「奇想天外妖怪道中」


「暗黒の炎!」
ぼわっ!
「おおっと!」
黒天狗の炎をかわす翔子。
忍者の素早さがあるからこそだ。
「おのれ・・・・ならばこれでどうだ!暗黒の水!!」
今度は真っ黒な水を大量に噴出した!
「わぁっ!?」
べちゃっ
思いっきり水をかぶる翔子。しかし体に別状はない。
「なんだこれは・・・別に痛くもなんとも・・・うわわっ!?」
水が体にまとわりついてどんどん重くなっていく!
「くそっ・・・動けない・・・」
「いくら素早くて動けなければ意味があるまい。勝負あったな・・・」

「やばいぞ!なんとかしなきゃ!」
「では・・・僕のからくりを使いましょうか!」
そう言うと乎一郎は小さな筒を取り出した。
「なんだそれは?」
「使い方は簡単、手にはめるだけです」
筒を手にはめる乎一郎。
「てやっ!!」
どぉん!!
「いっ!?」
なんと筒からなにか衝撃波のようなものが出て、翔子にまとわりつく水を一掃した!
「名付けて『からくり砲』です!」
「これってつまりドラ○もんの空○砲・・・・」
「似てるだけです。それよりもう一発!」
ドォン!
「ぐはっ!」
黒天狗を直撃した衝撃波は確かなダメージを与えた!
「やるな乎一郎・・・」

「翔子さん、大丈夫ですか?」
「ああ、まさか遠藤に助けられるとはね」
無事だったことでほっとするシャオ。
しかし!
「くっ・・・いささか貴様らを侮っていたらしい。
ならば儂もとっておきをだしてやる!」
黒天狗がなにか大きく力を入れ始めた!
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
「な・・・なんだ!?」
ぼこっ!
「え!?」
ばきっ!
「げーっ!!」
なんと黒天狗の細かった全身が筋肉につつまれた!
一言で言うとマッチョになった。
「うわ・・・・」
「こりゃ・・・またごっついな」
淡々と言い放つ染五郎。筋肉のせいで黒天狗は全体的に体が大きくなってる。
「ふふふ・・・・儂の得意分野は妖術で格闘は駄目だとでも思ったか?
甘いわ。妖術を使えばこれくらいはたやすいわい!」
「ちっ!」
翔子がくないを投げつける!
が、硬い筋肉には刺さらず落ちてしまう。
「くそっ・・・・」
「儂の力を見せてやる!」
ドォン!
足踏みするだけで床が揺れる!
「わわわっ!」
「いくぞ!暗黒の炎!」
ぼわぁっ!
先ほどは手先から炎を発していたが、今度は体全体から発している!
当然炎も大きくなる。
「ひぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
慌ててよける太助達。
「くそっ!こりゃ長引くと不利だ!一気にやっつけよう!」
「ならば・・・電撃の札!」
出雲の札が黒天狗を襲う!が、
「ふん、妖術使いの儂にこんなものが効くとでも・・・」
バリバリバリ!
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「出雲!!」
電撃を跳ね返され、逆にダメージを負ってしまった!
「調子のんじゃないわよ!」
突撃する阿修羅!しかし
「ぐっ・・・・そんな、あたしが力負けしてる・・・・・?」
かなりの怪力を誇る阿修羅のパンチを止められている。
「ふんっ!」
「きゃぁっ!!」
結局返り討ちにされる阿修羅。
「そんな・・・阿修羅でも!?」
「くそぉぉぉ、こうなったら全員突撃だぁ!!」
たかしの一声でメンバー全員で一斉に攻撃をかける!
「愚か者め・・・・暗黒の風!」
風が集まり、小さな竜巻となり、たちどころに全てのメンバーを巻き込む!
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
吹き飛ばされ、壁や床に叩きつけられる。
「ぐっ・・・・・」
全員ダウン寸前。
「最後はこの技できめてやる・・・・暗黒の土!」
なにやら長い呪文を唱える黒天狗。
すると
「なんだ!?」
「土が・・・」
床から這い出してきた土が足元から体を包んでいく。
「このままいくと全身土に埋まって・・・・」
「あーん!そんなのいやぁぁぁぁぁぁ!!」
「くっ・・・・」
土はどんどん体を包んでいく。
そろそろ下半身が完全に土に埋まる。
「もはやこれまでだな、お前達」
「ちくしょう・・・・・」
どうすることも出来ず、刀を握りしめる太助・・・・刀?
(そうだ!魔封刀がある!阿修羅の時みたいに力を発揮してくれればまだチャンスは・・・)
「おっと!」
ドガッ!
「うあっ!」
手を攻撃され刀を落とす太助。
「知っておるぞ・・・この刀には何か特別な力があるのだろう?使わせはせん」
「くっそぉ・・・・知ってたのか・・・・・」
下半身が動けないため落ちた魔封刀を拾えない!

