翔子と紀柳のパラレルワールド日記(「家族計画」編)


『プロローグ1』

            
「ん…?」
いつもどおり、翔子とキリュウの二人で扉を探していると
翔子はある扉の前でふと立ち止まった。 いつもどおり扉の前に張り紙が張ってあり、翔子はそれを見た。


翔子に続いてキリュウもその扉に張られた張り紙を見た。



       『           〜注意〜

           この扉に入ったらある試練を受けてもらいます。
        なお、その試練が終わるまでここから出ることはできません。
            その覚悟がある場合のみ、ここにお入りください』


  いつもと違い、世界に対する説明はない。
ただ、注意書きがあるだけの張り紙である。
「試練、か。なんか面白そうだな」
「……」
「はいって見ようぜ」
「……」
「ん?どうした、キリュウ?」
試練、と聞いたらすぐ飛びつきそうなキリュウがなぜ、
黙っているのか、と少し不思議に思い、翔子はキリュウに聞いた。
「……やめたほうがよくないか、翔子殿?」
「え!?」
まさか’試練’の精霊であるキリュウからそのような言葉が出てくるとは
思わなかったので翔子は思わず声を上げてしまった。
「どうしたんだよ、いつものキリュウなら、
試練ってだけでほいほい行くのに!」
翔子のその言葉をきいて、自分は翔子にそのように思われていたのか、
と思いながらも(まぁキリュウ自身否定はできないのだが)その理由について述べた。
「まず第一に、いつもの扉とは違い、注意書きだけだ。
今までこのようなことは無かった。
いや、扉に注意書きというものすら無かった。
第二に、この世界の中身について何も触れられていないこと。
世界の特長とかを書いているのに今回はそれが無い。
時に目的を書いてある場合があるが、今回は内容には一切触れていない。
以上だ」
そういわれると翔子にも何か怪しいと思うようになってきた。
確かにキリュウのいうとおりだ、と、翔子は思った
だが…、
「じゃあ、キリュウは何が起こるかわからない試練は受けたくない、っていうんだな。
あ〜あ、キリュウって試練を与える精霊なのに案外臆病だよなぁ」
翔子は湧き上がる好奇心には勝てなかった。
わざとキリュウを挑発させる言動を取る。
「な、私は臆病ではなく、ただ、危険を回避しようと…」
「だいたいさぁ、あまり変な扉があるわけないだろ。
管理人がちゃんと存在しているわけだしさぁ」
「まぁ確かにそのとおりなんだが…」
「じゃ、行こうぜ」
「……わかった」








―――――結論から言えばキリュウの推測は正しかったのである。
その扉は以前二人が某世界に行ったときのように
’立ち入り禁止’という立て札があって当然な世界。
副管理人がちゃんと二人の様子を見ていればその二人がその世界に
入るのを止められただろうが…

その副管理人はというと
















「ぐぅ−−−−」

寝ていた。(職務怠慢)



空には太陽がさんさんと照っている。
初夏を思わせるような太陽だ。すがすがしい。


翔子たちは空き地にいた。
大きさは学校のグラウンドぐらいであろうか。結構広い。
空き地には土管があり、なぜか3つほどテントが張ってあった。
空き地の周りには、住宅街が広がっている。
住宅街にある、空き地。
最近あまり見られなくなった風景である。
その空き地の中にふたりは、いた。


「……」
「……」

その中で、二人は唖然としていた。
その理由は試練の書かれた看板のせいである。

「〜試練〜
今日から3日間、この空き地で生活すること。

ちなみに警察に捕まったらだめ」

念のためにもう一度行っておこう。
翔子たちがいるところは住宅街のなかの空き地である。
けっして山の上とかのキャンプ場ではない。
周りにはまばらであるが民家が見える。

はっきり言って人目にもつくであろう。
かなり恥ずかしいことこの上ない。


「……」
「……」


「……こんなところで3日間も暮らせって言うのか?」

翔子は思いっきりため息をついた。
と、同時にその看板が消えた。




<一日目>

とりあえず、翔子はそれを保留し3つあるテントのうちの一つに入った。
ぐだぐだいってもしょうがない、そう思ったからだ。
テントは見た目おんぼろであるが、中を見ると結構補強した後がある。
結構ひろく、二人くらい寝ることができそうだ。

