小説「まもって守護月天!」(知教空天楊明推参!)


端で聞いていたシャオは、なにやら良くわからないような顔をしていた。
そして太助は・・・。
「つまり、キリュウ達四人でしくんだ事だってのか?」
「は?太助、お前はいつからそんな反抗的になったんだ。姉ちゃんは悲しいぞ!」
訳の分からない事を言ったかと思うと、太助にプロレスの技をかけにいく那奈。
ちなみに今やろうとしているのは、首のしめ技みたいなものである。
「ぐ、ぐるじい!那奈姉、チョークチョーク・・・!」
「はあ?ヨウメイ、チョークってなんだ?」
「えっ・・・。黒板に字を書く為の・・・」
「という事だ。チョークが欲しいのか?」
「うわ〜、分がった。わがっだがら、止めでぐれ〜。」
手足をばたばたさせて降参のポーズを取る太助。そこで那奈はようやく技を解く。
「うう・・・ごほ、ごほ。」
「太助様!」
慌てて太助の元へと駆け寄るシャオ。そして那奈をキッと睨む。
「なんてことするんですか!いくら那奈さんでも許せませんわ!」
「い、いやシャオ殿、怒るなら私を・・・」
「キリュウさんは黙っててください!!」
「はい・・・。」
ただならぬ剣幕に後ずさりするキリュウ。那奈もそれなりに引こうとした。
しかし、シャオの顔を見てなにも出来なくなる。
自分でも少しやりすぎたかなと反省しているのだ。
そして再びシャオが何か言おうとしたその時・・・。
「シャオリンさん、聞いてください!!」
「ヨウメイさんまで・・・どうしてそんな・・・」
「いいから聞いてくださいって!いいですか、キリュウさんが幸せになる試練を提案しました。
もちろん私達はそんな内容なんか知りません。これはいいですね?」
促すようなその目つきに、シャオも太助も頷いた。
ヨウメイは更に続ける。
「それなのに主様は私達四人が仕組んだものと勘違いしました。
キリュウさんが一人で一生懸命に考えたものを!だから那奈さんは怒ったんです。
ここもいいですね?」
またもや頷く二人。ヨウメイはよろしいという感じで頷いた。
「けれど、けれどですよ。事前に私達三人だけには言ってくれたんです。
“幸せになる試練だ”という事を。それでどんなものかと私達は期待してたんですが・・・。
後は那奈さんやルーアンさんがおっしゃった通りの事です。」
「つまり・・・。」
「え〜と、つまりキリュウさんの予定とは違う事が次々と起こった為にこんな結果になったんですね?」
「・・・まあそんなところです。お二人とも、それで全てを納得してくださいませんか?」
今度はヨウメイは訴えるような目に変わる。それを見て、太助もシャオも頷くのだった。
ともかくこれで試練の件は収まった。那奈もルーアンもほっと胸をなでおろす。
キリュウだけは少々納得がいかなかったが、一つ息をつくと樹をもとに戻すのだった。
「それでは家に帰りましょうか。で、私ある事を思いついたんですよ。
名付けて幸せに成れる授業!まあキリュウさんに対抗して、ってヤツですか。
おやつの後にそれを行う事といたしますね。主様とシャオリンさん、お付き合い願います。」
途端ににこにこ顔になってこんな事を告げ出すヨウメイ。
太助とシャオはいきなりの事に戸惑っていたが、快くそれを了解するのだった。
ぞろぞろと七梨家へと帰り出す六人。那奈は・・・。
「さすが知教空天、上手く丸め込んだな・・・。」
と呟いた。それが偶然にもヨウメイの耳に入ったようで、
「丸め込んだなんて失礼な。説き伏せたって言ってくださいよ。」
と、ヨウメイは訂正させるのだった。
「・・・分かった、上手く説き伏せたな。」
「ありがとうございます。断然こっちの方がかっこいいですよね?」
訳の分からない事を言ったかと思うとスキップを始めるヨウメイ。
呆れて見る那奈に、キリュウがそっと耳打ちする。
「あまり深く考えられるな。
私にもさっぱり分からないが、きっとヨウメイ殿流の表現方法なんだろう。」
「そうか・・・。」
変な知識が身に付いてしまった那奈は、ぶるぶると頭を振ってそれを、そしてさっきまでの嫌な記憶を消す。
そうこうしているうちに六人は七梨家に到着。リビングにておやつタイムにするのであった。

「本当に桃とソフトクリームがあったな・・・。」
「ねっ、ねっ、言った通りでしょう?」
「はいはい、良かったわね。」
何かしらはしゃぎながらおやつを食べるルーアン、那奈、ヨウメイ。
キリュウは疲れた様子でパクパクと。太助とシャオは考え事をしていた。
「どうして幸せのなんたらかんたらなんて・・・シャオ、なんかおかしいと思わないか?」