「そんな・・・・もうだめか・・・」
「いや・・・まだよ」
そう言った涼の背中には14号が。戦えない涼が気絶中の14号を背負って下がっていたのだ。
そしてよく見ると14号は土の浸食を受けていない!
この技は地に足をつけている者にしか効果がないのである。
「こいつが起きてくれれば・・・・」
「でも爆睡してますよぉ」
「ええぃ、起きんかい!」
しかし目覚める気配はない。
「しょうがない。ここはあたしが・・・」
涼が後ろを向いて14号の耳元まで顔を近づける。

「お・き・て(はあと)」

「ぬあっ!?」
「よぅし、起きたわね」
「な、なんすか今のはぁ!?」
「10万年も女やってればこんな声も出せるのよ」
周りで聞いていた他のメンバーも同じ気持ちだった。
文章では表現しきれないほどの色っぽい台詞。こんなことを耳元で囁かれたら起きるに決まってる。
「恐るべし10万年・・・・」
女として少し敗北感を感じる阿修羅であった・・・

「ほないくでぇ、桜吹雪!」
どこから取り出したのか、(芸人のたしなみらしい)紙吹雪をまいて傘で風を起こす染五郎。
たちまち紙吹雪が黒天狗を包む。
「辞世の句ならぬ辞世の芸か?くく・・・」
「いまやで!」
その言葉に阿修羅が反応した。
「奥義、亡者の手!」
すると壁、床、天井から無数の手が生えて黒天狗を押さえつけた!
「なにっ!?」

「これって阿修羅の砦にあった・・・・」
「そう、あんた達を捕まえた手よ。あれあたしの術なのよ。
この技発動に時間かかるし、捕まえることは出来ても攻撃出来ないから実戦には向かないんだけどね」
「桜吹雪は時間稼ぎと相手を油断させるためかいな・・・・」
「さぁ14号!今のうちに刀を拾って太助に渡して!空飛べるあんたなら出来るでしょ!」
「はい!」

「これは・・・」
立ち位置が離れているため涼達のやりとりを知らない太助は驚いていた。
「太助さん!刀です!」
「14号!?・・・あ、ありがとう」
太助の手に魔封刀が戻ったその時!
「させるかぁ!」
黒天狗が亡者の手を振り切って太助に襲いかかろうとする!
「うわぁ!」
「来々北斗七星!」
ドンッ!
「太助様には怪我させない・・・」
シャオの星神が間一髪防いでくれる。
いや、シャオだけではない。
「たー様早く!」
「我々が押さえているから・・・」
全員が黒天狗に攻撃をしかける。 ダメージにこそならないが、押さえるにはじゅうぶんだ。
「みんな・・・・・くっ、魔封刀!頼む力貸してくれ!!」

ドガァン!!
その瞬間、太助の体に付いていた土が弾けとんだ。
「しまったぁ!!」
驚愕する黒天狗。
魔封刀が輝いている。阿修羅の時、いやそれ以上に。
「いくぞ・・・黒天狗!」
太助が魔封刀を構えて黒天狗に突っ込む!
「おのれぇ!!」
黒天狗もパンチをたたき込む!
ずばぁっ!!
「ぐぉぉぉぉぉ!!」
黒天狗の硬い筋肉に魔封刀が傷をつける!
「馬鹿な・・・妖術で強化した儂の肉体がぁぁ・・・」
「まだまだぁ!!」
ズババッ!!
「ぐあああああああ!!」
またも黒天狗の体に傷がつく。
(そんな・・・魔封刀の力がこれほどとは・・・・こうなったらしかたがない・・・)
「ま、参った!儂の負けだ!他の者の暗黒の土を消すから!」
すぐさま他のメンバーの土も剥がれ落ちていった。
「なんだ・・・あっさり降参しちゃった・・・・」
そこへシャオが近寄る。
「太助様大丈夫ですか!?」
「ああ、俺はなんともないよ」
その時!
ガシッ!
「きゃぁっ!?」
「シャオ!?」
「ふはははは!!これでどうだ!」
シャオが黒天狗の手に捕まってしまった!
「使い古された作戦だが・・・一歩でも動くと、この娘をこのまま握りつぶす!」
そう言ってシャオを握る手に少し力を入れる。
「うぅっ・・・」
思わず声が出てしまうシャオ。
「しまった・・・・」
「さぁ・・・まずは刀を捨ててもらおうか」
「ちっ・・・・」
カラン・・・
「太助様・・・」
やむなく魔封刀を自ら放る太助。
「他の者も動くなよ・・・・」
そう言って太助に近付く黒天狗。
もう片方の手を太助を叩きつぶそうと振り上げる!

