「本物は誰でしょ〜!!はい拍手〜!!!」
ぱちぱちぱちぱち!!
と、観客席に座っているいつもの面々が拍手する。
「えー、みなさん。本日お集まりいただいたのは他でもありません。
シャオリンさんの主様へ対する想い、これを見ていただきましょう!!
それではステージにご注目ください、守護月天シャオリンさんです!!」
お立ち台と言わんばかりの場所にシャオ登場。そしてぺこりとお辞儀。
「こ、こんにちは。」
「はーい、こんにちは〜。
これから私が幻影の術をかけてそっくりにした、五人の主様に登場してもらいます。
それぞれに喋ってもらっていき、シャオリンさんは誰が本物かを当ててくださ〜い。」
「なるほど、それで観客席に居る皆さんも全員太助様の姿なんですね?」
観客席をきょろきょろと見渡すシャオ。そして一人姿が違う人物を発見。
「あら?ルーアンさん?」
「そうよ。あたしは審判みたいなものってわけ。」
「ふええ、そうなんですかあ・・・。」
なぜだか感心した様に呟くシャオ。ヨウメイがそこで区切る。
「それではいいですか?一人目の主様、どうぞ!!」
姿は太助という人物がステージに現れた。
「(ふぁさっ)七梨太助です。(ふぁさっ)」
「・・・二人目どうぞ!」
またもや姿が太助なる人物が現れた。
「その・・・七梨太助だ。」
「・・・三人目どうぞ!」
更に姿が太助なる人物が現れた。
「うおおお!七梨太助だあ!!」
「・・・四人目どうぞ!!」
またまた姿が太助なる人物が現れた。
「やっほー、七梨太助ですう。」
「・・・五人目どうぞ!」
最後の姿が太助なる人物が現れた。
「どうも、七梨太助です。」
「さてシャオリンさん、この中から本物を当てて・・・」
「バレバレじゃないの・・・。」
ヨウメイの言葉を遮って呟くルーアン。それに続いてシャオが五番の太助に駆け寄る。
「この方!この方が太助様です!!」
「正解でーす!!見事当てられたシャオリンさんには後で賞品を!
そして・・・四人とも!!何バレバレな事やってるんですか!!ふざけないでください!!!」
「別にふざけては・・・。(ふぁさっ)」
「そうだぞ、ヨウメイ殿。」
「俺の熱き魂のどこがふざけていると言うんだああ!!!」
「きゃーん、今あたしったら身も心も七梨先輩・・・。」
「それがふざけてるっていうんですよー!!!!」
ステージ上で乱闘が起こる。太助とシャオはいち早く逃げていた。
「あーあ、なんなのこれ。それじゃあまたね♪」
ちゅっ、と観客席に投げキッスを送るルーアンであった。
<おしまいっ>
あるときは・・・。
「ヨウメイ殿・・・暑い・・・。」
「来れ、冷気!!」
「おお、涼しい。ありがとう・・・。」
またあるときは・・・。
「ヨウメイさん、お風呂焚いてくださいませんか?」
「来れ、湧水!!」
「まあ、温泉ですね。ありがとうございます。」
はたまたあるときは・・・。
「ねえヨウメイ、雪合戦がしたいわあ。」
「来れ、大雪!」
「きゃー、雪よ雪。ありがとねん。」
そしてまたあるときは・・・。
「ありゃ、せっかくキャンプに来ってのに火をつける道具を忘れてきちゃったよ。」
「来れ、炎!」
「さっすがヨウメイ♪さんきゅうな。」
更にまたあるときは・・・。
「なんだ、せっかくサーフィンしに来ってのに波が穏やか過ぎるなあ。」
「来れ、強風!」
「おおっ、すげー波だ!!さっすがヨウメイ!!」
というわけである日の夜・・・。
「ひっく、山野辺さん。なんかねえ、ひっく。わたしゃ人生に疑問をねえ・・・ひっく。
感じるんですよ・・・ひっく。」
「・・・なんでサイダー飲んで酔っ払ってるんだよ。」
「さあ?あはははは・・・山野辺さんも飲めや飲めや、ひっく。」
「しかも夜中にあたしの家まで押しかけてきて・・・。今何時だと思ってるんだよ。」
「草木も眠るうしみつどき〜、あはははは、ひっく。」
「今度七梨達に会ったらおもいっきり文句言ってやる・・・。」
「うにゃあ?けんかはいけませんぜだんなあ。・・・ひっく!」
「誰がだんなだ!!」
<おしまい>
「那奈さんは数字の七が好き!」
「野村殿が飲むラムネ!」
「遠藤さんがえんどう豆を食べる!」
「花織殿の香!」
「ルーアンさんが狂う案!」
「宮内殿は髪や団扇を触るのが好き!」
「キリュウさんがジェット気流に乗る!」
「ヨウメイ殿は余命(ヨウメイ)幾ばくもない!」
「ちょ、なんてこと言うんですか!!」
「ヨウメイ殿こそジェット気流に乗るとはなんだ!!」
「なんですって!!」
「なんだと!!」
バン!と扉が開く。
「二人とも何訳のわかんない事やってるんだ!それにけんかなんかするな!!」
「主様・・・太助がこけたスケート・・・。」
「主殿・・・太助助けてー・・・。」
ボカボカ!!!