「そうですか?皆さんが幸せについて考えなさるんですよ。良い事じゃないですか。」
考え事をしていたのは太助だけの様だ。シャオの方は、幸せという事に取り組む皆に顔を輝かせている。
そんなシャオを見てか、桃にかぶりついていたヨウメイが喋り出した。
「シャオリンさん、桃はなんで木に兆って書くか知ってますか?」
「いいえ。どうしてですか?」
「あのですね、昔の桃は、それはそれは貴重な物だったんです。
それこそ、一般の人はおろか、王様ですらなかなか口にできないものでした。」
「ふええ、そうなんですかあ・・・。」
「で、ある時、桃を大変に欲しがっていた王様が居たんです。
そして偶然にも旅の商人が大事そうに持っていた一個に巡り会う事が出来ました。
王様はどうしたと思います?」
「ええと、もしかして一兆円を支払ったとかですか?」
「惜しい!一兆もの自国に植えてあった木と交換なさったんです。
それで、一兆本もの木と交換された果物だという事で、桃という漢字が・・・」
「嘘をつくな!!」
キリュウがヨウメイの言葉を遮って立ちあがった。何やら息切れをしている。
「嘘?失礼な、ちゃんと統天書にそういう話があったと載っているんですよ。」
「それも嘘だろう?第一、木を一兆本も所有している人間がどこに・・・」
「人間じゃないとしたら?」
「なんだと!?まさか・・・。」
自身満々の笑みを浮かべるヨウメイにキリュウは驚きの表情となる。
彼女だけではない。ヨウメイの話を聞いていたそれぞれが、である。
「神様?」
「ええ、桃の神です。天上界では果物の神のうち三番目に偉い神様でした。」
「そうなのか・・・なんで三番目?」
「桃栗三年柿八年というじゃないですか。この言葉もそこから来たんですよ。」
「へえええ・・・。」
太助、キリュウ、シャオ、那奈は感心しながらも頷く。
しかしルーアンは・・・。
「ヨウメイ、それ全部嘘でしょ?」
「嘘じゃないって言ったじゃないですか。」
「じゃあ冗談かしら?」
「あらら、さすがはルーアンさん。その通りです。」
少しばかりの拍手を送るヨウメイ。
その様子をじっと見ていた四人だったが・・・。
「なんだって!?」
「冗談!?」
「ひどいですう!!」
「知教空天がそんな嘘をもっともらしく喋るな!!」
と、一斉に立ちあがった。もちろん四人とも怒っている。
「騙される方が悪いんですよ、なんてのは冗談です。
さっきの私の話で気付く事は無いですか?」
「気付く事?」
「桃は美味しいって事か?」
「木を大切にしろ?」
「交換なさった神様はどうなったんですか?」
先ほど怒った割には、シャオだけ少しばかりポイントがずれている様だ。
呆れてたしなめようとした太助だったが、その前にヨウメイが喋り出す。
「交換した後、その神様は非常に後悔なさりました。
確かに桃は手に入りましたが、それはあっという間に食べてしまいました。
後に残ったのは木々を失った荒れた大地。
一瞬の欲望を満たす為に、沢山の物を犠牲としてしまったんです。」
「まあ・・・。」
「幸せというものも同じ事です。一瞬の幸せ、長期の幸せ・・・。
幸せの形にも色々有ります。やってはいけない事は、目先の幸せにとらわれるという事。
例えば主様、二つの選択肢が仮に決定されてたとします。
一つは、一年間だけ完全なる幸せのもとシャオリンさんと暮らせる。
その代わりにそれ以降はシャオリンさんと別れなければいけない。
もう一つは、一生不幸が付きまとうものの、シャオリンさんと一生暮らしてゆける。
ちょっと極端ですが・・・主様ならどちらを選びますか?」
「ここでさっき言った目先の幸せってのが一番?でも、二番は不幸が付きまとうのか・・・。
・・・二番を選ぶよ。」
しばらく考え込んだ後にきりっと顔を上げて告げる太助。
しかしヨウメイは首を横に振った。
「駄目です。まだまだですね・・・。キリュウさん、試練しっかりお願いしますよ。」
「ん?しかしヨウメイ殿、主殿の選択は間違っていないと思うが・・・。」
「そうだよ。太助らしくっていいじゃないか。」
那奈に続き、他の面々も同意見の様だ。それでもヨウメイは首を横に振る。
「果たしてそうでしょうか?私が選択肢を申し出た時、それ以外を言うべきなのです。
いや、言わなければいけないのです。」
きっちり告げたヨウメイだったが、太助はそれを否定するかのように立ちあがった。
「そんな無茶な!ヨウメイが最初に言ったじゃないか、決定されているって。」
「けれど主様、シャオリンさんとの別れの時がきた時、そんな決定を見事に打ち砕いたでしょう?
