「奇想天外妖怪道中」


怪奇村で涼に報告を済ませる太助達。
「これは美しいお方、是非私と・・・」
「初対面の亀女をナンパするんじゃない!」
どごっ!
ルーアンの突っ込み出雲に炸裂。
「翔子さん達は?」
「まだ帰ってきてないのよ」
「どうしたのかなぁ・・・」
そこで涼が口を出す。
「玄武村に行ってみたら?」
「んー・・・じゃそうしようか・・・・」
「じゃ涼さん。私達玄武村に行って来ます」
そう言って太助達は村を出た。

「・・・さて・・・私達も準備しなきゃね・・・」
そう言って涼は真剣な目つきになる。
「風神雷神といえば邪灯団の強力な妖怪。そいつらを倒したとなると・・・
そろそろやつらも本気になるわ・・・」

阿修羅の砦
「申し訳ありません・・・阿修羅様・・・」
「我ら兄弟にもう一度機会を!今度こそやつらを倒して・・・」
「うるさいわね・・・とりあえず給料は下げるわよ」
風神雷神を軽くあしらう阿修羅。
「これ以上あいつらをほっておいたらやばいわね・・・
失敗が続いたらあたし皇鬼様に嫌われちゃう・・・こうなったら!!」

玄武村
「お前らなぁ・・・・」
「あはは、そう怒るなって」
「すまぬな主殿、そういうつもりでは・・・」
「主様・・・」
「さっさと戻ってこいよな!!」
村の茶店でくつろいでいる翔子達を見つけたのだが、
戻りが遅いと思ったらのんきに茶をのみ団子を食べていたのである。
「まぁ無事だったからいいじゃん」
「とにかくやっと全員が揃いましたね」
「そうだな。皇鬼退治はこれからだな」

その時後ろから何かが近付いてきた!
「おおおおおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「!!」
「万象大乱!!」
ばこぉぉぉぉん!!
キリュウの万象大乱であっけなく倒される敵。
襲ってきたのはカラス天狗だった。
「なんだ・・・邪灯団の雑魚じゃないか・・・」
「ま・・・参りましたぁ・・・」
岩(もとは石だったもの)の下敷きになりながらあっさり降参するカラス天狗。
「全く・・・二度とこんなことをするでないぞ・・・」
キリュウがそう言い残して去ろうとしたその時!
「ま、待ってください!」
自力で岩の下敷きから脱出して近付いてきた!
「なんだ!まだやる気・・・」
と、思いきや突然土下座してとんでもないことを言い出した!
「師匠!どうか俺を弟子にしてください!!」
「なぬーーーーっ!!?」

「クビになった!?」
「はい。俺はカラス天狗14号。強くなりたい一心で邪灯団に入ったんですけど・・・」
「仲間うちでも弱くってとうとうクビになったと」
「確かにこの天狗さん印がないですわ」
今まで襲ってきたカラス天狗は邪灯団の印を付けていた。がこの14号にはついていない。
「印も取り上げられ・・・復帰のため私達を倒そうと・・・」
「最初はそのつもりでした。でもさっきの技を見て感激しました!
キリュウ師匠!どうか俺に修行をつけてください!!お願いします!!」
真剣な瞳で見つめる14号。
「ど・・・どうしよう・・・」
いきなり師匠と呼ばれて困った顔をするキリュウ。
「とりあえず相手してみたら?得意の試練を一発お見舞いしてやれよ」

玄武村の山の上。
「あのー・・・これは・・・」
「試練だ。そなたは私の妨害をかいくぐって山の上まで来い」
14号はふもとに降ろされた。
「よくわかんないけど・・・頑張るっす!!」
そう言って14号は山の頂上へ向けて飛び立った。

「ん?・・・何か飛んでくる・・・・」
それは先端がとがった細長い物・・・しかし
「で・・・でかい!!」
慌ててよける14号。しかし次々と飛んでくる。
「なんなんだぁ!?」

