小説「まもって守護月天!」(知教空天楊明推参!)


「それでは五つ目について説明致しましょう。
ここではものを喋ってはいけません。十分間喋らなければ扉が現れます。以上です。」
あっさりと説明を終えて白楊は姿を消した。
確かに今までと違って扉のようなものは見当たらない。あるのはただの壁だけである。
各々ルールを理解して口をさっと閉ざす。そして無言で頷く・・・
「わーい。」
「んんん!!!」
いきなり声を出したヨウメイの口を慌てて花織が手で塞ぐ。
その周りを更に熱美とゆかりんが取り囲んだ。そして目で“大丈夫です”と頷く。
(たくう、ヨウメイの奴。何がわーいよ。ふざけてんじゃないの!?)
と、ルーアンは心の中で怒りをあらわにしていた。
もっとも、それはしっかりと顔に現れていたのでそれを見た者は苦笑していたが。
そして無事に一分経過。と、ぽわんという音が部屋の真ん中でしたかと思うと、
そこに一人の道化師が姿を現した。
ピエロの様な顔、そして星のマークが沢山入った衣装を身にまとっている。
「やっほー、僕が君達を飛びっきりのジョークで笑わせてあげるよ〜。」
おどけた表情で居るその姿に、太助達は嫌な顔になった。
簡単そうに見えてかなりタチが悪い、そう感じたからである。
「では行くよ〜、君君、そこの頭がぼさぼさしてる小坊主。」
太助を指差しながら明るく告げるその態度に、太助自身ムッときたもののじっと我慢していた。
「お名前はなんて言うのかな〜?その名前を使ってダジャレを作ってあげるよ。」
“誰がそんなもの言うか”と、誰もが心の中で思う。
名前など言ってしまえばその時点でアウトだし、
言ったら言ったでとんでもないものが返って来そうだ。
「あら、だんまり?しょうがないなあ、じゃあそこのキザっぽい野郎君は?」
出雲の顔にピキと血管が浮き出る。
ただ、彼とは対称的に必死に笑いをこらえているものも多数居たが。
こんな調子で道化師は順番に名前を尋ねていった。
当然誰も喋らなくて、そのうちに三分が経過した。
(ただ、正直に口を開こうとしたシャオを翔子と那奈が慌てて止めたが。)
「つまらないなあ、なんで誰も喋らないの?僕気分が悪いな〜。」
そう言いながら道化師の表情が歪んだものに成る。
そしてどこからとも無くナイフを取り出した。
「これで刺すと痛いだろうねえ♪」
道化師の手の中で次々とナイフが増殖して行く。
もちろん、皆はそれを見ながらも必死に黙ってはいたものの、恐怖が頭の中に入って来た。
もしかしたら本当に刺してくるかもしれない。そう思い始めたのだ。
ただ、その恐怖心があってか、無意識に後ずさりしている。
「僕はねえ、短気なんだ。無駄に傷つけるなんて事はしないよ。
出血多量で死ぬよりも即座に殺せる急所を付いてもらった方がいいでしょ?」
恐ろしい事を口走りながらも、道化師の表情が更に歪んだものになる。
それを見てか、ついには震えるものも出てきただした。
シャオとルーアンはそれぞれの道具を構えるものの、喋っては駄目な事に気付いてぐっとなる。
と、それを止める様に、キリュウはすっと一人、前にでた。
「おや?名前を言う気になったのかな?」
「・・・・・・。」
何も言わずに、キリュウは無表情のまま短天扇を広げた。
そして次の瞬間、
しゅんっ!
と、道化師の体が極限まで小さくなる。
どうやら、心の中で万象大乱を念じればその力は使えるようである。
小さくなって騒いでる道化師を見下ろした後に周りに笑みで答えると、元の位置に戻る。
そのままの状態で目標の十分に到達する。そして扉が姿を現した。
それと同時に、小さくされた道化師も元の大きさに戻る。
「・・・ズルイや。」
一言悔しそうに呟いて、そこから姿を消した。
それと入れ替わりに出てきたのは白楊。随分と驚いた表情である。
「やはり万難地天さんがいるという事は・・・。もしくは無言で行う方法を誰かから?
普通の人達ならまずこの難関で脱落するんですけどね。
口を閉じててもうめき声すらも対象に入りますから。なんにしてもお見事。
それでは次へ御案内致しましょう。」
ぎいーっと扉を開いて白楊が手招き。
先ほどまでの影響か、皆は無言のままその後に続くのであった。

「さて、それでは六つ目について説明致しましょう。
ここではとにかく大きな声を出してください。
ある一定値に達すればその時点でOKです。以上です。」
再び簡単な説明を終えて白楊は姿を消した。
無言のまま耐えるもののすぐ後に声を出すものがあるとは、えらく狙ったものを感じる。
「・・・とりあえず誰がやるかは決まってますよね。」
「分かってるなあ愛原。というわけで頑張れよ、野村。」
「おっし!!やってやるぜ!!!」
翔子がぽんぽんと肩を叩くと同時に、既にたかしは大声を上げていた。
ただ、さすがにそれでは合格点ではないらしく、扉はまだ現れない。
もちろんそんな事に構うはずもなく、たかしは壁に向かって仁王立ちした。
すう〜っ・・・
思いきり息を吸いこんでいる音だけが辺りに響く。
みなはシーンとして、そして耳を塞いだままたかしが叫ぶのを待った。そして・・・
「うおおおおおお!!!!
