走ってみた pt.5

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奄美大島地図

 ざっと一回り pt.5

 ヤドリ浜から、一度、古仁屋に出て、国道58号を名瀬に向かいます。
 本当は、蘇刈と嘉鉄の間の峠のてっぺんから伊須に抜けて国道に出る近道があって、急ぎのときはそちらを利用するのですが、今回は急ぎません。

 古仁屋に入り、レストラン「シェル・ロード」(珍しい貝殻のコレクションは、食事のついでに見る価値ありです)先のY字路を右に、郵便局と南日本銀行の並ぶ交差点をさらに右に曲がると、国道です。急な坂を登っていくと、全長約3kmの地頭トンネルがあります。しかし、ここは、あえて旧道を行きましょう。トンネルの手前を右手に、うっそうと茂った樹木に覆われた旧道は、廃道のようにも見えますが、ライダーたる者、「人の行く裏に道あり花の道」(読ミ人知ラズ)という言葉を忘れてはいけません。
 しかし、変われば変わるものですね。私に関する限り、地頭トンネルができる前は、名瀬・古仁屋間に三つある峠道で、一番嫌いなのが一番ちいさなこの峠道でした。それが、新しくトンネルができて、通行が減った途端に回り道をしてでも通るようになったのですから現金なものです。

 旧道に入った直後から、道の真ん中に葉っぱや小枝のついた太い木の枝が落ちているわ、山側の斜面から転がり落ちた小ぶりの岩がぽつぽつと転がっているわで一気にアドヴェンチャー気分が駆り立てられます。私が通ったときは、センターラインのあたりにかなり大きなウ×コさんがいらっしゃいました。
 こういうものを生産できるのは、かなり大きな犬か、立派に成長した猪くらいしか思い当たりません。あとは人間ですが、紙が落ちていなかったので、やはり動物でしょう。ちょうど暑い盛りの時刻で、短パンで乗っていた私は「犬でも猪でも、あまりお近づきになりたかないなあ」と、アドヴェンチャーを通り越してビビリ・モードに入ってしまいましたっけ。

台風が近づいていました
'00/ 8/27 油井岳展望所から伊須湾を眺める。
撮影者:quickone

 峠道のてっぺんの手前に「←油井岳展望所」の案内があります。ちょっと寄ってみましょう。左側の小道に入ってすぐに焼肉屋さん(バーベキュー・ガーデンだったかな?)があります。稜線沿いの急斜面を上がると、舗装の荒れた旧道よりはずっときれいな道がさらに伸びています。緩やかなアップダウンを繰り返す道を、のんびり進んでいくと、「高知山公園」が右手に現れます。無線中継局の大きなアンテナ用の鉄塔を中心にした公園です。ゴルフ場とセットになっている印象が強いため、ゴルフ場嫌い(ゴルフも好きではありませんが、ゴルフ場は大嫌い)の私にはあまりいい印象がありません。それに、この公園から見ると「油井岳展望所」の方が高いところにあって見晴らしもいいようです。
 油井岳展望所は、高知山公園から1kmほどの距離にあります。こちらもなだらかな稜線を切り開いて作られた公園で、アスファルトが敷かれた駐車場を挟むように小高くなったところには木々が植えられ、遊歩道が巡らされています。駐車場の横に作られた休憩所の上の展望台に上がれば、大島海峡と伊須湾が一望できます。さきほどの高知山公園の鉄塔もわずかですが見下ろせる位置にあり、単細胞の私は実にいい気分になってしまいます。
 ヤドリ浜をベースにキャンプしていた頃は、よく古仁屋の街でお弁当と飲み物を買ってはここまで来て、景色を眺めながら食べていました。ちなみに、休憩所の横には水道の蛇口がありますが、「飲用ではありません」の札が掛かっています。テントを持たない完全野宿ツーリングにイイ感じなのですが、水なしでは無理ですね。やはり天気のいい日に、昼メシと昼寝を愉しみに行くべきところのようです。飲み物・食べ物は持参の上、ゴミはきちんとゴミ箱に、おやつは300円まで(意味不明)。