南極寿星さんが告げたこと。過去に行った事で別れを完璧に納得していたはず。
しかし結局は主様はそれを納得せずに、シャオリンさんを護ると言った。宿命から解き放つと言った。
それと同じです。目先の決定にとらわれてはいけないのです。
守護月天を宿命から解き放つという事はそういう事なんです。」
「でもさ、あれはシャオの声が俺に届いたから・・・。」
「それでは、守護月天を宿命から解き放つときはまた誰かの声を待ちますか?」
「!!!!」
「そうじゃないでしょう?もはやシャオリンさんが傍に居る事でそういう事は十分なはずです。
後は主様、あなたがどれだけ頑張るか。もちろんそれを手伝っているのが周りの皆さんという事です。」
全てを言いおわった後、ヨウメイは一息ついた。
「申し訳有りませんが、私が言うのはここまでとしておきます。これ以上は・・・。」
「いや、十分だよ。ありがとう、ヨウメイ。」
「ヨウメイさん・・・ありがとうございます。」
ぺこりとお辞儀する太助とシャオ。
それを見てヨウメイはにこりと微笑み・・・。
「良かったです。では幸せの授業を始めますね。」
そして統天書をぱらぱらとめくり出した。
びっくりした那奈、(と他の面々)慌てて声をかけた。
「ヨウメイ、今のがそうじゃなかったの?」
「今のは私の見解をただ述べただけですよ。さて、では行きますよ・・・。」
顔を改めたかと思うと、ヨウメイは太助とシャオの方へと向いた。
何やらにやついて見えるのは気の所為ではない。
「あの、ヨウメイ。何するつもりだ?」
「何って・・・授業ですよ。幸せになる授業。もう忘れたんですか?」
「ヨウメイさん、それよりもなんで笑っているんですか?」
「笑う門には福来ると言うじゃありませんか。そういう事ですよ。」
納得するシャオ。しかし太助の胸中は穏やかではなかった。
翔子ではないが、ヨウメイがこういう顔をしている時は大抵良からぬ事が・・・。
「おほん、では始めます。まず幸せとは、英語で・・・って、これじゃないや。
えーっと・・・。」
言いかけて間違いに気付いて統天書をめくりなおすヨウメイ。
と、そこでキリュウがぽんとヨウメイの肩を叩いた。
「なんですか、キリュウさん。邪魔しないでくださいよ。」
「もう良いではないか、ヨウメイ殿。先ほどのあなたの言葉で授業は十分だ。
もうヨウメイ殿は遠慮されよ。」
「ええー?それは聞けない相談ですよ。やっと・・・あ、いや、何でも無いです。」
「やっと・・・何だ?」
言葉に詰まったヨウメイに那奈が聞き返した。
こういう所に敏感なのは、さすが那奈という事だろうか。
「・・・だから、何でも無いです。」
「何でも無い、か。じゃあ授業も中止だな。さあて、昼寝でもしようか。」
「え、あの・・・。」
「何?なんか文句でも有るの?」
「いえ、ありません・・・。」
鋭く言い放った那奈に圧倒されて黙り込むヨウメイ。
とにかく那奈が言いたい事は、もうそこまでにしておけ、という事だ。
昼寝と自分で言った通り、リビングを出て二階へと上がって行った。
「・・・というわけで、主様にシャオリンさん。またの機会にという事で。」
「あ、ああ。」
「よろしくお願いしますね。」
パタンと統天書を閉じたかと思うと、ヨウメイはすっと立ちあがった。
「私もお昼寝します。キリュウさんもご一緒にどうですか?」
「・・・では付き合うとするか。という事で主殿にシャオ殿。
何かするならシャオ殿の部屋か主殿の部屋でするがよろしかろう。」
言いながらキリュウはルーアンをすっと指差した。
なんとも幸せそうな寝顔のルーアンがそこに・・・。
寝言で様々な食べ物の名前を呟いている所を見ると、食事の夢を見ている様だ。
「なるほど、そういう事か・・・。」
「ルーアンさん、いつの間に眠っていらしたんでしょうか?」
シャオの素朴な疑問に、ヨウメイはゆっくりと振り返った。
「私がいろいろ話し出した時ですよ。結構長かったですからね。」
「ヨウメイ殿、嘘はいかんな。」
「うっ・・・すいません。本当はついさっきの事です。
でもキリュウさん、舟をこいでたルーアンさんは寝てたも同じじゃないんですか?」
「・・・それもそうか。では主殿にシャオ殿、またな。」
キリュウとヨウメイがリビングを出た後、シャオはぽけっとした顔で言う。
「ねえ太助様。ルーアンさんはどうやって舟をこいだんでしょう?