「う、うわ〜ん、主様がぶったあ〜!!」
「くっ、さすが日頃鍛えてるだけの事は有る。いい攻撃だ・・・。」
「ぐすん・・・七梨の七輪・・・。」
「むむ・・・シャオ殿もまっしゃお・・・。」
「やめろってんだろ!!」
ボカボカボカボカ!!
「うわああん、またぶったあ!!」
「な、なかなかいい拳だ・・・。」
「うええん・・・熱美ちゃんの厚み・・・。」
「うう・・・翔子殿の証拠・・・。」
「・・・なんなんだ、この二人。一体なんなんだよー!!」
<おわり>
キリュウの部屋。
「あはははははは!!!」
「何が可笑しい、ヨウメイ殿!!」
「あはははははは!!!」
「駄目だこれは。話にならんな・・・。」
食事時間。
「あはははははは!!!」
「ちょっとヨウメイ、食事くらい静かに食べなさいよ。」
「あはははははは!!!」
「静かにしろって言ってんでしょうが!!」
リビング。
「あはははははは!!!」
「なあ、ヨウメイの奴わらいだけでも食ったのかな?」
「かもしれないわね。今日一日ずっとこんな調子よ。」
「まあ大変ですわ。早く治療しないと・・・・。」
「ほっとけば?そのうち治るって。」
「あはははははは!!!」
夜、キリュウの部屋。
「あはははははは!!!」
「・・・静かにしろ、ヨウメイ殿!!せめて寝るときくらいは笑うのを止めろ!」
「あはははははは・・・ごほっ、ごほっ・・・うう、疲れた・・・。」
「ひょっとして無理矢理一日笑っていたのか?なぜわざわざそんな事を・・・。」
「笑う門には福来るってね。それをこれから証明します!」
「確かにそういう言葉はあるが・・・どうやって?」
「ふふふ・・・来れ、宝船!!」
「なっ!!?」
ピカアー!!!!
眩い光とともに宝船が現れた!!
「た、宝船・・・。」
「さあキリュウさん、一緒に行きましょう!幸せな旅へ・・・!!」
・・・そして翌朝。
「うーん・・・ありゃ、ここは?」
「おお、起きたかヨウメイ殿。何やら寝言でずっと笑っていたが、楽しい夢でも見ていたのか?」
「ふえっ、夢?・・・ちょっとキリュウさん!!宝船はどうなったんですか!!」
「な、なんだいきなり・・・。そんな事よりヨウメイ殿。
あなたの笑い声によって私は快く起きる事ができた。ありがとう。」
「え?え?そりゃまたどうしてですか?」
「いい目覚ましになった。普通の目覚ましもびっくりのな。
私には良く分からないが、なにか特殊な音波なのかもしれない。」
「は、はあ・・・。」
「それで今度調べてみようと思う。ヨウメイ殿の笑い声はいかなるものか、試練になるぞ。」
「人の寝言を試練になんか使わないでください!!それにしても、あれは夢・・・。」
うかれるキリュウとは反対にがっくりとうなだれるヨウメイであった。
<おわりっ>
サブーン・・・
「はあ、いい気持ちですねえ・・・。ねえキリュウさん。」
「ああ・・・。しかしなぜ一緒に入る必要が?」
「それはね、ある競争を、と思いまして。」
「・・・どうせまたろくでもないものだろう?」
「失礼な!どちらが長くお湯に浸かっていられるか!です。」
「やはりろくでも無いな・・・。」
「ですがキリュウさん、お風呂から出た後に負けた方が勝った方の肩を揉むってのは?」
「なるほど、それはいい事だ。最近肩がこってな・・・。」
「年寄りですか、あんたは・・・。それではすたーと!」
一分経過・・・。
「ヨウメイ殿、そろそろ出てはどうだ?」
「なんの。この程度で参っていられませんよ。」
三分経過・・・。
「なかなかにねばるな・・・。」
「キリュウさんこそ。暑さに弱いんじゃなかったんですか?」
五分経過・・・。
「熱いな・・・。」
「そうですね・・・。」
十分経過・・・。
「なんだかボーっとするな・・・。」
「そうですね・・・。」
二十分経過・・・。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
三十分経過・・・。
「・・・・・・。」
「・・・はっくしょん!!」
「・・・なぜ、くしゃみが・・・。」
「・・・間違えました・・・。」
「なぜ・・・間違える・・・。」
「・・・さあ・・・。」
四十五分経過・・・。
「も、もう・・・。」
「駄目です・・・か・・・?」
「いや・・・。」
「さすが・・・。」
一時間経過。
所変わってここはリビング。
「なあシャオ、キリュウとヨウメイはどうしたんだ?」
「お二人なら一時間ほど前にお風呂に入ったきりですけど・・・。」
「なんだって?・・・ちょっと見てきたほうがいいんじゃ?」
「そうですね、見に行ってみます。」
そしてシャオがお風呂場で見たものとは!