ズバッ!
「え・・・・・・・・」
その時、シャオを掴んでいた手が切り落とされた。
すぐさま脱出するシャオ。
「ぐおぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
切り口から大量の血を吹きだし苦しむ黒天狗。
「誰じゃ!儂の手を切り落としたのはぁ!!」
「追いつめられたとはいえ人質とは武人のすることではないぞ・・・」
「その声は・・・・」
それは太助達にも聞き覚えのある声だった。

「ドクロ将軍!!」

「何故組織から姿を消したはずのお前がここに・・・」
「そんなことより・・・そっちの相手をしてやったらどうだ?」
「え・・・・」
後ろを振り向くと魔封刀を構えて黒天狗を睨み付ける太助の姿があった。
「黒天狗・・・さすがの俺も本気で怒ったぞ・・・」
「ま、待って・・・!」
ズバァッ!!
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
縦に真っ二つに切り裂かれ、黒天狗は絶命した・・・・

「助かったよ、ドクロ将軍」
「ありがとうございます」
お礼を言う太助達。
「勘違いするな、助けたわけではない。儂は以前の決着をつけにきたのだ」
「へ?」
「かなり腕をあげた様子・・・今のお主なら儂の剣の修行の相手になるじゃろう・・・
太助!お主も武人なら正々堂々勝負せよ!!」
「えええええええ!!」

「やっと黒天狗倒したと思ったら今度はドクロ将軍か・・・」
「しかも1対1で勝負だなんて・・・」
「大丈夫、金剛は誇り高いから卑怯な手段は使わないはずよ」
「やるしかないのね・・・・」
黒天狗戦の傷を回復していざドクロ将軍と向き合う太助。
「わざわざ回復するまで待ってくれるとはね・・・」
「条件は同じだ・・・これで言い訳はきかんぞ・・・いざ!」

「さぁ・・・かかってくるがよい」
「・・・・・・」
太助。ドクロ将軍。両者はにらみ合ったまま動かない。
「どうしたの?戦わないの?」
「いや、ありゃうごけへんねん。下手に動いたら自分がやられる。
せやからじっと隙が出来るのをまっとるんや」
「そう、俺と染五郎が戦った時と同じ・・・レベルの近い者同士の戦いだ」
「戦いのレベル自体はすごい差ですけどね」
「そうやな、わいらの方がもっとすごかったっちゅうねん」
「馬鹿にされてんだよ。染五郎・・・」

「「・・・・・・・・・・」」
動かない(動けない)太助とドクロ将軍。
(駄目だ・・・・正面からまともに突っ込んで勝てる相手じゃない・・・・)
(全体的に隙がなくなっている。迂闊に斬り合えばこっちも無傷ではすまん・・・)

「これは最初の一撃を決めたほうが勝ちますね。
決着は案外あっさりつくかもしれません」
「太助様・・・・」

そしてその時は来た!
「でぇぇぇぇぇぇえい!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
二人同時に斬りかかっていった!
ズバッ!

「くっ・・・・・」
「ふっ・・・・」
太助の左肩から血が出ている。
「一瞬だけ・・・・遅かったか・・・・」
ドクロ将軍の左肩は鎧を切り裂かれ、刀が中の骨まで届いていた。
「肉を斬らせて骨を断つ・・・なんてな」
「ふっ・・・・」
刀を降ろすドクロ将軍。太助の左肩はわずかに斬られただけですんだ。
「見事で・・・あった・・・・」
「いや、俺はまだまだ・・・力ならあんたのほうが上だろ」
「剣とは力だけの勝負ではない・・・・儂はあの一撃でお主を倒すつもりだった・・・
だがそちらの剣の方が一瞬早く儂の左肩を斬った。
お主の勝ちだ・・・」
「ドクロ将軍・・・」
「儂は修行を続けるとしよう。お主の武運を祈ってるぞ・・・」
そう言ってドクロ将軍は静かに去っていった・・・

「太助様!」
「大丈夫。血は出たけどなんとかなるよ」
「心配・・・したんですよ・・・」
「シャオ・・・・」
「たー様ぁん!あたしも心配しちゃったぁん!」
「せんぱぁぁぁぁい!!」
「どわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
一気に緊張のとける面々。
「とにかくさ・・・・鳳凰の待つ頂上にいきましょ」
長かった連戦を終え、再び鳳凰の捜索が再開する。