ここには舟なんて無いし、水に浮いているわけでもないのに・・・。」
「シャオ、それはこういう事だよ。」
“よく見ていてごらん”と一言告げると、太助は腕を組んだ。
そして目を閉じて頭をぐらんぐらんと、シャオに実例を示す。
シャオは感心しながらそれを見つめるのだった。
やがて、いくらかの動作を終えた太助が顔を上げて目を開ける。
「・・・とまあ、そういう事だよ。分かった?」
「はい、大変良く分かりました。なるほど、そういう事だったんですね・・・。」
「以前ヨウメイは、出来る時には自分から実例を見せて説明しましょう、って言ってたんだ。
それを今俺が実行してみたって訳。」
「へええ、さすがですね。」
ますます感心するシャオ。しかし、ここでふと疑問の顔になる。
心配になった太助が尋ねると、シャオは先程の事を喋り出した。
「ヨウメイさんがおっしゃってましたよね。守護月天の宿命を解き放つのに・・・って。」
「うん。」
「やはり何かのきっかけが必要なんじゃないかって。」
「でも・・・それを待つわけには・・・。」
口篭もる太助に、シャオは少し考えながら言った。
「自分で探せ・・・という事じゃないでしょうか?」
「自分で・・・探せ?」
「ええ。太助様が私を守護月天の宿命から解き放つと言い出した事のように・・・。」
「・・・なんか、難しいな。」
二人して考え込む。ヨウメイが先ほど言った事によって、頭の中がこんがらがっているのだ。
それも、どうもすんなり頭に入っている様ではない。
それはヨウメイ自身が教えようとして言った事柄ではない為だろう。
とにかくそんな調子でしばらく頭を抱えていた二人だったが・・・。
「シャオ、また後で考えようよ。難しいことはさ。」
「・・・そうですね。私なんだか疲れちゃいました。」
「それじゃあみんなと同じように昼寝でもしようか。」
「賛成です。丁度私の部屋にお布団しいて有るんですよ。そこで二人で寝ましょう。」
「えっ?」
何気なく会話していたものの、シャオの最後の言葉にぴくっと反応する太助。
そしてうっすらと顔を赤らめるのだった。
「いや、俺は俺の部屋で・・・。」
「待ってください。・・・太助様、私と一緒に寝るのはいやですか?」
「い、嫌じゃないけど、でも・・・。」
「だったら一緒に。そうだ、お話しながら寝ましょう。」
まったく引く意志を見せないシャオ。実は、これは那奈が事前に仕組んでおいたものである。
キリュウの試練終了後の帰り道。ほんの一瞬の間にこういう事を言っておいたのだった。
「・・・しょうがないか。それじゃあ。」
「良かったですわ。さあ行きましょう。」
顔を輝かせたシャオに引っ張られ、太助は赤い顔のままつれられて行く。
ここでルーアンが起きていれば間違い無く止めに入ったのだが・・・。
「むにゃむにゃ・・・もう食べらんない・・・。」
と、幸せそうな寝顔を浮かべているのだった。

そしてシャオの部屋。ギクシャクしながらも布団にもぐりこむ太助。
当然横にはシャオが居る。しかし・・・。
「シャオ、もう寝ちゃったんだ。よほど疲れたのかなあ・・・。」
そう。布団に入るなりシャオは一分もしないうちに眠りに入った。
ルーアンの提案で行った料理作り、太助とともに受けたキリュウの試練、そしてヨウメイの話。
これらの要素によって、シャオは身体的にも精神的にも疲れたに違いない。
しかし、その寝顔は安らかであった。まるで幸せその物である。
「やっぱり、シャオの寝顔って可愛い・・・って、俺は全然眠れん・・・。」
シャオとは逆にものすごく目が冴えてきた太助。昼寝どころでは無いようだ。
と、しばらくしてシャオが寝言を発する。
「太助様・・・。」
「え?シャオ?」
寝言に反応してシャオの顔に注目する太助。
そして、シャオが二言目の寝言を発した。
「太助様・・・いつまでも私と居てくださいね・・・むにゃむにゃ・・・。」
「シャオ・・・ああ、絶対に約束する。いつまでも一緒に居ると・・・。」
シャオの手をそっと握る太助。そこでシャオの寝顔は更に笑顔になるのだった。
そんな時間がそのまま経ち、太助もうとうととしてきた。
「シャオ・・・。」
「太助様・・・。」
寝言やらで互いの名前を呼び合ったかと思うと、太助はそのまま眠りに入った。
そしてそこには、幸せそうな二人の寝顔が・・・。

キリュウとヨウメイの部屋。ここにはキリュウ、ヨウメイ、そして那奈の三人が。
「よっし、作戦大成功!いやあ、陰ながらに努力した甲斐があったよ。」
「ほんと幸せそうな寝顔ですね・・・。これはもう、那奈さんの優勝に決まりですね。」
「おお、そうかそうか。ヨウメイはそう認めるんだな。となるとキリュウ、後はお前だ。」
にやにや笑いながらキリュウを見る那奈。
