Jan. '01
1/31 新宿 Talking Monkeyz えみコバーン Live featuring 武田真
1/28 渋谷 7th floor えみコバーン ソロ Live
1/27 赤坂 Grafitti PANTA Live featuring ロケットマツ、阿部美緒
1/24 赤坂 Grafitti えみコバーン & えみコバーンド Live
1/21 吉祥寺 Star Pine's Cafe RIKKI Birthday Live
1/14 神保町 美学校 ポエトリー・リーディング
1/12 渋谷 ツインズよしはし Holonic Platinums LIVE
1/ 1 新宿 Talking Monkeyz 大晦日オールナイト・オープン・マイク
渋谷 7th floor えみコバーン Live featuring 武田真。
えれぇことになってきただ。たった今、1/31 の「えみコバーン LIVE」に取り掛かった時点で、この文書のディスク上でのファイルサイズは35kバイトにもなってやがんの。INS 64kの回線で読み込んでも6〜7秒、アナログ回線の古いモデムで読み込んだら15秒くらい表示にかかるんじゃねーかしらん? 某箱根山通信氏が「テキスト主体の軽いページ」を標榜しながら、子供が生まれた途端に親ばか暴走状態になって、週明けの更新毎に25cm(三点測量方による測定)ほど垂れ下がった目尻の脇に数本の縦線が走っているであろう事を思い浮かべていたのだが、どうやら他人事ではなくなってきたようだ。
親ばかでもなんでもない分、オレの方が悲惨か。わはは。
「試練の五番勝負」だの、「恐怖の五連戦」だのと一人で盛り上がってきた二週間もこれでおしまいである。明後日(2/2)「ディスクユニオン御茶ノ水店インディーズ館」で「上野茂都(しげと)インストア・ライヴ」があるが、ページも変わるし、行けるかどうかも判らんから、とりあえずここで一区切りとしよう。
昼飯を食い終わる頃に曇ってきたこの日は、風こそ吹かないもののひりひりとする寒さで、新宿駅の「五平そば」に入った途端、眼鏡が曇って目の前まっしろ状態である。かけ蕎麦に七味攻撃で腹の脂肪分に攻撃を加えた後、My City のHMVでアフリカのCDを四枚と、悪口を載せた(注11)お詫びに「上々台風8」を購入。どうせ向こうはオレのことなんて憶えてっこないが、人間、優しさをなくしてはいけない。
Talking Monkeyz は、新宿5丁目という新宿でもかなり鄙(ひな)な地域にあり、この寒気の中を行くにはたいへんな決意と耐寒能力を必要とする。当然、オレにはそんなものはないから、新宿三丁目までは地下街を行くことにする。地上に出ると寒いモンだからわしわしと歩いて、Talking Monkeyz につく頃には、顔や耳など露出した部分以外はちょっと暖かいくらいになっている。LIVE 前で就労時間中のえみコバーンが注文を取りに来てくれる。
「ブッシュミルズですか?」うれしいねぇ、覚えていてくれましたか。でも、ちょっと暖まったのでビールを頼みます。ビールを飲み終える頃には着々と LIVE の準備が整っているので、今度こそブッシュミルズ。
今日の LIVE は、24日にもえみコバーンドの一員としてギターを弾いていた武田真との二人 LIVE。ちなみに武田真は、24日には E.G. だったが、今日はアコースティック・ギターだ。
「じゃあ、公開リハです」とは、2/16のインターネットTV「いんこのpm11」にこのコンビ(っつーとお笑いみたいだけど、武田真はギターに専念だからデュオとも言えないし…)で出演するので、そのリハーサルもかねて、という意味。「そんなんじゃダメだ、気合だ!気合を入れろ!」とアニマル浜口みたいなことを言いたくもなるが、えみコバーンは気が小さいから、緊張するとしおしおになるんで、まぁ許してやってくれ。客も全員、えみコバーンの知り合いだったし。
そんで、いきなり結論に飛ぶが、この日の LIVE は本当に良かった。目の前のブッシュミルズに口をつけるのも忘れて、オレはえみコバーンと武田真の音楽を堪能してしまった。
28日と比べれば、明らかに体調が良くなっているえみコバーンは、一曲目が終わったところで「キンチョーしてきました」などと言っていたが、無理にMCしようとしてハズすこともなく、ヨタレ気味ながらも落ち着いてステージを進めていく。そして肝心の音楽は、武田真のギターが、モノトーンに陥りがちなえみコバーンの楽曲に極細の線や点描のように色彩を与えていく。強すぎず、弱すぎず、柔らかに、撓むことなく。しかも、これは完成品じゃないのだ。「いんこのpm11」が本当に楽しみになってくる。
ステージ後の雑談でえみコバーンは「真ちゃんに喰われちゃったね」などと言っていたが、半分正解、半分誤解だ。