塔の頂上までやってきた太助達。
「長かったなぁ・・・ここまで」
「ほんと、塔一つで随分引っ張ったわね」
「おいおい・・・」
そして一つの扉が視界に入る。
「ここが封印の間よ・・・」

「これが・・・・鳳凰!」
部屋の中には巨大な球体があり、中に巨大な鳥が入っていた。
「あとは鳳凰を起こすだけよ・・・」
「ど、どうやって!?」
「専用の笛があるの、それを吹けば・・・」
「じゃその役目あたしがやりまーす!」
(伝説の鳥を笛で呼び出す・・・それってすっごくロマンチック・・・)
夢見心地の花織。
「笛はこれなんだけど・・・・」
「はいはーい・・・・・・え?」
縦笛。
「・・・・・・これ?」
「・・・・・・これ」
間。
「なんでぇ!?普通こういうのって横笛でしょぉ!!
なんで縦笛なのよぉ!」
「そんなこといったってこれでないと鳳凰は起きないんだから!
文句言わずに吹いて!!」
「わかったわよ・・・吹くわよ・・・」
笛を手に取る花織。
「なんかどう見ても音楽の時間の笛のテストにしか見えないんだけど・・・・」
「いいから吹いて!」
「くすん・・・ロマンチックじゃない・・・」
ピー・・・・・・

ゴゴゴゴ・・・
「な、何?」
「ちょっと!塔にひびが入ってるわよ!」
「つまり・・・崩れるんですかぁ!?」
バリバリバリ!
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ボスッ
「えっ?」
「これは・・・・」
いつの間にかメンバーは空に浮いていた。
いや正確には巨大な鳥の背中に乗っていた。
空の上から崩れた塔が見える。
太助達は復活した鳳凰に乗っているのだ!!
「これが・・・・・鳳凰なのか!?すげぇ・・・・」
実際に間近で見ると凄まじいスケールだ。

「これで皇鬼打倒に一歩近付いたわね」
鳳凰の背中の上で涼が会話を始める。
「そうだね。あとは・・・なんだっけ?」
「天神の鎧よ。それがあれば皇鬼を倒せる・・・」
「どこにあるんですか?その天神の鎧は」
「うん、天神の鎧はね・・・・」
カッ!
その時一瞬の閃光が襲った。

「なんだぁ・・・今のは・・・」
「あ・・・あれは!」
「ん・・・・・・・げ!!」
鳳凰の背中の上に現れたのは、
『ひさしぶりだな・・・・お前達・・・・』
紛れもなく皇鬼だった!!

「皇鬼様ぁん!!わざわざ会いにきてくださったのねぇ!!」
速攻で抱きつこうとする阿修羅。が、
すかっ
ズザザァッ!
「あれ?」
皇鬼の体を阿修羅がすり抜ける。阿修羅は勢いで倒れてしまう。
『安心しろ。これは幻影だ。それよりこれを見ろ』
「ああっ!!」
それは小さな玉だったが、なんとその中に涼が映っている!
「そういやさっきから涼ちゃんがいない!!」
『この玉の中に閉じこめてやった。助けるにはこの玉を割るしかない』
「なんだって!?」
『返して欲しければ鬼神城へ来い!来なければこの女は殺す!』
「なにーっ!!」
『鬼神城はここから東の怨念島にある。待っているぞ・・・』
そう言って皇鬼は消えていった・・・・

「くっ・・・・どうやら天神の鎧を探す時間はないようね・・・」
「こ、このまま行くのか!?」
「しかたないよ・・・涼ちゃんをほってはおけない・・・」
「やれるだけのことはやってみましょう・・・」

その時、阿修羅が動いた。
「皇鬼・・・様・・・・」
「ん?」
「あたしよりあの亀女の方がいいっていうのぉぉぉぉぉぉぉ!!!!?????」

ズデェン!
「阿修羅・・・論点が違うぞ・・・・」
「どうしよう・・・今は敵同士でももしあの子がその気になっちゃったら!
もしあの声で迫られたら皇鬼様だって・・・・」
そう、14号を起こす時に使ったあの声。
あの声は想像できないほど色っぽく聞くだけで参ってしまう。
10万年女やってるからこその芸当か。
180歳の阿修羅は経験では絶対にかなわない。
「いや、それどころか、皇鬼様が世界征服しちゃったらあの子が皇鬼様の妻に・・・
それだけは絶対にイヤ!!」
阿修羅の頭脳がフル回転する。

皇鬼負ける、皇鬼落ち込む、そこに優しく手をさしのべる阿修羅、
感動する皇鬼、抱きしめ会う二人、そして二人は・・・

阿修羅の考えはまとまった。

「いくのよ鳳凰!鬼神城へ!!」
「お前はそれしかないんかぁぁぁぁぁぁ!!」
阿修羅の思惑はさておき、鳳凰は東に向かって飛び立った!

