扉を開けて中に入った後、あたしとキリュウは大きな家の中にいた。
なんなんだと思いつつ、家の中を見てまわる。そして分かった事があった。
「あたしの家だな、間違いない。でも誰もいないしなあ。それに広い地下室まであるし。」
「翔子殿、なにやらはり紙がしてあるぞ。」
先に地下室に下りていたキリュウが呼んだ。そしてあたしもそこへ下りていく。
鋭くとがったダーツの矢によって、1枚の紙が壁にかざられてあった。
思い出せないが、どこかで見たような質の紙だ。それにはこう書かれてある。
『あなた達2人は、夢ヶ丘中学校の2年生として転入してもらいます。
なお、このはり紙は、イベントが終わると自動的に変わります。以上です。』
「・・・なんだかなあ、ちょっとねたがなあ・・・。」
「中学生か。ということは、私も制服を着なければならないのだな・・・。」
キリュウはなんだか考えている事が違うみたいだ。
そういえば鶴ヶ丘中学校でも、制服は着てなかったなあ。
「とりあえずその制服を探そうか。ちゃんと用意されてるはずだから。」
「うむ。しかし・・・。」
キリュウは、なんとなく制服を嫌がっているようにも見えた。でも、決まりは守らないとな。
制服か。ひょっとして・・・。そしてあたしは、自分の部屋へ行き、
いつも鶴ヶ丘中学校の制服がかけられてあるクローゼットを開けた。
もちろん、そこにあったのはまったく別の制服だった。
「やっぱりここか。しかも10着もあるな。なんでだろう。」
制服と一緒に、紙切れがぶら下がっているのが見えた。それを取り上げて見てみる。
『転入日は今日です。急ぎましょう。』
「なに―!?いきなりそんな事言われても。キリュウ、今何時だ!?」
「ちょうど7時30分だ。」
「よし、それじゃ間に合うな。急いで着替えよう!」
制服を2着素早く取りだし、1着をキリュウに投げてよこす。
普段学校に行く時は遅刻なんて気にしてないんだけど、今回は話が別だ。
1,2分で着替えを終え、なぜか用意されてあった朝食をさっさと食べ終わる。
「翔子殿、早食いは健康に悪いのだぞ。」
相変わらずクールな奴だな。急ぐっていう言葉しってんのか?
なんとか8時には家を出ることができた。そこで重要な事に気がつく。
「夢ヶ丘中学校ってどこにあるんだ?」
「あれではないのか?ほら、向こうの丘の上にある・・・。」
キリュウが指差した方向を見ると、それらしき建物が見えた。なんだ、結構近くにあったんだな。
「よーし、それじゃ行こうぜ。」
余裕をもって歩く。途中でキリュウがつついてきた。
「翔子殿、急ぐのではなかったのか?」
朝食をのんびり食べてた奴が言うせりふじゃねーな。
「いいじゃないか。予定が変わるのは仕方のないことだよ。」
キリュウは少し納得のいかない顔だった。細かい事気にしすぎなんだよな。
「それにしても・・・。」
家を出た時は気が付かなかったが、明らかにあたし達の町とは違っていた。
なんといっても気になったのは、学校の裏にある山。
あそこにはなんかある。なんとなくそんな気がした。
キリュウも少し、あの場所に興味を示したみたいだし。
学校に近づくにつれ、同じ服の人が増え出した。
長―い階段の向こうに、学校が見える。あれが夢ヶ丘中学校か。
期待を膨らませながら階段を上る。ここはどんな学校なのかな。
先生にあいさつし、教室へと案内される。途中で様々な倶楽部の札が目に写った。
吹奏楽部、人形劇部、写真部・・・。その中に、
「浪漫倶楽部?キリュウ、これって・・・。」
「ああ、扉の札と同じ。後でたずねてみることにしよう。」
そして教室に到着。2年2組か。
中へ入ると、クラスの皆が拍手で迎えてくれた。
「おおー、かわいい!」
「すごいわ、青と赤の髪の毛よ。」
「やっぱり転校生は女の子がいいねえ。」
なんかすごいな。
「それでは、自己紹介をしてください。」
先生に言われて、黒板に自分の名前を書く。
「山野辺翔子です。みんな、よろしく!」
明るく元気にあいさつ。すると、
「よろしくー!!」
とみんなの声が返ってきた。新鮮な感じだ。うーん、いいなあ。
「ほら、キリュウも早く。」
「う、うむ・・・。」
キリュウは顔が真っ赤だった。大丈夫かな・・・。
キリュウが黒板に字を書く。手を震えさせながらも、自分の名前をなんとか書き上げた。
「私は、キリュウ、という。・・・その、よろしく・・・。」
そしてうつむく。
「よろしく!」
「照れちゃって、かわいい―。」
みんなの声に中に、そんな言葉がまじってきこえてきた。ますます顔を赤くするキリュウ。
やれやれ、もう少し照れ屋をなおしたほうがいいな。
「それじゃあの席に座って。」
「はーい。ほら、キリュウも。」
先生に言われた席へ、無言のままのキリュウを連れて向かう。
「それでは授業を始めます。」
な、なにっ!?転入初日から授業すんの?もうちょっと気を利かせて、自習にするとかさ。
あたしは授業なんて真面目に聞く気はないのに・・・。
しかし授業は開始された。しょうがない、いつもみたいに適当に過ごそうっと。
ぼーっとしながら授業をうける。そして終わる。
休み時間になると同時に、みんながいっせいにやってきた。
口々に、どこから来たのだの、どうしてそんな髪型だのと訊いてくる。
それらに軽い気持ちで次々と答える。
あたしってこんなにもてたんだ、なんて思えるほど、みんなと仲良くなれた。
キリュウの方をちらっと見ると、赤くなってうつむいたまま、“うむ”とか“いや”とか返事している。
まあそれも試練だな。頑張って耐えてくれ。
楽しく喋っているうちに、窓際に1人、帽子をかぶった男が目に留まった。
なんだ?せっかく転入生が来たってのに、話しに来ないのか?
