秋子さんが反応した。
見ると彼女の後ろで、恥ずかしそうにこちらを見ている…あゆがいた。
いや、あゆなのか?なんだか随分雰囲気が違うようだが…。
「奇跡がね、起きたのよ」
香里?
「秋子さんの手作りジャ…じゃなかった、手作りプリンで祐一と、そこのあゆが復活したんだって!」
真琴…そりゃどういう事だ?
「早い話が、あゆさんは実はずっと入院してて、そして秋子さんのプリンで目覚めたそうなんです」
栞、事情は分かった気もするが、早い話…なのか?俺にはよくわからないが…。
「相沢さんも月宮さんも生死の境から戻られました。それで納得するのが吉だと思います」
天野…そうだな、そうなんだろうな…。
「わかった、俺はすべて事情を納得する」
「っておい相沢!次俺が喋る番だったんだぞ!?」
うるさいな北川…。
「お話を聞いた時は、佐祐理びっくりしました。秋子さんのプリンはほんと凄いんですねぇ」
「あらあら、どうしましょう」
佐祐理さんの言葉に照れたような声を出してはいるが、ごく当たり前のように秋子さんは話している。
さすがだ。やはり秋子さんというか…。
「あれ?今更だけど…結局俺瀕死になったのか?」
「まったく、君は危なかった所なんですよ。僕が偶然見つけていなかったらどうなっていたことやら」
げ、俺は久瀬に助けられたということか…。
「でも祐一は瀕死でも凄かった。プリンをいっきした」
「…ほんとか舞?」
こくり
頷きやがった…。くそ、記憶が無いだけに否定もしきれない。
「とにかく、祐一とあゆちゃんの快気祝いをしなくちゃね♪」
話も中途ながら、名雪がしめの言葉を投げた。
それにあゆも頷いて反応する。
展開がご都合主義でいいかげんだが…よしとしなければな。
凍死しかけなどという不覚な事態には陥ったが、物は食べられたんだ。

<万事解決!(?)>


実は、の後書き:
これが本当に最後です。で、書いておきたい事があるので後書き。
実はこれとは違う話を作ってましたが、雰囲気にそぐわないと思って没にしました。
というわけでコレは二作目ですね。何故二作できたかというのは…。
最初、話の案が二つありました。一つは今回のようなもの。
もう一つは、祐一が瀕死の事故に遭って、彼を助けようと皆が協力して料理を作るもの。
ま、どうでもいいですね。今回のこれもかなり慌て気味に作ってるし(苦笑)
もしかしたらこれだけ手直しするかもしれません。えぴろーぐ2を書くと同時に。


『えぴろーぐ2』

空が青い。
この街にも、ようやく冬の終わりが来た。
長きにわたり寒い思いをしてきたが、それももう終わりだ。
そして、この本にもようやく終わりが来た。
長きにわたり辛い思いをしてきたが、それももう終わりだ。

相沢祐一よ、よくぞすべての食物を制した!
もはやワシからいう事は何も無い。
ワシは静かに余生を暮らすとしよう…。

本にはこう書かれてあった。ただそれだけだった。
瞬間、シュレッダーにかけてその紙くずを太陽に向かって飛んでいくロケットに積んで飛ばしてやろうかと思った。
もちろん実現できるわけでもないので思うだけにとどめておくが…。
「あれだけ苦労させておいてそれだけかよ!?え?なんか凄くいいもんくれてバチは当たらないだろ!?」
キレて本に向かって叫ぶ。叫ばずにはいられない。
しかし叫んだところで何かが変わるわけじゃない。
そうだな、これは俺に課せられた迷惑な試練だという事で最終的に納得しておこう。
いや、納得しておかなければならない。下手に納得しないままだと、更に何があるやら…。
さて、食物を食し続けていることにより、変わった事がいくつかある。
まず一つ。あゆが水瀬家で暮らすようになったということだ。
長きにわたり眠り姫を演じ続けていた彼女がプリンによって目覚めたのだ。
実は今まで商店街だので会っていたあゆは“ゴースト〜雪降る街の幻〜”であって…
「って、まあいいか、細かいことは」
これ以上楽屋的なことは言ってはならない。
それに何より、秋子さんにこの事を話した時…

「大丈夫なんですか?真琴も居るのに…」
「シナリオを考えると無理があるかもしれませんが、二次創作の設定だと考えれば大丈夫ですよ。
ただ問題なのは、この設定に拒絶感がある人で…」
家がどうとか部屋が食事がどうとかより、ずばり楽屋的な事を秋子さんは話し始めた。
果たしていいのだろうか、そんな動機で…。
「了承」
「は、はあ…」

…というわけなのだ。まったく秋子さんにはかなわない。
ともかく秋子さんが“了承”と言うからにはきっと大丈夫なのだろう。
いや、大丈夫だということにしておかなければ。
ちなみにあゆが寝ているのは真琴と同じ部屋だとか。
時に引越しをして名雪と一緒になったりするらしい。
まぁその辺は3人で調整することだろう。間違っても俺の部屋にきてもらっては困るがな。
…最近無理に納得してる場面が増えてきた気がする。
さてもう一つ、変わったことといえば…。
「それにしても祐一、ますますイッキが増えるね」
「どうしてだ」
「だってお母さんの1upプディングを食べたでしょ?」
「ああ」
「1upってことは、シューティングゲーム的言い方をすると、1機増えたってことじゃない」
「ああ」
「つまりはいっき増えた。イッキが増えた、ということだよっ」
「………」
名雪の言うことはおおよそ当たっている。
実際、俺のイッキをする機会はかなり多くなっている。
それもこれも栞が言い出したことなんだが…。
「将来大丈夫かな、俺…」
イッキの祐一、なんて肩書きがついたら嫌すぎる。
「祐一」
「なんだよ」
「ふぁいとっ、だよ」
いつもどおりの笑顔を見せる名雪。
そうだな、頑張らなきゃな。
たとえいっきしてくださいなどといわれても、
もう無理に料理を食さなければならないことはないはずなのだから…。

<THE SECOND STORY …FIN>


後書き:ようやく終わりました。SECOND STORY。
全部で…って、数なんて数えたくも無いな。
真面目なものからふざけたものから投げたものまで様々でしたが、まあなんとか終わりです。
しっかし書くの大変でした。が…これだけ食物があるゲームというのも珍しいですね(笑)
実は更に薬系のアイテムもあるので、栞中心の話も作ってみようかと思いましたが…。
ま、そういうのはまたの機会に気がむいたら。
ところで、ラーメンとかカレーとかが無いのはちょっと不満です(笑)