山の上では翔子が吹き矢を撃ち、それをキリュウが巨大化させていた。
「さぁ、14号殿。私の試練にどこまで耐えられるかな?」

巨大吹き矢を必死でよける14号。
「ひぃぃぃ!!こぇぇぇぇ!!」
それでもなんとかよける。
でかくなったぶん、刺さることはないが当たったら痛いことに変わりはない。
「なんとか山の上まていかないと・・・・」
ちょっとずつ近付く14号。
しかし近付くほど命中率もあがるわけで。
そして
「あぐっ!!」
とうとう正面衝突する。
押されて後ろに下がる14号。素手で列車を止めるようなものである。
「ああーーーーーーー・・・・」
遠くなっていく14号。
「ふっ・・・やはりこんなもんか・・・」
そうつぶやくキリュウだったが。
「くそぉ・・・俺は・・・・俺は・・・」
その時わずかながら力が出た。
「強くなってやるぅぅ!!」
巴投げの要領で巨大吹き矢を投げ飛ばした!
「何っ!?」
予想外の展開に驚くキリュウ。
「やった!!」
ほっとしたその時
ゴンッ
「はうっ!?」
別の吹き矢が飛んできて衝突。気絶して落ちていった・・・

「うーん・・・はっ!」
「気が付いたか」
「ここは・・・」
「玄武村の宿だ。ほっておくのも可哀想なのでここまで運んだ」
「そうですか・・・俺もまだまだっすね・・・」
(そうでもなかったぞ)
小声でつぶやいたキリュウの言葉は14号には聞こえなかった。
「おーいキリュウ、行くぞー」
太助の呼ぶ声が聞こえてきた。
「我々はこれから怪奇村に戻る。お主はどうする?」
「もちろんついていきますよ!よろしくお願いします!師匠!!」
「・・・好きにしろ」
こうしてメンバーに新たな仲間、カラス天狗14号が加わるのであった。


14号の「師匠と仲間達」

俺14号!強い戦士に憧れるカラス天狗っす!
今はまだ弱いっすけど、頑張って強くなるっす!

キリュウさんは俺の師匠です!とっても強くて優しい人です。
太助さんはいつも師匠に鍛えてもらってます。ということは先輩ですね。
シャオさんはかわいいです。先輩の大好きな人らしいです。
ルーアンさんは美人です。とにかくよく食べる人です。
ヨウメイさんは頭いいです。いろんな事知ってます。
離珠さんはちっちゃいです。シャオさんの星神の一人らしいです。
出雲さんはかっこいいです。人間世界では女の子にモテモテだったらしいです。
翔子さんはしっかりしてます。いつも冷静で落ち着いています。
たかしさんはにぎやかです。とにかく元気な人です。
乎一郎さんはおとなしいです。いろいろ苦労してるみたいです。

師匠もすごいっすけどみんなもすごいっす!
俺も頑張って強くなるっす!

そして彼はのたもうた 二
『14号の修行日記』

今日も修行です。
師匠の試練は厳しいっすけど
頑張って耐えるっす!!

今日の修行は神社の階段を上がることです。
もちろん、師匠の妨害をかいくぐって、です。
俺の先輩、太助さんも参加して修行は始まりました。

早速上から大きな岩が転がってきました。
さすが師匠、いきなり手加減がありません。
必死でよけながら登っていくと今度は階段が大きくなりました。
師匠に今回の試練は飛ぶことを禁止されてましたから
自力で登らなければいけないのですが、
大きくなった階段は一段上がるのにも一苦労です。
そしたらさらに今度はでっかい蜘蛛が現れたんです!!
めちゃくちゃびっくりしましたよ。
逃げようと必死で階段を上がりましたが
とうとうバテて倒れてしまいました。

気が付いたら宿の布団の中でした。
悔しいっす!今度は絶対乗り越えてみせるっす!

追記。
先輩は無事に頂上までたどりついたらしいです。
さすが先輩。すごいです。


「これはっ・・・・!!」
怪奇村に戻ってきたメンバーは信じられない光景に言葉を失った。
村が壊滅していて、村人全員がいなくなっているのだ!
ガラッ・・・
その時瓦礫が動いて中から見覚えのある顔が出てきた。
「み、みんな・・・」
「乎一郎!!」
すぐさま乎一郎を救出する。
「おい!俺達が玄武村に行ってる間に何があったんだ!!」
「邪灯団の妖怪が、いっぱい攻めてきて・・・
僕は地下室に隠してもらったから助かったけど・・・」
「なんだって・・・・」
「主様!あそこに何か書き置きが!」
壁の書き置きに注目するメンバー達。
「なんて書いてあるんだ?読めないぞ」
「これは・・・・妖怪文字ですね」
「だったら14号!読んでくれ!」
「はっはい!えーと『村人は預かった。返してほしくば砦まで来い。阿修羅より』・・・・・
阿修羅様が!!」
「知ってるのか?」
「阿修羅様は邪灯団の幹部です。6本の腕を持つ女の人でものすごく強いんです!」
「どうしましょう・・・太助様・・・・」
「決まってるじゃないか・・・みんな!阿修羅の砦に行くぞ!」
「おぉーっ!!」