ステージ上の存在という点ではかなり押し込まれてしまったが、彼の存在がこの夜のえみコバーンの音楽に与えたものの大きさを考えれば、喰われて良かったくらいである。もちろん、えみコバーン当人はそんなこと判っているだろうが。
俺は「俺が作ったこの曲を聴いてくれよ、すげえだろ、俺ってなんてすげえんだ」とは思わない。「俺が作ったこの曲を聴いてくれよ、すげえだろ、これってなんてすげえんだ」と思うんだ。
ボノ (U2)
もう一杯、呑みたかったけど、最近、遅刻が多いので、この夜はこれにて退散。
つーわけで、いま Win Exploler で確認したら、このファイルサイズ、ついに40kだって。…ダメじゃん。
渋谷 7th floor えみコバーン ソロ LIVE。
「えみコバーン強化8days」第2弾である。相撲で言えば中日である。全勝で来ていれば勝ち越し、全敗で来ていれば負け越しが早くも決まってしまう日である。ちなみにここまでの戦績は…。
大嫌いな渋谷なので、直前になって行きたくなくなる。だって、オレに関する限り渋谷のイメージって、酔っ払った青少年たちが撒き散らした尿の臭いなんだもん。7thフロアって、そういう青少年たちがおおぜい屯しているエリアのど真ん中にあって、エレベーター・ホールは臭いが充満していてやりきれなくなってくる。臭いそのものもそうだが、そうした行為を当たり前のようにしている青少年たちと、それをなんとなく許容しているこの社会がやりきれなくなる。「17歳の殺人」が去年からの流行のようだが、37歳のオレだって出来ればなん人か殺したく思うときもある。「17歳の殺人」をしたり顔で持て囃しているじじい、ばばあどもをだ。カタルシスを安売りして、刺激のインフレーションで儲けているエンタテイメント産業の方針決定者どもをだ。税金も保険料もマンションの共益費も払っているし、会社ではそれなりの肩書きもついてるんだから、俺はなんだって要求できるんだという顔をしてノシ歩いてる知恵遅れの中年どもをだ。
なんだか道徳オヤジみたいだな。
井の頭線を神泉駅で降りて、ラブホテル街を突っ切る。このコースがまた嫌いなんだよな〜。ラブホテル街を一人で歩く冴えないちゅーねん男。なんだか安物のTVドラマのストーカー役になったみたい。でも、きっとオレってそういうのが似合うんだよな。出演依頼受付中。
開演時間ぴったりにエレベータを降りると、えみコバーンが電話中。チラシを眺めていたら電話が終わってご挨拶。まだいいの?と聞くと、「二番目だから」とのこと。この時はじめて複数の出演者がいることを知ったオレは、ライヴ・ハウス初心者です。いつもエラそうに書いてるから、そうは思えないだろ。
前の方にどうぞ、と促されて入っていくと、なんだ、ホントに一番前のテーブルしか空いてないじゃないか。エラそうにどっかりと腰をおろす(この五年で急激に太ってるねん)。
最初の出演者は”roly poly rag bear”。女性のヴォーカリストの前には、なんと鉄琴!男性ギタリストとのデュオで、ボサノヴァを演奏するんだけど、このギタリストがなんとも言えない味を出してんだよ。最初の曲でコーラスが入ったときに、声はすれども姿は見えず。確かにギタリストの目の前にヴォーカルマイクはあるんだけど、ほとんど口が動いてないんで、オレは一瞬、「いっこく堂」かと思っちゃったよ。
7th フロアってのは、一般のライヴ・ハウスよりも対象年齢を少し高めに設定してるらしく(注13)、ステージ部分もドラムは置くことすら考えていませんと言わんばかりの省スペースなので、こういうボサノヴァってもうちょっとハマってもいいと思うんだが、客の反応は今ひとつ。7th フロアという店自体の雰囲気がボサノヴァを許容するところまで成長していないのかもしんない。対バンにも無理があったか。えみコバーンの客は年齢層高い(注14)んだけど。
あ、ちなみにオジサンはナゴみました、はい。
そんでえみコバーンだ。いつもどおりのぴりぴりムードで登場。まぁ、えみコバーンの場合、あんまりナゴまれたりヘラヘラされたりしても困るんだけどさ。
「迷子」からはじまる。いつもどおり、剛球一直線、突き押し一本槍(注15)。出だしに力が入りすぎて不安定になるところまでいつも通りなんだが、今日は声に張りがある。よーし、これならオッケイ!って、オレが頷いてどうする。
7th フロアのPA装置は、割りと中音が張り出すタイプ(注16)で、えみコバーンみたいなヴォーカリストには、実に気分よく歌える音が出てるハズだ。おっ、こんなに声が出てるのか、調子いいぞ、もっと行っちゃえ!てなモンで。