一行は鬼神城へと向かうのであった・・・


染五郎の「これがわいの芸人仲間や!」

わいは「染五郎」!世界を股にかける天下一の芸人や!
傘を回したらわいの右に出るヤツなんかおらへんで!!
・・・と、ついこの間までは思うとった。
ところがわいを越える傘の達人が現れよった!
その名も「野村たかし」!わいと耐久傘回しで勝負して勝った男や!
せやけどあれからわいとたかしは魂の友情で結ばれたんや!
やっぱ本気で戦った者同士、通じ合うものがあったんやな。
ほんま、ごっつい男やで。いつかまた勝負しよな!

他にもいろんなヤツがおるで。
なんやごっつモテモテの「太助」
かわいいんやけどかなりの天然「シャオちゃん」
派手なお姉さんの「ルーアンさん」
意外に照れ屋な「キリュウちゃん」
猫好きにはたまらん格好の「花織ちゃん」
ごっつい毒舌の「ヨウメイちゃん」
気取った二枚目の「出雲」
からくりでいろいろ出来る「乎一郎」
ちっちゃくてかわいい「離珠ちゃん」
つんとした所がまた魅力な「翔子ちゃん」
とにかくネタには事欠かない「涼ちゃん」
真面目すぎていまいちおもんない「14号」
怪力、6本の腕、三身の術とええネタ持ってる「阿修羅」

「おい!なんだこのタイトル、『芸人仲間』って!?」
「だってこんなに個性的でおもろい連中揃ってるんやで!
わいら芸人として営業したら絶対儲かるで!!」
「俺達は芸人じゃなーーーーい!!」

そして彼はのたもうた 四
『染五郎の営業』

道楽町に行った時やったな。
あそこはいろんな店があって活気のある町やった。
これは稼ぎ時や!
そう思てな、早速営業を開始したんや。

わいとたかしの耐久傘回しを披露したんや!
たかしに話したら快く協力してくれたで。
「俺達良きライバル同士。お互い全力でやろうぜ」って。
くぅぅぅぅぅ。お前めっちゃええ奴やな!
終わったら儲けた金で二人でなんか食いに行こか!
そう決めてわいらは傘を回し始めた。

わいはたかしと再戦出来る。
おまけにそれで金も儲かる。
一石二鳥でめちゃめちゃおいしいで、これは!!

最初は誰も見てくれへんかった。
まぁ、初めはこんなもんや。
時間経ったら金入ってくるやろ。

と、その時やった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
いきなり悲鳴聞こえてきて客みんな逃げてしもた。
「邪灯団の妖怪が攻めてきたぞー!!」

なんやてーーーーーーー!!!!
予想外の事態にわいはもうびっくりや!
妖怪はすぐに倒されたけど、
おかげでたかしとの再戦は中断。
一銭も儲からず、骨折り損のくたびれ儲けやった・・・

邪灯団!なんでこんな時に来んねん!
めちゃめちゃ間悪いっちゅうねん!!
恨むで、ほんま・・・


怨念島に向かって飛び続ける鳳凰。
背中には太助達を乗せて。
「このへんだと思うんだけど・・・・」
「あっ!あれ見て下さい!」
一部だけ空間が歪んでいる。
空も海も大地もごっちゃになってわけわかんなくなっている。
「怨念島は皇鬼様が歪めた空間に包まれ、誰も入れないようになってるの。
これを突き抜けないと鬼神城には行けないわ・・・」
「どうやって入るんですか!?」
「バカねぇ、なんのために鳳凰復活させたのよ」
バリバリバリ!!
空間の歪みを消し去り、通過していく鳳凰。
「鳳凰が必要なわけ・・・わかったでしょ?」
「はい・・・・」

東の遠い沖合いに点在する怨念島。
いつも暗雲がかかっており、近付く者は誰一人としていない。
ここに邪灯団の総本部、鬼神城が存在する。
「あれが鬼神城よ・・・懐かしいわぁ・・・」
空から鬼神城を眺め、感慨深くする阿修羅。
「少し離れたところに降りましょう。近すぎると攻撃されます」
「愛原、鳳凰を降ろしてくれ」
「うん・・・でもこの笛なんだかねぇ・・・」
縦笛を吹き、鳳凰を降ろす花織。