 このすこし先から道はいったん稜線と別れ、無数に分岐して大島海峡沿いの集落に散っていきます。ただし、見晴らしがいいのは展望所付近だけだったはずです。

 旧道に戻って、名瀬に向かって進みましょう。
 緑のトンネルを抜け出すと、地頭トンネルを抜けてきた国道58号と合流して、さらに下ります。下りきった橋のあたりで、伊須方面から来る道と合流します。橋を渡ってからすこしの間は海岸沿いを走りますが、すぐに道は上りはじめ、国道58号線で最長の峠道に入ります。
 途中、嘉徳への分岐がありますが、こちらへの寄り道は「林道編(工事中)」でご覧ください。
 こちらの峠道にも、最高点の少し手前に展望所のようなちいさなスペースがあって、ここからも大島海峡が見渡せます。

 峠道を下りきったところに橋があり、橋の向こうはY字路になっています。名瀬は右、左は宇検です。宇検からショートカットしてきたルートは、「ハイビスカス・ロード」と名付けられた山間の道を通ってこのY字路にいたるのです。と、いうわけで、宇検編で左に曲がった方は、ここからまたご一緒しましょう。ハイビスカス・ロードについても、「林道編(工事中)」で述べさせていただく予定です。
 橋が掛かる川は役勝川、橋の名前は役勝橋です。国道58号は、しばらくこの川に沿って走ります。
 すこし行ったあたりから川岸の緑が濃くなり、川幅が広がりはじめたらしく、川の対岸が遠くなっていきます。そんなところに、道の脇にこんなちいさな看板があるのが見えてきます。
 「マングローブ・カヌー・ツアー 2時間 3000円」
 緩いカーブの向こうで空が広がり、上り勾配になったら、眼下に広大なマングローブの原生林が見えてきます。住用川マングローブ原生林です。

上 '94/ 8/ 3 下 '00/ 8/27 上が干潮時、下が満潮時。
撮影者:quickone

 奄美へのバイク・ツーリングをお考えの方は、この住用川マングローブ原生林をはずしてはいけません。
 いくら南国とはいっても11月から4月くらいまでは泳げません。たまに泳いでいる人がいますが「100%、内地(あるいは大和。南西諸島以外のこと)の人だね」と奄美の人たちは言います。もちろん、ウェット・スーツを着れば「正月休みにひと泳ぎ」という贅沢な真似もできますが、バイクで行くのにウェット・スーツまで持っていく人は、私は一人しか知りません(一人でも知ってれば十分ですね(^^;))。
 しかし、このマングローブ原生林は、冬でも大丈夫の通年営業(…ォィォィ)ですし、旅程をうまく組めれば、一箇所で二度おいしい体験もできるのです。それは…。

 「月の満ち欠けと、潮の干満をチェックすること」です。

 要するに、大潮の日(潮の干満の差が大きくなる日のこと)を選んで行きましょう、ということです。
 もちろん、「マングローブ・ツーリング」を申し込むときは、できるだけ満潮に近い時間を選びましょう。
 一日でこの二つを満足させるのは難しいので、できる限り余裕を持った日程を立てましょう。「マングローブ・ツーリング」は、前々日か前日に申し込むといいでしょう。
 ゴールデン・ウィークなど、予約が混み合う時期には早めの申し込みを薦められるかもしれませんが、天気が悪い日にカヌーなんて漕ぐもんじゃありません。カヌー初心者にとっては、雨の日のカヌーなんて体験でも経験でもありません。たんなる拷問です。もちろん、お店(だったり個人だったり)のほうも心得ていて、「日程に余裕があるなら、明日か明後日のほうがいいですよ」なんて言ってくれるはずですが。
 自然が相手ですから、無理せず天候と相談しながら決めましょう。ダメならまた来ればいいんです。住用川もマングローブも逃げませんから。
 また、予約が混み合って一ヶ所で断られても、「マングローブ・ツーリング」をやっているところはたくさんあります。観光客相手のレストランや、ホテルのフロントなどにはパンフレットや名刺が必ず置いてありますから、気に入ったところに電話してください。

'94/ 8/ 3 干潮時、河口付近から川上を向く。
撮影者:quickone

 干潮の時間になったら、川沿いの道をバイクでたどり、川原に出たら、河口まで歩いてみましょう。
 住用川に掛かる橋を渡ったところから細い道を入っていくと、マングローブの森に沿った道に出ます。道は未舗装で、かなりでこぼこしていますから、ゆっくり行きましょう。道が尽きたところが川原になっていますから、そこにバイクを置いて、河口に向かって歩きます。普段は川底か海底になっている泥の地面は、一見、柔らかくて滑りやすく見えますが、意外としっかりしています。
 1km近く歩くでしょうか、川と海の境目に達すると、向こうにはただ海が広がり、「太平洋ひとりぼっち」みたいな気分になります。
 これは、大潮の干潮の時にしか味わえない、ちょっと珍しい経験といえるでしょう。

