ヘンな部活

<中編>


 北瀬先輩が心配そうに私の顔を見る。
 ココだけの話、私は甘いものは別バラでケーキが好きだ。目隠しされてもイチゴショート ケーキとモンブランとティラミスとガトーショコラの区別ができる。どれも好きだ。しかし、 きっと潜入捜査で喫茶店に入っても北瀬先輩と一緒ならケーキは注文せずコーヒーか紅茶だ けにするだろう。食事の時に関しても高カロリーのものを食べる訳にはいかない。先輩の前 での外食はサラダだけにしておこうと決意していて、余程のことがない限りサラダなのだ。
 ちなみに北瀬先輩の甘いマスクも大好きだ。大好きに決まっている。
「平気です。私小食ですから」
と私は笑顔で応えた。ならいいけど、と北瀬先輩。
 レンジは通常の3人分の注文といっていいので食事に時間がかかるかと思われたが、スロ ーフードなどという言葉がレンジの辞書にあるはずもなくボリュームの割に早く食べ終わっ た。食堂を出て下駄箱前で外の靴に履き替え、またしてもダッシュで外に向かう。もちろん 私達もバレないように後を追う。え、バレてないのかって?もちろん。私達はプロなのでそ う簡単にはバレないのだ。
 私は制服に紺のハイソにしている。中学生の頃はルーズに憧れたのだが、北瀬先輩が部室 で
「オレはハイソが好きだなあ」
などと言うのを偶然耳にしてしまったのだ・・・。もう。私の趣味を変えたのは先輩だからね。
 なんて、北瀬先輩にとても面と向かって言えそうにないことを思いつつも、もちろんプロ なのでしっかりレンジを追う。
 校門を出た刹那、レンジは居なかった。左側に行ったのは確かだが、正面、左右と3方向 に別れる道でどの道を選んだのか。
 うろたえる私だったが、北瀬先輩は冷静だった。
「まっすぐだ」
 後で北瀬先輩に訊ねると左はその先が工事中で、右は昼間、開かずの踏み切りと悪名高い 踏み切りが降りている時間帯だと言う。それで迷わずまっすぐだろうと当たりをつけたそう だ。さすが北瀬先輩だ。頼りになる。
 それで追っかけて行ったのだが結局レンジは自宅に忘れ物を取りに戻っただけだったよう だ。
 昼休みの張り込みは無駄骨に終わったと言えた。だけど北瀬先輩と一緒に走ることが出来 たので私は満足していた。

 (つづく)

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