・・・真っ赤になってぐったりとしたキリュウとヨウメイだったとさ。
二人ともシャオに引っ張られて、しばらくは口も聞けなかったそうな。
「たく、子供じゃあるまいし・・・。」
「でも二人ともすごいんですね。一時間も熱い湯船の中で・・・。」
太助とシャオは団扇で扇ぎながら素直に感想を述べましたとさ。
<めでたしめでたし>
ぱんぱかぱーん!!
盛大に鳴り響くファンファーレ。ステージ上にライトがパッと照らされる。
客席から巻き起こる拍手の中、四人の女の子がそこへ姿を現した。
「かおりんでーす!」
「あつみんでーす!」
「ゆかりんでーす!」
「ようめいんでーす!」
四人目の挨拶が終わると、客席からどよめきが。
「・・・楊ちゃん、なんつう呼び方してんのよ。」
「あ、それもそだね。それじゃあ、ようみんでーす!」
「駄目だよ、楊ちゃん。全然自然じゃないって。」
「そんな・・・。じゃあどうしろって言うの?
私は三人みたく三文字目がイ行で終わってないんだよ。」
「じゃあ1文字削ってうめいんとかよめいんとか。」
「なんだか別の人みたい・・・。」
「えーい三人とも!!何をごちゃごちゃ言ってんのよ!!
名前なんてどうでもいいの!!要は何をするか!よ!!」
「「「ゆかりん・・・。」」」
ごそごそとした話が終わり、改めて四人は前を向いた。
「それではまずしりとりいきまーす!お題は食べ物!!
私から行くね、チョコクレープ!」
「ぷ・・・プリン!・・・ア・ラ・モード!」
「危ないねえ、花織。えーと・・・どらやき!!」
「き・・・。ちょっと、きでどうやってボケるのよ。」
「とまんないでよ熱美ちゃん。何でもいいんだよ、麒麟とか。」
「それじゃあ終わっちゃうじゃない・・・あ、きりんビール!!」
「・・・る?る、る・・・。」
しりとりが本当にここで止まってしまった様だ・・・。
「え〜と、考え込んでいる楊ちゃんを置いといて、連想ゲームいきまーす!!
まずは、麻婆プリン!!」
「えーと・・・って、なんなのよ、麻婆プリンって・・・。」
「麻婆茄子に茄子の代わりにプリンを入れたやつよ!!」
「そんな食べ物あったの?えーと・・・。」
今度は連想ゲームストップ。
「考え込んじゃったゆかりんを置いといて、あたしとあつみんの二人でやりまーす!!」
「で、花織、何すんの?」
「もっちろん、指相撲!!」
がしっと熱美の手をつかむ花織。
「れでーごー!」
「ちょちょちょ、ちょっとー!!!」
・・・とまあ、そのままカルテットは終了。
「カルテットの意味あったのか?」と、黒髪を後ろに束ねた少年。
「るのつく食べ物って・・・何があったかしら・・・。」と、真剣に悩んでいる紫がかった銀色の髪の少女。
「指相撲、オペラグラスでばっちり見たぜ!いやあ、熱い戦いだった。」と、茶髪の少年。
「・・・あほらし。」と、青い髪をぴんと立たせた少女。
「皆頑張りやさんだね。僕も頑張らないと!」と、少し黄色と茶色がかった髪の少年。
「ると言えばルーアンスペシャルよ!!」と、長い緑の髪に、両側に赤い髪を持つ女性。
「どの方も最高でしたよ。でもやはり私はシャオさんが。」と、ふぁさぁと緑色の髪を掻きあげる男性。
「あん?寝てたからわかんないなあ・・・。」と、黒髪の女性。
「私にはこの企画の意図がわからない。一体何のためにやったのか・・・。」と、長い緋色の髪の少女。
「うおーい、ここはどこじゃー!!」と、なぜここにいるのか白髪の老人が・・・。
<終演>
「ヨウメイ殿、サイクリングに行かないか?」
「サイクリング?」
「そうだ、サイクリングとは・・・」
「知ってますよ、昔の主様に連れて行ってもらいました。」
「そうか、なら話は早い。早速行こうではないか。」
「・・・私は遠慮します。ルーアンさんやシャオリンさんとでも行けばいいじゃないですか。」
「そうはいかんな。私はヨウメイ殿と行きたいんだ。」
「なんでそんな・・・。」
「ちょっとした運動になるだろう?いやというなら腕立50回させるまでだ。」
「う、うそぉ!?・・・分かりましたよ、行けばいいんでしょう、行けば!!」
「話が早いな。では行こうか。」
というわけで、家の外。二人を見送るのは太助とシャオだ。
「しっかしなんでまたサイクリングなんか?」
「以前野村殿に誘われた事があっただろう。それを思い出してな。」
「まあ、そうですか。お二人で楽しんでらしてくださいね。」
「え、ええ・・・。」
引きつった顔のヨウメイが自転車にまたがる。
キリュウも同じようにまたがって、いざ出発しようとしたその時!