あたしのそれに気付いた、あたしの目の前に前にいた男。(確か矢野っていってたっけな)
そいつが帽子の男を呼ぶ。
「おーい火鳥!お前も混ざれよ!」
「悪い、矢野。また今度・・・。」
そしてそいつは窓の外を見つめていた。
なにか悩み事でもあるのか?男だったらうじうじしてんじゃないって。
そのうちに再び授業が始まった。そんなこんなでようやく放課後になる。
「ふう、やっと終わった。キリュウ、それじゃ部室に行ってみようぜ。」
「う、う、うむ。」
うむを言うのに2回もつまるなんて、相当つらかったんだろうなあ。
キリュウを連れて教室を出ようとすると、
「山野辺さん、何かクラブに入るの?」
クラスの女の子が訊いてきた。
「ああ、浪漫倶楽部に入ってみようかと思ってさ。」
「な、なんだって!?」
サッカー部の矢野が大声を上げた。そんなに意外なのか?
「ちょっと待ってくれよ。サッカー部のマネージャーをやるっていう話はどうなったんだよ。」
「そんなこと言ったか?もし言ったんなら、それは取り消すよ。じゃあな。」
「あ、おい!!くうう、やられたああ。」
悲痛な叫び声が後ろから聞こえてくる。
なんとなく誰かに似てるような・・・まあそんなことはどうでもいっか。
さてと、浪漫倶楽部は・・・お、あったあった。
「それじゃあノックするぞ。キリュウ、いいかげん顔上げろって。」
「・・・・・・。」
やはり赤い顔のままうつむいている。いるまでそうしてるつもりだ?
こんこんとノックすると、
「はーい。」
と、中から男の声がして、ガラッと扉が開いた。
出てきたのは大柄な男で、眼鏡をかけている。かっこいいとは言えないが、なんともにくめない顔だ。
「ようこそ!我が浪漫倶楽部へ何の用なのだ?」
なのだ?初めて聞いたな。まあいいや。
「あの、あたし達2人、浪漫倶楽部に入部したくてやってきたんだけど。」
「な、なんとおおっ!?」
入部希望を告げたとたん、大げさなリアクションで驚かれた。そんなにすごい事なのか?
「あの、いいのかな?」
「もちろん、大歓迎なのだ!さあ、入りたまえ!」
そして部屋の中へと通された。
中には、色々な遊び道具があったり、珍しいポスターが貼られてあったり・・・。
とにかく、浪漫倶楽部といわんばかりの物であふれていた。おや、あれは・・・。
「火鳥くん、なんと2人も入部希望者が来たのだ。とりあえず、コーヒーでも入れてくれないかな。」
「あう―、2人も?」
「そうですか、それは良かったですね・・・あれ!?」
「あんた浪漫倶楽部だったの!?」
2人でお互いを見合わせて驚く。まさかこんなところで出会うとは。
「なんなのだ?火鳥くん、この人達を知っているのかい?」
「知ってるもなにも、今朝うちのクラスに転入してきたばかりなんですよ。
へえー、奇遇だなあ。ようこそ、浪漫倶楽部へ。」
そう言って火鳥はにこりと笑った。
へえ、いい顔するじゃん。結構明るい奴じゃないか
「そうそう、改めて自己紹介しないとね。オレは火鳥泉行、よろしく。」
「私はこの浪漫倶楽部の部長、綾小路宇土というのだ。よろしくなのだ。」
「あう―、あたしはコロン。よろしく―。」
最後に自己紹介したのは、ピエロパンツの幼児。ん?
