小説「まもって守護月天!」(虎賁の大きくなろう大作戦)


『第3日目(午後)その3』

「七梨先輩は休んでてください!あたしが替わりによけます!」
突然愛原花織が立ちあがった。すごい事言い出すなあ。
「愛原、お前が替わりによけるってどういう事・・・」
「あたしがまず10球連続よけます。
そして七梨先輩はその続きから20球避けてください。これで30球です!」
足し算してるんじゃないんだぞ、まったく。
「花織殿、そんな事は私が許さぬ。主殿は一人で30球避けるのだ。」
「それじゃあせめて、七梨先輩のヒントになるように、あたしが10球連続でよけてみせます。
それなら別にいいでしょ?」
おいおい、あんたに10球連続よけるなんて無理だって。
「花織ちゃん、10球もよけられるわけないって。」
「そうよ、あんたはおとなしくここで座ってたー様の応援を・・・って人の話聞きなさいよ!」
じょーちゃんはずんずんとぼうずのところまで歩いていった。本気だな。
「七梨先輩、さあ交替して下さい。」
「本気か愛原?おーいキリュウ、いいのか?」
「・・・別によしとしよう。愛原殿がよける事によって新たな試練に成れば一石二鳥だ。」
「新しい試練?」
「七梨先輩、早く!」
「あ、ああ・・・。」
じょーちゃんに押しのけられ、ぼうずは見物客の中へと退いていった。
「ちょっとキリュウ、何なのよ、新しい試練て。これ以上たー様に何しようっての?」
「黙って見ていてくれ。もちろん他の皆もな。主殿、しっかり花織殿をみるのだぞ。」
「ん?ああ。」
ぼうずにはよく分かっていないようだ。もちろんおいらにもさっぱり分からない。
一体キリュウのやつ、何を考えてんだ?
「さあ、2人とも投げてください!」
「いいの?花織ちゃん。手加減しよーか?」
「遠藤君、ああいう子は一度痛い目を見ないとわからないんですよ。
キリュウさんも手加減なしでお願いしますよ。」
「心得た。」
うーん、でもなあ。
「虎賁さん、もちろんあなたもね。」
うわっ、容赦ねーな。まさかおいらにまで言ってくるとは。
「それでは花織さん、いきますよ。」
宮内出雲と遠藤乎一郎が雪玉を投げ始める。もちろんおいらの瞬時のアドバイス付だ。
当然キリュウも、それに万象大乱をかける。じょーちゃんがそんな球をよけられるわけもなく・・・、
「うわっ!ま、まだまだ・・・きゃっ!ひえー。」
「あちゃー、見てらんねーぜ。」
「花織ちゃん、すごく自信があるように見えたのになあ。」
「そんなの見かけだけでしょ。ただずっと見てただけなのに。」
「3人とも黙ってみてろよ。」
ぼうずは真剣に愛原花織を見たまんまだ。なんのつもりでキリュウは見てろって言ったんだ?
「花織さん、降参してください。1球も避けられないじゃないですか。」
「そうだよ、やっぱり花織ちゃんには無理・・・」
「うるさいですね!あたしはやるって言ったんですから、遠慮なく投げてくださいよ!」
言葉の元気よさとは反対に、連続衝突記録がどんどん更新されていった。
おいおい、もう40球目だぜ。
「なんか出雲さん、とっても怖い顔をしてますわ。でも花織さん、全然降参する気がないみたい。
あんなに当てられているのに・・・。」
「ふむ、シャオ殿も花織殿をよく見ておくように。」
「え?は、はい。」
月天様も?なんのこっちゃ。
「ははあなるほど、それで七梨に見てろって言ったのは・・・あ、そういう事か。
ということは・・・ふむふむ、よく考えてるなキリュウ。
でも少し欠点があるぜ、これ。まあ試練が終わったら教えてやるか。」
「や、山野辺、わかったのか?」
「ああ、でも教えない。」
「けちだなー、教えろよ。」
「そーよ、教えなさい。先生の言うことは聞くものよ。」
「2人ともうるさいな。七梨の邪魔になるから黙ってみてろよ。」
おいらにはさっぱりわかんないけど、不良ねーちゃんはもうわかったのか。
