小説「まもって守護月天!」
(虎賁の大きくなろう大作戦)


『第3日目(午前)その2』

「ふむ、なかなかだな。それでは難易度を上げよう。たのむぞ、虎賁殿。」
「待ってました。ぼうず、これからおいらがこの2人に伝授した5種類の球をそれぞれ10球づつよけてもらう。
今までとは全然違うから油断するなよ。えーと、まずねーちゃんに投げてもらうか。」
「よし、Aの球だな、虎賁。」
「そうだ、それじゃいくぜ、ぼうず。」
不良ねーちゃんの肩に乗ってぼうずに向かって叫ぶ。
「ああ、いつでもこい!」
へへ、見て驚けよ。
「まず1球!」
不良ねーちゃんが玉を投げる。投げ方は見た目には普通と変わらないが、
「こんなの楽しょ、お!?」
かわそうとしたぼうずにみごと命中。よっしゃー、初当たり!
「な、なんだ、いきなり90度曲がったぞ。こんなのありかよ!」
「ちっちっち、あまいぜぼうず。この投げ方は目標物に再接近したときにくいっと曲がるんだ。
どこに曲がるかはおいらにも予測不可能。
それに普通の投げ方とほとんど変わらない様に見えるから、ぼうずには曲がるかどうかもわからねー。」
「というわけだ七梨。さあて、10球連続よけられるかな?」
「くっ、この程度で負けてたまるか。さあこい!」
ぼうずは気合を入れ直したが、よけるのは3球と続かない。うーん、ちょっと難しかったかな?
「ちくしょー、また当たっちまった。」
「おい七梨、もう30球は投げたぞ。いいかげん10球よけろって。」
そりゃ無理ってもんだ。ほとんどうん運だからな。
「たー様頑張ってー!」
「七梨先輩、ファイトです!」
「太助様、負けないで下さい!」
月天様の声が交じってくるようになった。そりゃこんだけ苦戦してりゃな。
「よーし今度こそ!こい、山野辺!」
さっきとはまるで違った気合の入り方だ。でもなあ、気合でよけられるもんじゃねーし・・・。
・・・と思っていたら、あっというまに10球よけた。月天様が加わるだけでこうも違うもんなのか?
「はあ、はあ、よけきったぞ。」
「さすがシャオがからむと強いな。さてと、あたしは疲れたから次は野村な。」
「ん?ああ。」
おいらは乗る肩を変えた。そのうちにぼうずの息遣いが元に戻った。まだまだ元気だな。
「それじゃあ次の球行くぜ。Bの投げ方な。」
「そんじゃいくぜー、太助。」
野村たかしは横に1回転して地面に向かっておもいっきり雪玉を投げつけた。
「?おいたかし、俺に向かって投げてくれなきゃだめだろ。」
「いや、これでいいんだ。太助、上に気をつけろよ。」
「上ー?う、うわー!」
間一髪でぼうずが上からの攻撃をかわす。
へえ、初球をかわすとはなかなかやるじゃねーか。でもなあ、ヒントを与えちゃダメだろ。
「ぼうず、これが2つ目。
地面に向かって投げて、その勢いで相手の死角から雪玉を押し出すようなかたちで空高くとばす。
油断した相手は空からの不意打ちに沈む、というわけだ。」
「そういうことだ、太助。これ回転のかけ方がすげーむずいんだ。
だからなるべく早めに10球よけろよ。」
「なんだそうか。さっきよりは楽そうだな。さあこいよ。」
なんだ?随分余裕だな。まあいっか。
「それじゃいくぜー!」
しかし、おいらの予想とは違い、1球も当たることなくぼうずはよけきった。なんでだ?
「虎賁、単球じゃよけられて当たり前だよ。
だって投げてから俺に来るまでの時間が長いもん。上から来るのは分かってるしさ。」
「あっ、そうか!」
そういやこれは不意打ち用だったな。おいらとしたことが・・・。
まあいいや、2人同時になるとこれは強いぞ。
「さて、次は・・・」
「待った、虎賁殿。」
いきなりキリュウがストップをかけた。いったい何だ?