続けて二つ目に入るがその二つ目も同じ感じである。

続けて三つ目。これも同じであるが…、
中になぜかちゃぶ台や飯ごうがおいてある。
ご丁寧にも生活に必要な用品だけはあるらしい。
ふと翔子がちゃぶ台を見ると、

’ここで食事をとる場合は
このちゃぶ台を使って食事を外で取ること’


と書かれている張り紙が張ってあった。
はぁ…、と翔子はため息をついた。
これは試練じゃなくただの嫌がらせのような気さえしてくる。




テントから出ると二人は空き地の中を見て回った。
空き地の中をよく見ると手製の釜戸まであった。
これを使ってご飯を作れということだろうか。
…多分そうであろう。
そう思いつつ翔子は財布の中を見た。

これならコンビニのご飯だけで生活していけそうだな――――。
飯ごうで炊いたご飯はおいしいけど、人目につくしなぁ…。
やめておいたほうがいいだろうなぁ…。

そう思いながら空を見ると、もう日が傾いていた。



「キリュウ、夕食何にする?」
「適当にしてくれ、私はこういうところにきたことは無くてな」
翔子とキリュウは近くにあるコンビニに来ていた。
空き地で自分で色々作るのはやはりためらわれたからだ。
「キリュウ、そういう答えが一番困るんだけどなぁ」
「すまぬがほんとにこういうところにきたことが無いのでな。
何がおいしいのかわからない」
いまどきコンビニに来たことがないなんて…と翔子は思ったが
七梨家の事情を考えれば当たり前かもしれない。
食事はいつもシャオが作るし、シャオが何らかの事情でいないときは
太助が買ってくるだろうし。
確かにそういうことに対しあまり考えたことがなさそうな
キリュウからすれば何を選べばいいのかわからないのもわかる。
「じゃあ、あたしが適当に選ぶぜ」
「ああ、頼んだぞ、翔子殿」
翔子はため息をつきながら食品を選んでいった。
何にしようか、と選んでいったとき…、



ドン
誰かが翔子にぶつかった。
「うわぁぁ〜、すみませんすみません、急いでいたもので」
翔子は謝って来た人のほうを見た。

年は13くらいで、翔子たちと同年齢くらいだろうか。
白と黄色を基調とした服を着ていて青色の髪の毛をしたかわいらしい
感じの顔だ。
家から買い物を頼まれたのか、手には醤油と蚊取り線香を持っていた。

その少女は何度か謝るとそのままレジに行って出て行った。
「ほんとにごめんなさい、ごめんなさい」
何度もあやまった。こっちが申し訳なるくらいに。
しばらく謝ったあと、その少女はレジに行き外に出て行った。
「キャン!」
こけた。


「なんともあわただしい少女だな」
キリュウがその少女を見てそうつぶやいた。
「そういえば、蚊取り線香も買っておいたほうがいいかもな」
ふと翔子が思い出したように行った。
さっきの少女が見おっていたのを思い出したのである。


自分たちの食事と蚊取り線香、それと虫に刺されたときの
薬を買って翔子たちは店を出た。


さっきまで自分たちのいた空き地に戻る。
そして買ってきたものを広げ食事を取り始めた。



ご丁寧に、というかなんというか例外なく、
空き地の回りを通る人たちは翔子たちの方をちらちらと見つめながら
通り過ぎていく。
はっきりいってかなり恥ずかしい。

「………」
「………」
二人とも気まずい雰囲気のまま食事を取っている。
食事をおえたとき、二人の顔は真っ赤だった。
もっとも、キリュウの顔のほうがより真っ赤だったのは言うまでもないが。