「バタフライ」、新曲「明るい方へ」と続いて早くも名曲「歯を磨こう」。どうも先日の赤坂 Grafitti でのライヴ以来、ギターのストロークが不安定なようにも思えるが、えみコバーンはえみコバーンであって、メトロノームじゃないんだからそんなことは気にしちゃいけない。ここら辺で落ち着いたのか、「人魚」で歌詞をまちがえそうになってごにょごにょっとなったのはご愛嬌。新曲「すべて見渡せる止り木」は完成度が上がってきたし、次のライヴの告知はぜってぇ意識してただろって突っ込みたくなるくらいキメキメだった。「太陽」、「おともだち」で〆たライヴは、これまでオレが見たベスト3に入るデキでした。でもさ、帰りに土屋さん(でいいのかな?)に聞いたけど12月のトキモンはもっと良かったんだと。口惜しいなー。
「31日のトキモンは期待して」と言われたけど、素直に頷けないオレって、ちょっとスレ過ぎだろうか。
3番目の出演者「AS Brothers」は、メチャおもろいで、ホンマ。
登場のテーマソングがオーティス・レディングの「I Can't Turn Your Loose」(注17)というセンスが「くぉら、ガキども、そりゃワシのテーマソングじゃ」とインネンをつけたくなる位にナイスだし、ライヴがはじまったら、次から次へと笑かしてくれる。2月にえみコバーンが渋谷の la mama に出るときに進行役とミニ・ライヴをやるんだそうで、これは楽しみですね。
当たり外れの激しいえみコバーンは、今回は当たりでした。さて、あと一回。えみコバーンのホーム・コート、Talking Monkeyz だ。
赤坂 Grafitti PANTA Live featuring ロケットマツ、阿部美緒。
未明から降りだした雪は、昼頃にはすでに10cmほどの積雪になり、しかもまったく衰える様子がない。気象庁も「午後遅くには雨になる」という予測を気前よく撤回し、吹きつける風はミニ地吹雪の様相すら呈しはじめる。
こういう時だけは人一倍心配性になるオレは、Grafitti のホーム・ページやウェザー・アイをチェックするが、たいした情報は得られない。しかし、考えてみれば実にPANTAらしい状況である。まさに、「嵐が待っている」だ。
赤坂駅につくと、色とりどりの少年少女が撒き散らされている。TBSが目の前にあるんで、なんかのアイドルかと身構える(注9)が、少年が三割ほど混じっている。よくよく観察すると、Luna Sea を愉しみにしている皆さんであった。小心者のオレは、帰りの切符を購入しておくことにしたが、これは過剰防衛というものであった。
霙(みぞれ)が混じり始めた雪の中を、よろよろと Grafitti に向かう。いちおう、オレの防寒ワード・ローブ10段階のうち8あたり(注10)で来ているので足元以外は問題なし。Grafitti の前は、四半世紀前の少年少女(こっちは元少年が九割強)が並んでいる。「整理番号順にご入場ください」との声にチケットを確認する。やばい。オレのチケットに印刷されたそれは、なんと110番。なにせ相手はPANTAである。そのままつまみ出されても文句は言えない(ホントに覚悟だけはした。馬鹿だねぇ)。
少々右の壁よりなれどステージがよく見渡せる席を確保して、さあ、PANTA登場まであと一時間。ウォッカのオン・ザ・ロックを舐めつつ、「PANTAは、いくつになったんだろう」とか「なにかあった時に”ナーンセンス!”と叫ぶ人(注11)は居るんだろうか」とか、埒もない事ばかり考えている。
10分ほど押してPANTA登場。一曲目は「暗闇の人生」のようにも思えるが、なんだかずいぶんと歌詞もアレンジも変わっているので新曲に聞こえる。予習のつもりで「Naked」、「Naked U」、「歓喜の歌/頭脳警察」を何度も聴き返してきたが、やはりRIKKIのあと一週間での詰め込みでは無理があったようだ。つーか、近頃アタマ悪くなってるネン。
そんな記憶力の衰えに追い討ちを掛けるかのように二曲目からは新曲攻勢だ。「”マラッカ”みたいな曲になっちゃって」とこちらを掴んでおいて「仮タイトルは”氷川丸”(注12)です」とオトし、「オフクロがあれに乗って引き揚げてきて」とホロリとさせて演奏しはじめた曲のテーマは「病院船」。PANTAの十八番、船の歌。これは凄い。「マラッカ」と双璧を成す名曲だ。もう、これだけでモトは取れました。ありがとう、PANTA。あとはCDが「本当に」出るのを待つだけだね。
新曲攻勢はガンガンと続くのだが、哀しいかな、こっちの記憶力があっぱらぱーだ。悔しいからファン・クラブに入会し、セット・リストが貰えるか訊いてみることにしよう。
もちろん、定番の名曲も押さえています。「スホーイの後に」、「まるでランボー」、「瓦斯」、本編のラストに「さようなら世界夫人よ」、最後の最後に「裸にされた街」。
