remark

essay 21 註解

急いじゃあいかん

小津の『秋日和』の中のセリフ。一人娘(司葉子)と二人で暮らす美貌の未亡人、三輪秋子(原節子)との再婚を希望し、その仲介を友人田口(中村伸郎・写真中央)に頼んだやもめの平山(北竜二・写真右)が、待ち合わせしたバーでその結果を催促したとき、平山との再婚話を秋子に切り出せなかった田口とその隣に座っている友人間宮(佐分利信・写真左)がともに秋子に貰ったパイプで鼻を擦りながらこう言う。

 


小津安二郎『秋日和』(1960)より

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好中球

胞体内に顆粒( リソソーム )をもつ顆粒白血球のひとつ(他には好酸球、好塩基球がある)。絶えず血液中を遊走し、異物たちがいないかどうかパトロールしている。著しい食作用をもつ。(下記“ リンパ系幹細胞 ”の項参照)

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マクロファージ

白血球のひとつ単球白血球が組織内に遊出し成熟したものと考えられている。血液中を遊走するものや、組織に常住するものがある。やはり大変な食いしん坊。(下記“ リンパ系幹細胞 ”の項参照)

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食べる

異物を細胞内に取り込み、細胞内のリソソームという細胞小器官で異物を分解し、そのカスを細胞外へ排出すること。

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リソソーム

細胞質にみられる顆粒状をした細胞小器官。一枚の膜で囲まれており、内部に各種の加水分解酵素を含む。生体物質のおもなものである、タンパク質、核酸、多糖類、脂質を順序よく分解し小分子にする能力がある。リソソームによる消化後、消化されないで細胞質内に残ってしまった不消化物を残余小体というが、多くの細胞は残余小体を細胞外に排出できず、これが細胞の老化の原因になると考えられている。

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リンパ球

白血球のひとつ。脊椎動物では、胸腺由来のT 細胞thymus derived cell (T リンパ球)、および鳥類のファブリキウス臥bursa fabricii ないし骨髄 bone marrow 由来のB 細胞 (B リンパ球) に大別される。リンパ球はリンパ組織において増殖し、リンパ液から血中へ動員されて体内を循環し、再び胸腺皮質を除くリンパ組織へ再循環を繰り返す。

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B細胞

リンパ球のひとつ。細胞膜上に10^5程度の免疫グロブリン(Ig)を抗体リセプター(受容器)として結合させて持っている。そこへ特異的に抗体が結合し、その抗体が抗原と結合することで、抗原リセプターとしての役割をもつ。この刺激によりB細胞はプラズマ細胞に変容し、T細胞の補助を受けながら特異的に抗体を産出する。

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抗体

抗体というのは免疫系の中での役割名だが、その役割を実際に担うタンパク質は免疫グロブリン(immunoglobulin)と呼ばれる。ヒトの免疫グロブリンは5つのクラス(IgG,IgM,IgA,IgE,IgD)に分けることができ、それらはいずれも以下のような共通の基本構造をもつ。
(a)4つのポリペプチド鎖(アミノ酸がペプチド結合によって連なったもの)からなり、2つのまったく同じL(light)鎖とH(heavy)鎖とから構成されている。
(b)LまたはH鎖のおのおのは、C(constant)域とV(variable)域とからなり、C域のアミノ酸構成は、すべての抗体についてだいたい同一だが、V域のアミノ酸構成は抗体ごとに特異的である。
狩野恭一著『免疫学の時代』(中公新書)p.32より

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抗原

免疫系での役割としては、非経口的に生体内に持ち込まれた場合、抗体の生成(抗体産生)、あるいは抗原と特異的に反応するリンパ球の生成をもたらす物質のこと、と定義される。抗原は次のような性質を持っている。
(a)分子量が10000以上である。
(b)生体にとって異質な物質である。

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免疫反応

免疫反応の持っている特徴をまとめておく。
(a)各反応は抗原に特異的である。一つの抗原には一つの抗体のみが反応する。
(b)一つの個体の免疫系は、ほとんど無数(10^6〜10^7)の異なる抗原に対して抗体を産生することができる。
(c)同じ抗原が二度目に持ち込まれた場合、免疫系はその抗原を記憶しており、一度目に比べ、二度目には急速かつ強い反応を示す。この性質がワクチン接種の有効性の理由である。

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自己

ここで言う「自己」は免疫学的な意味での「自己」である。

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HLA

主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex,MHC)と呼ばれる遺伝子群によって決定される、個体を識別する際の目印となっている一連のタンパク質群のひとつ。人間ではHLA(human leukocyte antigen)と呼ばれる。HLAは少なくとも6種類の分子が知られているが、そのどのタンパク質もが個体間で少しずつ異なっている。母親から1組6種類のHLA遺伝子を受け継ぎ、父親からも同様なので、最大で12種類のHLAを各細胞上に持ちうる。移植の拒絶反応はこのHLA分子のどれかひとつが異なっても起こりうる。

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クラス1抗原

HLA抗原は、クラス1抗原とクラス2抗原とに分けられる。クラス1抗原はHLA-A,B,Cの3種類があり、すべての細胞上に存在する。クラス2抗原もHLA-DP,DQ,DRの3種類あるが、こちらは白血球の一部や皮膚細胞の一部など、限られた細胞上にのみ存在する。

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ペプチド

2個以上のアミノ酸が(ペプチド結合によって)結合した化合物の総称。

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修飾

HLA分子のすき間に、例えばHLA-A2であればその2本のらせんの間に、何らかの分子が結合している状態。

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T細胞

リンパ球のひとつ。胸腺で生まれ、そこでの厳しい選別に合格したものだけが身体内に出てくる。細胞性免疫の担い手となるキラーT細胞や、B細胞を助け免疫反応を更新させるヘルパーT細胞、さらにその免疫反応を抑制するサプレッサーT細胞などがある。細胞表面に「自己」と「非自己」を識別するためのアンテナとしてT細胞抗原受容体(TcR)と呼ばれるタンパク質をもっている。

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リンパ系幹細胞

血液の成分である造血細胞は幹細胞というただ一種類の細胞が分化してできたものだ。幹細胞から分化する際の最初の分岐がリンパ系幹細胞とマルチ幹細胞で、リンパ系幹細胞はさらにT細胞とB細胞に分化する。


多田富雄著『免疫の意味論』(青土社)p.101より

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胸腺

胸の中にある軟らかく白っぽい臓器。動物が若い時は大きいが、性成熟後は急速にしぼんでいく。食べると香りが良く、香草タイムの香りに似ているのでthymusと名づけられた。長い間その働きについては不明だったが、免疫反応に欠かせない臓器であることが1961年に判明した。現在ではT細胞を供給するという重要な働きの担い手であることがわかっている。T細胞はここで生まれ、ここで選別され、有用なもののみが胸腺外部に出て行くことができる。

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アポトーシス

細胞の自殺。プログラムされた細胞死。オタマジャクシの尻尾がなくなったり、植物が落葉したりするのはこの機構による。ガン細胞など、この機能が壊れた細胞は際限なく分裂増殖することができる。

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手にする

通常は「何かを手で保持する」ほどの意味だが、将棋用語では「攻め手を発見する」という意味がある。

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