がしゃーん!!
勢いのいい音と共にヨウメイと、その自転車は倒れてしまった。
「い、いたたた・・・。」
「大丈夫ですか?ヨウメイさん。」
「なんで倒れたんだ?」
「ちょ、ちょっとバランスを崩して・・・はは・・・。」
「まったく・・・。早く行こうではないか。」
キリュウに急かされて再び自転車にまたがるヨウメイ。しかし・・・。
どんがらがっしゃーん!!
やはり勢い良く音を立てて倒れてしまった。
「きょ、今日は調子が悪いんですよ。また別の日に・・・。」
「ひょっとして自転車に乗れないとか?」
「ぎく・・・。」
太助に図星をさされて黙り込むヨウメイ。そしてそのまま硬直。
「それで行くのを嫌がっていたのだな。
昔の主に連れて行ってもらったとか言っておきながら・・・。」
「あ、あれはその、後ろに乗っけてもらって・・・。」
攻め立てられながらも言い訳をするヨウメイ。と、シャオが首を傾げている。
「どうしたんだ、シャオ。」
「いえ、ヨウメイさんが倒れるのは、足が地面についてなかったからじゃないかと・・・。」
「なんだと?あの一瞬でよくそんなのを見ていたな・・・。
なるほど、ヨウメイ殿の足が短いのか・・・。」
「ななな、何てこというんですか!!私が運動が苦手なだけです!!」
「じゃあもう一回乗ってみなって。」
太助に急かされるも、ヨウメイは乗ろうとしない。
「ヨウメイ殿、乗らないという事は足が短いという事を認めている事になるぞ。」
「んな!!・・・分かりました、乗りますよ。」
しぶしぶ自転車にまたがるヨウメイだった。
今度は倒れる前に太助とキリュウが慌てて支える。
「・・・やっぱり足が地面についてないな。」
「見ろ、やはりヨウメイ殿の足が短いんだ。」
「くうう、言ってはならんことおお!!!来れ・・・」
どがしゃーん!!!
「・・・う、うわーん!!!」
ヨウメイの“来れ”という言葉に慌てて飛びのいた太助とキリュウ。
しかしそのおかげで自転車は倒れてしまったのである。
結果、地面に倒れる羽目となったヨウメイは怒る前に泣き出してしまった。
「よ、ヨウメイが来れなんていったからつい・・・。」
「先ほどまでは倒れても平気だったのに・・・。」
「二人とも!!そんな事言ってる場合じゃありませんわ!!
大丈夫ですか?ヨウメイさん。」
「ぐすっ、はい・・・。」
泣き顔のヨウメイを見てやれやれとため息をつくキリュウ。
そして倒れた自転車を起こしてみるが・・・。
「・・・なんだか異様にサドルが高くないか?」
「どれどれ?・・・ほんとだ、俺でもこんなの乗れないぞ・・・。」
「ふえっ?どういう事ですか?」
「・・・つまり、サドルが高すぎるくせに私の足が短いなんてはやし立てやがってたわけですね。」
「よ、ヨウメイ殿、なんだか言葉遣いが変わってないか?」
「気の所為ですよ。そんな事気にしやがらないでください。」
明らかにひきつっているヨウメイの顔。
太助とキリュウは必死になって謝っていた様だ。
こうして、サイクリングはうやむやになってしまったのである。
<ちゃんちゃん♪>
ぴんぽーん
「はーい。」
「こんにちわあ。」
「あれ、ヨウメイちゃん。珍しいね、一人で来るなんて。何の用?」
「遠藤さん。遠藤さんって眼鏡かけてますよね?」
「うん、見ての通り。」
「私も眼鏡かけてますよね?」
「うん、それも見ての通り。」
「それで、おそろいだと思いませんか?」
「はあ?」
「いやね、周りの人達で眼鏡かけてる人なんて、私と遠藤さんしか居ないじゃないですか。
後、後藤駄菓子屋のおばあちゃんとか理科の先生とかもそうですけど、
この際メインアンドレギュラーキャラで考えるって事で。」
「・・・良くわかんないけど、結局何がしたいの?」
「だからあ、二人で眼鏡について語り合いませんか?資料もここに!!」
統天書をばっと見せるヨウメイ。乎一郎の顔が引きつったのは言うまでもない。
普通ならこんな申し出は断るだろうが、そこは乎一郎の優しい所である。
「分かった・・・。とりあえず中に上がる?」
「さっすがあ!!それじゃあお邪魔しまーす。」
というわけで仲良く眼鏡について語り合う二人であった。
<終>
「・・・というわけだから、二人っきりにしてさ。」
「駄目駄目。太助の事だ、すぐにあ〜だこ〜だ言って・・・。」
「しかし那奈殿。みなの妨害を防ぐには・・・。」
「・・・そろそろお昼御飯にしませんか?」
三人がさっと一人を見る。なにやら怪訝そうな目つきだったが・・・。
「そうだな、そろそろそうしよう。」
と、あっさりこの家の主(?)が決定するのだった。
ここは翔子の家。翔子、那奈、キリュウ、ヨウメイの四人で集まって、
太助とシャオらぶらぶ計画という物を練っている最中だ。
何気なく時計を見ていたヨウメイはお昼御飯を提案したという訳である。
というわけで昼食の用意にかかり、料理が出来あがったわけだが・・・。
「なあ、ちょっとゲームしないか?」