「なあ、なんでそんな小さい子がいるんだ?」
「あ、いや、コロンはオレの妹で・・・。」
「ふーん、そうなの?」
でもすっげえ名前だよな。まあいいや、あたしは細かい事はきにしない・・・
「違うな。」
「「「「えっ!?」」」」
キリュウの一言に、みんなで声をあげる。何が違うんだ?
「コロン殿といったな。そなたは精霊であろう、私には分かるぞ。」
「なっ・・・。」
なんだって?精霊?そういや少し雰囲気が違うような。
でも、最近しょっちゅう精霊に出会っているような気がするんだけど・・・。
「ねえ、どうしてコロンが石の精霊だって分かったの?」
「ん?なるほど、石の精霊か。実は私は大地の精霊でな。万難地天という。」
「なんと!不思議事件なのだ!」
「ふ、不思議事件?」
部長の声にあわててききかえした。
「そうなのだ。我々浪漫倶楽部は、この学校で起きている不思議事件を解決するために設立されたもの。
こうやって大地の精霊さんが入部しに来てくれた事こそ、不思議事件なのだ!」
ん~、なんかあたしの質問の答えになってないきもするけど。
でも、浪漫倶楽部ってそういう倶楽部なんだ。面白そうじゃん。これは是非入らなきゃ。
「とにかくあたしたちは入部するよ。何をすりゃいいのかな。」
「それじゃ2人とも、早速入部届けに名前を書いて欲しいのだ。」
そう言って、部長が2枚の入部届けを渡してきた。
「これに名前を書くだけでいいの?」
「そう、それで2人は浪漫倶楽部の一員となるわけなのだ。」
随分と簡単だな。でもそのほうが面倒くさくなくていいや。
さらさらっと自分の名前を書き込む。キリュウも名前を書き、その2枚を渡した。
「山野辺翔子ちゃんにキリュウちゃんだね。よろしくなのだ。」
翔子ちゃん・・・。初めてだな、そんな名前で呼ばれたの。ところで、
「あのさあ、今言ってた不思議事件はどうやって解決するの?」
「もちろん!入部してもらっているから、即解決なのだ!」
「あう―、さすが部長!」
横でコロンが一緒に騒ぐ。そんなんでいいのか?
まあ、あたしが言えることじゃないけど。
「とにかく、これからよろしく頼むぞ。綾小路殿、コロン殿、火鳥殿。」
「ああ、こちらこそ!」
キリュウの真面目なまなざしに、部長がドンと胸を張る。
改めてあたしは思った。うーん、なんかすごい倶楽部だなあ、と。
しかし部員が少なすぎるような気が・・・。
「部員はたったの3人しかいないの?こんなに面白そうな部なのに。」
「もう1人いるんだけど、今は・・・。」
あたしの問いに、火鳥が力なく答える。まずい事訊いちゃったのかな。
「火鳥くん、まだうじうじしているのか?そんなんじゃ、月夜ちゃんは元気にならないぞ。
あ、もう1人は橘月夜ちゃんといって、火鳥くんと同じクラスの女の子なのだ。
ほら、この写真の子がそうなのだ。」
浪漫倶楽部で写っている写真を見せてくれた。
あたしと同じ青い髪で、シャオの髪形に近いかな。なんとも感じのよさそうな女の子。
「へえ、そうなのか。」
ひょっとして火鳥とその月夜って子は・・・。
まあいいや、それはあとだな。とりあえず、
「その月夜ちゃんになんかあったのか?入部したんだから、早速協力するぜ。」
「いいよ、オレのせいで月夜ちゃんは・・・。」
たく、こいつは。よし、
「お前男だろ!?だったらそんなにうじうじしてんじゃないよ。
あたしはそういうのはだいっ嫌いなんだ!いいから話してみろ!」
「わかった、話すよ。」
そして火鳥はぽつりぽつりと話し始めた。一体なにがあったのかを・・・。
その日、オレ達浪漫倶楽部は、裏山の調査に来ていた。
不気味な影が現れて、山へやってくる者を追い返す、という不思議事件を解決するために。
普通の人には見えない存在が見える瞳、
セカンドサイトを持つオレは、先陣をきって探していたんだけど・・・。
「部長、やっぱり怪しいものは何もないですよ。」
「火鳥くん、もう少し。もう少しだけ探してみるのだ。」
「そうよ。まだ諦めずに探してみましょう。」
丘の林に入って数時間になるけど、一向にそれらしい人影は見当たらない。
「火鳥ぃ、今度はこっちに行ってみよう。」
「そうだなコロン。部長!オレはコロンとこっちのほうへ行ってみます。またあとで!」