日が完全に沈み、二人そろって同じテントに入る。
いろいろ明日からのことを話あうためだ。
「なぁ、キリュウ、大丈夫か?」
「なんとか、がんばってみる」
そうは言うがキリュウの声に自信がない。
「わるかったな、あたしが無理に誘わなければ…」
翔子はすまなさそうにキリュウにいった。
「いや、気にするな、翔子殿。私も最後には行くことにしていたし、
試練の内容に興味が無かったわけではないからな。
…まさかこんな試練だとは思っても見なかったが」
そういったキリュウは少し笑っていた。
「ありがとな、キリュウ」
翔子はキリュウに一言、礼を言った。
「…ところで翔子殿、明日からどうする?」
キリュウは照れているのか早口で話を本題に移す。
その様子が手にとるようにわかり翔子は少し笑った。
「とりあえずさ、明日、この周りがどうなっているか
探検に行かないか。じっとここにいえるだけっていうのも
つまんねーし」
「そうだな」
「じゃ、お休み。キリュウ」
「ああ、お休み、翔子殿」




<二日目>
とりあえず、夜警察が来ることは無く二日目の朝を迎えた。
それはよかったのだが…、
「かゆ」
蚊取り線香をつけて寝たもののやはり蚊に刺された。
かゆい。
とりあえず虫さされの薬を塗り、翔子は朝食を買いにコンビニに行く。
それからキリュウを起こす。
キリュウが寝起きが悪いことを知っているからだ。

「おはよう、翔子殿」
「おはようじゃないって」
キリュウって相変わらず寝起き悪いよなぁ…、
と思いながら翔子はキリュウを起こした。
朝飯を昨日と同じく、空き地で食べる。

昨日と同じように自分たちを見る視線がある。
「……」
「……」
二人とも終始、無言だった。



「さぁてと、探検に行くか」
「そうするか、翔子殿」

食事を終え、二人は歩き出した。



歩いていくと公園にたどり着いた。
公園の真ん中には噴水があり、まあどちらかといえば広い公園だ。
休日とかは賑わうかもしれない。
「クワック」
変な声がしてふと足元を見ると一匹の真っ黒の烏がいた。
…首に何かがつけられている。
「なんだこりゃ?」
翔子がそう思いながらよく見ると首輪のようだった。
ちょっとした気の首輪がカラスの首についている。
「ひどいことするなぁ…、まったく。
いま、とってやるからな」
そういいつつ、翔子が首輪をはずそうとする。
「クワ?クワ、クワッカ!」
そのとたん烏が暴れ始めた。
「わ、静かにしろよ、今はずしてやっているんだから」
「翔子殿…」
今まで黙っていたキリュウが口を開く。
「なんだよ、キリュウ?」
「どうやらその烏、人に飼われているようだ」
「烏なんて飼うやつがいるわけないだろ?」
何いっているんだ、という感じで翔子がキリュウを見た。
まぁ確かにカラスをペットで飼う人はいない。
「いや、その烏がそういっていた」
「は?」
そういって、翔子はキリュウの方を見た。
キリュウは烏をつかむ。
「クワ?(言葉が理解できますのか?)」
「ああ、わかる」
「クワ。(助かります。)」
「何か困ったことでもあるのか?」
キリュウと烏が会話を始めた。
翔子はただその様子を見ていることしかできなかった。
「クワクワクワッカ。(実は私のご主人とはなれたゆえ、
ご主人を探しているのです)」