「次は私が参加して試練をする。
虎賁殿の後の3球は、多分私が参加するより難しいと思うのでな。虎賁殿は休んでいてくれ。」
「そうかなあ。ま、キリュウがそう言うんなら。」
「続いて俺が投げるけど、いいよな。」
「別に構わぬが、コントロールはしっかりとな。」
そろそろ慣れただろうし、大丈夫だろう。
「そんじゃ太助、いくぞー。」
「おう。」
野村たかしが雪玉を投げると同時に、玉が巨大化する。まずはこれか。
「おおっと。」
ぼうずが範囲ぎりぎりの位置でかわす。
「うむ、その調子でよけられよ。」
次々と巨大な雪玉がぼうずを襲うが、なんとかストレートによけきった。
ま、当たり前だよなこれぐらい。
「それでは次の10球。」
「いくぜー、太助。」
試練は順調だな、よしよし。
「なーんか緊張感無いわね。」
「そうですよね。虎賁さんもキリュウさんも手加減し過ぎなんじゃないですか?
これじゃあたしが七梨先輩を励ましに行けないじゃないですか。」
たく、見てるだけのやつは黙ってろってのに。
第1球が野村たかしの手を離れてぼうずのエリアに到着する。
もちろんぼうずはそれを難なくかわした。
あれ?何も変わんねーぞ。
「どうしたんだよキリュウちゃん。普通に投げたのと同じだよ。」
「うむ、意外に難しくてな。気にせず、続けて投げてくれ。」
「そう?それじゃ第2球いくぜー。」
今度は急激に速くなった雪玉が一瞬で塀にぶち当たった。成功か。
「おい野村、ちゃんと七梨に向かって投げねーとダメじゃねーか。」
「分かってるよ、今度はちゃんと狙うから。さーて第3球。」
すると今度はぼうずの右1メートル辺りの雪が舞い上がった。
「あちゃーへたくそ、何やってんだ。」
「こ、今度こそ、第4球!」
しかし今度はぼうずよりはるか手前で雪が吹きあがった。
おいおい、それはおいらの投げ方で投げなきゃだめだろー。
「くっそー、今度こそ。第5球!」
野村たかしの気合とはうらはらに、塀の向こう、あさっての方向へと飛んでゆく。
おしくも第7球はぼうずのほほをかすめていった。
「野村、あたしに替われ!後3球はあたしが投げる!」
「ちぇっ、しょーがねーな。」
そう言うと不良ねーちゃんに投げ場をゆずった。ゆずって当然だって。
「さてと、そんじゃ8球目・・・どうした七梨。顔色悪いぞ。」
そういやぼうずは1歩もその場を動いてないな。もう疲れちまったのか?
「まあいいや、そんじゃいくぞー。」
不良ねーちゃんが投げの態勢をとると、
「ちょ、ちょっと待て、山野辺!」
「なんだよ。」
ぼうずが待ったをかけた。たく、話なら後にしろよな。
「さっきからたかしが投げてて助かったけど、あんなのがまともに飛んで来たら絶対に避けられないって!」
「うるせーな、そのうち避けられるようになるだろ。」
「ムリだよ!とりあえず別の・・・」
「ごちゃごちゃうるさい。いくぞ、第8球!」
「う、うわぁー!!」
ぼうずの悲痛な叫び声が効いたのか、残り3球ともぼうずの顔をかすめていって当たりはしなかった。
「ちぇー、はずれか。」
「多分、急に速くなるからコントロールが狂うんだろうな。
でも3球とも惜しかったぜ、さすがはねーちゃんだ。」
「慰めてくれてありがとな、虎賁。おーい七梨、とりあえず10球全部避けたんだから喜べよ。」
いや、ありゃよけたんじゃなくてよけてもらったって方が正しいな。運が良いぜ。
「ふむ、ちゃんと軌道を詠んで動かずによけるとはさすが主殿。さて、難易度を上げるとするか。」
「動かなかったんじゃなくて、たー様動けなかったんじゃないかしら。」
「そうですよね。七梨先輩、顔が固まってたし。」
ありゃ誰が見たってそう思う。あんたらは間違ってねーよ。
「さて主殿、次の難易度3は・・・」
「ちょ、ちょっと待ったキリュウ、少し休ませてくれ。」
ぼうずがその場に座りこんだ。
「なんだ主殿、もう疲れたのか?まあいい、しばし休憩するとしよう。」
ありゃ精神的に疲れたんだな、間違いねー。
「それじゃ私、お茶を入れてきますね。離珠、太助様の様子を見てきてあげて。」
(はいでし。)
月天様が家へ入り、離珠がぼうずのもとへと走って行く。おいらもぼうずを見に行くとするか。
「しっかしほんと野村先輩ってノーコンですよねー。もっと投げる練習したほうがいいですよ。」
「花織ちゃん、あれはたまたま調子が悪かったんだって。」
「あのなあ野村、そういうのはやめてくれよな。