「気をつけてね、火鳥くん。」
「何か見つけたら大声で知らせるのだ。」
二手にわかれて手がかりを探す。10回近くこんな事をやっているけど、
結局何も見つけられないまま合流する。それの繰り返しだった。
しかし、今回は違った。
「あれ?ねえ火鳥、あれ月夜だよ。」
「ほんとうだ。今回もしゅうかくなしか。おーい、月夜ちゃ―ん。」
月夜ちゃんの名前を呼び、そこへかけよる。
「あ、火鳥くんにコロンちゃん。どう、何か見つかった?」
「いや、何も・・・あれ?部長は?」
そう、月夜ちゃんはなぜか1人でいた。
「部長ならこっちよ。付いて来て。」
「う、うん。」
月夜ちゃんはすたすたと林の中を歩いていく。すごい早さだ、付いて行くのがやっとだった。
「月夜ちゃん、もっとゆっくり歩、うわっ!!」
突然林が途切れてがけが現れ、オレは危うくそこに落ちそうになった。
幸運にも木の枝につかまることができ、なんとか落ちずに済んだ。
「大丈夫、火鳥?」
「だ、大丈夫。それより月夜ちゃんは?」
あたりを見回したが、月夜ちゃんの姿は見えない。一体どこに・・・。
「こっちよ、火鳥くん。」
声がしたその方を向くと、月夜ちゃんが笑いながら手を振っている。それにあわててかけよる。
「月夜ちゃん、大丈夫だったの?がけがあったのに。」
「私なら平気よ。それより、早く部長と合流しましょ。」
そして月夜ちゃんはすたすたと歩いて行く。あわてて追いかけようとしたら、
「う、うわっ!!」
再びがけだ。今回もぎりぎりセーフで助かった。
「月夜ちゃんは?」
月夜ちゃんの姿を見つけたが、様子が変だ。だんだんと色形が薄くなってゆく。
ついには消えてしまった。
「火鳥、今のひょっとして・・・。」
「ああ、不思議事件の手がかりだ。まさか月夜ちゃんに化けてオレ達をだまそうとするなんて・・・。
がけから遠ざかって歩き出す。しかし、知らない間にコロンの姿が見えなくなっていた。
「コロン!?あちゃ―、はぐれちゃったのか?今まではぐれたなんてことなかったのになあ。」
コロンを探しつつ歩いていると、俺の名前を呼ぶ声が聞こえ、そしてその声の主が姿をあらわした。
「火鳥くん。良かった、部長とはぐれちゃったの。・・・コロンちゃんは?」
「オレもコロンとはぐれちゃったんだ。一緒に2人を探そう。」
声の主は月夜ちゃんだった。しかし、先ほどのこともあり、俺は油断なく身構えていた。
「どうしたの、火鳥くん。その顔は・・・ひょっとして、何か手がかりを見つけたの?」
「うん、まあね。」
じっと月夜ちゃんを見つめたまま立っていると、もう1人の声が聞こえてきた。
「おーい、月夜ちゃ―ん、どこなのだー。」
部長だ。そしてその部長が、オレ達の前に姿をあらわした。
「おお、火鳥くん。月夜ちゃんを見なかったかい?」
その部長の言葉にはっとする。部長には月夜ちゃんが見えていない?
念のためオレは訊いてみる。
「なに言ってるんですか部長。月夜ちゃんならここにいるじゃないですか。」
するときょろきょろとあたりを見回す。
「なに?どこにいるのだ?」
やっぱり見えてないんだ。
「部長!ほら、目の前ですよ!」
月夜ちゃんは自分の場所を懸命に伝えようとするが、部長にはまったく伝わっていない。
そして部長がきりっとした目でオレに言った。
「火鳥くん!その月夜ちゃんは不思議事件の手がかりに違いない!急いで捕まえるんだ!」
「そんな!火鳥くん、私は月夜よ、信じて!」
月夜ちゃんは必死に叫んだが、その声はオレの耳には入らなかった。
先ほどのがけの事もあったせいだろう。オレはものすごい形相で、月夜ちゃんを捕まえようとした。
しかし間一髪のところでかわされ、月夜ちゃんは逃げ出した。
「おお、火鳥くん!私にも見えるようになったのだ!」
「そうか、あわてたんでオレ以外にも見えるようになったんだ。さあ、追いかけましょう!」
ついさっき誘導された時と同じように、すごい早さで林の中をかけてゆく。
しばらくして、フッと月夜ちゃんの姿が消えた。そのあとすぐ、
「キャアアア―!!」
という叫び声が聞こえてきた。その声のあたりで足を止める。
大きながけだ。月夜ちゃんはどこにいったんだ?