熱き魂の叫びがああ!!!!!!」

普段の鬱憤を晴らす様に、そして普段と同じ様にたかしは叫んだ。
その声はとんでもないもので、耳をふさいでいても頭の中に響くほどのもの。
あまりの衝撃にがくっとなる者もいたが、とにかくそれに耐えつづけていた。
「うおおおおおお!!!!」
なおも続いている、なんとも大きい声。彼のどこにそんな力が眠っていたのか謎でもある。
しかし肝心の扉が現れる気配は一向に無い。
白楊が言った一定値というものがどのくらいなのかはわからない。
大きさ、もしくはある一定の大きさでの音の長さ、または時間と音を掛け合わせたものか。
今の時点では、それが分かるのは誰一人としていなかったのである。
そのうちに、耐え切れなくなった人物が一人出てきた。目に大量の涙を浮かべている。
それを見て気付いた花織と熱美、そしてゆかりんが必死になだめようとする。
しかしいかんせんこのやかましい声の中ではそれも効果が薄い。そのうちに・・・
「びえええええ!!!」
なんとヨウメイ自身まで大声で泣き出してしまった。
その声たるや、たかしに匹敵するほどの大きさである。
叫んでいるたかしの耳には届かなかった様だが、その他の面々にはしっかり届いていた。
つまり、叫んでいない人物にはたかしとヨウメイという二重の騒音が来ているのである。
「う・・・く・・・。」
ほとんどかききえるような声で皆はうめいていた。もちろんその中には、気絶するものも続出。
“こんな中に居たままでは死んでしまう”と、誰もが薄れ行く意識の中でそう感じていた。
しかし、そのままの状態で数分が経過した其の時・・・。
ぱあああ!!
眩い光が発せられたかと思うと、扉が出現。
にも関わらずたかしは叫び、ヨウメイは泣き続ける。
更に気絶者を増やした所でようやく二人は同時に声を発するのを止めた。
つまり、たかしが叫ぶのを止めたのとヨウメイが泣き止んだのは同時だったのである。
それを見計らってか、白楊がすうっと姿を現わした。
「お見事です!おそろしい声の持ち主ですね・・・。」
感心する彼女に、たかしは照れ照れと頭をかいている。
きょとんとしているヨウメイの隣では、唯一の生存者である花織が彼女に持たれかかっていた。
「うう・・・こんな生活もういや・・・。」
「あれ?花織おねーちゃん?」
なんの曇りも無い声で呟いたヨウメイの声を聞いてか、たかしが後ろを振り返る。
と、そこには死屍累々という状態であった。
「こ、これは・・・おいこら!!知らない間に襲うなんて卑怯じゃないか!!」
途端に踵を返して白楊に掴みかかる。だが、もちろん彼女はぶんぶんと首を横に振った。
「とんでもない!あなたの声で皆さん気絶したんですから。」
「嘘つけ!!」
必死に弁解をする彼女だが、たかしはそれを聞き入れない。
しかし、ずりずりと歩いてきた花織によって、ようやく掴んでいた手を離す。
「なんだよ花織ちゃん。」
「白楊さんの言う事は本当です。けど、正確には楊ちゃんの泣き声もあわせて、ですけど。」
「はあ?」
“えへ”と笑っているヨウメイを見てたかしの目が点になる。
改めて詳しい状況を花織から聞く事によって、ようやく納得したのだった。
それから後はとりあえず皆が復活するのをじっと待つ。
相当ダメージが大きかったのか、相当な時間を費やしてそれぞれは起き上がって来た。
花織が生き残っていたのは、ヨウメイの声を普段から一番耳にしていたからであろう。

「えーと、それでは七つ目について説明致しましょう。」
「おう!」
「野村先輩、五月蝿いです・・・。」
先ほどの件もあってか、皆の目は虚ろである。
激しい攻撃には試練経験が豊富な太助でさえ耐えられなかったのだから。
それを見てか、キリュウは難しい顔をして悩みこんでいた。
「七つ目は、一本の木を育ててもらいます。
今はまだ小さな芽しかでていませんが、これを立派な木に育て上げてください。以上です。」
部屋の真ん中をすっと指差したかと思うと、白楊は姿を消した。
そこには、なるほど小さな木の芽が顔を出している。
洞窟の床の一部分が特別な土になっているようだ。
「育てる・・・ちょっと待て、木に成るまでなんて待ってられ無いぞ。」
もっともな意見を太助が述べた。皆もそれは同意見であり、うんうんと頷いている。
「・・・ここはひとつキリュウの力を借りましょっか。」
しかしあっさりと案は出た。大地の精霊であるキリュウの力。
これを利用して、あっという間に木を大きくできないかという事だ。