阿修羅の砦
「ふふん・・・・村人は全員捕虜にしたから・・・・あいつらは必ずここにやってくるわ。
そしてあいつらをやっつけるのよ、そうすれば皇鬼様とあたしは・・・・
うふ・・・・うふふふふふふふふふふ」
「あの・・・阿修羅様?」
どかっ ばきっ ぼきっ
「入る時はノックぐらいしなさい」
「はい・・・・」
カラス天狗血まみれ。
「そ・・・それはそうと皇鬼様から連絡が・・・」
「何っ!?それを早く言いなさいよ!ああもう怪我しちゃって誰がこんなことを」
あんただあんた。
「なんでも『ドクロ将軍』がこっちに向かっているそうで・・・・」

ピシャーーーーーーーン!!

「ど・・・ドクロ将軍が・・・・来る・・・・」
阿修羅は急に恐れの表情を浮かべた。
「げ・・・厳戒態勢!絶対に入れるんじゃないわよ!!」
「誰をだ?」
「ひっ!!」
いつの間にか後ろに鎧を着たがい骨が立っていた。
「ど・・・ドクロ将軍・・・・」
後ずさる阿修羅。
「話は聞いている。人間に苦戦しているそうだな」
「うるさいわね!すぐに倒してみせるわよ!」
「ふん、別に邪魔するつもりはない。その人間とやらに興味があって来ただけだ」
それだけ言うとドクロ将軍は部屋から出ていった。
「はぁ・・・あたしあのがい骨苦手なのよね・・・武士道だかなんだか知らないけど
頑固で口うるさくてうっとうしいのよね・・・・・」
「ほぉ・・・それは誰のことかな?」
「げっ!?なんでまたいるのよ!?」
出ていったはずのドクロ将軍はいつのまにか戻ってきていた。
「貴様の陰口をたたく癖は直っていないようだな・・・・」
「うぅ・・・・」
このあと説教2時間14分。

砦の牢屋
「長老・・・・・」
「なんとか抵抗したんだけどね・・・結局捕まっちゃった。
大丈夫、なんとかなるわよ」
村人を元気づけようとする涼の姿があった。

メンバー達は阿修羅の砦を目指して旅を続けていた。
「ここは猫又村・・・といっても村人はどこかに引っ越してしまっているので誰もいません」
「邪灯団の手から逃れたってわけか・・・・」
太助達は無人の村にやってきた。
結構長い道のりではあったがここまで邪灯団の妖怪は現れず、
すんなりとここまでやってきた。
「ここからもうしばらくすれば阿修羅の砦です。
今日はここで休んでいきましょう」
その言葉にみなが賛成した。

そして夜を迎えた・・・

村は無人なのでそれぞれ好きな家で寝泊まりすることになった。
「・・・・どうしよう」
花織の声だ。
「よく考えたらあたし武器がないのよね・・・せいぜい遠藤先輩の武器を借りるだけ・・・
いやよそんなの!もっとあたしらしい武器が欲しい!」
そうぼやきながら部屋を物色していた。
「あら?これは・・・・・」

一方14号。
「まさか阿修羅様と戦うはめになるとはな・・・・」
遠い目をする。
ついこの間まで自分の上司だった者と戦うのだ。
無理もない。
「そういや阿修羅様は・・・・」

邪灯団にいた頃・・・
「阿修羅様、入りますよー」
がちゃ
そこで見たのは机に向かって何か作業をしている阿修羅。
「・・・・阿修羅様?」
「きゃっ!ノックくらいしてよ!」
「あっ、すいません。で何してるんすか?」
「こら見るな!ああっ!!」
机の上には漫画の原稿用紙。
「・・・・なんすか?これ?」
「・・・・見ての通り漫画よ」
「なんで漫画を?」
「その・・・・早い話が同人誌よ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」
14号しばし沈黙。
「ちょっと待って下さい!どこの世界に同人誌を書いてる悪の組織の女幹部がいるんですか!!」
「うるさいわね!!この売り上げも軍資金になってるの!あんたらの給料だって入ってるんだからね!!」