「火鳥くん、あれをみたまえ。」
「え?ああっ!!」
がけの下の方に月夜ちゃんが横たわっていた。ぴくりとも動かない。
「部長・・・。オレは・・・ああっ!!」
力なくつぶやきながら部長の方を見ると、なんと部長の姿が半透明に。
そして笑いながら消えていった。その後に、遠くから新たな声がした。
「おーい、火鳥くーん、月夜ちゃ―ん、コロンちゃ―ん。どこなのだー!!」
部長?そんな、それじゃあれは、あのがけの下に横たわっているのは・・・。
「部長―!!オレはここです!!早く、早く来てくださーい!!」
「・・・というわけだよ。今も月夜ちゃんは意識不明のままなんだ。
思えば、コロンに見ることのできた月夜ちゃんが、何故部長に見えなかったのか。
それを冷静に考えるべきだったのに、あの時のオレはどうかしてたんだ。
オレがもっとしっかりしてたら、月夜ちゃんを信じていれば・・・。」
話し終わった後、火鳥がぼろぼろと泣き出した。
「火鳥くんだけの責任ではないのだ。私が月夜ちゃんとはぐれてしまったばっかりに・・・。」
そして部長も泣き出す。
「あう―、月夜―。」
ついにはコロンまで泣き出した。
ちょっとちょっと、気持ちはわかるけど、いきなりそんなに暗い雰囲気にしなくても・・・。
「ふむ、なかなかに興味深い。私が1人で行ってみよう。」
キリュウがすっと立ちあがった。
「おいちょっと待てって。1人でなんて危ないって。」
「心配無用だ。どうやら私の力を思う存分使えそうだからな。
私がみごとその影の正体を突き止めてみせよう。」
そして部屋を出て行こうとする。しかしピタッと止まった。
なんだ?気が変わったのか?
「その場所に案内してもらえぬか?」
あのな・・・。
「キリュウちゃんが1人でゆくだって?そんな無茶はいけないのだ。必ず危険な目に遭う!」
「そうだよ、オレ達も一緒に行くよ。」
「コロンも!」
部員で口々にキリュウを説得しにかかる。
でもやっぱりキリュウ1人の方がいいかも。待てよ・・・。
「なあ、あたしは月夜ちゃんのところへお見舞いに行きたいんだけど。
火鳥、一緒に来てくれるよな?」
「え、オレ?」
事件はキリュウに任せるとして、あたしはお見舞いに行こうと思った。
もちろん、一緒に来るべき人物は、火鳥にほかならない。
「そうか、お見舞いか。火鳥くん、行ってきてくれなのだ。
私とコロンちゃんは、キリュウちゃんを山へ案内する。」
「でも、部長・・・」
「はい、決まりだな!さあ火鳥、連れてってくれ。
それじゃキリュウ、頑張れよ。部長、コロン、よろしく頼むぜ。
そういうことで出発!!」
「お、おい!」
あたしは強引に火鳥を引っ張って部室を出た。そして、校舎を出て、病院へと向かう。
素直にも、言われるままに案内をしてくれて、十分後には病院に到着した。
「すごい勢いだったのだ。」
「では綾小路殿、案内してくれ。」
「あ、ああ、わかったのだ。」
翔子が火鳥をつれていって、部室に残されたのは、部長とキリュウとあたしの3人。
あうー、火鳥大丈夫なのかな。
「コロンちゃん、はやくくるのだ。」
「はーい。」
部長に呼ばれて、あたし達は部室を出る。そして問題の山へと向かった。
それにしても、なんで月夜があんなになっちゃったのかな。
月夜はなんで部長とはぐれちゃったんだろう。
あたしも知らない間に火鳥とはぐれちゃったし・・・。
「ここなのだ、キリュウちゃん。
この林の中で、我々はその影にだまし討ちをくらったというわけなのだ。」
「あう―、やっぱり不気味だね、部長。」
あたしはこの林を前にして、改めて震えた。部長も心なしか震えているみたい。
でもキリュウは、あたし達より1歩前に出てこう言った。
「2人とも、少しの間静かにしていてくれ。」
そして懐から扇を取り出すと、それを広げて地面に置き、その上に手を乗せた。
何をするつもりなんだろう・・・。
「樹々達よ、大地の精霊たる我に力を。異質なる存在を教えてくれ!」
なんかの呪文みたい。そのとき!