しかも欠点だって。この中で一番頭いいかもしんねーな。
そうこうしているうちに、
「よしっ!七梨せんぱーい、みごと1球よけましたよー!」
「花織さん、そんな偶然でいちいち喜ばないで下さい。次々いくんですから。」
なに怒ってんだ?頑張ってよけたんだから少しぐらい誉めてやりゃいいじゃねーか。
「そうか、なるほど・・・。」
「太助様?」
「少し分かってきたような気がする。シャオもしっかり見といてくれ。」
「はっ、はい。」
そのうちに愛原花織が次々とよけるようになってきた。今にも10球連続よけそうな勢いだ。
「あー!悔しい、ちょっと油断しちゃったな。」
「油断ですか?ははは、冗談が好きですね。」
「すごいや花織ちゃん。実はすごく運動神経が良かったんだね。」
遠藤乎一郎は誉めてるが、宮内出雲はなんかいらだってるな。
愛原花織によけられたのがやっぱくやしーんだろうな。
「ほほう、やるな花織殿。また今度試練に誘ってみるか。」
「ほんとすごいわねあの子。一体どうしたのかしら。」
「おい七梨、何かわかったものはあるか?」
「いや、まだ。でももう少しだ。」
もう少し?どういうことだー。
「そうそう、頑張れよ。」
「頑張れって・・・。山野辺、花織ちゃんを見て分かる事ってなんだ?」
「試練だ、自分で考えられよ、ってね。」
「ちょっと、キリュウの真似なんかしてないでいいかげん教えなさいよ。」
「ダメだね。あたしは絶対にしゃべらない。」
うーん、ダメだと言われるとますます気になる。一体何が・・・
「ちょっと虎賁さん!ちゃんとアドバイスしてください!
さっきからずっと、よそを見たまんまじゃないですか!」
「え、いや、それは・・・。」
なにもそんなにむきにならなくたっていいじゃねーか。やっぱこいつ嫌いだ。
そのとき、
「やったー!!七梨先輩、みごと10球連続避けきりましたよ!きゃー、花織ってばすごーい!!」
な、なに!?10球避けた!?へー、やるもんだねえ。少し見なおしたぜ。
「お見事、花織殿。」
「さて、次は七梨の番だぜ。愛原に負けないよう頑張れよ。」
「それにしてもあの子やるわねー。さすがのあたしも驚いちゃった。」
「さすが、夢見る乙女は違うってか?
よし、おれも頑張ってもう一回投げるか!乎一郎、交替だ!」
野村たかしが立ちあがった。
「ダメだよ、たかし君が投げると、パターンが変わっちゃうよ。
それじゃ、せっかく花織ちゃんが避けた意味が無いし。」
「そうです。野村君はそこでおとなしく見ていてください。」
「そうそう、今更あんたに投げてもらう必要はねーしな。」
雪玉投げ組でそろって拒否する。しかし、
「でもなー、俺ももう一回投げてみたいし・・・。」
まだあきらめないつもりだ。すると、
「野村先輩、今更なに言ってるんですか!
負け犬らしく、七梨先輩の勇姿を黙って見ていてください!」
「負け犬・・・。」
その言葉に座りこむ野村たかし。
すげーなこのじょーちゃん。先輩なんて言ってるけど、ここまで言っていいもんか?
「野村殿、何か勝負でもしていたのか?」
「別に・・・。」
「野村君、そんなに落ち込まなくてもいいじゃない。
たー様には勝てないって解ったんだから喜んどきなさいって。」
それで慰めてるつもりなのか?もうちょっと他に言葉ってもんが・・・
「そうか!わかったぞ!」
今まで我カ関せずだったぼうずが、突然叫んだ。
「わかったんですか?太助様。」
「ああ、愛原のおかげだよ。あれじゃ、さっきの俺に避けきれるはずも無かったな。
初心に帰って周りをよく見て落ち着いて・・・。なるほど、避け方は完璧に解った。
キリュウはこれが言いたかったんだな。」
へえー、完璧にねえ。そうか、周りから見ることで避け方がわかるってことか。
あれ?でも不良ねーちゃんの言ってた欠点てなんだろう。
不良ねーちゃんを見ると、ぼうずの言葉に少しうなずきつつも、苦笑いを浮かべていた。
てことはまだなんかわかることがあるのか?