「・・・・同人誌の売り上げに左右される俺達の給料って・・・・」

「意外な趣味だったよなー・・・」

邪灯団内部でも阿修羅の隠れた趣味を知る存在は少ない。

その頃出雲。
「ふんふん・・・おやシャオさん?」
「出雲さん・・・実はお話が・・・」
「えっ!ええ!!なんなりと!!」
喜んでついていく出雲であった。

「ん?」
出雲とシャオが二人で外に出ていくのを見かけた太助。
「おかしいな・・・シャオは俺の部屋にいるはず・・・」

「なんですかシャオさん、話って・・・」
「それは・・・」
ボンッ!
「こういうことだよーん!!」
「なっ!?」
とたんにシャオの姿が狸に変わった!
「あーっ!お前はいつかの化け狸!!」
たまらず飛びだす太助。
気になってついてきていたのだ。
「ちっ、もう一人いたのか。まぁいい、やっちゃってください!!」
「おおぅ!!」
「げっ!風神雷神!!」

「敵襲だぁ!!」
一方の残りのメンバー達にも大勢のカラス天狗が襲いかかっていた。
「くそっ・・・夜襲とはあじなまねしやがるぜ!!」

「行きますよ!花火爆弾!!」
ドーン!
乎一郎の新型爆弾が炸裂!

「やるじゃない、遠藤君!」
「てへへ・・・」

「えへへ・・・これであたしも戦えます!」
「か、花織ちゃん!その格好は!?」
花織は村にあった道具「猫又の装備」を身につけていた。さすが猫又村。
猫耳、猫グローブ、猫シューズ、猫の尻尾。
その筋の人にはたまらない格好だったりする。
「このこのこの!!」
花織はカラス天狗を思いっきりひっかいた!すごく痛そうである・・・

「へっへっへ・・・団をクビになったと思ったらこんなとこにいたのか・・・」
元同僚のカラス天狗ににらまれる14号。
「かまわねぇやっちまえ!!」
「ひぇぇぇぇぇぇ!!」
必死で逃げる14号。しかしよく見るとしっかりよけている。
試練の効果だろうか。
「くそっ・・・14号のくせに!」
簡単に倒せると思っていたカラス天狗は驚いている。

「ちっ・・・弱いとはいえ数が多いぜ!」
傘をふりかざし戦うたかし。
その時後ろからカラス天狗の攻撃が・・・
「危ない!」
ガッ
何者かが攻撃を弾いた!
「お前は・・・・染五郎!?」
「ひさしぶりやな魂の友!!阿修羅との戦いが近いっちゅーから助っ人や!
そしたらいきなり夜襲とはびっくりやで!」
「ありがとう染五郎!俺はお前のような男を友にもって幸せだぁ!!」
「たかしぃー!」
「染五郎ぉー!」
「二人とも戦いなさい!!」
ルーアンの突っ込みが入る。

「ほないくでぇ!」
染五郎が傘を構えて戦闘態勢に入る。
「どりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ドンッ!バキッ!ドゴォン!
あっという間にカラス天狗達をやっつけていく。
「つ、強い・・・・」
「あんた本当に芸人なの!?」
はっきり言って戦士並の実力はある。
「これくらいは芸人のたしなみやぁ!!」
「さすが染五郎!かっこいいぜぇぇぇぇ!!」
いろいろなキャラがアイテムが入り交じり、少しずつカラス天狗は数を減らしていった。

一方風神雷神と戦う太助と出雲。
「光の札!」
出雲の符術で夜の暗闇を照らす。
「いくぞっ!」
太助が雷神に斬りかかる。
「兄貴!くそぉ、かまいたち!!」
真空の刃が太助を襲う。
「火炎の札!」
すかさず出雲が風神を攻撃!
「おのれ雷!!」
雷神も負けずに反撃する。
やっぱりこの兄弟は強い。

一進一退の攻防。このままではらちがあかない。
「出雲・・・ぼそぼそ・・・」
「わかりました。やってみましょう」
太助が突進した!
「ふん、そんなもの・・・」
その時出雲が札を使った。
「風の札!」
突風が太助の追い風になり、太助のスピードを上げた!
「何!?」
予想外のスピードに一瞬反応が遅れ・・・
どかっ!!
風神に大きなダメージを与えた!
「くそっ!よくも弟を!!」
怒った雷神が太助に攻撃しようとするが
「衝撃の札!」
すかさず出雲のサポートが入る。
バシッ!
「ぐあっ・・・」
ようやく雷神も倒した。
「お・・・・覚えてろ!」
化け狸はすたこらさっさと逃げていった。
変身能力はすごいが戦闘力は低いので・・・