にょきっ!と、遠くにはえてた木が、一本だけ大きくなった。
「2人とも、樹々達が教えてくれた。探している影はあの木のそばにいる。
まったく動けない状態でな。さあ、行くぞ!」
そう言うとキリュウは走り出した。あたしと部長は、あわててそれを追う。
「ま、待つのだキリュウちゃん。はぐれないように行くのだ!」
「キリュウ―、待ってよ―。」
そしてあたし達3人は、大きくなった木を目指して、林の中へと駆け出していった。
不思議事件の正体を突き止めるために・・・。
病院の中をてくてく歩く。もちろん火鳥を引っ張りながら。
道順は言うくせに、自分から歩いていこうとしないんだもんなあ。
「ちょ、ちょっと、いいかげん放してくれよ。」
「なに言ってんだ。話したら逃げる気だろ。」
「そんな事ないよ。こうやって道順を教えているじゃないか。」
「だったらなんで先に歩かないんだ?」
ここでだんまりになった。やれやれ、確かに後ろめたいんだろうけど、
見舞いに行くぐらいはしないといけね―ぞ。
そして病室についた。面会謝絶ではなかったが、やはり個室だ。
ノックして返事を聞き、ドアを開ける。
「しつれいします。」
「あら、あなたは?」
ベッドのそばにいた女性がこちらを見た。多分月夜の母親だな。
「今日は、おばさん・・・。」
火鳥が申し訳なさそうにあいさつする。でも、そのおばさんはにっこり笑って言った。
「火鳥くん、月夜のお見舞いに来てくれたのね、ありがとう。そちらのお嬢さんは誰なの?」
「あ、あたしは・・・。」
少し戸惑いながらも自己紹介をする。それが終わると、おばさんはこう言ってきた。
「それじゃ、しばらくお2人に月夜を見ていてもらっていいかしら。少し用事を済ませてきたいの。」
「ええ、いいですよ。」
あたしはにこやかに答えたが、火鳥のやつは黙ったままだ。たく、少しは返事しろって。
「火鳥くん、いつまでもそんなんじゃ、月夜も安心して元気になれないでしょ。
早く昔の元気さを取り戻してね。それじゃお願いするわ。」
そしておばさんは部屋を出ていった。あたしと火鳥は、ベッドの横のイスに並んで座る。
大きなベッドに月夜がいた。意識不明というのはまだ続いているようだ。
しかし、点滴がされているだけで、他には何もされていなかった。
少し疑問が浮かび、火鳥にたずねてみる。
「なあ、怪我はしなかったのか?」
「怪我はたいしたことなかったんだけど、なぜか意識が戻らないんだ。
それでも命に別条はないって。それどころか健康そのもの。
お医者さんも、原因が全く分からないって言ってたよ。」
「ふ―ん、意識だけがねえ。」
それを聞いて思った。月夜の意識が何者かに奪われた、もしくはのっとられたのどっちかだろう。
なんといっても不思議事件なんだから、それぐらいの予想はしてもいいはずだ。
それにしても・・・、
「あのなあ、いつまでそんな暗い表情でいるわけ?いいかげん普段の顔にもどれよ。
あのおばさんも言ってただろ。“そんなんじゃ月夜も安心して元気になれない”って。」
「言いたいことはわかるよ。でもオレは・・・。」
相当重症だな。こりゃ、キリュウが解決してくれるのを待つしかなさそうだな。
ちらっと窓の方を見る。まだ夕方になるには早い時間で、日は赤くはなかった。
キリュウ、なるべく早く解決してくれよ。
「はあ、はあ、キリュウちゃ―ん。」
部長の叫び声が林の中に響く。結局あたしと部長はキリュウにおいてかれちゃって、
上の方をちらちら見ながら、大きな木を目指して走っている最中。
「とんでもなく早足なのだ。さすが、大地の、精霊さん。」
「部長、大丈夫?息が切れてるよ。」
「なんの、まだまだ・・・。」
ひどいな、キリュウ。あたし達をちゃんと連れてってよ。
少し文句を言っている間に、やっとキリュウに追いついた。
といっても、大きな木にたどり着いたからだけど。
キリュウは扇を前に構えたまま立っていた。その正面には、半透明の火鳥がいる!?
「部長、キリュウの前にいるのって・・・。」
「あれが、不思議事件の犯人?」
急いでキリュウのそばにかけよると、キリュウが冷静な声で言った。
「2人とも、これが事件の犯人だ。今は火鳥殿の姿をしているが、もちろん火鳥殿ではない。
強い強い残存思念だ。」
ざんぞんしねん?一体誰の?