どっちにしたって七梨が10球よけたら終わりなんだからな。」
「あ、ああ。」
「ムリですよ山野辺先輩。野村先輩はいっつもから回りなことばっかり言ってるんですから。
今回もどーせノーコンのまま終わるに決まってますよ。」
「ひ、ひどいよ花織ちゃん。」
きっついこと言うなー、このじょーちゃんは。
おっと、あんなのはほっといてぼうずを見に・・・げっ、ルーアンがいる。
「たー様大丈夫ぅ?疲れたらいつでも言ってね。ルーアンが癒してあげる。」
「だからひっつくなって。俺は大丈夫だから。」
離珠と顔を見合わせて、やれやれと肩をすくめる。でも今日はおとなしいほうかもな。
「あ、虎賁。この試練ていつまで続くんだ?」
「ぼうずが全部クリアするまで。それまでは夜になってもやめるつもりはないみてーだぜ。」
「げっ、夜まで?それで難易度っていくらまであるんだ?」
「それは言えねーな。それに言ったところでぼうずにはどうしようもねーよ。」
「そうか、なんかすごそーだな。」
(がんばるでし、太助しゃま!)
ふと見ると、離珠が『頑張れ』の文字のついた旗を振っている。
こんなもんいつの間に作ったんだ?
「離珠、ありがとな。俺がんばるよ。」
「たー様、あたしも一応言っとくわ。頑張ってね。」
「ああ、ありがとう、ルーアン。」
なんだ、結構素直じゃねーか。少し見なおしたぜ。
「皆さん、お待たせしてすいません。お茶が入りましたよ。」
月天様がお盆の上にお茶の入った急須と湯のみを乗せて玄関から出てきた。
さあて、飲みに行こうか。
「ふうー、おいしい。」
「やっぱりシャオ先輩ってお茶入れるの上手ですよね。」
口々に月天様のお茶をみんなが誉める。当然だぜ。
ルーアンは片手に大きな饅頭を持ってお茶と一緒に食べている。
そういえばおやつとか言ってたよな。
キリュウを見ると、マフラーを少しずらして、つらそうに飲んでいた。
そんなんでお茶なんか飲もうとするなよ。
月天様は座りこんでいるぼうずのもとへとお茶を持っていった。
「はいどうぞ、太助様。」
「ありがとうシャオ。」
ぼうずはそれを飲んで一言。
「とってもおいしいよ。体のそこから元気が出てきた気がする。」
「そうですか、ありがとうございます。」
それを見ていた不良ねーちゃんは、
「うんうん、仲むつまじくて結構。
試練に疲れた七梨をシャオが元気付ける。いやー、いいねえ。」
「あっ!本当ならあの役はあたしがするはずだったのに。
野村先輩がへたっぴな球ばかり投げるから!」
「お、俺のせいなのか?花織ちゃん。」
「当然ですよ!もう、新しい作戦を考えなくっちゃ。」
完璧に八つ当たりだな。自分からけなしに行ったくせに・・・。
「さて、そろそろ試練を再開するか!」
そう言ってぼうずが立ち上がった。気合が入り直ったみたいだな。そうこなくっちゃ。
月天様がお茶セットを片付けに行っている間に、キリュウが試練の説明をする。
またマフラーを元の位置に戻したようだ。だからその格好は怖いってのに。
「それでは難易度3の説明をしよう。球の投げ方は2と同じだ。
ただしすべて2人同時。もちろん2人合わせて20球。
少し違うのは、虎賁殿の投げ方で20球。私が加わったかたちで20球。
合計40球ということ。以上で説明は終わりだ。」
「なるほど、質も量もありか。確かにさっきより難しそうだな。」
「それじゃあまずおいらからいこうか。
もちろんあの2種類と普通のとを合わせた3種類をおりまぜたのでいくからな。」
「七梨、心してかかれよ。」
「今度こそ俺の絶妙なコントロールに驚くがいい。」
ほんと、今度はちゃんと頼むぜ。
「よし、2人ともこい!」
2人がいっせいに雪玉を投げ出す。
直角球をうまくかわしたとたん、不意打ち球にやられたりと、おいそれと連続よけは続かない。
ま、むずいわな。普通こんなもん20球も避けきれるもんじゃない。
「ほらほらどうした七梨。そんなんじゃいつまでたっても20球なんてムリだぞ。」
「ふっ、俺のナイスなコントロールにはさすがのお前もかたなしだな。くらえ、スーパー変化球!」
よく見ると、ぼうずをしとめているのは不良ねーちゃんの雪玉だけだ。口だけか?こいつは。
「たー様ファイト!ああ、おしい!」
「七梨先輩右ですよ右。あ、今度は左。ああ、そうじゃないって!」
だから外野は黙ってろって、まったく。
何十級投げたろうか。ぼうずの動きが鈍くなってきた。
「はあ、はあ。くそ、また当たっちまった。」
