☆☆☆うちゅーじんの地球探検記☆☆☆

<だいごかい>



 噂によると西岡は巨人ファンらしい。
 ちょっとファンになる球団がありきたりな気がするが、 まあそこらへんは勘弁して欲しい。

 昨日は巨人が勝った。
 巨人が勝った翌日は西岡は機嫌が良くちょっとの遅刻 ならおまけしてくれるらしい。
 たとえ金のエンゼルを1枚あるいは銀のエンゼルを5枚 持っていなくても、である。
 今日こうして遅刻ぎりぎりで走る僕はその西岡の噂を 確認できる絶好のチャンスを得たとも言えよう。
 だから、校門は噂の現場になる。
 早速行ッテミマショウカ。グワッグワッグワッ。
 ちょっと腹話術をやってみた。我ながらなかなかよかっ た。

 遂に校門に差し掛かる。
 西岡はちょっと機嫌が悪そうだった。巨人は勝ったのに。 何かあったのだろうか。ひょっとして大谷先生にふられた からか。
 ふん、地球人ってやつは複雑でナイーブだな。

 8時半以降は遅刻とみなされるわけだが今日の西岡なら きっと甘い判定はない。ふう、ドキドキなモーニング日和と なったよ。

 僕は右手に付けた時計をちらりと見る。ハンディ砂時計。 こうやって走っていてもきっちり3分計れる自慢の逸品だ。
 しかもひっくり返せばまた3分計れる。
 出る時の時刻と砂時計の利用回数。掛け算と足し算を 駆使さえすれば今の大体の時間が分かる。なんてハイテ クニックなのだろう。
 ということで反対の左腕に付けたデジタル時計を見る。

 8:27

 なんとか間に合ったようだ。よかった。

 僕は校門に差し掛かり、そこを通り過ぎた。
 なぜだ?間に合ったのに?
 無理もない。僕はその学校の生徒でないのだから。
 つまり無駄足だったのだ。
 ちょっと学校に通う地球人のシチュエーションに憧れた 僕の取った行動。
 それが一連の行動の真相だったのだ。

 さて、さっきやかんがぴーぴー言ってたな。そろそろアパ ートに帰ろう。
 アパートが燃えてないといいな。

(つづく)


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