ヘンな部活

<前編>


 レンジ──佐藤連二は昼食が終わるとおもむろに教室を出て行った。
 そのレンジをじっくり追うのは北瀬雪彦先輩と私、超絶美少女の日野宮桜子だ。
 私達は生活安全部のものだ。学校内の生活安全を担う健全極まりない部だ。勿論、私も 健全な理由で入部した。北瀬先輩が超カッコイイので生活安全部の活動内容など深く考え ることなく入部。それ以上でもそれ以下でもない。
 そんな感じで入部した生活安全部の活動だが、抽象的な言い方をすれば
「学校の生活に置いて安全と平和を愛する部活動団体」
ということになる・・・のかな。つまりはみんなの為の慈善事業をやっているような部活だ。
 そして今日はそんな憧れの北瀬先輩と一緒にレンジを尾行している。もちろん、レンジ のようなお子チャマなど私の眼鏡(私は裸眼で視力1.0であり眼鏡はものの例えだ)に敵う はずもない。
 レンジのことを簡単に説明しよう。私と同じ高校2年生。中学時代はサッカーをやってて センターフォワードとして県でベスト4の原動力となる大活躍をおさめた。そんな活躍もあ ってその頃のレンジは背が160cmに満たなかったのだがそれでもモテた。
 そんなレンジは高校に入ったら突然野球を始めた。理由はマネージャーが美人だから、 らしい。そんな不順な理由で部活を決めるなんてホント、男ってダメな生き物だと思う。 もちろん、男でも北瀬先輩だけは別だけどね☆
 で、我が高校でもレンジは運動能力の高さを発揮して春の県大会では2年生で2番・セカ ンドのポジションを獲得し、ちょろちょろとした俊足、粘り強い打撃で3割後半の打率を マーク。県大会ベスト8を果たしたチームにとっても欠かせない存在になってきていたの だ。
 ところが、そんなレンジが突然、野球部部長に退部届。
 もちろん、みんなビックリしてた。校内も騒然だった・・・かと言われると今時野球がそれ 程世間の関心になることもないのでそうでもなかったけど、甲子園初出場の期待も膨らむ 我が校ではショッキングなニュースなのだ。
 で、野球部の部長と主将たっての願いで生活安全部の私達がレンジを調査することにな った。つまり、レンジが野球部を辞める原因を探って欲しいという訳だ。
 生活安全部は全部で北瀬先輩と私を含め、6人居る。本当は7人在籍しているらしいが 残る1人は入部して1年経過するのに未だに分からない。6人の内、2人はどちらかとい うと事務的作業に徹している。私は北瀬先輩と一緒が良かったので同じ外回り&事務作業 の兼務を志願し、今回は外回り。尾行や聞き込みなどの外回りをすることになった。詳細 は今回はレンジを尾行中で急いでいるので省略します。
 レンジは1年生の時は、昼食は食堂で一番乗りに命を賭ける勢いで脱兎の如く駆けて行 った。しかし2年生になると後輩マネージャーや3年生のマネージャーにちやほやされて ることもあってお弁当を貰っていた。
 今日はどっちに転ぶのだろう──部活熱心な私はレンジの動向を気にした。もちろん側 に居る北瀬先輩にウットリしながら。

 今日のレンジは食堂だった。北瀬先輩と私も食堂の席を確保し、食券を買いに行く。レ ンジは痩せてる割にはよく食べるのでかつカレー定食とランチAと日替定食の食券を買っ ていた。北瀬先輩はランチBのみ。さすが北瀬先輩、必要十分なカロリーの摂取を心がけ る辺りもステキという他ない。ちなみに私はシーザーサラダのみにした。そんな私の注文 を気遣う北瀬先輩。
「おい、日野宮はこれだけで平気なのか?」
 なんて優しい北瀬先輩。もうっ、大好きです。

 (つづく)

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