3分後

烏から事情を聞いたキリュウは翔子に事情を説明し、
一緒に烏(ちなみに『鳥』という名前(変わった名前だよなぁby翔子)
でかわれているらしい)
の主人を探すため、歩くことにした。
鳥と会話ができるのか?と翔子がキリュウに聞いたら、
「昔から山の中で生活することも多かったのでな。
大体の言語はわかる」
だそうである。
数千年生きてきたのは伊達ではないということか。
「鳥!」
どこかかから「鳥」という声が聞こえてきた。
そちらの方を見ると夏だというのに漆黒に身を包んだスケッチブックを
持って絵を描いている一人の女性がいた。
彼女の近くには男性がいる。おそらくは似顔絵を描いているのだろう。
「クワック(あれがご主人です)」
「わかった」
キリュウは烏からそう聞くと、その女性に近づいた。
そして、カラスを女性に渡す。
「鳥、私から離れるなんていい度胸しているわね」
「クワ(え?)」
「今からあなたのご主人が誰かもう一度教え込んであげようかしら?」
「クワック、クワ。(離れるとき、ご主人の了解をとりましたが?)」
「私に逆らったことを一生後悔させてあげるわ…」
そういって、その女性が鳥に手を上げようとしたとき、キリュウがそれをとめた。
「何をするの、あなたは?関係ないでしょう?」
「鳥がそなたから離れるとき了解を取ったをいっているが?」
そうキリュウがいうとその女性は驚いたようにこちらを見た。
「…鳥のことばがわかるの?」
「ああ、とりあえず。話はわかる」
「あなた変わっているわね」
夏だというのに真っ黒な服を着ているこの女性も変わっているよなぁ
と翔子は思ったが黙っておいた。
改めて顔をよく見る。
年は20代前半だろうか。
全体的にやせていて、
顔立ちはよく、どこか高貴な感じが漂う。
「で、この鳥はなんていっているの?」
「ちょっとまて、話を聞いてみる」
「クワック。クワ、クオック。(主人が絵を書いているとき
離れたのです)」
「…だそうだ」
「そう、しょうがないわね。似顔絵を描くのに夢中になっていたから」
「…あのさ、早く書いてくれないかな?」
とつぜん、黙っていた男が口を挟む。
「あのさ、こっちは客なんだから早く似顔絵かいてもらえないかな」
「わるかったわね」
そういって女性が筆を走らせ始める。
「客?ってことはあんた絵描きか?」
「ええ、そうよ。…できたわ。4000円よこしなさい」
よこしなさいって普通使う言葉じゃないよなあと翔子が思っていると
男性は何もいわずに4000円をわたし、絵描きの女性は絵を袋に包んで手渡した。
男性は去っていった。
「とりあえず、お礼を言うわ。鳥を連れてきてくれて。
しかし変わっているわね。鳥の言葉がわかるなんて。
司以外には始めてよ」
やはり、というかなんというか
どこか高慢的な態度でその女性は言った。
考えてみればこの女性が話すときはいつも高慢的である。
「ところでさぁさっきから気になってたんだけど、
鳥って変わった名前だよなぁ」
「司がつけたの」
「変わったやつだな。そいつ」
「ええ…、やっぱり第五福○丸とかファットマンとかチェルノブイリ
とかもんじゅとかいう名前のほうがよかったわよね」
(作者注:原作どおりです)
まじめな顔でその女性が言う。
(あんたも十分、変わっているよ……)
翔子はそう思ったが口には出さなかった。




絵描きと別れ、適当に昼ごはんを済ませてまた町をぶらぶらと歩く。

相変わらず住宅街が広がっている。
と、そこにひときわ目立つ建物があった。
一階建ての大きい建物だ。
しかし、近づいてよく見ると壁のペンキははがれていたり、
中にある草はぼうぼうで古い建物といった感じがある。
入り口あたりに『ウグイス学園』という文字があった。
「孤児院、みたいだな」
幼稚園や、保育所かもしれないが、直観的に翔子はそう思った。
「孤児院か、この時代にもあるのだな…」
二人はそういいながら建物の中を見る。
そこではたくさんの子供たちがピンク色の髪をした
明るい感じのする20歳くらいの女性(おそらくこの孤児院の職員の人だと思われる)
と一緒に遊んでいた。
子供をよく見ると幼稚園くらいの子供に混じって
小学生くらいの子供もいるみたいだ。
ということはさっきの予想は外れちゃいないんだろうな、と翔子は思った。