ところが、肝心のキリュウは何やらずっと呟いている。
音がどうのこうのとかぶつぶつと、かなり真剣な表情だ。
「ちょっとキリュウ。」
「うーん・・・声を一時的に大きく、そして・・・。」
「おーい、キリュウー。」
次々と周りから呼び掛けるものの、一向に反応は無い。
ある程度呼んだところで、彼女はようやくそれに気が付いた。
しかし、事情を聞いて出した答えはこうである。
「無理だ。」
この声に皆は愕然となった。理由を聞くと、
ある程度大きな木ならばそれを拡張させて大きくする事が可能。
しかし、それ自身の成長度を早める事はできないという事なのだ。
「たくう、これじゃあお手上げじゃない・・・。」
ぶつくさと呟きながらルーアンはごろんと横になった。そして寝息を立て出す。
「る、ルーアン先生、寝てる場合じゃなくて・・・。」
「終わったら起こしてよ。」
乎一郎が呼びかけるも、彼女は気にもとめずに完全に寝に入った。
それに影響されてか、他の面々も次々と座ったり横になったり。
木の芽の傍で真剣に考えているのは太助、熱美、ゆかりん、そしてさっき大活躍だったたかしである。
熱美とゆかりんはいち早く気絶していた所為でダメージは少なかったのだろう。
太助にいたっては普段の試練の賜物、というところだろうか。
「さて、どう育てるか、だよなあ・・・。」
「どう考えても無理なんじゃないですか?立派な木に育てるなんて・・・。」
「ゆかりん、やる前から諦めるのは良くないよ。でも難しそうだなあ・・・。」
ちらりと熱美が見やった木の芽は、本当に今まさに芽を出したと思うくらい小さかった。
少しでも衝撃を与えればぽっきり折れてしまいそうな、なんとも弱々しいものである。
「はっくしょん!」
「うわっ!」
突然たかしがくしゃみをし、慌てて熱美が芽を両手で包み込んでやる。
幸いにも芽は無事であり、彼女らはホッと胸をなでおろすのだった。
「わりいわりい・・・。」
ぽりぽりと頭を掻くたかしをじろりとゆかりんが睨んだ。
「なんて事するんですか!!芽が折れちゃったらどうするんですか!!」
「だから、御免って・・・。」
「謝って済む問題じゃ無いでしょう!?」
申し訳なさそうな顔をしていたたかしだが、ゆかりんにどんどん言われる度に顔が引きつってきた。
傍では太助も熱美も黙って聞いていたが、その様子に少し不安げな表情になる。
「うるさいな!!出ちまったものはしょうがないだろ!!」
とうとうたかしは耐え切れずに怒鳴った。
さっきの自分のくしゃみは不可抗力であるという事を言いたいのである。
もちろんこの言い争いは周りにも聞こえていたが、誰も止めに入ろうとする者は居なかった。
しかしただ一人、シャオだけは立ちあがる。そんな彼女をキリュウがすっと手で制した。
「万象大乱。」
しゅんっ!と、たかしとゆかりんの体が縮まる。
一瞬の事に二人は戸惑ったものの、今度は二人そろってキリュウへ向かって叫び出した。
しかしその声はキリュウにまったく届かない。太助と熱美にすらも届かないで居る。
おそらく、声も一緒に小さくなってしまったのだろう。
「これで良し。今はおとなしく育てるしか無いのだからな。」
「でもキリュウさん、育てるって言っても・・・。」
「ここはヨウメイ殿が作ったものだろう。という事は何らかの仕掛けがあるはず。
あっという間に木を育てられるような・・・。」
キリュウの落ちついた説明にシャオはポンと手を打つ。
もちろん、他の面々の反応も同じ様なものだった。
正直にゆっくりと育てるものでは無いと・・・。
「しっかしどこにその仕掛けがあるんだか。」
一瞬は笑顔を浮かべたものの、だれた声を那奈が発する。
言われるまでも無く、相当面倒な仕掛けに違いないだろうという事は予測できる。
それをいかに見つけるかという事が、これまた面倒なのである。
「木の芽自身に施されて無いよな・・・。」
「ちょっ、七梨先輩。うかつに触っちゃだめですよ!」
木の芽を両の手でしっかりと包み込んでいる熱美が激しく注意。
苦笑いしながらも、太助は慌てて手を引っ込めるのであった。
その下では、同じくたかしとゆかりんの二人も苦笑していた。
「熱美ちゃんたら随分必死になってる・・・。」
「良く考えたらくしゃみで折れるような芽じゃ無いような・・・。」
「それもそうですよね。すみません、怒鳴ったりしちゃって。」
「い、いや、こっちもうかつに言いすぎたよ。」
双方ともに自分の非を認め合う。
そんな真ん中の四人のやりとりをじっと見ていたのか、翔子がすたすたと向かって行った。