しかし確実に反応は早くなってきている。さすがだな。
「すごいな主殿は。あれだけ疲れていながら、ああまで反応できるとは。」
初めてキリュウが感嘆の声をもらした。そのとき、
「やった、20球避けきったぞ!」
ぼうずが叫び声をあげた。すげー、あれを避けきるなんて。
「ふう、やるな七梨。」
「またも俺は太助に敗北したのか。なんの、次こそは参ったと言わせてみせるぜ。」
いつのまにか目的を忘れてやがる。大丈夫か、こいつ。
「お見事主殿。さて、次の20球いくとしようか。」
よーしゃないなキリュウ。ま、ぼうずが頑張ればいいことだし。
「さあこい、2人とも!」
おお、やる気十分じゃねーか。心配なさそうだな。例によって2人が雪玉を次々と投げる。
ところが最初のうちはよかったが、巨大な雪玉が飛んでいくたびにぼうずのよけるスペースが狭くなっていく。
しまいには雪山が出来上がってしまった。
「ちょっと待てキリュウ。大きくしたやつはちゃんと元に戻してくれないと、俺がいる場所が無くなっちまうだろ。」
「すまぬ。2人の投げた玉に万象大乱をかけるので精一杯でな。元に戻す余裕がないのだ。」
「情けないぞ太助。それも試練だ!」
「なに言ってんですか、野村先輩。あさっての方向に投げてるくせに七梨先輩に文句言わないで下さい!」
あんたも黙ってろって。しかし弱ったな。試練がつづかねーぞ。
「七梨、投げるペースを落とそうか?」
「うーん、それだとさっきより簡単になっちまうしなあ。」
「ちょっとキリュウ、何も全部に万象大乱をかける必要は無いんじゃないの?
せめて大きくしたものを元に戻しながらやりなさいよ。」
「そうか、ではそうすることにしよう。」
珍しくルーアンが解決策を提案した。へえ、ただ見てるだけじゃないじゃねーか。
あのじょーちゃんそれぐらい考えてくれりゃあねえ。
「それじゃ再開するぞ。えーい!」
今度は順調に事が進む。ぼうずもあの超速球をかわすようになった。
すげーな。おいらも今度、これで鍛えてもらおっかな。
「おっしゃ!この20球もクリアー!」
ぼうずが喜びの声をあげた。よしよし、それでこそ鍛えがいがあるってもんだぜ。
「なんてやつだ七梨。お前ってすごいな。」
「くそ、またも俺の負けか。シャオちゃん、こんな俺を見てがっかり・・・あれ?シャオちゃんは?」
そういや月天様あれっきり出てこないな。どうしたんだろ。不思議に思っていると玄関のドアが開いた。
「皆さん、昼ご飯ができました。家の中にはいってくださーい。」
「昼ご飯?もうそんな時間なの?」
「そういえばあたしお腹ペコペコです。」
たく、ただ見てただけなのによく言うぜ。
でも知らない間に昼ご飯を作っていたとは、さすが月天様だぜ。
「ふむ、ちょうど区切りも良いし、家に入って昼食にしよう。」
「ああ、シャオちゃんの手料理が食べられるんだ。来てよかったー。」
「七梨、ボーっと突っ立っていないで、早く食べに行こうぜ。」
「シャオ、いないと思ってたら1人で昼食作ってたんだ。ありがとう。」
みんなでご飯を食べに、次々と家にはいってゆく。
玄関では、キリュウが重装備を外していた。でもどうせ外に出るときにまた着るんだろーな。

いい匂いがする。キッチンには全員が座れないので、リビングに移動していた。メニューはすき焼き。
巨大な鍋の中に大量の具が入っている。なるほど、キリュウに大きくしてもらったのはこれだな。
「シャオ先輩ってこんな料理もできるようになってたんですね。こりゃ負けてられないな。」
「そういや最近は中華以外の料理も作るようになったよな。どうしたんだ?」
「翔子さんに料理をちょっと教わったんです。中華以外も作れるようにって。」
「山野辺が?お前料理できたのか?」
「野村、それは失礼だぞ。あたしだって料理を教えるぐらいはできるんだからな。」
「おいしけりゃいいじゃない。がつがつ。」
「ルーアン殿、それは私の皿の物だというのに。」
「ルーアンさん、心配しなくてもたーくさんつくってありますから。」
おいらと離珠は例によって小さな食器でちまちま食べているだけ。それでも十分だが。
「うーん、味付けもおいしいですね。うわー、あたしも料理を勉強しないと。」
「そうそう、花織ちゃんももっと勉強して、人が食べても平気な料理を作ってくれよ。」
「ええ、頑張ります。ってどういう事ですか野村先輩!」
人間が食べられるもの?料理ってそういうものを作るんじゃないのか?