「ゲームだって?いきなりどうしたんだよ、翔子。」
「いいからいいから、説明するぜ。『1から100までカウントする。数字は順に3つまで言うことが出来る。
カウントするごとに料理に辛いものを入れていく。100を言ったものが負け。その料理を食べなくてはいけない。』
というルールなんだ。」
「なんて面白そうなゲームなんでしょう!!絶対やりましょう!!」
一番に身を乗り出したヨウメイ。那奈もそれなりに賛成の意志を見せている。しかし・・・。
「私はやりたくないが・・・。」
「キリュウさん、試練ですよ、試練。さあ山野辺さん、用意してください。」
「よしきた。ヨウメイ、ちょっと手伝ってくれ。」
「はい、喜んで!!」
二人は台所の方でごそごそと用意を始めた。
「ヨウメイのやつはりきってるなあ。」
「私が辛い物が苦手だと知っているから・・・。」
「まあまあ、これで辛い物を克服できるかもしれないだろ。頑張って耐えろよ。」
「那奈殿、そのにやついた顔で言われても・・・。」
そんなこんなで準備終了。さっそく辛い物が料理の傍に並べられた。
「それじゃあいれる物はこれだけ。で、何に入れるかっていうと、このシチューにしようと思う。」
「良いですねえ、当然完食しなければなりませんよね?」
「聞くまでも無いだろ。それじゃあ数字を言う順番を・・・。」
「私から言わせて欲しい。」
さりげなく申し出るキリュウ。
三人はそれを快く承諾して、キリュウ、翔子、那奈、ヨウメイ、という順番になった。
「では、1。塩だ。」
「随分遠慮するな。それじゃあこの唐辛子入れるぞ。えーと、2・3・4!」
「積極的だな翔子。じゃあこのタバスコをちょちょいっと。5・6・7!」
「那奈さんもさすがさすが。この山椒でも入れましょうかね。8・9!」
「・・・なぜそういうカウントをする。」
「細かい事は気にするなって。ほらキリュウ。」
「う、うむ・・・。ではこのトウバンジャンを。10・11。」
「そんじゃあ遠慮してカレー粉でも。12・13!」
「よーし、わさびだ、ねりからしだ。14・15・16!」
「そうですねえ・・・しょうがで良いかな?17・18・19!」
「・・・明らかに仕組んでいないか?」
「気の所為だよ、気の所為。ほらほら、早く言えって。」
「う、うむ・・・。」
そんなこんなで・・・。
「96・97・98!ほとんど入れちゃったな。翔子、なんか残ってない?」
「そんな事言われてもなあ・・・胡椒で我慢してくれ。」
「ちぇ、しょうがないか。さささのさっと。次はヨウメイだぞ。」
「はーい。99!さてと、何入れよっかな。」
「待った!!ということは私が食べるのか!!?」
「あ、そう言えばそうだな。ヨウメイが99を言ったってことはキリュウが必然的に100。」
「やはり仕組んでいたのだな!!」
「仕組む?何を人聞きの悪い事言ってるんですか。偶然ですよ、偶然。
第一、私は食べたくないから99で止めたんですよ。」
「くうう・・・。な、那奈殿が98までカウントするから!!」
「なんだと?あたしの所為にするのか?しかもキリュウ、ここまで来てどうして拒否してんだ。
最後まで付き合ったんならおとなしく食べろ!!」
「そうですよ、キリュウさん。往生際が悪いですよ。」
「くっ、わかった・・・。」
結局は諭されておとなしくなったキリュウ。
「ところでヨウメイ、一体何を入れるつもりなんだ?」
「これですよ・・・万象変化!!」
「おおっ!?」
途端にそこにあった胡椒が真っ黒になったものに化けた。
「これは?」
「幻の、黄金のこしょーです。一粒の値打ちは金のそれ以上だとか。
ただし、一粒舐めただけで失神してしまうんです。じゃあ入れますね。」
「し、失神!?」
がたっと立ちあがるキリュウ。
しかしヨウメイはそんな事はお構い無しにそれ全てを注ぎ込んだ。
もはやその料理は原型をとどめてなく、何か入れれば爆発しそうな雰囲気を醸し出していた。
「それじゃあキリュウさん、召し上がれ。100は入れなくて良いですから。」
「まあ、他に入れる物も無いし。頑張れよ。」
「さあてと、あたしは甘いお菓子でも持ってくるかな。」
翔子はすたすたと台所の方へと移動した。
そして戻って来たときも、依然として料理を見つめているキリュウ。
「どうしたキリュウ、食べないのか?」
「食べないなんてことはこのあたしが許さないぞ。」
「あ、山野辺さん。それ早くくださーい。」
「ほい。」
「わーい。・・・うーん、おいしーい。あま〜くってとろ〜んとして・・・もう最高!」
「そうなの?翔子、あたしにも。」
「ほい。」
「しょ、翔子殿・・・。」
「キリュウも食べたい?でも、それを食べてからな。」
「そうだぞ、早く食べろ。・・・うん、確かに美味いな。」
「でしょう?あんな辛い辛い食べ物に比べれば、断然美味しいですよね。」
一通り喋りおわった後で三人はキリュウに注目する。その視線にキリュウは観念した。
「・・・食べるぞ!!」
ばくっ!!