そして、既に熱美の両手から解かれている木の芽をちらっとみやる。
「どうしたんだよ山野辺。」
「ちょっと試したい事があってな。昔本で見た事なんだけど・・・。」
言いながら、翔子はひょいっと木の芽をジャンプしてまたいだ。
びっくりした熱美は遅いと分かっていながらもさっと木の芽を手で包む。
「な、なんて事するんですか!!」
「いいから黙って見てろって・・・。その手をどけてみなよ。」
「嫌です!芽がつぶれちゃいます!」
「そうやって手で押さえこんでるの自体つぶしてるんじゃないの?」
ここではっとなって熱美は手の包みを解いた。
それを見計らってか、翔子は再びひょいっと木の芽の上をジャンプする。
「なっ、なんてことを!!」
再び木の芽を包もうとした熱美。
しかし、それを行おうとした時に妙な違和感があった。それでも包んだが。
「なあ山野辺、一体何がしたいんだ?」
「うーん、育たないなあ・・・。」
「は?」
余りにも不可解な翔子の行動に、太助は考え込み出した。
と、しばらくしてぴんと閃いたのか、熱美の手を取る。
「ちょっとその手を退けといてくれないかな。」
「し、七梨先輩まで!!」
「いいから!山野辺、もう一回やってみてくれ。」
「ほほう、七梨には分かった様だな。それじゃあ遠慮無く。」
強引ながらも熱美の手を木の芽から引き剥がし、翔子は改めて芽の上を跳んだ。
「木の芽を見て!」
「一体なんだって・・・え!?」
翔子が跳び越えた後に、わずかながらも木の芽がにょきっと大きくなる。
それはほんの小さなものであったが、
注意して見ていた太助と熱美の目にははっきりとそれがうつった。
「どうだ七梨、なんか変化あったか?」
「あったよ・・・。そっか、そういう仕掛けか・・・。」
「まさか木の芽を飛び越えたら大きくなっていくなんて・・・。」
熱美の解答とも言えるべき呟きに皆は“えっ!?”と立ちあがる。
そして一斉に木の芽の周りに集まってきたのだった。(ルーアンを除く)
「昔本で見たんだよ、忍者の修行か何かで・・・。
ある草を植える。で、それがだんだん大きくなるから毎日それを跳び越える。
成長が早いんで一日に出来るだけ飛んでおかないと慣れられないんだ。
つまりは、この難関はそれに引っ掛けてあったって事だよな。」
「とりあえずこの調子で飛びまくって成長させればいいんだ。」
翔子と太助の解説で、皆はうんうんと頷く。
さっそく誰が飛ぶかを決めるのだったが・・・
「くじ引きで決めよう!こんな事もあろうかと用意しておいた。」
ついさっき、ゆかりんと共に小さい状態から元に戻ったたかしがずずいっとくじを取り出す。
“何を考えて・・・”と、呆れ顔に成った者多数だが、それぞれおとなしくひいた。
「あっ、あたしが当たりだ〜。」
「というわけで、跳ぶ人はヨウメイちゃ・・・ええっ!!!?」
「ヨウメイだって!!?」
さも当然の様に、にこにこと当たりくじを持つ彼女に皆の視線が注がれる。
と次には、翔子がたかしにつかみかかった。
「どういうつもりだよ野村、なんで人数分のくじなんだ!!」
「な、何を言う、俺はちゃんと本来の人数から一本引いていたぞ!!」
そう。ほとんど戦力になら無いであろうヨウメイの分は、たかしがちゃんと除いてあった。
しかし実際には何故か彼女の分までくじがあったのである。
混乱する中、乎一郎がおずおずと呟いた。
「・・・ルーアン先生がまだ寝てるんだけど。」
その言葉に、ルーアンに視線が集中。
確かに彼女はまだ熟睡中で、幸せそうに口を開け、よだれをたらしていた。
「とっとと起こしてこいよ乎一郎!!」
「う、うん・・・。」
たかしに怒鳴られてそそくさと乎一郎がその場に向かう。
服をつかんでいた翔子もその手を離して彼女が起きるのを待つ。
やげて、寝ぼけ眼のルーアンを交えて再びくじ引きが行われる事と成った。
「・・・私ですか。」
「宮内出雲に決定!!さ、普段のキザっぷりを存分に発揮してくれ。」
「あのね・・・。」
宣言者のたかしに妙な事を言われながらも、出雲は木の芽に向かった。
そして、ひょいひょいっとその上をジャンプし始める。
彼がその動作を行うごとに少しずつ木は大きくなって行く。
軽やかなその動作に、一部の者はうっとりと見ていた。
「出雲さん、優雅だなあ・・・。」
「そうですね・・・。」
それは熱美とシャオ。もちろん、二人の見る目の意味合いは違うものではあるが。
「太助、なんで堂々と名乗り出なかったんだ。」
「いやそう言われても。」
「普段の試練の成果を試すチャンスだろ?」