また、珍しいところでは、「ふーちゃん(重信房子!)帰国記念」で「彼女は革命家」。PANTA、盛んにテレながら歌ってた。へぇ〜、ああいう曲だったんですか。「赤軍兵士の歌」は、ブレヒトのオリジナル・スコアどおりに歌ってから演奏に入っていくという、「Naked U」での「まるでランボー」みたいな構成。「アラバマ・ソング」もドアーズではなくブレヒト・スタイルで。「カリフォルニア・ベイ」と歌っていたのは、梅津和時の”生活向上委員会”と共演して以来のレパートリーなのだろう。
LIVE のタイトルに「featuring ロケットマツ、阿部美緒」とあるので、他にメンバーがいるのかとも思わせるのだが、きっちり三人だけで(阿部美緒(vl)は、座ってジュース飲んでるだけの曲もあったし、PANTAのギターのみの曲もあった)演奏し切った。もちろん、リズムセクションやエレクトリック・ギターが無いために演奏できない曲もあったのだろうが、シンプルな編成は、却って楽曲の良さを浮き彫りにして、「日本のロック史上、屈指のメロディー・メイカー”PANTA”」を強く印象付ける結果になった。「オレは天才肌じゃないから、たくさん書いて捨てていくんだ」、「マラッカの時は5、60曲書いてます」と語るPANTA。お願いだから早く次のアルバムを出してくれ。
この日、ステージ中の客席とのやり取りやMCなどから判明した情報は以下の通り(順不同)。
次のアルバムは三枚組みにしたい。マキシ・シングルで三枚組全9曲なんてのじゃなしに、12曲入り(一枚あたりということ?)三枚組が目標。一枚ずつ色分け(アコースティック編成、フル・バンド編成など)する。発売時期については、言えない。嘘つきになりたくない。
今日の三人編成は漣(さざなみ)と名付けたい(「さざなみ!」とコールが入って、「相撲取りみたい、考え直したほうがいいかな」)。
PANTAは、そのカルト的な存在感ゆえに一般に露出される情報がきわめて限定されている、困ったミュージシャンである。誰か何とかしてくんねぇかな。
赤坂 Grafitti えみコバーン & えみコバーンド LIVE。
ついに、「えみコバーン強化8days」の幕開けである。これから8日間で3回のLIVEを通じてえみコバーンに強化されてしまうのだ。「えみコバーン速習講座」みたいなモンである。うーむむむ…。頼みの綱のリトエル社長さいとういんこさんも「あたし、31日は行けな〜い」だと。
そうなのだ。21日に上げた予定のうち、1/30 は間違いで、1/31 が正解なのだ。まじめにあちこちのBBSに告知してるなと思ったら、恐るべしえみコバーン、自分の LIVE の日付を間違えて告知してる。オレのところにも告知しに来てくれた(ありがとね、えみコバーン)ので、オレが訂正しておこう。
さて、現場に戻ってと。
赤坂駅でトイレを探したのだが見つからず、仕方がないから直行した「Grafitti」で、何も考えずに入り口近くの空いてる席にコートとバッグを置いて、トイレに駆け込む。うー、間に合った。トシのせいか、最近は近いんだよな。ここも黙ってるとお子様味のお酒を出されるので、ウォッカのオン・ザ・ロックを注文。戻ってグラスを舐めてると、あちゃ〜、失敗した。業界関係者と席をシェアする格好になってしまった。
むか〜し、Prince の名古屋レインボー・ホール LIVE('89) (注7)でめっちゃヤな気分になって以来、業界関係者席には近寄らないことにしているんだが、他の席も埋まっちゃったし、我慢すっか。名古屋の業界人よりはマシ(注8)だろうし。
ウォッカの酒精が体を暖めはじめたな、と思ったところで「えみコバーン & えみコバーンド」登場。ラインナップは、つやコブラ(ds)、武田真(eg)、すすむ〜ん(b)、そしてえみコバーン(acc.g)。2000年12月の「リトエル祭り at 渋谷 la mama」に行ってないので、バンド形式のえみコバーンはその前、6月の「リトエル LIVE」以来。あれ、そんなモンですか。ソロのえみコバーンをたくさん見ているので、なんだかバンドでも見てたつもりになってたんダスな。あるつはいまー、でしょうか。
「117」ではじまった演奏は、やっぱしベースの「すすむ〜ん」が GROOVE の中心になっている。楽器というものがすべからく平等に、公平無私に、完全民主的に駄目なオレがこんなことを言うのはどうかとも思うのだが、やっぱ Rock のベースってこうでなきゃいかんよな、と頷いてしまうようなプレイである。だいたい弾かずに突っ立っている時だって、「ミュージシャンて、カッコよくなきゃダメなんだぜ」って立ち方である。きっと近くで見たら、40台半ばの冴えないおじさんなんだろうけどさ。
あ、そうか、最近のロックをオレが受け付けられないのは、カッコよく見えないからなんだ。
今回は、早くも本題から外れてしまう。いや、オレの場合、こっから先が本題かな?