 マングローブ原生林を後に、再び名瀬に向かいます。住用村役場の前を過ぎてしばらく走ると、三太郎トンネルです。こちらも全長3kmほどある長いトンネルで、時折、トンネルのあちらとこちらで天気が変わっていたりします。夏の日中に通ると、トンネルの中はすこし涼しくて、なんだか通り抜けてしまうのがもったいないような気がしてくるほどです。
 三太郎トンネルもわりあい新しいトンネルで、三太郎峠を通る旧道がトンネルの上に切り開かれています。こちらの峠は、私はまだ走っていませんが、かなり過激にすばらしい峠道のようです。

 三太郎トンネルを抜けると、内海です。鏡のような入り江と、巨大な生き物がうずくまっているような小山の間を走るこのシチュエーションを、どう説明したらいいんでしょう。
 通るたびに「ああ、ここは通りすぎるだけではもったいない!」と思う一方で、「ちょっと整備され過ぎかな。もう少し放ったらかしにされてた方が…」と呟いてしまう自分がいます。
 バンガロー村があるので、家族やグループで、かつ長期滞在が可能な方に向いていると思います。ここも、カヌーやゴムボートがあればずっと楽しくなるところです。
 いずれ時間を作って、じっくり見てこようと思っていますが、そう思いはじめてからもうなん年も経っているというのも事実です。

 内海を過ぎてさらに進むと、和瀬の集落です。私の持っている地図(昨年、鹿児島で買った「奄美群島地図」平成六年版)には、和瀬の浜に「和瀬キャンプ場」が記載されています。おそらく、トイレとシャワーがあって、たまにキャンプする人がいるだけだと思うのですが、次に行った時にでも確かめてみましょうか。
 和瀬の集落を通過すると、またも急な斜面を駆け上ります。古仁屋から名瀬に向かう三つ目の峠道、和瀬峠です。内陸を抜けてきたこれまでの二つの峠とは違い、ほとんど海沿いの斜面に貼りつくようにして上りますから、木々の間からは太平洋が垣間見えるはずです。
 峠のてっぺんにあるのが、和瀬トンネルです。ほとんど素掘りのこのトンネルは、ダンプ一台がぎりぎり通れる幅で、軽自動車同士でもすれ違いができません。剥き出しの岩壁からは、どんなに天気のいい日が続いてもぴちゃぴちゃと雫が落ち、野生ムード満点です。
 現在(2000年8月末)、この和瀬峠の地下を貫通するトンネルが工事中で、いずれはこの峠も地頭峠と同様に忘れ去られてしまう(こちらには展望台すらない)のでしょうね。
 開発のすべてが善に直結するものではないでしょうし、かと言って、自然破壊が云々と苦情を言うべき立場でもありません。ただ、こうしたインフラ整備が地域の経済を活性化させるのは工事をしている最中だけで、工事が終わってしまえば「ハイ、ご苦労様」となってしまうのは日本中すべての過疎地域で起きてきた現象です。奄美のあちこちで進行している道路整備が、より良い結果を生み出すことを願ってやみません。

 和瀬トンネルからの長い下り坂を降りると、朝戸トンネルです。こちらも3kmほどの長い長いトンネルです。このトンネルを通り抜ければ、もう名瀬市内です。鹿児島行きのフェリーに乗るために夕方以降にこのトンネルを通り抜けると、都会と変わらぬ渋滞が待っています。つかの間、浮世を忘れて遊び呆けていた身には、現実を思い出させてくれるトンネルです。

 これで、奄美大島一周を終わります。足掛け七年、合計十一回の奄美ツーリングの集大成にするつもりでしたが、さすがに相手は大きく、表面を撫でるどころか、ごく一部をスケッチできたかどうかすらもあやしい結果に終わってしまいました。
 ことにこの三年ばかりは、名瀬港からキャンプ場までを往復する他はほとんど走ろうともせず、リゾートキャンパーを気取っていましたから、新しい情報はほとんど知りません。
 どうか、これを読んで奄美ツーリングを考慮されはじめた方は、最新の情報を入手されるよう、お願いいたします。いずれリンク集を作成するつもりでおりますが、本文中にもいくつかリンクがございますので、そちらの方もご参照いただけるよう、お願いいたします。

 奄美大島一周のつぎは、大島海峡をはさんで横たわる「加計呂麻島」にわたります。
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