「あのな・・・。」
今まで試練がどうたらという事で表立って働いてきた太助としては、
なるべく遠慮したかったのである。
そうこうしているうちにも出雲はジャンプしつづけ、木の芽は成長して行く。
次第に彼も辛くなって来たようで、ある程度の高さでジャンプを止めてしまった。
「ふう、さすがにこれ以上は・・・。」
木の高さはすでに軽く一メートルを超えており、これより高くジャンプするのは大変であった。
「だめだなあ、出雲。これだからナンパ師は・・・。」
「野村君、それは関係無いです。」
呆れた顔のたかしにもちろん出雲は反発。そんなに言うなら自分で飛んでみろと言いたそうだ。
しかし、たかしでもこれは辞退するであろう高さである。
「しょうがない。ここはやっぱり太助に・・・」
「那奈姉、俺をスーパーマンなんかと勘違いして無いか?俺には無理だって!」
やれやれという顔の那奈に、太助はすかさず反発。それは当然の反応だった。
ここでふと疑問に思ったのか、シャオがキリュウに尋ねる。
「あの、キリュウさん。太助様ってスーパーで売られてるんですか?」
「・・・そんな訳は無いと思うが。」
「ですよね。ああ、安心しましたあ。」
「そ、そうか・・・。」
ほっと胸をなでおろす彼女に少し戸惑うキリュウ。
他の面々は何故にあんな質問が飛び出したのかなんとなく分かったが、あえて突っ込まないで居た。
「ねえキリュウ。」
「今度はルーアン殿か。だから主殿はスーパームサシでは・・・」
「なんの話をしてんのよ。そろそろおっきくできないかって聞いてんの。」
「・・・なんだと?」
「だからあ、これくらい成長したんなら大きく出来るでしょう?」
ぺしぺしと木の幹をルーアンが叩く。
初期の段階では無理だという答えが返ってきたが、今ならどうだという事だ。
「大きく出来ない事は無いが・・・成長させるのとはまた違うぞ。」
「いいからやってみてよ。」
「では・・・。」
いわれるがままにキリュウは短天扇を木に当てた。
ぶつぶつと念じ、そして・・・
にょきっ!
あっという間に木が巨大化。
一番上の枝が天上すれすれというまでに大きくなった。
「・・・これでいいのか?」
「上出来上出来。後は白楊の奴が現れるのを待つだけねん♪」
「・・・・・・。」
能天気に鼻歌を歌うルーアンに、みなは開いた口がふさがらなかった。
成長させたわけではなく大きくしただけなのだから・・・。
しかし、キリュウが彼女に何か言おうとした途端、ふわ〜っと何者かが姿を現した。
それはまぎれもなく白楊。ルーアンの言う通りになったのである。
「は、白楊殿・・・。何故現れた?」
「何故って・・・立派に育ちましたから。」
「あのう、私が跳んで確かに育ちましたが、後はキリュウさんが大きくしただけで・・・。」
キリュウに続いて出雲が更におずおずと口を開くと、白楊はゆっくりと首を横に振った。
「いいえ、大事なのはどう成長したか、です。」
「ほらあ!大きくして正解じゃないー!!」
得意げに胸を張るルーアンに、またもや白楊は首を横に振った。
「いえ、熱美さんが最初に大事に大事に手で守っていたでしょう?
それによって、とっても立派に育ちました。もちろん、育つきっかけは跳ぶ事ですが。」
にこっと微笑む彼女に“えっ、えっ”と慌てる熱美。
ぽんっと出雲に肩を叩かれてようやく落ち着き、同じ様ににこりと微笑むのだった。
あちらこちらから熱美に対して尊敬の眼差しが注がれる。
そんな中、白楊は次なる扉をぎいーっと開けた。
「それでは次の部屋へ御案内致します・・・。」
ぞろぞろと皆がそれについて行った後、キリュウによってある程度の大きさに戻された木が、
部屋の真ん中に誇らしげにそびえたっていた。

次の部屋に案内されて皆は驚いた。
そこは部屋というよりは壁が真正面にある、妙な作りであったからだ。
「それでは八つ目について説明致します。
見ての通り、これは迷路です。無事に通りぬけて出口にたどり着いてください。
しかし、ただ出口に着くだけではいけません。すべての道を歩いてください。
行き止まりだろうがなんだろうが・・・。以上です。」
普通の二次元迷路のルールとは少し違う所を述べて白楊は姿を消した。
と、その後に御丁寧にも白い粉が入った袋のようなものがいくつも置かれていた。
おそらくこれを使って道全てに印をつけろという事なのだろう。
「こりゃ困ったな。ただ出口に着くだけなら簡単なんだけど・・・。」
「仕方が無いですよ、那奈さん。さて皆さん、どういう作戦でゆきますか?