鳳凰から降りた後、鬼神城の前まで歩くメンバー達。
「うへぇ・・・でっかいなぁ・・・・」
巨大な要塞を前に驚くたかし。
その時
「・・・・・・!」
阿修羅の足が止まった。
「どしたの?さっきまでやる気だったのに」
ルーアンが気になり話しかける。
「そういえば・・・・あいつがいるんだわ」
「あいつって?」
「邪灯団最後の幹部・・・・・亡鬼(ぼうき)!!」
「え・・・まだ幹部がいんの?」
「亡鬼のことはよくわからないわ。あいつは邪灯団でも謎の存在だから・・・
実際あたしも会ったことはないの」
「もしかしてこの城の中にいるの?」
「たぶん・・・・」
そうこうしているうちに鬼神城の入り口までやってきた。
「みんな・・・・いくぞ!」

「いやに静かだな・・・・」
鬼神城に突入したもののやけに静かである。
「敵の本拠地がこんなに静かでいいのか・・・・・」
難なく奥へと進んでいく。
「階段だ・・・・」
上へと続く階段を目にするメンバー。
「皇鬼様はこの最上階にいるはずよ」
「ってことは・・・ここを登るのか・・・・」

階段を登った先は小さな部屋だった。反対側に扉がある。
しかし扉は厳重に封印されている。
そしてなにより問題なのは部屋の中にいる一人の鬼・・・・・
「来たか・・・・・・」
「こ・・・・こいつは・・・・・」
「俺は氷鬼。亡鬼様の命令でここを守っている」
そう言って氷鬼はゆっくりと立ち上がった。
「この扉を開けるには・・・俺を倒すしかないぞ・・・」
そしてゆっくりと手を前に突き出した。
「死の吹雪!」
ごぉぉぉぉぉぉ!
とたんに猛吹雪が太助達を襲う!
「くっ・・・・・・」
「ここはわいにまかせぃ!」
染五郎が前に出た!
「芸人のわいは「寒い」っちゅうんはごっつ嫌いやねん。
わいがこの寒い奴片づけたる!」
「よし!手を貸すぜ染五郎!」
たかしも一緒に前に出る。
「ふん・・・どうするというのかな?」
「いくでぇ!」
染五郎は傘を回して風を起こした!
とたんに寒さが和らいでいく。
「ほほぉ・・・風で吹雪を消しているのか・・・しかしそれでは解決にならんぞ」
「そこで俺の出番なわけだな!」
たかしが傘を回し、火を飛ばす!
「何!?」
火は風の勢いではげしく燃え上がる!
火は酸素を吸うとよけい燃えるのだから当然なのだが・・・・・
ボワッ!
「ぐぉぉぉぉぉぉぉ!!」
氷鬼に大ダメージを与える!
「よっしゃ!とどめや!」
「おお!」
すかさず傘で攻撃する二人。忘れてるかもしれないが二人の傘は槍にもなる。
グサッ!
「ぐぉぉぉぉぉぉ・・・・・・」
バタッ
二人の見事な協力攻撃で氷鬼は倒された。
その瞬間、扉の封印が解け、自動的に開いた。
「やっぱり簡単には通してくれないか・・・・・」
この先まだまだ強敵が待ちかまえていることを予感して
メンバーは上の階へと上がった・・・

氷鬼を倒し、扉の向こうの階段を登るメンバー達。
すると氷鬼がいたのと同じような部屋にたどり着く。
「氷鬼はやられたか・・・だが今度はこの食鬼が相手だ!」
また新たな鬼が現れた。今度は食鬼。
「あんな奴さっさと倒して・・・てやっ!」
手裏剣を投げつける翔子。しかし
ぱくっ
「うむ。なかなか美味だな」
「げ?」
なんと大きく口を開けて手裏剣を食べてしまった!
「さぁどんどん攻撃してこいよ、全部食べてやるからよ・・・」
「くそっ・・・・」
「いい食べっぷりですね」
「ヨウメイ・・・言ってる場合か・・・」
「おのれ!万象大乱!」
キリュウが大きくしたもので攻撃する。が
ぱっくん
「うむ、量があって食べ応えあるな」
「底なしかあいつ・・・・」
食鬼の食べる量に制限はないらしい。
「陽天心召来!」
ぱっくん
「爆炎の札!」
ぱっくん
どんな攻撃をしても結果は同じ。
「直接叩くしかないのかしら・・・」
「でもそしたら自分が食われそうだよ・・・・」
どうにも手がないまま時間が過ぎる。
「もう終わりか?じゃお前らを食ってやる!」
食鬼は大きく口を開けて吸い込み始めた!
「うわわっ!」
瓠瓜にも劣らない強力な吸引力!
「くそっ・・・・食われてたまるか・・・」
必死にふんばるメンバー達。しかし!
「あっ、あらぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」
「ヨウメイ!」
ぱっくん

「ぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!」
まっすぐ食道を落ちていくヨウメイ。
「ひ、飛翔球!」
ぽんっ
寸前で空を飛んで助かるヨウメイ。下には溶岩にも見える胃液がたまっている。
「食べ物を大切にするのはいいんですが・・・私を食べるとはいい度胸してますね!」
ヨウメイ、かなりお怒りの様子。
「来たれ大津波!」
ここは腹の中、ここで大津波なんか呼ぶと・・・・

ぐるるるる
「うお!?は、腹がいてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
いきなり腹を下す食鬼、苦しさのあまりうずくまる
「?チャンスだ、今のうちに!」
食鬼に斬りかかる太助!
「てゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ズバァッ!
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
真っ二つにされた食鬼・・・
「勝った・・・けど、ヨウメイが・・・」
「生きてますよ!」
「へ!?」
よく見ると小さくなったヨウメイが・・・・
しゅぅぅぅぅぅぅ・・・・
大きくなって元の大きさに戻った。
食われた時に小さくなっていたのが戻ったのである。
「ふぅ・・・危なかったですね、さぁ次行きましょう!」
「お、おぅ・・・」

次の部屋にやってきた太助達。
「ふふん・・・次はこの念鬼が相手だ・・・」
前の二人に比べれば随分と小柄な鬼。
見た目には弱そうである。
「油断するな・・・こういうのが案外強いから・・・」
「わかってるわよたー様!陽天心召来!」
ドガッ!
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
どたっ
「あれ?」
いとも簡単に吹っ飛ばされる念鬼。
「もしかしてほんとに弱い?」
呆気にとられるルーアン。
「なぁんだ心配することなかったじゃない!陽天心召来!」
ルーアンは調子づいて念鬼を攻撃しまくる。
「おかしいわね・・・仮にもここの守りなのにこんなに弱いはずが・・・・」
考え込む阿修羅。
「きゅー・・・・・・」
「あらあらもうおしまぁい?」
余裕のルーアン。
「まったく張り合いないわねぇ、最初見た時小さかったから巨大化でもするのかと思ったわ」
その時
ムクムクムク・・・・
「い!?」
念鬼の体が大きくなり始めた!
「うそぉん!?」
ぶんっ!
「きゃぁっ!」
念鬼のパンチをくらい、吹っ飛ぶルーアン。
「ああ・・・やっぱり世の中甘くなかった・・・」
と、太助の一言。
「ちっ・・・ひとまず間合いをとったほうがよさそうね!」
念鬼から離れるルーアン。
「ふふ。飛び道具でもないかぎり攻撃出来ないはず・・・」
バリバリバリ・・・・
「え?」
ドカーン!
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
念鬼の手から放たれた光弾に直撃するルーアン。
「いたた・・・・こうなったらやられる前にやる!陽天心召来!」
大勢の陽天心を呼び出すルーアン!
「これだけの数はさすがに相手できないでしょ!?」
ドンッ!バキバキッ!バコォン!
「・・・・そんな・・・・」
目にも止まらぬ早業で陽天心を全て片づけた念鬼。
「いったいどうして・・・・」
その時乎一郎が何かに気付いた!
「そうか!あいつはルーアン先生の考えを読んでいる!
そしてそれを実体化出来るんだ!」
「なんだって!?」
「相手が強くなる想像をしたらその通りになっちゃうんです!」
「それじゃ・・・ルーアン!もう余計なことは考えるな!」
ムクムクムク・・・
「考えるなと言われると余計に考えちゃうわよ・・・・」
段々わけがわからないくらいすごくなる念鬼。
「今更気付いても手遅れだ!自分で考えた敵に倒されてしまえ!」
ルーアンを追いつめる念鬼。
「どうしよう・・・どうしよう・・・・」
ぐーーーーーー・・・
「・・・・お腹減った・・・」
ずるっ
「ルーアンこんな時に何考えてんだ!」
「だってぇ・・・・ああ・・・いずピーのお饅頭食べたい・・・」
ぽん
「え?」
その時念鬼の頭の一部が饅頭に変わった。
「お寿司、ラーメン、うどん、お好み焼き、牛丼、カレー、たこ焼き、ハンバーガー、
親子丼、ステーキ、ポテト、サンドイッチ、チーズ、シチュー、ボルシチ、
アイスクリーム、大福、チョコレート、クッキー、パフェ、アップルパイ、ミートボール、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
エビフライ、うなぎの蒲焼き、カツ丼、天ぷら、スイカ、メロン、リンゴ、みかん、
ざるそば、素麺、苺、梨、葡萄、ケーキ、麻婆豆腐、餃子、シュウマイ、肉じゃが、
プリン、おでん、すき焼き、お雑煮、ゼリー、チャーハン、卵焼き、お団子、ピザ、
食べたぁぁぁぁぁぁぁい・・・・・・・」
「ひぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
いつの間にか念鬼は全身食べ物の固まりになっていた。
全てルーアンの考えたものである。
「ルーアン先生今です!そのまま食べるんです!」
「あらおいしそう・・・・いっただっきまーす!!」
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「ふー。ルーちゃん幸せぇ」
「さすがルーアン先生!敵の能力を見事に逆手に取りましたね」
喜んでるのは二人だけ。
あとは全員呆れているだけだった・・・
「鬼を食った精霊なんてルーアンさんくらいでしょうね・・・」
「あんなによく食ったな・・・ルーアン・・・」