「シャオ殿は何かわかったことはないのか?」
「うーん、花織さんが10球避けたのは、太助様のために頑張ったからですよね。
頑張れば何でもできるという事なんですか?」
月天様の答えに、キリュウは少し首をかしげていたが、
「まあ今回はそんなところでいいだろう。2人には少し難しすぎたか。
翔子殿、そなたはすべてわかったのだろう?後で欠点とやらを教えてくれ。」
「ああいいぜ、2人だけの時にな。」
キリュウと不良ねーちゃんの言葉に、皆が唖然とする。
避け方の事言ってんじゃなかったのか?
でも少し近いんだよな・・・おいらには全然わかんねーや。
「ほらほら、ぼーっとしてねーで試練をさっさと終わらせよーぜ。七梨、早くよけ位置に立てよ。」
「あ、ああ。」
ぼうずが納得の行かない顔で愛原花織と交替する。
「うーん、避け方を見つけさせる為ではなかったんですね。
でもまあ、私は投げるだけです。太助君、今度こそ30球避けてください。」
宮内出雲が、先ほどとうってかわって落ち着いた声で言う。
いつもこんなふうだと、おいらも助かるんだけど。
「それじゃいくよ、太助君!」
遠藤乎一郎の声に試練が再開される。
次々とぼうずに向かって飛んでゆく雪球。
巨大化し、回転し、分裂し、超速球となって・・・。
今思えばこんなもん、よくもまあ避け続けてきたもんだ。
愛原花織にしろ、ぼうずにしろ、すげーよ、うん。
そして5分も経たないうちに、
「よっしゃー!!30球避けきったぞー!!」
ぼうずが、今までにない感動の叫び声をあげた。とたんに見物客から拍手が巻き起こる。
「太助様、かっこいいですわ。」
「主殿、よく頑張ったな。」
「七梨先輩、さすがです!」
「素敵よ、たー様。」
「お見事、七梨。」
(太助しゃま、すごいでし!)
女性陣が口々に褒め称える。離珠はおめでとうの旗を振っている。
ふう、ようやく試練終了か。なんて長い一日だったんだ。
「ご苦労さん太助。俺にはとても真似できないな。」
「当然でしょう。まあ、私ならこれぐらいは簡単にできますけどね。」
「うそだぁー。それなら出雲さん、これから僕とたかし君とで投げるから避けてみてよ。」
「いいでしょう。さあやりましょう。」
「おーし、望むところだ。」
おいおい、まだやんのか?おいらはもう家に入るからな。
「ぼうず、疲れただろ。早く家の中に入って休もうぜ。」
「ああ、虎賁もお疲れ様。」
歩いてきたぼうずの肩に飛び乗り、家の中へと向かう。
それに続いて女性陣すべてが家の中へと入って行った。
「え?あの、ちょっと・・・。」
野村たかしの声に反応して、不良ねーちゃんが振り返って言う。
「お前ら3人でてきとーにやってろ。明かりを片付けるのを忘れるなよ。んじゃあな。」
そして玄関のドアをばたんと閉めた。
当然だな。これ以上雪合戦に付き合ってられるかってんだ。
リビングに入って月天様のいれたお茶を飲む。
うーん、うまい。お茶ってこんなにおいしかったっけ。ああ、いいねえ。
「ほんと、皆さんお疲れ様でした。
あら?たかしさんと乎一郎さんと出雲さんはどうしたんですか?」
「ああ、あいつらはまだ雪合戦がしたいんだってさ。まだ外でやってるよ。」
不良ねーちゃんの答えに、皆は目を丸くした。
「まだ!?よくやるわねえ。そんなに雪合戦がすきなのかしら。」
「きっと新しい投げ方を研究してるんですよ。あたしがあんなにあっさり避けちゃったから。」
新しい投げ方ったって。あれはもともとおいらが伝授したんだぞ。
「ただ投げるだけなら、主殿みたく、よけるよりは疲れないだろうからな。
それで申し訳ないと思ったのだろう。」
そんないいもんじゃないんだけど。
あれ、ていうことは4人ともあいつらのやる気満々の話を聞いてなかったってことか。
まあおいらにはどうでもいい事だな。
「おーいキリュウちゃん、ちょっと来てくれよー。」
玄関のほうから声がする。やれやれとキリュウが立ち上がって、玄関に向かう。
「なんだ野村殿。今日の試練は終了したのだ。私はもうなにもせぬぞ。」
「いやそうじゃなくて、ペンライトとテーブルランプを元に戻して欲しいんだけど・・・。」
「なんだ?3人の雪合戦はもう終わったのか?随分と早いな。」
別にいいんじゃねーの。どうせこんなことになるだろうと思ってたけど。
しばらくして、テーブルランプを持ってキリュウが帰ってきた。あの3人も一緒だ。