別れ道が来たら適当にわかれて、という方法もありですが・・・。」
これは、道の分岐点がきたら何人かのグループに別れて行動しよう、という作戦だ。
ただ、何人と何人かに別れれば良いかという決定が非常に難しい。
「俺シャオちゃんの行く方!!」
「ずるーい!!あたしだって七梨先輩と一緒!!」
「僕はルーアン先生と一緒が良いな〜。」
「おまえら、真面目に考えろ・・・。」
勝手に浮れている連中に太助は異常なまでに疲れた顔になる。
もっとも太助だけでなく、出雲や那奈といった先導者は更に呆れ顔だ。
しかし、ここでルーアンが黒天筒をビシッと構えて叫んだ。
「ぐだぐだ言ってんじゃないわよ!!とにかく行くっきゃないんだから!!」
そしてずんずんと歩き出す。出雲が“る、ルーアンさ〜ん”と呼ぶのにも構わず、
いきなりの分起点を早速右へと曲がって先へ行ってしまった。
「何事も思いきりが大切・・・ったって、いきなり一人で突っ走らなくても・・・。」
そう言いながらも、那奈もルーアンの後目指して歩いて行った。
それを慌てて翔子が追い、更にシャオ、キリュウが追う。
ボーっと見ていた面々はあっという間に取り残されてしまった。
「・・・せっかちだねえ、皆。」
「ボーっと見てたわたし達も悪いんじゃないかしら・・・。」
「ゆかりんも熱美ちゃんもそんな呑気に構えてないで、行くよ!」
「れっつご〜。」
続いて花織達四人も歩き出す。ルーアン達とは反対方向に曲がって行った。
残されたのは男性陣。この後に及んで、まだなんの行動も取っていない。
「・・・行っちゃったね。」
「俺達も行かないとな・・・。」
「出雲、先導してくれ。」
「はいはい、分かりましたよ。」
それぞれが袋を手に取り、(女性陣は既に何袋も取って行ったようだ。)
迷路の中を歩き出す。と、ルーアン達が行った方から軒轅が飛んできた。
「軒轅!それに離珠?」
どうやら、太助の傍に、とシャオが呼び出したものらしい。
確かにこうすれば連絡を取り合えるだけでなく、人手不足の解消にもなる。
しばらくして、更には短天扇に乗ってキリュウまで飛んできた。
「キリュウちゃんまで来たの?」
「いや、私はヨウメイ殿を連れた四人の所へと思ってな。」
おそらく離珠がシャオに状況を伝えた為に、ルーアン達が判断したのだろう。
軽く挨拶をしたかと思うと、キリュウは短天扇を滑らせて花織達の所へ向かったのだった。
かくして、ルーアン組、花織組、出雲組の三組にまずは別れて、探索が始まったのである。

「・・・行き止まり。」
「またあ!?たくう、別れ道が少ないのはいいんだけど、ことごとくこれねえ。」
「仕方ないですよルーアンさん。さあ、もと来た道を帰りましょう。」
行き止まりにぶち当たったという事でくるっとUターン。
しかし、それを最初に行ったシャオの肩をルーアンはがっしとつかんだ。
「どうしたんですか?」
「どうしたんですか?じゃないでしょ。あんたおねー様と一緒の道に行ったんじゃなかったの!?」
ルーアン組は、分岐点がきたら二人ずつに分かれようという事に決めていた。
何かあった時の為に精霊も分断。つまり、シャオ&那奈組と、ルーアン&翔子組なのだ。
「そういえば・・・那奈さんはどこへ行かれたんでしょう。」
「シャオが間違えてこっちへ来たんじゃ・・・。」
「ああー、もう!!