対バンは、「宇宙(そら)リズム」ちゅうバンドで、ぱっと見つーか、ぱっと聴きはこっちのほうがポップだしいいプレイをしてる。Grafitti の客席は、9割方、宇宙リズムを聴きに来たと思われるノリで、えみコバーンドもそれに呑まれた部分もあったのかもしれないが、プレイに勝ち負けをつければ(イカ天みてぇだな)、我々ぱんぴーは、間違いなく宇宙リズムに一票を入れるだろう。
メロディーはわかり易いし、バンドの音は適度な厚みを持ってるし、リード・ヴォーカルはネーちゃんで間奏にはヴァイオリンを弾いててヴィジュアルなインパクトもあるし、ホント、至れり尽せり。JBL(日本バスケットボール・リーグ)のなんとかいうチームの応援歌に採用されたっつー曲なんか、セコいスポーツ・バラエティ番組のテーマソングとして明日TVから聞こえてきても不思議ない曲だったし。ジジィ、ババァにも抵抗なく受け入れられそうなバンド、だった。
しかし、ポップ・ミュージックの本質ってのは、そこにあるんじゃないか?本質のなさっていうかさ。ノリ易い演奏は、打ち込みのバックトラックの上にバンドの音を重ねて厚みを出してるだけだし、わかり易いメロディーは、個性を捨て切っているかのようにも聴こえる。でも、客は喜ぶのだ、ウケるのだ。そして、それがポップ・ミュージックなのだ。
重厚なサスペンスよりも、鋭い切り口で真相に迫るドキュメンタリーよりも、お馴染みのタレントが出てきて、見慣れたキャラクター同士のボケと突っ込みを見せられるヴァラエティを人々は喜ぶのだ。
むかし、音楽評論家だった頃の渋谷陽一は「ポップ・ミュージックは機能主義的な音楽である」てな事を言っていた。哀しいかな、事実である。キャッチーでポップでノリが良くてイマ風で、なによりヴィジュアルが良ければ、とりあえず我々ぱんぴーは喜ぶのだ。リアルな表現を求めて女装(Hunky Dory)したりトム少佐(Space Odity)になったり間借り人(Rodger)になったりしてもいまいち売れなかったのに、白いスーツを着て「れっつ・だんす」といった途端に億万長者になったデヴィッド・ボウイの例を上げれば足りるかな?