「ふぅ・・・あらかた片づけたな・・・」
一息つくキリュウ。
「キリュウさん!太助様と出雲さんを見かけませんでしたか!?」
「いや?私は見ていないが・・・」
その時、背後から襲いかかろうとするカラス天狗が!
「師匠危ない!」
バキッ!
14号が一撃でカラス天狗をぶっとばした!
「助かったぞ。14号殿。やれば出来るじゃないか」
「いや、今のは無我夢中で・・・・」
(ふむ・・・鍛えてやれば本気でかなり強くなりそうだな・・・・)
キリュウは確信した。

「みんな大丈夫か?」
太助と出雲が戻ってきた。
「太助様どこに行っていたのですか!?」
(出雲しゃん心配したでしよ)
「敵は撃退しましたよ」
「太助様、無事で良かった・・・」
「シャオ・・・」
「あの・・・私も戦ったんですけど・・・」
先に太助の心配をされ、ちょっと悔しい出雲だった。

準備は整った。いよいよ阿修羅の砦へと向かう!

猫又村からさらに先に進んだところに阿修羅の砦があった。
ついに一行は阿修羅の砦に到着したのだ。
「さぁ・・・いよいよ乗り込むぞ。みんな準備はいいか?」
「おぅ!」

「ふふふ・・・ついに来たわね・・・でもここまで何人無事で来れるかしら・・・・」

砦内は静かで物音一つしない。
「俺がいた頃はこんなんじゃなかったっすよ」
ぼやく14号。
と、その時!
ガラガラガラ!
「げっ!!」
床が後ろから崩れ始めた!
「にげろぉぉぉぉぉぉ!!」
崩れる床に追い付かれまいと必死でにげる。
「待ってよ・・・僕そんなに足早くない・・・」
遅れる乎一郎。
そしてついに足を踏み外した!
「遠藤君!」
手をさしのべたルーアンもまきぞえに!
「わぁぁぁぁぁぁぁ・・・」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ・・・」
「乎一郎!ルーアン!」
二人は崩れた床の底に落ちていった・・・

「どうやらあちこちにトラップを仕掛けているみたいですね・・・」
納得するヨウメイ。
「参ったな・・・この先もたくさん罠をしかけてるだろうなぁ」
「気を付けて行くしかないか・・・」
再び歩き出すメンバー達。
「ん?」
次に現れたのは壁についた2つのボタン。
「このボタンを押せばいいのかな・・・」
「でもどっちを押したらいいんだ?」
「・・・あたしがやります!」
花織がボタンの前に立った。
「両方同時に押せばいいんですよ」
「自動販売機じゃないんだぞ・・・」
ぽちっ
ぱかっ!
「えっ!?」
突然床が開いて花織が落ちていった。
「花織ちゃん!」
慌てるたかし。
「くっそぅ・・・・」
悔しがる太助。

「今度はなんだ?」
狭い廊下だが天井が高くて見えない。
「気を付けていけよ・・・・」
その時
「うわっ!?」
「たかし!?」
天井から伸びてきた手がたかしを捕らえていた!
「ひぇぇぇぇぇ!!気持ちわりぃぃぃぃ!!」
「くそっ!」
連れ去られまいとたかしを引っ張る染五郎。しかし、
「あらっ!?」
結局染五郎も捕まり天井の闇の中へ消えていった。
「しまった!」
気が付くと今度はキリュウが手に捕まっていた!
「師匠!」
「キリュウさん!」
14号とヨウメイがキリュウを押さえるが結局二人も捕まった。
「このままじゃ全員捕まります!急いでここを抜けましょう!!」
出雲の提案で大急ぎで廊下を抜ける太助達。
「向こうに扉が!」
大急ぎで扉を開ける出雲。が!
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
扉の向こうから伸びてきた手にやはり捕まってしまった。
「出雲さん!」