「なかなかやるな・・・次はこの睡鬼が相手だ!」
次の部屋で早速亡鬼の配下と対峙するメンバー達。
「いくぞぉ!」
早速睡鬼の攻撃!
ぱたん
「お休み」
だぁぁぁぁぁぁ!!
いきなり睡鬼は眠ってしまった。枕を抱いて寝るあたり、ちょっと可愛くも見える。
「なんなんだこいつは・・・・」
と思った矢先!
むくっ
「!起きた!?」
いや、起きあがっただけで実際は眠っている。軽くいびきをかいている。
「ぐー・・・・・・」
「ふざけてるんでしょうか・・・えぇい!」
睡鬼に突撃する花織!
バキッ!
「きゃっ!」
突然枕ではたかれて吹っ飛ばされる花織。
「花織さん!来々車騎!」
ドォン!
シャオの星神攻撃をふらふらとした足取りで簡単にかわしていく。
「寝相で攻撃や回避をするとは・・・・恐るべし・・・・」
「でもこれじゃ戦いにくいなぁ・・・なにしろ相手の動きがまったく読めない・・・」
そりゃ眠ってるんだからなぁ。
「こうなったら・・・出雲さん、ぼそぼそ・・・」
「いいんですか?」
「やってください」
「知りませんよ・・・睡眠の札!」
バシッ
「うっ!」
ぱたん
「すーーーーーーー・・・・・・」
「ヨウメイさん、キリュウさんを眠らせてどうするつもりですか・・・」
「みなさん離れましょう。巻き添えくらっても知りませんよ」

メンバーは一旦後ろに退いて、残ったのは眠っているキリュウ。
「ぐー・・・・・・・」
「すー・・・・・・」
互いに眠ったままの睡鬼とキリュウ。
なんだか奇妙な光景である。
「ぐー・・・・・・」
突然睡鬼が飛びかかった!
ガッ!
それを受け止め逆に投げ飛ばすキリュウ!
すたっ
そして受け身をとって地面に着地する睡鬼!
そのままキックをお見舞いする!
さっ!
なんと素早くキックをかわして飛び上がるキリュウ!
しかし睡鬼は再び飛び上がり、空中のキリュウに飛びかかる!
バキッ!
なんとキリュウは空中でキックをお見舞いし、睡鬼を蹴り落とす!
華麗に着地するキリュウ。睡鬼もすぐに体勢を立て直す。
互いに向かい合うキリュウと睡鬼。
「ぐー・・・・」
「すー・・・・」

「あいつらほんとに寝てるのか?」
ものすごいレベルの高い戦いにちょっと疑問のわく太助・・・

「ぐー・・・」
「すー・・・」
ドカッ!バキバキッ!
ビシッ!バコォーン!!
激しいパンチやキックの応酬となる二人の戦い。
眠っていて緊張感のない顔を除けばすごい戦いだ。
二人の勝負は互角だった。このままでは決着がつかないようにも思えた。

しかし、決着は意外なカタチで訪れた。
「う・・・うーん・・・」
睡鬼が目を覚ましたのである。
「あ、あれ?まだ終わってない?いつも起きたら勝ってるのに・・・」
一方のキリュウは眠ったまま・・・
「すー・・・」
バキッ!
「あれぇぇぇぇぇ・・・・・・」
睡鬼は、起きたらてんで弱かった・・・・

「うーん・・・私は何を・・・」
「お前の勝ちだ。キリュウ」
「は?」
「すごいです師匠!寝ながらも自らを鍛えてらっしゃるんですね!感激しました!」
14号、それは買いかぶりすぎのような・・・


戻る