キリュウは目をそらすかのように顔を背け、そして呟いた。
「ヨウメイ殿が邪魔をしなければ・・・。」
「キリュウさん、済んだ事を穿り返すのはみっともないですよ。素直に負けを認めたらどうですか?」
「む・・・。分かった、那奈殿に勝ちを譲ろう。」
諦めた様に頷くキリュウ。それを見て那奈は二人の手を取った。
「おっしゃあ!というわけであたしの優勝決定!!ばんざーい!!」
実は那奈、ルーアン、キリュウ、ヨウメイはとある競争を行っていたのだ。
それは、太助とシャオの二人をどれだけ幸せに出来るかというもの。
もちろんそれは自然に出来れば一番で、前もって宣言しても構わない。
とにかく太助とシャオが、二人ともが幸せそうな顔になればいいのだ。
ルーアンの提案した料理の後の二人。キリュウの試練を受けた後の二人。
ヨウメイの話を聞いた後の二人。そして那奈の策略によって一緒に眠っている二人。
これらの二人の様子を統天書によって見て、それで誰が優勝かを判定した。
もちろん、四人がそれぞれ客観的に見た要素も忘れてはいけない。
「さあて、あたしが優勝したからには言う事を聞いてもらうからな。一週間あたしの言う事を・・・」
「「ちょっと待った!!」」
得意げに話し始めた那奈に、慌てて傍に寄るキリュウとヨウメイ。
“だめですよ”と言わんばかりの厳しい目つきである。
「なんだよ。」
「なんだよじゃないでしょう?勝手に賞品をつりあげないでくださいよ。」
「そうだ。最初に交わした約束では四人が実行したうちのどれか一つを選び、
残りの三人がそれを優勝者に施すというものだったはずだ。」
必死とも見える二人は那奈の目の前につんのめっている。
迫力があったその顔に、那奈は両手をぶんぶんと振ってそれを遠ざけるのだった。
「分かった分かった。選べば良いんだろ、選べば。」
「そうです。」
「そうだ。」
一言ずつ言って頷いたかと思うと、キリュウとヨウメイはきちんと座り直した。
ため息を“はあ”とついたかと思うと考え出す那奈。
四人が実行した物とは、料理、試練、授業、昼寝、である。
「この四つから選ぶなんて・・・。とりあえず試練は却下だな。」
「な、なんだと!?」
思わず立ちあがるキリュウ。那奈に詰め寄る前にヨウメイがキリュウの服を引っ張った。
「当たり前の選択ですよ。何が嬉しくて試練なんか。
しかも私とルーアンさんも加わるんです。何されるか分かったもんじゃないですよ。」
「それもそうか・・・。」
ものすごく不満そうな顔をしながらもキリュウは再び座り直した。
もともとの試練を邪魔されていた上に、こうして一番に却下されたのだから無理もない。
「次に・・・授業も却下。」
「ええー!?なんでですかあー!?」
今度はヨウメイが立ちあがった。そして先ほどと同じくキリュウがヨウメイの服を引っ張る。
違うのは、キリュウの顔がそれとなくにやついているという事だ。
「那奈殿の言うことももっともだぞ。受けて幸せを感じる授業とはかなりのものだ。
よほどの力が無いとそれは無理だろう。なんといっても私が加わるしな・・・。」
「キリュウさん、一度くらいは授業に挑戦して頑張ってみようとか・・・。
でもしょうがないですね、那奈さんが嫌なら・・・。」
残念そうな顔をしながら座りなおすヨウメイ。それを慰める様に見つめるキリュウであった。
これで残りは二つ。昼寝と料理だ。
「・・・一つ質問してもいいか?」
「はい、どうぞ。」
「あたしが昼寝を選んだ場合、どんな事をしてくれるんだ?」
そこではたとなるキリュウとヨウメイ。
太助とシャオみたく運命の恋人といえるような那奈の相手など聞いた事が無いから。
「当然那奈さんが行った事をやるのは難しいですよね。」
「主殿で代用するか?または翔子殿とか。」
「コラ!!」
一転して鬼の様な形相になる那奈。
今にも襲ってきそうなその顔にキリュウは座ったまま後ずさりする。
「じょ、冗談だ、言ってみただけではないか。」
「たく・・・。」
“ふざけるなよ”とぶつぶつ呟きながら座る那奈。
横からヨウメイがキリュウをたしなめる。
「キリュウさん、いくらなんでもそれは冗談の限界を超えてますって。
せめて宮内さんとか。」
「コラコラコラ!!」
またもや立ちあがる那奈。同じく鬼の様な形相。
そしてキリュウと同じく座ったまま後ずさりするヨウメイ。
「わわわ、ご、ご勘弁を。ほんの茶目っ気ですって。」
「茶目っ気だあ?おまえらな・・・。」
ますます厳しくなる那奈の顔。そしてじりじりと二人に迫る。
当然二人はそのままの格好で後ずさり。その顔は恐怖に引きつっている。
「よ、ヨウメイ殿が茶目っ気など言うから・・・。」
「き、キリュウさんが冗談なんて言うから・・・。」