なんだか「えみコバーンに明日はない」みたいになってきたけど、元々が万人受けする音楽じゃないんだから、地道にちょっとずつやってってもらうしかないんだろうな。さて、あと二回だ。
吉祥寺 Star Pine's Cafe RIKKI Birthday Live。
さあ、来たぞ。今日からライヴ四連戦だ。と言っても、11月みたいな大マジ四連チャンつうワケではなく、21日:RIKKI、24日:えみコバーン、27日:PANTA、30日:えみコバーンで、中二日ずつあけての登板だから、けっこう余裕なのだ。フォっ、フォっ、フォっ(バルタン星人)。
あり? 28日にもう一丁、えみコバーンがあったぞ。ご、五連戦やんけ。中二日パターンも崩れたし。あかん、目いっぱい不安になって来よった。と、突発的に大阪弁化するオレだったりする。
年末に、直接 Star Pine's Cafe でチケットを買い、その勢いでRIKKI HPのBBSに「チケット買ったモンね」と投稿したところ、同BBSの常連、辻田氏から「一緒に行きませんか」とのメール。最近のオレは「寂しい老後」がキー・ワードになっているので、ありがたくお受けさせてもらう。ありがたや、ありがたや。
本来ならば、あわてて前売りを買うつもりはじぇ〜んじぇんなかったのだが(年明け、10日過ぎでいいやって思ってた)、年末に「ファイナル・ファンタジー騒動」(注3)が持ち上がって、「こォらイカん」と「Star Pine's Cafe」に走ったのだった。あ、そうか、これで調子狂って、大晦日は「年越しオープン・マイク」になったのか。生きるって、大変だよな(<勝手に言ってろ)。
開場時間ぴったりに Star Pine's Cafe にたどりつくと、五時頃から並んでいたという辻田さんたちに会い、バースデイ・プレゼントのケーキの箱にサインさせて貰ってから列の後ろに並ぶ。そう、今回は列が出来ているのだ。こりゃ凄い。「ファイナル・ファンタジー効果」(注4)か。
でも、明らかに変な人はいないので、ちょっと安心。と思ったら、Star Pine's Cafe の中はカメラマンだらけ。とにかく、カメラマンというのは道具だけではシロートとクロートの区別がつかない種族なので、またも不安がむくむくと湧き上がるが、いきなりフラッシュをたくような馬鹿もおらず、無事にライヴは始まったのでした。めでたし、めでたし。
最初にピアノの黒田亜樹(以下、クロアキ)が出てきて弾きはじめるが、なんだかスチール・ギターみたいな音。二曲目に、そのまま何もしないで普通の音になったから、あれはマイクで拾った音に何かエフェクターを通してるのかな?
ステージは二部構成で、前半のRIKKIは「アーミー系の古着屋で買いました」風のジャンバーに厚底のブーツ(かわいいと言うか、涙ぐましいというか)。赤の皮ジャケのクロアキとのデュオで数曲、途中から中世のアルルカンみたいな衣装でヴァイオリニストのHONZIが登場。このあたりだったか、照明が緑主体になるとステージ上方の壁に燈体とケーブルのシルエットがジャングルみたいに映し出されて、故意か偶然か、さながら「金作原原生林」。もし、このライヴが映像になったら、ここは雰囲気出るよ〜。
どうしてもRIKKIのようなバラード主体ってーか、「癒し系」のライヴでは目を閉じてその世界に浸りたくなるけど、こういうちゃんとしたステージではちゃんと目をあけている事も大事なんですな。ちうか、こないだの La Cana と違って、少しハコが大きいぶん拡散するんで、照明の効果ってのは充填材みたいなモンですわ。<ワケ判らんて。
二十分ほど休憩したあとの第二部では、マントみたいな赤いオリジナルの衣装で登場。ウケを狙って「あかの(中野)RIKKI?」(注5)と声を掛けたが、「情熱の赤」と返されるにとどまった。やはり修行が足りんか、オレ。
第二部も、RIKKIの衣装換え以外は一部と大筋での変化はなく(必要ない)、まったり、ゆったり系の世界が展開されて行きます。強いて言えば、少し島唄系の比重が大きくなったかなという雰囲気はあったけど、ラストの「乙女のワルツ」で、「ひっくるめてRIKKIワールド」の完成です。
そう、この「ひっくるめてRIKKIワールド」が今のRIKKIなのだ。同席した「川崎のチャーハン」氏によれば、奄美では「RIKKIは島唄に戻るのか、島唄を捨てるのかと話題になっている」らしいが、RIKKI当人にはぜ〜んぜんカンケーないのだ。「ひっくるめてRIKKIワールド」だから、「蘇州夜曲」(この夜はなかった…と思っていたが、実は演奏していた。藤沢の健二さん、ありがとう)も「Prayer」も「ファイナル・ファンタジー」もありなのだ。
そしてこの「ひっくるめてRIKKIワールド」を強く後押ししているであろう人が、アンコール二曲目(一曲目は「ファイナル・ファンタジー]の主題歌」)に登場した築地俊造氏だ。
「三味線の師匠」とRIKKIに紹介されてステージに上がった築地俊造氏は、右手の親指と人差し指で三味線の撥(ばち)をもち、残る三本の指に小太鼓(チヂン?)の撥を絡ませる。三味線1ストロークに太鼓の1ヒット。ちょん、ちょんと具合を確かめたら、はじまりました「六調メドレー」。
リード・ヴォーカルはもちろんRIKKIですが、築地氏は余裕のお囃子で、はじめて見たオレは驚くやら呆れるやら。「よっ、人間国宝」とか声を掛ければよかったかな?