「今はじっとしているけど、逃げてしまわないのかい?」
「心配無用だ。大地の精気によって、動きを封じてある。
口だけは動くあるようにしてあるのだが、一向にしゃべろうとしない。どうしたものか・・・。」
その影は、とても恐い表情をしていた。まるですべてを憎んでいるみたい・・・。
「どうして月夜ちゃんをあんな目に遭わせたのだ?理由を聞かせて欲しいのだ。」
あう―、部長。それじゃいきなり過ぎるよ。
でもその影の表情が和らいだ。そしてにっこり笑ってこう言った。
「心が見えたんだよ。彼女の温かい心が。」
「心?」
「そう、僕は実は幽霊・・・ではないんだけど、うん、それに近いんだ。」
幽霊?そうか、それなら分かりやすいかな。次にキリュウが質問する。
「月夜殿がいつまでたっても目を覚まさないのは、そなたが何か関係しているからなのか?」
「月夜ちゃんの意識は僕が持っている。彼女が意識を取り戻さないのはそのためだよ。」
い、意識・・・。あうー。
「ねえ、意識ってどういう事?」
すると、遠い目をして話し始めた。
「いつの頃からか、僕はこんな姿になっていた。誰も僕のことを分からないし、僕も誰のことも分からなかった。
でも、人の心は見えたんだ。姿を変えることも出来た。さらに人の意識を捕らえることも出来る。
そういう能力が、僕には身についていたんだ。」
「どうしてそんな姿になったのだ?」
「自殺したんだ、この山で。ひどく嫌なことがあって。覚えているのはそれだけだ。」
いまいちよく分からなくなってきた。何でそんな姿になったのかって訊いているのに・・・。
「とにかく、その後のことは覚えていない。気づいたときにはこんな姿になっていて、
そして、来るもの全てを拒んでいたんだ・・・。」
それでみんな追い返されたのか・・・って、何でそんな姿になったのー。
「全ては分からないままという訳なのかい?それと月夜ちゃんと何の関係が・・・」
「月夜ちゃん・・・。彼女にはほんと救われたよ。僕が忘れてた、大切なことを思い出させてくれた。
彼女の温かい心をそばに置くことによって、僕は安らぎを得ることが出来た・・・。」
「それで、月夜殿の意識は返してくれるのか?」
「返すのはいい。だけど、2つ条件がある。」
条件?あうー、それにしてもあたしにはさっぱりわかんないよー。
「1つは、月夜ちゃんに僕のことをしゃべらないということ。彼女には、僕のことは分からないからね。
もう1つは、僕をこの女の子の力によって消滅させるということ。頼まれてくれるかな。」
「それでよいのか?ならばそれに従うまでだが・・・。」
ちょっとちょっと、勝手に話を進めないでよー。
「待ってよ、キリュウ。あたしにはさっぱり分からないよー。」
「とにかくこの少年は、死によって別の姿、そして新たな力を得た。
しかし、生前の経験から、自分の本当にしたいこととは別のこと。
つまり暴走をしてしまったということだ。偶然見つけた月夜殿の心。
それによって、大事なことを思い出したわけだ。
しかし、今までしてきた罪が消えるわけではない。
それで自分を消してくれと頼んできたわけだ。」
やっぱりよくわかんない。部長もキリュウに尋ねる。
「月夜ちゃんにしゃべらないっていうのはどういうことなのだ?」
「月夜殿には意識がない間の記憶は無い。だから、
ひどいことをしてしまった自分のことは知らせてほしくない、という事だ。」
つまり、この子の事は忘れろってことなの?でも・・・。
「それでは、自分のしてしまったことに、目を背けてしまっているということではないのかい?」
「・・・そんな事言われてもしょうがないよ。消えてしまえば、全てがなくなるんだから。
そうだな、やっぱり誰にもしゃべらないようにしてくれ。
僕の正体を知っているのは、君達3人だけだ。」
全てが?そうか、今のこの子は、残っている意識なんだ。
でも、それを消してと言っているということは・・・。
「そろそろゆくぞ。この状態でいるのはつらいのでな。」
「そうか、君は不思議な力を使いつづけているんだね。じゃあ早くやってくれ。」
「万象、大乱!」
キリュウが呪文を唱えると同じに、その子が強い光に包まれた。
「キリュウ、何をしたの?」
「大地の精気を、巨大なエネルギーの塊に変えてぶつけたのだ。ひとたまりも無いはずだ。」
そしてその子の姿が消えてゆく・・・。その子は笑顔で、
「ありがとう、これでやっと楽になれる・・・。」
と言って、完全に消え去った。これってなんか・・・。
「われわれには手におえない事件だったのだ。
キリュウちゃんがいてくれたから解決できたのだ・・・。」
部長が力なくつぶやく。でも、でも・・・。
「私は余計なことをしてしまったのかもな。
これはそなたたちだけで解決するべきだったのかもしれん。
彼を説得して、月夜殿を取り戻して・・・。ふう、私もまだまだか・・・。」
あたしにはわかんない、わかんないよ。
そしてあたしたちは帰路についた。とにかく、月夜もこれで意識を取り戻す。
でも、すごく大きなもやもやが、いつまでも心に残っていた。
窓に手を置き、じいっと外を見る。最初は気がつかなかったが、1本のばかでかい木が目に留まった。
キリュウの仕業だな。という事は、事件もそろそろ解決するのかな。