「・・・〆∞♀!?♂♪♯!!!!」
どたっ。
「・・・やっぱり気絶しちゃった。」
「それより、なんだか瞳孔開いてないか?」
「さすがにやりすぎちゃったかな・・・。」
キリュウが目を覚ましたのはこの約三日後の事である。
悪夢にうなされつつも、キリュウは奇跡の生還を果たした。
ちなみに辛い辛い料理がどうなったかというと、捨てられたわけではない。
ヨウメイによって普通にしっかりと食べられる料理に変化し、それを三人で食べたのである。
<end>
街中のとある小さな小屋(なぜこんな物が有るかは謎だが)。
ここにはある占い師が居る。つい最近開業したばかりのところだ。
その占い師とは・・・全ての知識を知っているという人物、女性である。
その噂を聞きつけてか、それなりに客は来ているみたいだ。
今日もまた一人・・・。
「あの、占って欲しい事があるんですが。」
「いいですよ。そこの椅子に座ってください。」
客が言われた通り椅子に腰を下ろす。
ちなみに占い師に顔は分からない。もちろん名前も言わない。
真っ黒な分厚いカーテンに遮られ、プライバシーを守っているのだ。
「それではご用件をどうぞ。」
「はい。私には非常に想っている方が居るんです。ですが、なかなか振り向いてもらえなくて・・・。」
「後ろからぽんと肩を叩けば振り向くんじゃないんですか?」
「冗談は止めてください。私は真剣なんです(ふぁさぁ)。」
客がとある仕草をする。その音が占い師に聞こえたようで、彼女はこめかみをぴくっと引きつらせる。
しかし、しばらくして平静を取り戻して再び言った。
「あなたはその彼女に対して何か行っていますか?」
「ええ。毎日彼女が住んでいる家にお菓子を持っていったり、学校のお昼休みに挨拶をしに行ったり。」
「なるほど、べんりー君ですね・・・じゃなかった、貢ぐ君ですね。」
「・・・うるさいですねえ。それでも彼女は振り向いてくれない。どうかいい方法を教えてください。」
「うーん・・・彼女の前でどじょうすくいでもしてみては?」
「あのね、他に何か無いんですか?・・・という前にここは占い屋じゃないんですか?」
「占いは売らないんですよ。」
「・・・寒いですね。」
「ちっ、人が下手にでてればいい気になりやがって・・・。」
「あの、なんだか喋り方変わってませんか?それより、いつ下手にでたんですか・・・。」
慌てる客。すると彼女は咳払いをした。
「失礼しました。では占ってみましょう。ほんにゃらほんにゃら〜・・・。」
怪しげな呪文を唱える占い師。しばらくして“きえー!!”と叫んだ。
「出ました。あきらめましょう。」
「ええっ?そりゃないでしょう、何か方法があるはず。」
「はい、お代は毎日お菓子を家に持ってくる事。これで良いですよ、宮内さん。」
「ちょ、名前をばらしちゃ駄目ですよ、ヨウメイさん。」
「ああっ!!?私だとばれてしまった!!?そんなあ、廃業だあ!!」
よよよよよ〜と泣きながら、“ヨウメイ”と呼ばれた占い師はそこを出て行ったようだ。
ぽかんとしてその場に立ち尽くす“宮内さん”と呼ばれた客。
次の日、その占い師の小屋は無くなっていた。
<終焉>
一時限目、数学。
「えーと、この教科書の・・・」
「先生!!この教科書はすでに終わってます!!」
授業を始めようとした先生の言葉を遮って生徒の一人が叫ぶ。
この生徒の言う通り、とある理由によってこの教科書は終わっていたのだ。
「そ、そうですか。では数学は自習に・・・」
「待ってください!!私が授業します!!」
教室を退散しようとした先生を呼びとめる、とある理由の元となった少女、ヨウメイである。
彼女はそのまま立ち上がるとつかつかと教壇に歩み寄った。
「さあ先生は私の席で座って聞いていてください。」
「いや、しかし・・・」
「いいから!!さあどうぞ。」
「は、はい。」
ものすごい気迫を見せるヨウメイに圧倒され、先生はすごすごと席へ移動。
座ったことを確認すると、ヨウメイはチョークを手に持って黒板へと文字を書き始めた。
「それじゃあ今日は高次元方程式の解法について・・・。」
「こ、高次元・・・。」
名前を発した途端にどよどよとざわめき始める教室。
それに紛れて、花織とゆかりんもひそひそと話をする。
「どうしたのかな、楊ちゃん。最近積極的に授業やってるよね。」
「普段七梨先輩達にあんまり教える事ができないから鬱憤が溜まってるんだって。」
「そう言えばこの前不機嫌そうに歩いてたもんね。七梨先輩も何かしら聞けば良いのに。」
「試練にほとんど夢中になってるからねえ。それに楊ちゃんの方から無理強いはできないみたいだよ。」
「やっぱりそれって主様だからって事なんだろうね。他の人には無理矢理教えようとしてるけど。」
バンッ!!