「ん?」
突然キリュウが何かに気づいたようにいった。
「どうした?キリュウ?」
「いや誰かに見られている気がしてな」
「はあ?」
いったい誰がのぞいているんだ、
翔子がそう思いながら辺りを見回すと確かに路地に姿を隠している人がいた。
二人ははとりあえずその人物に近づいた。
「…」
「…」
近づき、翔子はその人物と向き合った。
その人物は髪形は違うが、孤児院の職員の人と同じく
(髪形は違うが)ピンク色の髪の毛をしていた。
年のころも同じく20歳くらい。
ただ、その女性は眼鏡をかけていてさっきの職員の人とは対照的に暗い感じだ。
「あんた、どうしてあたしたちのほうを見ていたんだ?」
翔子がそう聞くとしばらくたってその女性は話し始めた。
「…べつに…あなたたちを…みていたわけじゃ、ない」
かすれるような声だった。緊張しているのか
もともとこういう声なのか非常に聞き取りにくい。
「すると、孤児院に用があるのか?」
そうキリュウが聞いた。
「……」
その女性は無言のままだ。
それをキリュウは肯定、と受け取った。
「われわれに気にせず、入っていけばよい」
「そんなんじゃ、ない…」
キリュウがそういうがその女性は弱弱しく否定した。
「だったらどうして入らないのだ?」
「……」
キリュウが聞くがその女性は無言のままだ。
「ああ、もう、じれったい、はいりゃ、いいじゃないか」
そういって、翔子はその女性を促すがその女性は入る気を見せない。
「まだ、みんな外に出てる?」
そういって、その女性はキリュウに子供が外で遊んでいるかきいた。
キリュウが孤児院の方を見ると子供はまだ外で遊んでいた。
「そう……」
それをきいてその女性はため息をつく。
「ところで…あなたたちは…、あの孤児院にいる子?」
しばらくしてその女性はきいた。
「いや、違うが」
「あたしも違うけど……、それが?」
「それなら…」
そういって、ポケットから小さな包みを取り出す。
「グラウンドに…人がいなくなったら…この包みを
玄関においておいてほしいの。私はもう行かなきゃ行けないから」
そういって、その女性は財布をとりだす。
「とりあえず…駄賃として…500円渡すから…おねがい…」
それだけいって、包みと一緒に500円玉を渡してその女性は去ろうとする。
「まてよ」
そう行って翔子が引き止めるが、その女性は立ち止まろうともせずに行ってしまった。


「なんかへんなことになったな」
「そうだな、翔子殿」
そういいながら『ウグイス学園』の方を見る。相変わらず、子供たちが外で遊んで知る。
頼まれたからにはしばらくここにいたほうがよさそうだ。
そう思い、しばらくそこにいることにした。




三時間後

ようやく、子供たちが中に入る。
誰か出てくるといけないので、しばらくたってから玄関に近づき、
包みをおく。
そして急いで玄関から立ち去る。

「これでいいんだよな」
そういって翔子はキリュウに同意を求める。
「多分、な…」

キリュウと翔子は二人そろって歩き始めた。

空を見るともう夕焼けだった。
これでは帰るしかない。
二人はそう思い、家に帰ることにした。



家に帰る途中、
「あ、そうだ、今日の晩飯どうする?」
思い出したように翔子がいった。
晩御飯を買わねばならない。
「適当にしてくれ」
キリュウが相変わらずそういう。
「じゃ、激辛カレーライス」
「翔子殿…、私をいじめているのか?」
キリュウが非難の目を向ける。
「だってさぁ、そういうのが一番困るんだよなぁ…。
キリュウは何か、食べたいものとか無いのか?」
「私は別に…」
「はぁ…」
翔子がため息をついた。
「とりあえず、こん中に入ろうぜ」
そういって、翔子は近くにあるスーパーを指差す。
そのとき、声が聞こえてきた。


「パパリン、今日はカレーが食べたいな」
「あらあら」

…何か聞いてはいけないような声が聞こえてきたような気がする。
恐る恐る振り返ると一組の夫婦に思われる人たちがいた。
いや、それはいいんだが…。
なんだよ、今の会話は…。
しかもパパリンとかいった男のほうは髪のほとんどが白髪で
40過ぎだ。その年になって、パパリンねぇ……。
対する女性のほうは30才くらいだろうか。
似合っているといえば似合っているかな。


スーパーからの帰り道…。
「また、あの空き地に人が住み始めたんですって?」
「そうなのよ。いったい何なのかしら?」
そんな会話がふと聞こえてきた。
二人はふと気になり、二人は耳を傾ける。
「この前いた人たちがいなくなったと思ったら…」
この前?
ということは誰かあそこに住んでいた人たちがいたのか?
あんな空き地で?
ふとその人たちにあってみたいような気がした。
よし、明日はその人たちを探すか。
そう翔子は思った。
「まったく、ぶきみよねぇ…」
そこまで聞いて翔子たちはその場を去った。


後にこのような会話がなされていたことも知らずに。
「それがね、今度は少女二人だけみたいなの」
「え?」
「警察に知らせたほうが…いいんじゃない?」




続く。

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