あっという間に太助、シャオ、翔子の3人になってしまった。
それでも探索は続く。
「くそっ・・・このままじゃ・・・」
そうして次の部屋にやってきた。一本の橋がかかっていて橋の下には無数の手が生えている。
「やな場所だな・・・・」
ゆっくりと橋をわたっていく3人。
「うあっ!?」
その時翔子が足を捕まれた!橋の下から手が伸びてきたのだ!
「翔子さん!」
助けに行こうとしたシャオも足を捕まれ、
「シャオ!」
同じように太助も。
「くそっ!」
翔子は手裏剣を投げて太助の足を掴んでいる手を攻撃した。
その拍子に手が外れて太助はなんとか自由になる。
「うわぁぁぁぁ・・・」
「きゃぁぁぁぁぁぁ・・・」
しかしシャオと翔子はそのまま床に飲み込まれていった・・・・

「そんな・・・・俺一人かよ・・・・」
孤立してしまった太助は一人砦の奥へと進む。

「・・・大丈夫?」
「・・・涼さん!?」
気が付くとシャオは牢の中にいた。
怪奇村の村人やいなくなった仲間達もいる。
「結局みんな捕まったのか・・・」
「いや、太助だけいないぞ」
とりあえず無事でほっとする。その時
「静かにしなさい」
牢の前に現れた阿修羅。緊張が走る。
「あたし達を捕まえてどうする気だ・・・」
「決まってるじゃない。邪魔者を捕まえたってことで皇鬼様に差し出すの。
そうすれば皇鬼様もきっとお喜びになるわ。そして晴れてあたしは皇鬼様と・・・
うふ・・・うふ・・・うふふふふふふふふふふふふ」
「いろんな意味で危ないなこいつ・・・・」
阿修羅がどんな性格か、これだけですぐにわかった。
「とにかく・・・・あと一人がもうすぐここに来るわ。
罠で捕まえられなかったけどたかが人間一人、軽くひねってみせるわ」
その時大広間に声が響いた。
「来てやったぞ!みんなを返せ!!」
太助参上!

「よくここまで無事に来れたわね・・・・」
阿修羅が太助に向き直る。
ここは砦の奥の大広間。その片隅に牢屋があり、シャオ達が捕らえられている。
「ほんとは砦の罠で全員捕まえるつもりだったんだけどね・・・まぁいいわ。
あたしが直接やっつけてやるわ」
そう言うと阿修羅は6本の腕を構えて戦闘態勢に入った。
「覚悟!!」
素早く間合いを詰めて襲いかかってきた!
6本の腕を駆使して連続でパンチを繰り出す。
「くっ・・・」
太助は攻撃を防ぐのに精一杯だ。
「くそっ!あれじゃ攻撃なんて出来ないじゃないか!」
牢の中でたかしが叫ぶ。

「ちっ!」
なんとか阿修羅の間合いから離れる太助。
しかし阿修羅は執拗に接近して攻撃してくる。
どうしても防戦一方になる太助。
「どうしたの?逃げてばかりじゃなんにもなんないわよ!」
挑発する阿修羅、完全に余裕だ。
「マジでやばいって!どうするんだよ!」
「しゃーない・・・奥の手を使うで」
染五郎は一呼吸おいて・・・・叫んだ!
「あっ!皇鬼が来てるで!」
「えっ!どこ?皇鬼様!?」
あたりを見回す阿修羅。
「隙あり!」
すかさず太助の攻撃!!
バシッ!
「あうっ!」
もののみごとに命中した太助の攻撃。
「よくも騙したわね!」
「ひっかかるあんたもあんただ・・・」

「よくも180歳の乙女の柔肌に傷をつけてくれたわね!」
いっておくが妖怪で180歳はまだ若い。
「てぇぇぇぇぇぇぇい!!」
再び攻撃を開始する阿修羅。しかしさっきの一撃がきいたのか少しスピードが落ちている。
「よし、これなら・・・」
太助が少しずつ攻撃を加え始めた。
「いいぞ!太助が少しずつついていってる!」
「だんだん主様の目が慣れてきたということですね」
防戦一方からだんだん盛り返してきた太助。

「くっ・・・こんなはずは・・・・」
やや焦り出す阿修羅。
「おのれぇ!!」
なんとか一撃を決めようと太助に突っ込む。
「させるか!」
ギリギリでかわし、すかさず刀を切り込む!
「くっ!」
キィン!!
刀は阿修羅の鎧をかすめただけだった。
「危ない・・・よけるのがもう少し遅ければ直撃だったわ・・・」
パキンッ!
ガランガラン・・・
その時阿修羅の鎧が外れて床に落ちた。
さっきの攻撃で鎧のつなぎ目が壊れてしまったのだ。
一言でいえば阿修羅は鎧が脱げて裸になってしまった。
「え?」
「あ・・・・・・」

「キャアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
思わず座り込んでしまう阿修羅。6本の腕でちゃんと隠している。
「あ、あんたなんてことすんのよ!!」
「い、いや、けっしてわざとでは・・・しゃ、シャオ。女御でなんか服着せてあげて・・・・」
後ろを向いたまま話す太助。心なしか顔が赤い。
「は、はい!来々女御!」
中国服に着せ替えられる阿修羅。
「うぅ・・・・」
なんとか立ち上がるが顔は真っ赤である。
「皇鬼様にも見せたことがないのに・・・・もうあったまきた!!
奥の手使ってぶちのめす!!」
そう言うと阿修羅は精神集中を始めた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・」
「な、何をする気だ・・・・」
「奥義、三身の術!!」
ボンッ!
「・・・・・・・なんだ・・・・・げっ!!」
「「「ふふふ・・・・・・これで形勢逆転かしら?」」」
なんと阿修羅が3人に増えていた!!

「いくわよ!」
阿修羅Aが攻撃してきた!
「くっ!」
なんとか防御する太助。しかし
「はぁっ!」
後ろから阿修羅Bに攻撃された!
「ていっ!」
さらに阿修羅Cが追い討ちをかける!
「こらー!3対1なんて卑怯だぞ!」
「あら、あたし1対1で戦うなんて一言も言ってないけど?」
たかしの文句をさらりと受け流す阿修羅。
「やばいぞ、3対1じゃいくらなんでも太助に勝ち目は・・・」
「確かに今のままじゃまずいわね・・・太助君があの刀の力を引き出してくれればいいんだけど・・・」
「へ?」
涼は意味深な言葉を言った。

その間にも太助は3人の阿修羅の攻撃を受け続けていた。
「くっ・・・・」
ボロボロになり、かなり弱った太助。
「「「・・・・もう動けないわね、最後はどのあたしにとどめをさしてほしい?」」」
声の揃う3人の阿修羅。マジでピンチである。
「くそぉ・・・」
「「「あら、まだやる気?」」」
「シャオ達を助けるまで・・・死んでたまるか!!」
気力をふりしぼり、立ち上がったその時!

「!?刀が!?」
太助の刀が光ったかと思うと太助に力がみなぎってきた!
「やった!太助君力を発揮したのね!!」
涼の喜びの台詞。
「・・・もしかしたら・・・いけるかも!」
太助は阿修羅を攻撃した!
「なっ・・・・・」
一瞬で阿修羅を一人倒した。
「何っ・・・・・・」
「てやっ!」
「うあっ!!」
続いてもう一人も撃退した。
「また一人になっちまったな・・・・」
「・・・どういうこと・・・さっきより力も速さも全然違う・・・」

その時戦いを見守る一つの影。
「あの刀・・・間違いない!あれこそまさしく魔封刀!」

「終わりだ阿修羅!」
「おのれぇぇぇぇぇ!!」
ズバッ!
「うっ・・・・・」
ドサッ
「殺しはしない・・・峰打ちだぜ」
倒れる阿修羅を後目に太助はつぶやいた。
「やったな太助!」
「太助様ご無事ですか!?」
「ああ、大丈夫だ。まってろ、すぐに出してやる・・・」
「待てぇぃっ!!」
突然聞き慣れない声が広間に響いた。
「おぬしの力とくと見せてもらった・・・次は儂の相手をしてもらおう!」
すると向こうから甲冑を着込んだがい骨が姿を現した。
「ど・・・ドクロ将軍!!」
14号の驚きの声が出た。