そう思って、チラッと月夜を見たそのとき、
「う、うーん・・・。」
かすかな声と共に、その月夜が目を開けた。それと同時に火鳥が大声を出す。
「月夜ちゃん!良かった、意識が戻ったんだね!」
「か、火鳥くん?ここはどこなの?」
まだはっきりとしていないようだ。とりあえず、
月夜が意識を取り戻したってことは、事件が解決されたってことなんだろうな。
「それじゃ火鳥、あたしは先生を呼んでくるから。
しばらく2人っきりで話でもしてなよ。んじゃあな。」
「あ、ちょっと!」
そしてあたしは病室を飛び出した。気を利かせないとね。
なーんて、いつもとやってることがあんまり変わってないような・・・。
そしてその翌日の放課後、浪漫倶楽部のメンバー全員で部室にいた。
後遺症も無く、月夜はすっかり元気を取り戻したみたいだ。
事件解決組3人が、事件のあらましを語ってくれた。
かなりおおざっぱで、なぞの影がキリュウの渇によって、逃げていったというものだった。
さらに、月夜が意識を取り戻したのは偶然だったらしい、という事だ。
なんだ、不思議事件には関係なかったのか。
「・・・そうだったの。みんなありがとう。ずいぶん心配かけちゃったわね。」
「そんな、元はといえば、オレがしっかりしてなかったのがいけなかったんだし。
月夜ちゃんが謝ることじゃないよ。」
「あのさあ、お2人さん。辛気臭い話は無し。パーッと明るくいこうじゃないか。」
あたしの元気いっぱいの声に、解決組3人が続けて言う。
「そのとおりなのだ。これは月夜ちゃんの退院祝いなのだから。」
「よかったね、月夜。退院できて。」
「とりあえず、その、おめでとう。」
それに月夜も笑顔で答える。
「ありがとう。これからも今までどおり、よろしくね。」
そうそう。それにこれからがあたしの出番だ。
キリュウなんかに任せず、あたしが不思議事件を解決していくぞ。
「さあ、それではパーティーを始めるのだ。みんな、コップを持つのだ。」
部長の声に、それぞれがジュースの入ったコップを持って掲げる。
「それでは、月夜ちゃんの退院を祝って。」
《かんぱーい!!》
退院のお祝いパーティーが開始された。それにしても部室でやんなくても。
誰かの家でやるとか考えなかったのか?今度あたしんちに招待しようかな。
「ところで、私が入院してる間に、クラスに2人も転入生が来て、
さらにその2人とも浪漫倶楽部に入ったなんて、驚きだわ。」
月夜があたしとキリュウを見回して言った。
「面白そうだから入ったんだ。実際、これからどんなふうになるのか、すごく楽しみだよ。」
あたしは笑顔で答えたが、キリュウは真っ赤になってうつむいている。
いいかげんそれはやめろって。
「ふふ、とりあえず改めてよろしくね。翔子ちゃん、キリュウちゃん。」
「ああ、よろしく、月夜。」
「・・・よろしく、月夜殿。」
月夜も翔子ちゃんか。まてよ、
「火鳥はあたしのこと、なんて呼ぶつもりなんだ?」
「え?“翔子ちゃん”と呼ぶけど。」
はあ、やっぱりか。まさかコロンまでそう呼ばないだろうな。
コロンのほうを見ると、にこっと笑ってこう言った。
「あたしは“翔子”って呼ぶよ。別にいいでしょ。」
うーん、ここの人たちはやっぱ違うな、うん。
「そんなにちゃん付けがきにいらないのかい?」
部長が不思議そうに訊いてきた。
「いや、そうじゃないよ。“翔子ちゃん”なんて今まで呼ばれてなかったからさ、
ちょっと戸惑ってただけ。」
それを聞くと、月夜は笑って言った。
「戸惑うったって、キリュウちゃんに“月夜殿”なんて呼ばれるほうが戸惑っちゃったわよ。」
「月夜の言うとおりだよ。あたしだって、“コロン殿”なんて呼ばれたこと無かったもん。」
「なるほど、そうだよなあ。考えてみたら“翔子殿”なんて呼んでるのって、キリュウだけだもんなあ。」
キリュウを除くみんなで大笑いする。キリュウはもちろん、顔を赤くさせてうつむいてしまった。
さらにみんなで大笑いする。
そしていろんな話をしているうちに、パーティーが終了した。
挨拶をして、それぞれ家路についた。
家に着いたところで、キリュウが口を開く。
「翔子殿、不思議事件のことなのだが・・・。」
「あれ、なんかまだ続きがあるの?無事解決したんじゃなかったの?」
「約束したのだ、不思議事件の犯人と。誰にもしゃべらないとな。
しかしどうも気になってな・・・。」
リビングに入り、くつろぎながらキリュウが全てを語ってくれた。
なんだ、やっぱり月夜が意識を取り戻したのは偶然じゃなかったんだ。
でも、それ以外はあたしは気にもしなかったから、
「何が気になるんだ?」
と聞き返した。するとキリュウはほっとしたような顔をして言った。
「いや、翔子殿が気にならないならいい。どうやら私の思い過ごしだったようだな。」
1人で納得しちまった。まあ細かいことは気にしないようにしよう。
「それじゃ寝るとしようか。明日もがんばって部活動しようぜ。」
「翔子殿、学校は勉強をするところでは・・・」
「じゃ、おやすみ!」
キリュウのまじめな話をさえぎっておやすみを言う。
いい世界だ。あたしにはぴったりだな。
次はどんな事件が待ってるんだろ、すごく楽しみだ。
そしてあたしは期待に胸を膨らませながら、眠りについた。