勢い良く音がしたと思ったら、それはヨウメイが教卓を本で叩いたものだった。
「静かにしなさーい!!授業してんだからちゃんと聞けー!!!」
叫んだ後に“はあはあ”と肩で息をするヨウメイ。
それを見て、またもやひそひそと話をする花織とゆかりん。
「なんか楊ちゃん、性格変わってない?」
「うん。今度七梨先輩に言っておかないと・・・。」
そしてちんぷんかんぷんの様でわかりやすい授業が始められるのだった。
<To be Continued>
ザアアアア
街中の騒がしい音達を吸収し、自らの音のみを歌いつづける・・・。
それは、ある場所では空からのめぐみとも呼ばれている、雨である。
街角では色とりどりの傘の花を人々が咲かせる。
そんな中に、それを咲かせずに雨の中を歩いて行く少女の姿があった。
雨だというのに、全く慌てる様子も無い。
天を仰ぎながらうっとりとするその姿は、まるで雨を楽しんでいる様でもあった。
「いい雨ですね・・・。」
立ち止まって何気なく呟く。道行く人はそんな少女を物珍しそうに見ながらすれ違う。
中には、
「お嬢ちゃん、そんなんだと風邪をひくよ。」
と、親切にも傘を差し出す人もいた。しかしその少女は、ゆっくりと首を横に振って、
「そんな事はしなくて結構ですよ。どうぞ、気になさらずに。」
と、笑顔で返すのだった。そしてすたすたと歩いて行く。
そしてしばらくの後、またもやぴたっと止まって天を仰ぐのだった。
やがて雨脚が更に強くなってきた頃、そんな少女の元へと走り寄ってくる人物が。
傘を二本(一本は自分用)持って、心配そうな表情で駆け寄ってくる。こちらも少女である。
雨の中立っていた少女は彼女に気付くと、それに対してにっこりと微笑んだ。
「やっと見つけた。一体こんな所で何をしている。」
「雨を堪能していたんですよ。久しぶりに降った雨じゃないですか。」
「自分で降らせる事ができるだろう?なぜわざわざ・・・。」
「・・・秘密です。今日のこの雨は・・・特別なんです。」
不思議な笑みをたたえながら、少女は濡れた表情で精一杯返す。
駆け寄ってきた少女は傘をすっと差し出した。
「ほら、早く帰るぞ。いつまでもこんな所に居て皆に心配をかけるわけにはいかない。」
通行人からの傘をあれほど遠慮していた少女は、彼女からの傘をすっと受け取る。
そして少しばかり笑顔を崩しながらも、傘を渡してくれた彼女に尋ねてみた。
「まだそんなに時間が経っていないじゃないですか。心配になってきたのは貴方だけじゃないんですか?」
すると、その彼女の顔がすっと赤くなる。
「そ、それは、その・・・。ほら、雨も降っているし・・・。」
「・・・ありがとうございます。私の道楽にかけつけてくださって。じゃあ帰りましょうか。」
笑顔で告げると、びしょ濡れになった少女は傘をスキップする様に動かしながら歩き始めた。
「そんなに跳ねて歩かなくても・・・。」
慌ててその後を追う傘を持ってきた少女。
その後二人は何も喋ることなく、激しい雨の中をゆっくりと歩いて行った。
その日の雨は三日三晩降り続いた様である・・・。
<Fin>
ぱたぱたぱたぱたぱたぱた・・・。
「うむ、なかなかいい風だ。やはり仰ぎ方の心得を知っているな。」
「そんなもんあってたまるもんですか。」
リビング。ヨウメイがキリュウを団扇で扇いでいる。じゃんけんで負けた方が勝った方を扇ぐのだとか。
「・・・よし、終わり!!」
「もう終わりか。ヨウメイ殿、やはり100回では少ない。400回にしよう。」
「なんで四倍・・・まあ良いでしょう。では、じゃんけん・・・」
「「ほい!!」」
ぱたぱたぱたぱたぱた・・・。
「うう〜、手が、手があ・・・。」
「どうした、ヨウメイ殿。もっと力強く扇いでくれないと困るぞ。」
「わ、分かってますってばあ。」
そろそろヨウメイが疲れてきた頃、ルーアンがリビングにやって来た。
ちょうどというか、団扇を手に持っている。
「今日もあっついわねえ・・・って、あんたら何やってんの?」