「おい、何者だあいつ!?」
「邪灯団幹部のドクロ将軍・・・まさか来ていたなんて!」

「いざ、勝負!!」
ドクロ将軍は刀を構え太助に向かってきた!
キィン!
「くっ!」
太助は刀でそれを受けとめる。
「なんて力だ・・・・」
阿修羅戦で上がった太助の力をもってしても押さえるのがやっとである。
「ふんっ!」
ドクロ将軍はいったん離れたかと思うと再び切り込んできた!
それも防御するがドクロ将軍は何度も切り込んでくる!
「くそっ・・・なんとか攻撃しないと・・・」
一瞬の隙を見て切り込む太助、だが
「甘いわ!」
ひらりとかわされ、そのまま反撃してきた!
「うあっ!!」
キィン!
「あっぶねーー・・・・」
紙一重でかわした太助。もうちょっとずれていたら本気でまずかった。
「ほほぉ・・・この一撃をかわすとは、やるではないか」
「伊達に試練できたえてねーよ・・・・」
太助は刀を構え直す。
「てやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
今度は太助から切り込んでいった!
「ふんっ!」
しかし将軍は余裕で受けとめる。
「はあっ!」
反撃して太助をはじき飛ばす。
「くっ・・・・」
キィン!
何度も切り込むが完全に防御されてしまう。
「ただ剣をふるだけでは勝負には勝てんぞ!!」
ガキィン!!
「うわっ!」
カンッ!
刀をはじき飛ばされ、離れた所に落ちてしまった。
「ふん・・・・まだまだ甘いな・・・」
「うっ・・・・」
力の差を見せつけられた太助。
ドクロ将軍の強さに圧倒されていた。

「ふふ・・・・このままじゃ終わらないわよ・・・」
その時、阿修羅はいつのまにか謎のスイッチに手を掛けていた。
ぽちっ!

ゴゴゴゴゴ・・・
「なんだ!?」
「ぬぅ・・・・阿修羅のやつめ、砦ごとわしらを吹き飛ばすつもりらしい」
「そ、そんな!早く脱出しないと!あ、その前にシャオ達を牢から出さないと・・・」
「あれか・・・よし」
ドクロ将軍は牢の鉄格子に刀を切り込んだ!
カターン・・・
鉄格子は切り落とされ、人が通れる幅が出来た。
「急ぐぞ、砦の非常口に案内してやる。ついてこい」

砦の非常口に向けて急ぐ太助達。
ガラガラガラ・・・
「あぁっ!!」
その時落ちてきた瓦礫で通路が埋まってしまった!
「ふん、こんなもの・・・・」
しかしドクロ将軍は冷静に刀を構えた。
「せいっ!」
パキィン!
一撃で瓦礫を真っ二つに切り裂いた!
「すごい・・・・」
「早く来い!時間がないぞ!!」

ズゥーーーーーン・・・・・
阿修羅の砦は陥落した。
そして太助達や怪奇村の住人達は全員無事に脱出した。
「あ・・・ありがとう・・・」
「ふん、お主と決着をつける前に死なれては困るからな」
その時涼が前にでた。
「あなた・・・金剛じゃないの?剣を極めるために旅を続ける亡霊武者・・・・
なぜあなたが邪灯団に?」
「いかにも儂に真の名は金剛じゃ。旅をしているうちにドクロ将軍という通り名がついた・・・
あそこにいたのは強い者に巡りあえると思ったからだ。そしてそれは思った通りだった。
太助とやら、お主は素質はあるがまだ未熟だ。さらに腕を磨いて儂の修行になるくらい強くなれ・・・
さらばだまた会おう」
そう言ってドクロ将軍、いや金剛は去っていった。

あれから数日が過ぎた。
村人の戻った怪奇村は急ピッチで建物の再建にとりくんでいた。
羽林軍が大活躍したのは言うまでもないだろう。
「みんなほんとにありがとう・・・」
村代表として涼がお礼を言っている。
「ところで涼ちゃん、俺の刀って・・・・」
「ああ、それね。魔封刀って言って、その名の通り、悪を封じる力があるの」
「そ、そうなの?さりげなく渡されたこの刀がそんな重要な武器だったなんて・・・」
「阿修羅との戦いの時、少しだけど力を発揮したでしょ?
どうやら太助君は魔封刀を使う素質があるみたい」
「すごいじゃないたー様!」
「ははは・・・・」

「しかしまだ終わったわけではないですよ。目的はあくまで皇鬼を倒すことですから」
「そうね・・・それじゃそろそろこの事を教えといた方がいいわね。
皇鬼を倒すために必要なものが3つあるの。
一つは魔封刀、もう一つは鳳凰。そして天神の鎧。これらが揃わなきゃ皇鬼には勝てない」
「魔封刀はもうあるからあと二つ・・・ってことか」
「海神岬に鳳凰の塔があるの。鳳凰はその塔に眠ってるって聞いたことがあるわ」
「じゃまずはその鳳凰を探すのが先ってことか・・・・」
「そうね。まぁ焦ることはないわ。大変だったし、今日はゆっくり休んで明日にでも出発して」
というわけでメンバーはひとまずの休息をとるのであった。

「さぁ、忙しくなるわよぉ」
この時、涼が何か準備をしていたことに気付く者はいなかった。


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