「六調メドレー」も終えて半ばうるうる加減でお辞儀するRIKKIを横目に築地氏「RIKKIの誕生日ですから、みんなで Happy Birthday を歌いましょう。私が三味線を弾くから」。そりゃ、みなさん、ノりますよ、島唄マイスターの三味線で、それも Happy Birthday が歌えるなんて、一生に一度だってあるモンかってーの。
RIKKIも喜ぶよりは驚いて「”赤い靴”を島口(注6)でやるのは見たけど」と興味津々。実際には客の歌のほうが先走りすぎて、歌のアクセントに三味線が入る感じだったけど、まあ、それはご愛嬌。
さぁRIKKI、次のライヴはいつだ? もうどっからでも来い!
神保町 美学校 ポエトリー・リーディング(注1)のオープンマイク(注2)イベント 。
美学校というのは、読んで字の如し、美術学校である。とはいえ、文部省の認可を受けた学校法人のようにはとても見えないんで、私塾のようなモンだろう。ここは、当日の主催者というか仕切り係りのマサ・ホシノ・ハルが「出たところ」だそうである。
神保町の裏通り、高度経済成長期にさかんに建てられた小さなビルの3階。ドアをあけるとすでに鎌田幸樹君のリーディングがはじまっている。そーっと後ろに回って、あいてる椅子を見つける。
美学校の内部は、高校の美術教室というか、オレの大学時代の劇研(東海大学文化部連合会演劇研究会)の部室(面積に雲泥の差があるが)というか、はたまた単なる物置というか、穴蔵的乱雑さで小学生用秘密基地風で都市のエアポケット風で、実に居心地がよろしい。
しかし、この居心地がよろしいっちゅうのが曲者なわけで、出演者自身も緊張感がなくなるんだか、「やりづらい」とぼやく声が終演後に幾つか聞こえて来た。「ソファーがいかん」とか「いつもは立ってやってるから」とか言っていたが、全般的にテンションが上がる要因が欠けていたんじゃろう、ごほごほ。
そんなわけで、この日は、特に目立った人なし。雰囲気は良かったけど低調、という奇妙なオープンマイクであった。寒いのもいかんかったか。
渋谷 ツインズよしはし Holonic Platinums LIVE。
リトル・エルニーニョ・レコードの契約アーチストにして、マクドナルドその他のCMソングの作曲家としてもうちょっと有名でもいいのにいまいち有名でない(残念なことです)「明石隼太」氏と、日本に十人といないであろう古楽器リュートの演奏者にしてギタリストの「太田研司氏」のユニット、Holonic Platinums(以下、ホロプラ)の LIVE である。なお、ゲストとして、すでに11月にも取り上げたテルミン奏者のROMが出演する。
寒い日(シベリアからの強力な寒気団が南下しつつあった)で、おまけに空腹で、「よしはし」までとても持ちそうにない。この日は「よしはし」名物の「ピラミッドカレー」を食そうと思っていたのだか、泣き叫ぶ腹の虫には勝てない。渋谷駅のホームで「かけそば」を食う。ダイエットのため具なし。七味をたっぷりかける。カプサイシン効果で脂肪を燃やすんじゃい。隣のオヤジはカレー・セットを食ってやがる。けっ、立ち食いのカレーなんか喰えるか! でも美味そうだな…。
そば臭い息を吐きながら、よしはしに到着。なんきん氏の隣にいるのは、詩人のマサ・ホシノ・ハル氏ではないか。ポエトリー・リーディング(注1)のイベントでもないのに、なんでマサ・ホシノ・ハル氏が? 終演後、次回の Talking Monkeyz での LIVE でホロプラをバックに詩を読むのだと。それも愉しみ。
おっと、いきなり終わってはいけない。
LIVE は、明石隼太のソロではじまる。「明石隼太#1」から「明石隼太#3」まで三曲を演奏。続いて太田研司がリュートのソロ。これがちょっとした聴きモノ。だってアナタ、リュートだなんて、そうそう聴けるもんじゃないっスよ。会場である「よしはし」の壁が、コンクリートの打ちっぱなしの上にペンキを塗っただけっつー反響しすぎ状態を逆手にとってPAなしでの演奏と来た日にゃあ、感動モンでございますって。
さて、ホロプラそれぞれのソロの後は、ROMのテルミン、休憩をはさんでメインのホロプラのステージと続いていく。
ホロプラの演奏では、張りがある明石隼太の声に、太田研司の細めの声がハモるのがまたなんとも言えぬ味わいで、このデュオの可能性の大きさを強く印象づけられました。