「見て分からないか?じゃんけんをして勝った方が団扇で扇いでもらえるというげえむだ。」
「丁度運動になるし、と思ったんですが・・・。」
「ヨウメイ殿、もっと強く!」
「は、はい〜。」
ぱたぱたぱたぱたぱた・・・・
その様子を見て、ルーアンはにやっと笑った。
「ねえねえ、次からはあたしも参加しても良いかしら?」
「それはいい考えだな。そして、勝った二人を一人が仰ぐという事にするか?」
「な、なるほど。それだと、扇ぐ確率も、少なく、なりますねえ。ふうふう・・・。」
「よおし。こんな事も有ろうかと団扇持っといて正解だったわあ。」
「そんなこじつけな・・・。」
ともかく、ルーアンは傍に座って適当にパタパタと。
そのうちにヨウメイが扇ぎおわったようで、団扇を扇ぐ手を止めた。
「ご苦労だったなヨウメイ殿。」
「いいえ・・・。それより、何回扇ぐ事にしますか?」
「さっきは何回扇いでたの?」
「400回だが。」
「それじゃあ1000回にしましょ!二人合わせて2000回!」
一瞬嫌そうな顔をしたキリュウとヨウメイだったが、静かに頷いた。
そして、運命を決める勝負が始められる・・・。
「「「じゃんけん、ほい!!!」」」
ぱたぱたぱたぱたぱたぱた・・・。
「ちょっとヨウメイ、何なのそのへろへろな風は〜。もうちょっとちゃんと扇ぎなさいよね。」
「は、はい、すみません。」
「ヨウメイ殿、こっちの方の扇ぎがおろそかになっているぞ。しっかりされよ。」
「は、はいっ。」
結果、ヨウメイはあっさり負けてしまい、二人を一人で扇ぐ羽目になった。
そして約半時間後、ようやく扇ぎおわったヨウメイだったが・・・。
「すいません、私リタイヤします・・・。」
団扇の扇ぎすぎで動かなくなった腕をだらんとさせるヨウメイ。
しかし、ルーアンとキリュウは・・・。
「そんなの許さないわよ!!ほらほら、早く起きあがってよ。」
「ヨウメイ殿、これも試練だ。」
「そ、そんなあ・・・。」
無理矢理起こされてじゃんけんをさせられるヨウメイ。
そして・・・。
ぱたぱたぱたぱたぱたぱた・・・。
「ちょっとヨウメイ!!それで扇いでるつもりなの!!?」
「これでは無風状態のほうがましだ。」
「だって、もうこれ以上は・・・。」
死にそうな表情ながらもなんとかヨウメイは扇ぎ終え、そしてソファーに倒れこんだ。
「も、もう駄目です。皆さん、さようなら・・・。」
「さようならじゃないでしょ!!ほらほら、起きあがりなさいよ。」
「さあヨウメイ殿、後一回だけでも。」
「そ、そんな、あんまりです・・・。」
またもや無理矢理起こされて、無理矢理じゃんけん。
そして結果・・・。
ぱたぱた・・・ぱた・・・ぱた・・・。
「・・・大丈夫?ヨウメイ。」
「ちょっと無理にさせすぎたか・・・。」
「うう・・・えい・・・やあ・・・。」
息も絶え絶え。一回扇ぐのにかなりの体力を使っているようである。
そして、全てが終わった時は晩御飯の時間となっていた・・・。
「ほら、ヨウメイ殿。あーん。」
「あーん。もぐもぐ・・・。すいませんねえ、キリュウさん。」
「まさかここまで成るなんてねえ。はいヨウメイ、あーん。」
「あーん。もぐもぐ・・・。うん、おいしいです。」
もはや手が使えない状態になったヨウメイ。
食事をするのにも、二人が食べさせているという訳である。
「たくう、なんだってそんなにムキになってやらせてるんだよ。」
「二人とも、ヨウメイさんが嫌がったのなら無理にさせてはいけませんわ。」
「すまない、反省している・・・。」
「あたしもつい調子にのっちゃったから・・・。」
力なくうつむく二人。やり過ぎだという事は十分に分かっているようだ。
「あっ、私その大きい肉が欲しい。」
「分かった。あーん・・・。」
「わーい。・・・あっ、ちょっとその飲み物を。」
「はいはい。ほら・・・。」
それなりにヨウメイは楽しんでいる様にも見える。
「どんな逆境でも前向きに行動するな。ヨウメイのそういう所を見習うべきか・・・。」
那奈は感心した様に頷いていたのだった。
<THE END>