「まったく、さらにやろうなんて誰が言い出したんですか。」
「さあやりましょうって言ったのは出雲さんじゃないですか。」
「これから、なんて言ったのは乎一郎だろ。お前のせいだ。」
言い争いするんなら他でやってくれよ。こっちは疲れてんのに。
「はいはい、3人とも悪いのよ。まったく、限度を知らないお子様はこれだから困っちゃうわね。」
ルーアンが言い争いをとめる。でもなあ、お前にそんな事言われたくねーぞ。
「とにかく3人ともお疲れ様でした。お茶をどうぞ。」
月天様に言われて、3人ともソファーに座り、お茶を飲む。
「そういえば、朝から何杯もお茶飲んでるけど全然あきねーな。なんでだろう。」
不良ねーちゃんが素朴な疑問を口にする。言われてみればそうだ。
いくら月天様のお茶がおいしいからって、一日に何杯も飲んでるのに。
すると月天様はにこりと笑って、こう言った。
「お茶の味が微妙に変わるように、作っているんです。お茶っ葉以外に別のものを入れたりして。
ほら、これなんか冬虫夏草を入れてるんです。」
「へえ、すごい気配りだなあ。」
「さすがシャオさん。食事だけでなく、お茶にまで工夫を凝らすとは。」
うん、すごい。でも冬虫夏草なんていれて大丈夫なのかなあ。
「とにかくおいしけりゃいいのよ。うん、おいしいわあー。」
「ルーアン殿!それは私の湯のみだ!食事の時のみならず、こんな時までも!」
あきれた。お茶ぐらい自分の湯のみのを飲みゃいいじゃねーか。
「キリュウ、これは試練よ。あなたのおかずを奪ったのも、みーんな、あたしがあなたに与えた試練。
おーっほっほっほっほ。みごと耐えてごらんなさーい。」
あのなあ、どこの世界に、人に食べ物を取られる試練があるんだよ。いくらキリュウだって、こりゃ・・
「ううむ、試練だったのか。くっ、ならば耐えねば・・・。」
「そうそう、その調子よ。」
・・・キリュウ、お前それでいいのか?なんでも試練で片付けるのはよくねーって。
しかも試練を与える万難地天が慶幸日天に試練を与えられるなんて、とんでもねー話だと思わないのか?
おいらがあきれていると、愛原花織が口を開いた。
「そんな事より、せっかくこうして皆でいるんだから、ゲーム大会しませんか?
あたし、面白いゲーム持ってきているんです。」
そいて背中からゲーム盤を取り出した。こんなもんよく持ってたなあ。
でもそんなことって・・・。後でキリュウを慰めてやろうか。
「そういえば質問時間にそんな事を言っていたな。主殿、ゲーム大会をするのか?」
質問時間?ああ、そうだったっけ。ぼうずに訊いてみるとか言ってたよな。あ、でもこれじゃ無理だな。
キリュウがぼうずのほうを見たときには、ぼうずはすでにうつらうつらと眠っていた。
あれだけ疲れたんだから、無理もないよな。
「太助様、太助様。」
「ん?ああ、シャオ・・・。」
月天様の声に目を覚ます。まだ半分以上寝てるみたいだけど。
「もうお休みになってください。今日は大変疲れたでしょう。」
「そうそう、七梨はもう寝てなよ。」
「うん、そうする。おやすみ、みんな・・・。」
ぼうずは立ち上がったが、ふらふらして危なっかしい。すると、
「太助様、私が部屋までお送りいたします。さあ、私の体につかまってください。」
「う、うん、ありがとう。」
普段のぼうずなら遠慮するはずだが、今回は自然と月天様に支えてもらう。それを見たみんなが、
「シャオさん、なんてことを!」
「そうよ!たー様はあたしが運んでいくわ!」
「いいえ、あたしが七梨先輩を連れていくんです!」
「太助ぇー、お前シャオちゃんになんてことを!」
キリュウに抱きついたやつがなに言ってんだか。
そんなみんなの発言に、月天様が応える。
「いいえ、太助様は守護月天である私がお守りします。
こんなにくたくたに疲れているときに、刺客に狙われでもしたら、太助様は絶体絶命です。
それではみなさん、おやすみなさい。さ、太助様。」
そう言い残して、月天様はぼうずと一緒に2階へ上がっていった。あれ、でもまてよ。
「なんでシャオちゃん、おやすみなさいなんて言うんだろ。」
「シャオさんももう寝るつもりなんじゃないんですか。今日はずいぶん忙しそうでしたし。」
「それにしたって、おかしいですよ。」
「そうよ、あの子いっつもこれぐらい働いているもの。別に今寝る必要なんてない・・・あーっ!!」
ルーアンはいきなり、叫ぶと同時に2階へとかけ上がっていった。どうしたんだ?