アルバムからの曲を一通り終えた後は、観客にテーマを出させての即興演奏。「なにかありませんか」の声にオレはさっと手を上げて、「カレーライス」。とろとろのこくうまカレーを予想していたら、ヒリヒリと辛口カレーのお出まし。
次のテーマは「静寂」。まさか演奏しないわけにはいかないべさ、と思っていたら、テンションの高いスピーディーな演奏。なるほど、「静寂」と不可分の緊張感、ですかね。
最後のテーマは「サボテン」。砂漠にぽつぽつと立つサボテンのイメージでいたら、なんと、針の山ならぬサボテンの山。うーん、そうかー、オレは寂しく考えすぎなんだな、きっと。
最後にROMも出てきて三人でインプロヴィゼーションを二つやっておしまい。終わってみれば、約二時間、てんこ盛りの LIVE でした。
新宿 Talking Monkeyz 大晦日オールナイト・オープン・マイク(注2)。
大晦日と銘打っているんだから、12月のイベント記録に入れるべきだと主張するそこのアナタ、人生ってのはね、正しいばかりが正解じゃないんだよ。12月のイベント記録が24kbytesにも達してしまい、これ以上は増やしたくないのと、Talking Monkeyz にオレが到着したのが23時55分頃で、ちょうどカウントダウン前の休憩中っつーか、ダベりタイムで年越し蕎麦が配られていたんで、思い切って、1月分に廻す事にしたわけだ。
それにオレは、年の単位であれ、世紀の単位であれ、きちきちと区切って考えるのに違和感があるし。別に、年号が変わったからといって何かが急に良くなることもないんだし(いきなり悪くなる事もないんだから、モンクを言っちゃいけません)。
本来の予定では、31日は、朝から年賀状の宛名書きを片付け、掃除を終わらせたら夕方のハイウェイ・バスで帰省するつもりであった。
本当は、ここだけは行きたくなかった。だって、イベントの趣旨が「一人ぼっちで21世紀を迎えたくないあなたのためのオールナイト・オープンマイク」っつーんだから、後ろ半分は置いといても、前半分はオレのためにあるようなお題目じゃないか。そんなとこ、行きたくなんかねぇー!だが、宛名書きは遅々として進まず、掃除も、進展があったのは局地的っちゅうか、ほんの一部だけ。形ばかりの抵抗も空しく、JRハイウェイ・バスも新幹線も東京駅を出発してしまう。あとはうちで紅白を見るか、新宿に行くかの選択肢だけが残ったワケだ。是非もない。
ぶちぶちと文句を言いつつ、掃除は年明けに延期しつつ、Talking Monkeyz に着くと、どうしてどうして結構なお出ましである。どっかにあいた席はないじゃろうかとつっ立っていたら、明石隼太氏が、向かいの席が空いてるよ、と呼んでくれた。やれ、ありがたや。今度、ライヴに行きますからね。
ビールを飲んだり、振る舞いの年越し蕎麦をいただいたりしていると、カウントダウン。つーても、主催者のさいとういんこさんが、「いま、2001年になりました」てなもんで、まぁ、ゆるゆるで良いかなってなモンで。
イベント全体もゆるゆるで、詩を読みたい人が用意されたノートに名前を書き、名前を呼ばれたら読んで、読み終えたら席に戻る。何度か休憩をはさんでそれが繰り返される。ただそんだけ。
しかし、このゆるゆるが、「へっ、もう大晦日だもんね。年越ししちゃったもんね。21世紀だもんね。いまさらあわてたってもう行っちゃったもんは、行っちゃったんだもんね」という雰囲気を微妙に匂わせて、誰にも平等にうまいこと作用しているみたいだった。
前半のハイライトは、明石Paul McCartney隼太の「20世紀のROCKを大胆に振り返った」弾き語り、いやさ弾き歌い。ROCK世代のエンターテイナー、明石隼太は、「リトエル祭り以来、歌に目覚めた」さいとういんこの「さりげない奇蹟」のバッキングも務めてご帰宅。
後半、強力だったのは、なんと、アライ・ジュン。なんと、なんて言っちゃあ悪いが、今回はおじさん、やられました、降参。
全体にわたって「アングラの女王」然と君臨していたのが川村むつみちゃん。ひげのギタリストを従えて、堂々たるパフォーマーぶりは貫禄充分。コ洒落系のお嬢ちゃんかと思っていたが、なかなかやるもんですね。おじさん、感心しました。
あとひとり、印象に残ったのはヤマグチ・ジュン(字は判らない)。覚えておくべし。
花園神社に初詣して帰ったのだが、まあ、それは別の話。