おねー様もしっかりこのポケポケ娘を連れて行かないと駄目でしょうにー!!」
ルーアンの叫び声が届いたのか、一人何の疑問も抱かずに歩いていた那奈はようやく我に帰っていた。
「シャオが居ないな・・・。こりゃあ組み合わせかえるべきかなあ。」
ぽりぽりと頭を掻きながら、彼女はシャオが戻ってくるのを待つ。
やがて、三人が息を切らしながら那奈の場所へとやってきた。
「すみません、那奈さん。私が道を間違えてしまって。」
ぺこりと頭を下げるシャオに、那奈は笑って言った。
「別に気にしなくて良いよ。今度からしっかりやれば良い事だし。」
「那奈ねぇ、組み合わせ変えた方が良くない?」
「いいや、面倒だからこのままで行こう。なあに、なんとかなるさ!」
一人で居た時の不安げな呟きはどこへやら、けたけたと笑って彼女は歩き出した。
“はあ”とため息をついたルーアンが後に続く。
しばらく歩くうちに再び別れ道にやってきた。
「シャオと那奈ねぇは左。あたしとルーアン先生は右だ。」
「おっけい!シャオ、行くぞ。」
「はいっ。」
先陣をきって歩き出す那奈、そしてそれに付いて行くシャオだったが・・・。
「すとーっぷ!!なんであんたら右に歩いて行ってるわけ!?」
ルーアンが腰に手を当てて怒鳴ると同時に、二人はぴたっと止まった。
そして笑いながら那奈が、その後を不思議そうな顔でシャオが戻ってくる。
「わりいわりい、左右間違えた。まあ弘法も筆の誤りって事で。」
「那奈ねぇ、しっかりしてくれよ〜・・・。」
おもいっき入り不安そうな顔になりながら、
翔子とルーアンは左の道へ消えて行く二人を見送るのだった。
やがて曲がり角にかくれてその姿が見えなくなると、二人は改めて頷いて右へと歩き出した。
しかしその先を見て愕然。堂々と行き止まりの壁が目の前に迫っていたからだ。
那奈とシャオが歩いた距離まで行けば、それが確認できる、というところである。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
お互い沈黙。ゆっくりと後ろを振り返ってだっと駆け出した。
「行き止まりなら行き止まりって言ってけー!!」
「やっぱり組み合わせ変えた方がいいんじゃないのおー!!?」
怒りの混ざった声で叫びながら二人は那奈とシャオを追いかけるのだった。

出雲組。男四人で特に言葉を交わす事も無く、彼らは歩いていた。
「なんでこんなグループに俺は入っちまったんだ・・・。」
嘆きの声を上げるたかしに、突っ込む者は誰もいなかった。
今更そんな事を考えるのも空しい気がしたのである。
だが、そんなに迷う事も無く歩を進めていた。
何故ならそこは一本道。分岐点も別れ道も何も無い一本道。
四人は一度花織組の方へ向かった。途中の別れ道で止まっている彼女らと合流し、
片方の道をこの四人が選んで歩いて行ったというわけである。
一度は分岐があり、そこで軒轅と離珠が袋を持って飛んでいった。
それ以降は一切別れ道には突き当たっていないというわけだ。
時折それらしきものがあったりするも、一歩踏み出せば終わり、という程度。
つまり、ひとます分の部屋がちょこっと出ているだけだったのだ。
「これ・・・本当に迷路か?」
太助の疑うような呟きに、出雲は少しだけ振り返った。
「太助君、迷路というのは常に別れ道だらけというわけではないんです。
例え一本道でも、ややこしく入り組んでいれば迷路と呼んで良いでしょう。
第一、この道もずっとまっすぐというわけでも無いですし。」
出雲の言う通り、一本道ではあったが、それなりに曲がり道もある。
くねくねとしている訳では無いが、多少入り組んでいる、と呼ぶには充分であった。
「そういえば古代の迷路ってこんな形なんですね。」
「そうですよ、遠藤君。迷宮の奥に魔獣が住んでいたりして、
迷路はそれが簡単に出てこられ無いように作られたり・・・。」
「あっ、それなら俺も聞いたぜ。他に、管をぐにゃぐにゃにまげて何百年も腐らない水とか。」
「たかしくん、それはまた違うんじゃ・・・。」
「とにかく迷路というのは奥が深い・・・どうしたんですか?太助君。」
話に花が咲き出したが、一人加わっていない太助に出雲は疑問の顔。
と、それにやっと反応したかの様に太助は顔を上げた。
「いや、みんな良く知ってるなあって・・・。」
「あれ?太助君は教えてもらって無いの?」
「教えてもらう?」
「言わなくてもわかるだろ、ヨウメイちゃんからだよ。」
「・・・いや。」
「そうなんだ。太助君、もっと話した方が良いよ。」
乎一郎とたかしの言葉に、ちょっとつかれ気味にこくりと頷く太助。
「もっとも、迷路の話に関しては私は教えてもらって知ったわけじゃないですけどね。」
ふぁさぁと髪をかきあげながらの出雲の付け足す。
そんな所で会話が再び途切れ、四人は道をただひたすら歩くのだった。

一方、花織組。ここは今、それぞれバラバラであった。
まず一つ目の別れ道では出雲組と別れた。そして次には・・・。
「さて、どういう風に分かれ様か。」
「花織、ここはじゃんけんだよね。」