みんなで2階に行こうとすると、ルーアンの声が聞こえてきた。
「やっぱりたー様の部屋には入れないようになってるー!ちょっとシャオリン、開けなさいよー!!」
ぼうずの部屋のドアは、厳重に封印されていた。羽林軍の仕業だな。
あれ?下のほうに、なんか窓みたいなものがあるけど・・・。
「まさか・・・、シャオちゃん!」
「シャオ先輩!ずるいですよー!」
「シャオさん!はやまってはいけません!」
ルーアンに加わって、野村たかし、愛原花織、宮内出雲の4人がドアに向かって攻撃をしかける。
しばらくして、下の窓がぱかっと開いた。中から出てきたのは車騎だ。ちょ、ちょっと待てって。
「「「「げっ!!」」」」
4人の顔が一気に青ざめるのと同時に、車騎が強烈な一撃をぶっ放した。
4人が黒焦げになってろうかに倒れこんだのを確認した後に、再びもとの場所へと戻ってゆく。
「怖いな、シャオちゃん。多分他にもトラップがあるんだろうけど。」
「ああ、最終兵器として、北斗七星とかかまえてそうだぜ。
ひょっとしてねーちゃんがふきこんだのか?」
不良ねーちゃんは笑って答えた。
「ああ。試練が終わってぼろぼろになってる七梨をしっかり守ってやれってな。
しっかし、ここまで厳重にするとは思ってもみなかったな。」
「翔子殿、他にもいろいろ言ったのだろう?でなくばここまでするわけがない。
まあいい、まだ3人とも寝るつもりはあるまい?私の部屋で話でもしよう。」
「え、でも僕、ルーアン先生が心配だし・・・。」
相変わらずあの4人は気絶したままだ。いや、もう寝てるな。
すぐ眠れてよかったじゃねーか。
「遠藤殿、心配無用だ。ルーアン殿はもう眠っているみたいだしな。さて、万象大乱!」
4人の体があっというまに小さくなった。どうするつもりだ?
「翔子殿、この4人をリビングに寝かせてきてくれ。
この大きさなら、タオル一枚でも風邪をひくことはあるまい。」
「へー、なるほどね。それで小さくしたわけか。」
不良ねーちゃんが、黒くなった4人を両手で拾い上げる。
「はは、なかなかかわいいな。じゃあ寝かせてくるよ。そんときに離珠もつれてくるから。」
あ、そういや離珠を残したまま2階に上がってきちまったんだな。
不良ねーちゃんが一階に下りて行った後、早速キリュウの部屋へ向かった。
あれ?なんかちらかってるな。
「どうしたんだよキリュウ。なんでこんなにちらかってるんだ?」
「なに、ちょっといろいろあってな。」
なぜか笑みを浮かべている。なるほど、綺麗好きって言われるのがやっぱり恥ずかしいのか。
すると、部屋に入った遠藤乎一郎は、
「うわ、ちらかってるなあ。ダメだよキリュウさん。この部屋で話するんならちゃんと綺麗にしとかなきゃ。
キリュウさんは綺麗好きだと思ってたのに・・・。
自分以外の人を部屋に入れるんだから、綺麗にしとくのが礼儀ってもんだよ。
とりあえず僕も片付け手伝うから。」
そう言って床に落ちている本を拾い始める。こいつには逆効果だったか。
キリュウの顔を見ると、赤くなっている。結局こうなるのか。
「おーい、寝かせてきたぜ。あれ、なんで片付けなんてやってんだ?」
「あ、山野辺さんも手伝ってよ。僕キリュウさんには幻滅しちゃった。
こんなにちらかってるなんてさ。」
「う、うう・・・。」
さらに赤くなりながら片付けをするキリュウ。どうも精霊ってのは、どこか抜けてるみたいだな。
不良ねーちゃんも片付けに加わり、10分ほどでそれは終了した。

『第3日目(夜の部)』に続く。

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