「いやー、それにしてもうまい。七梨は毎日こんな料理を食べてんだよな。時々ごちそうになりにこよっかな。」
「ダメよ、あたしの食べる分が減っちゃうじゃないの。」
「ルーアン殿、だからそれは私の皿だと言ってるだろう。まったく。」
「ルーアン、シャオがたくさんあるって言ってるんだから人の皿に手を出すのはやめろよ。」
「ぐーぜんよぐーぜん。細かい事気にし過ぎなのよ、キリュウは。」
「でもルーアン先生。俺の皿にまで箸がのびてくるのはどういう事ですか?」
「ルーアン先生の隣に座ったのが運のつきだ。野村、あきらめろ。」
「お気の毒様、野村先輩。あたしの料理を馬鹿にしたからばちが当たったんですよ。」
でもルーアンておやつに大きな饅頭食べてたよな。昨日の事といい、どこにそんなに入るんだか。
「太助様もたくさん食べてくださいね。」
「うん、ルーアンとまではいかないけど、試練を越える為にもたくさん食べておくよ。シャオ、おかわり。」
「はい。」
ぼうずは午後からもやる気満々のようだ。こりゃうまくいけば夕食までに終わるか?
「主殿、午後からはさらに厳しくなるぞ。心して・・・ルーアン殿!せっかく私が目をつけておいたものを!」
「あーらごめんなさい。わざとなのーん。」
わざと・・・。食べ物がからむとすっげー強気になるな。
「なあ山野辺、席替わってくれよ。」
「やなこった。へっぽこな球ばっかり投げてたやつに席を譲る気はないね。」
「へっぽこ・・・。くそ、花織ちゃんといい山野辺といい・・・。俺はちゃんと投げてただろーが。」
ないない。あれはおいらの目から見て、明らかにへなちょこ球だった。
まったく、ここで人選ミスに気付くのは痛いよな。
「たかし、午後からはしっかり頼むぜ。」
「あたりめーだ太助。今度こそお前をぎゃふんと言わせてやるからな。」
「ぎゃふんと言わせてるのは虎賁とキリュウだろ。ただ投げてるだけのくせに。」
「なんか言ったか!?山野辺!」
「べつにー。せいぜい虎賁とキリュウを怒らせないように頑張れよ。」
「翔子さんもたかしさんもたくさん食べて頑張ってくださいね。」
「まかしといてシャオちゃん!」
げんきんなやつだな、まったく。そういや、おいらもたっぷり食べとかないと。
「月天様、おいらにもおかわり。」
「はい虎賁。あなたもしっかりね。」
「もちろん!」
(離珠もおかわりでし!)
「離珠、あなたも頑張ってね。」
(はいでし!)
月天様に元気付けられ、おいらと離珠は上機嫌だ。
「シャオ殿、私にもおかわりを。」
「はい、キリュウさん。キリュウさんも頑張ってくださいね。」
「ああ。もっと頑張らねば・・・ルーアン殿!食べるなら自分の皿のものを食べてくれ!」
しつこいよな、ルーアンのやつも。さて、そろそろ昼食も終わりだ。難易度はついに4。
ぼうずがどこまで頑張れるかみものだ。最悪でも今日中に全部終えられるとおいらもありがたいけど。
さて、午後も張り切っていくぜ!

『第3日目(午後)その1』に続く。

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