「もっちろん!じゃーんけーん・・・」
≪ほい!!≫
なんの脈略も無いままじゃんけんが行われる。
遅れながらも、キリュウも慌てて手を出す。その結果・・・。
「花織、ゆかりん組。楊ちゃん、わたし、キリュウさん組、だね。」
「今思ったんだけどなんでじゃんけんで決めたんだろ・・・。」
「普通はグーとパーでグループ分けするんじゃないかしら。」
提案者のくせに物言いをつけ始める花織とゆかりん。
それでも別れ方は変わらず、二人と三人にわかれて迷路を歩き出すのだった。
そして花織&ゆかりん組。
「楊ちゃん大丈夫かな。駄々こねてなきゃ良いけど。」
「大丈夫じゃないの?熱美ちゃんもいることだし。」
「でも・・・。」
「心配性だねえ、花織。あっ、別れ道。」
しばらく歩くうちにそれは見えてきた。
選択の余地は無く、片方を花織、片方をゆかりんなのだが・・・。
「ゆかりん、右と左どっちがいい?」
「どっちでもいい・・・と言いたいけど、悩むねえ。」
「あたし左ー!!じゃ〜ね〜。」
宣言して花織がだっと駆け出す。
「ちょ、ちょっと花織ー!!」
ゆかりんが呼びかけるも、それは遅かった様だ。
やられた気分になりながら、とぼとぼと右の道へ進むのだった。
しかし数分後・・・。
「あっ、ゆかりん?」
「花織!?そっか、途中で繋がってたんだねえ・・・。」
道がぐるりと二本の道を描いているだけだった様だ。
苦笑しながらも、二人は再び一緒になって歩き出す。
更に別れ道が出てきたりしたものの、これまた同じ様に繋がっていたのだった。
一方、熱美&ヨウメイ&キリュウ組。
ヨウメイを一人にしておくのもあれだという事で、
実際は熱美&ヨウメイ、キリュウという二組に分かれていた。
分岐点が異常に多く、かなり苦労している。
「また別れ道・・・。さっきキリュウさんと別れたしなあ・・・。」
「熱美お姉ちゃん、左へ行こう。」
てけてけと引っ張る彼女に熱美はずるずるとすべってゆく。
そのころキリュウは、
「行き止まりか。早く戻らねばな。」
と、別れたしばらく後に行き止まりに当たって素早く移動。
そして熱美のもとへ向かうのだったが・・・。
「別れ道か。熱美殿は左へ行ったようだから右へ行くとしよう。」
印を確認してとことこと歩き出す。そのしばらく後に熱美が戻ってくる。
「うう、行き止まりだったあ。」
「あれ、新しい印があるよ?」
ヨウメイが指差すそれはキリュウのものであった。
「先に戻ってきてたんだ。それじゃあ後を追わないと。」
とたたたと駆け出す二人。そして行き当たったものは・・・。
「また別れ道〜!?しかも三本・・・。」
「真ん中行こう!」
またもやヨウメイがてけてけと熱美を引っ張って行く。
そのしばらく後にキリュウが戻って来た。
「まったく、ぐるぐる進んで行った先に行き止まりとは・・・ん?
また熱美殿が戻って来たのだな。ふむ、残る道は左か・・・。」
そして未知の道へと進んで行く。
こんな風に、とにかくあちこちあちこちと人海戦術を用いたくなるような道であった。
ややこしながらも、二人と三人は着々と道を埋めて行ったのである・・・。

そんなそれぞれの時間が過ぎ・・・。
「あれ?行き止まりだ。」
「ええー!?もう別れ道なんてなかったわよー!」
「つまり、あたしらの選んだ道は間違いだったって事だな。」
「えうー、残念ですう。」
ルーアン組はゴールに辿りつけずに行き詰まった。
「おおっ!行き止まりだ!!!?」
「うるさいな、たかし・・・って、なんで離珠と軒轅がこんなとこに?」
どうやら、大きな円を描くような形で道が繋がっていた様である。
「それはともかくとして、私達の道は間違っていたって事ですかね。」
「そんなあ。もう誰かがゴールに着いてるんじゃ・・・。」
出雲組もゴールに辿りつけずに行き詰まった。
「花織!あれゴールじゃない!?」
「ほんとだ!!やったあ、一番乗りー!!」
花織&ゆかりん組は無事二人一緒にゴールに辿りつき、万歳をしていた。
「・・・行き止まりですね。」
「そうだな。」
「えーん、行き止まり〜。」
散々歩き回りながらも、熱美&ヨウメイ&キリュウ組はゴールに辿りつけずに行き詰まった。
そこでどっと今までの疲れが出てきたのか、がくっとそこに座りこむ。
しかし其の時、
ちり〜ん♪
という小気味良い鈴の音が辺りに響いたかと思うと、全ての壁がさあっと消え失せた。
驚いて熱美達が立ちあがると、そこにはゴールに辿りついた花織とゆかりん。
更にその目前で立っているルーアン組と出雲組の面々が立っていた。
「こ、これは・・・。」
唖然と皆がしている中、白楊がふわっと姿を現した。
「おめでとうございます。見事迷路内部の道を埋め尽しましたね。
さすが人数が多いと違いますねえ。
あっ、途中四つほどの部分に迷路は分かれてたんですよ。上手く分散した様で。
それでは次なる部屋へ案内致します。」
ニコニコ顔でのその説明に皆は“あーあー”と思い出した。
ただゴールに着くだけでは駄目だというルールを。
いずれにせよ結果オーライという事で、白楊に続いて扉をくぐるのだった。