お互いを見ながら小声で言い争っている。
その様子がなんか馬鹿らしく思えたのか、那奈は迫るのを止めてもとの位置に座り直した。
「ほい二人とも、話を元に戻すぞ。」
しかしその二人は・・・。
「こ、こうなったらこの家の家族全員一緒とか・・・。」
「いや、いっそのこと知り合いを全て集めてだな・・・。」
とか、いつのまにか責任転嫁を止めて昼寝の話に没頭している様だった。
耐え切れなくなった那奈はテーブルを“ドン!”と叩く。
その音にびくっと反応した二人であった。
「おまえら、とっととこっちへ来い!話の続きをやるぞ!」
「「は、はい!!」」
おっかなびっくりで返事をして、二人はがさごそと慌てながらようやく元の位置につくのであった。
「さてと、そんな調子じゃあ昼寝も遠慮した方がよさそうだな・・・。」
「は、はは、すいません・・・。」
笑いながらごまかすヨウメイ。なんとも気まずそうだ。
その後に、キリュウが尋ねるような顔で言う。
「という事は料理か?」
「そういう事だな。」
「きゃーん、さすがはおねーさま!!」
「「「!!?」」」
三人が一斉に入り口の方を振り向くと、そこにはルーアンが立っていた。
さすがに昼寝をしていた所為か、その顔は寝起きの顔である。
「ルーアン殿、いつからそこにいたんだ?」
「三人が報酬の件で話合った時くらいからよ。ちょっと立ち聞きしてたの。」
「それは趣味のいい事で・・・。」
「まあまあ、そう言わないの。で、おねーさま。あたしの料理に決定したんですのね?」
弾むような感じで部屋に入り、那奈の隣に座り込むルーアン。
那奈はやれやれと首を縦に振った。
「そうだよ。どうも後の三つはろくでもない結果になりそうだからな。」
「何言ってるんですか、それは那奈さんの昼寝だけ・・・」
言いかけたヨウメイだったが、那奈にぎろっと睨まれて口を閉じる。
隣に居たキリュウも、それを見て特に何も言わなかった。
「ではおね―様、ルーアンスペシャルで宜しいですね?」
「まったまった。あたしのいいようにやってくれるんじゃないのか?」
「あら、それは違いますわよ。一人が一つ選択し、残り三人がそれを行う。
当然三人が作戦を練るに練って、一人があっと驚くような!という感じですわよ。」
「そうだっけか?」
ルーアンの言葉に腕組して首を傾げる那奈。もう一度最初の事を思い返しているのだ。
と、ヨウメイがそれを助けるかのように統天書を開けて喋り出した。
「ルーアンさんの言う通りですよ。ただし、
その一人が納得のいく物で無い限り、何度も何度もしなければいけないんです。
満足させる事が出来た時点で、その賞品は終了、というわけですね。」
「ああそうだ、そうだったな。」
ぽんと手を打つ那奈。引っかかっていた物が取れた様に晴れ晴れとした顔だ。
「もう一つ有るぞ。もしその一人が不満の意を唱えたならば、恐ろしい罰ゲームが待っている。
当然、それを操作する権利はその一人に有るわけだが。」
「あ、そうでした。・・・やだなあ、腕立伏せ十回とか言われたらどうしよう。」
キリュウの付け足しに途端に困った顔になるヨウメイ。
呆れた顔になったのは那奈とルーアンであった。
「あんたねえ、十回程度で文句言ってどうすんのよ。」
「そうだぞ。十回なわけが無い、千回だ。」
「「「うえええっ!?」」」
驚きのあまり声をそろえて上げる三人。そして口々に喋り出す。
「おね―様、いくらなんでもそれはあんまりですわ!」
「くっ、これも試練か・・・。」
「ああ、私の人生はここで終わるんですね。さようなら、皆さん・・・。」
那奈に詰め寄るルーアン。うつむいて考え込むキリュウ。天を仰ぐヨウメイ。
まさに好き勝手である。
「おいおい、まだやると決まったわけじゃないんだから・・・。」
「そ、そうよ!二人とも、悲観的なるのはまだ早いわよ!!」
励まそうと立ちあがるルーアン。しかしキリュウとヨウメイの二人は・・・。
「うーむ、試練だ・・・いやしかし・・・。」
「ああ、お星様お願い。どうか私に力を!目指せ腕立伏せ十二回!」
やはり自分の世界に入ったままであった。
「キリュウ、試練なんて言ってないで・・・。」
「それよりヨウメイ、なんで十二回なんだ。それでも千回には程遠いぞ。」
突っ込みを入れるルーアンと那奈。それでも二人は聞いて無い様子。
ため息をついたルーアンは黒天筒を回し始めた。
「陽天心召来!」
ぴかあっと光ったのはキリュウとヨウメイの服。そして・・・。
「さあ、二人をふっ飛ばしなさい!」
二人の体が宙に浮く。そこでようやく我に帰るのだった。
「ちょ、ルーアン殿、一体何を!!」
「止めてくださいってー!!」
叫ぶ二人。しかしそんな声は空しく響いただけで・・・。
ドーン!
と、二人は勢い良く壁に叩きつけられるのだった。
ずるずると床にくずれ落ち、目からちかちかと火花を出している二人。
「いいこと!とにかくおね―様を満足させられるような料理を作るんだから!
あんた達二人ともしっかりしなさいよ!!」
「ふ、ふわ〜い・・・。」
「心得た・・・。」
ルーアンの厳しい声になんとか返事をする二人。
那奈は一部始終を見ていたかと思うと、
「じゃあ頑張れよ。あたしはこれから本当に昼寝するから。
夕御飯ができたら起こしてくれ。」
といって部屋を後にした。それに手を振って送るルーアン。
パタンと扉が閉じられると、ルーアンは部屋の中へと振り返った。
「さあ、早速作戦を練るわよ!ほらほら、陽天心といたんだから二人ともこっち来なさいよ。」
「う、うむ・・・。」
「眠い・・・。」
キリュウはなんとか起き上がって来たものの、ヨウメイは床に倒れたまま。
目がとろんとしていて、今にもそのままの格好で寝てしまいそうだ。
「・・・ヨウメイ殿、ひょっとして樹の焼け跡を直すのに万象復元を使ったのか?」
「ふわい、そうです。ちょっと遅れて眠気がやって来たみたいです・・・。」
「はあ!?ふざけんじゃないわよ!あんたが居ないと作戦なんて立てられないじゃないの!!」
ルーアンが叫ぶが、ヨウメイはそのまま眠ってしまった様だ。“すーすー”という寝息が聞こえる。
いきりたってヨウメイを起こしに行きそうだったルーアンを、キリュウはすっと止めた。
「ちょっと、なによ一体。」
「いいから眠らせておこう。ここで無理に起こしても後々支障が出る。
みなも丁度眠っているのだし、私達も眠ろう。」
「ええーっ!?あたしはさっき眠ったのにー!!」
「これも試練だ、耐えられよ。ではおやすみ・・・。」
「ちょっと、キリュウってば!!」
机に突っ伏したまま眠るキリュウ。相当眠かったのだろう。
しばらく彼女の体を揺すっていたルーアンだったが、やがて諦めた様に手を離した。
「まったくもう、あたし一人で何をしろって言うのよ。
しょうがない、メニューでも並べ立てようかしら。」
丁度近くにあったノートを一冊と鉛筆手に取り、テーブルの上にノートを広げた。
「え〜と、とりあえず昼に作った物は除かないとね。
後は、オムライス、ハンバーグ、コーンスープ、麻婆豆腐・・・って、
中華とか洋食とかごちゃ混ぜにしちゃあまずいかしら・・・。
かまうもんですか、どうせ適当に書くだけなんだし。
さあてと、おでん、そうめん、冷やし中華、ステーキ、グラタン、ピラフ、コロッケ・・・。」
どんどん料理名を書き連ねて行くルーアン。
部屋の中では鉛筆をカリカリと走らせている音、
そして寝ている二人の“すーすー”という寝息だけが響いていた。
「ふむ、とりあえず御飯はこれで良し、と。お次はデザートね。」
すでにノート二ページほどにわたって料理名が書かれている。
デザート名は区切り良く三ページ目から書き出した様だ。
「えーと、クレープにアイスクリームにホットケーキにパフェに・・・。」
思いつく限りのデザートを書いてゆくルーアン。先ほどの料理名も同じ感じだ。
当然、昼間の様に家の中にある材料で出来るとかいう事は一切考えていない。
しばらくして全て書き終わったのか、ルーアンが鉛筆を置いた。
「ふむふむ、これだけ書けば十分でしょ。ふあ〜あ、なんだか眠くなっちゃってきた。
丁度ベッドが空いてる事だし、あたしもお昼寝しましょっと。」
ノートを閉じ、ゆっくりとベッドに近付くルーアン。
そしてベッドの上でごろんと横になった。
「夕食が楽しみだわ〜・・・ぐー・・・。」
顔を少しにやつかせたかと思うと、そのまま寝に入る。
結局は七梨家の者全員が昼寝タイムに入るのだった。

そして夕刻、一番に目を覚ましたのは・・・。
「ふにゃあ、これ美味しい・・・あれ、夢?なんだあ、せっかく美味しいご馳走だったのに。」
一つ大きなあくびをしたかと思うと、その人物は体を起こした。ヨウメイだ。
「ご馳走といえば今日の夕御飯に作らなきゃいけないんでしたね。
・・・って、今もう五時じゃないですかー!!!」
時計を見て驚き慌てるヨウメイ。しかし・・・。
グキッ
「ふえっ!?」
体のどこかをひねった様だ。あまりの痛さにたまらずそこに崩れ落ちる。
「う、うそお、変な体勢で寝てたからだ・・・痛いよう・・・はうっ!!」
再び体勢を立て直そうと思ったヨウメイだったが、更なる痛みに襲われた様だ。
苦痛に顔をゆがめ、ほとんど声も出せない状態である。
(ゆ、夕御飯の事知らせないと、腕立、千回・・・。)
必死になって、寝ているルーアンとキリュウに告げようとするものの、
体は動かせない、声は出せないという事でどうしようもなかった。
そのまま何も出来ないまま時間が流れる・・・。

結局夕御飯は後に起き出してきたシャオが作ることとなった。
相変わらず“おいしいよ”と笑顔で食べている太助。
ため息をついている那奈。そしてルーアンとキリュウは気まずい顔でパクパクと食べていた。
そう、今キッチンで食事しているのはこの四人である。
激痛の為にヨウメイが起き上がれないので、シャオが彼女に御飯を食べさせているのだ。
「どうですか、ヨウメイさん。美味しいですか?」
「はい、とっても。すみません、シャオリンさん・・・。」
部屋のベッドの上で横になりながら御飯を口にするヨウメイ。
統天書も開けられない為に、自ら治療を行う事も出来ない。
「また今度、美味しい料理を作ってくださいね。」
「はい、分かりました。またの機会に三人で頑張ります。」
返事をするヨウメイににこりと微笑むシャオ。
それとは逆にキッチンの方では・・・。
「しっかし呆れたもんだな。なんでぎっくり腰になんか・・・。」
「那奈姉、ヨウメイ曰くそれとはまた違うんだって。」
「そうなの?でもまあ、結局三人の料理は食べられなかったな。」
じと目でルーアンとキリュウを見る那奈。
二人はそんな目線をそらすかのように、いそいそと食事に集中する。
そして食後。リビングにて腕立が行われた。ヨウメイは参加できないので、二人である。
「ほらほら、100回程度でへばってんじゃないぞ。もっと気合入れろ!!」
ものさしを片手に怒鳴る那奈。横では太助が心配そうに見ている。
「ふう、ふう・・・。何であたしがこんな目に〜!
これというのも、キリュウが昼寝しようとか言い出すからよー!」
「る、ルーアン殿が陽天心など、使うからだー!」
「喧嘩すんな!そんな元気があるんだったらもっと腕立を頑張れ!」
ビシッ!
と、那奈が物差しを振るう。苦しそうに声を上げる二人であった。
「なあ、那奈姉、やり過ぎなんじゃ・・・。」
「なんだと?外野は黙ってろ。これはこの二人が言い出した事なんだからな。」
再び物差しを振るう那奈。と、そこへシャオが入ってきた。
「ヨウメイさんはもう眠られましたわ。“腕立頑張ってください”と伝言を残して。」
「な、なんですってー!?ふざけんじゃないわよ!!シャオリン、すぐに叩き起こして連れて来なさい!」
「ルーアンさん、ですが・・・。」
「ルーアン殿の言う通りだ!自分だけ罰をのがれようとは許せん!」
「おまえら!1500回にアップ!!」
ビシッ!
またもや那奈が物差しを振るう。“ええー!?”という顔をする二人を制してこう言った。
「自業自得だろうが!ヨウメイが眠り出した時点で一緒に寝ちまったお前らが悪いんだよ!
まあ一番悪いのはルーアン、お前だ。ヨウメイがぎっくり腰になる原因を作ったんだからな。」
「そんな・・・。ちょっとキリュウ、やっぱりあそこでたたき起こすべきだったのよ!!
それをあんたが眠らせておこうなんて偉そうに言うもんだから!!」
「な、なんだと!?ルーアン殿、責任転嫁するつもりか!!」
ビシッ!
「こらこら!喧嘩するくらいだったら腕立を頑張れって言ってるだろ!!
あ、シャオ。一応ヨウメイの傍に付いてやっていてくれ。起きた時の世話係って事だけど。」
「はい、分かりましたわ。それじゃあ皆さん、頑張ってくださいね。」
笑顔を残してシャオは去って行った。気まずい顔で居た太助だったが・・・。
「太助、お前ももう自分の部屋へ戻れ。」
「あ、うん・・・。おやすみ・・・。」
「ああ、おやすみ。ほらほら二人とも休んでんじゃないよ!」
その後も更に厳しくなった那奈によって、腕立伏せは続けられたのであった。
この日の後遺症により、ルーアン、キリュウ、ヨウメイの三人はしばらくまともに動けなかったとか。
今度は翔子を加えてやるという計画を那奈は立案中である。

≪第十三話≫終わり