それは、俺が一人で留守番をしていた日の夕暮れのことだった。
呼び鈴の音がし、出迎えたそこには誰も居ず。
ただ一冊の本が置かれているだけだった。
「なんだこりゃ。」
それは黒く薄汚れた本。そこに書かれてあった文字は・・・
「統・・・天・・・書?」
と、それを読んだ途端なんと本が光り出した!!
・・・なんてわけないだろ。
「まじめに読むか。なになに、“クッキングマスターへの道”か。
勝手に人の家にこんなもん置いてくなんて一体どこのどいつだ。」
こういう不審なものについての処分は、家主の秋子さんに判断をゆだねるべきだな。
今は名雪と真琴と買い物に出かけてるから帰ってきた時にでも聞こうか。
とりあえずこれは自分の部屋に持って行くとしよう・・・
「って、リビングに置いとけばいいじゃないか。」
本を抱えて俺は階段を上り始めた。
「っておい!だからリビングに・・・」
慌てて引き返そうとしたのだが、何故か足は勝手に二階へと向かっていく。
結局俺は本を抱えたまま自分の部屋へと入ってしまったのだ。
「な、なんなんだ?もしかして、この本の仕業か?」
オカルトなんざ俺はあまり信じたくないが、いざ自分が体験してみると話は違ってくる。
仕方なく本を読んでみることにした。
「えーと・・・。」
“だはははは!!我こそは宇宙一の舌を持つ食神!!
この本を手にした雪国高校生料理隊長祐一!!そなたに試練を与えよう!!
これから我が記していく食物を見事すべて食し、制覇せよ!!
だが、食物といっても、野菜、肉、魚、果物と、食材だけで異なる味わいがあるのは周知の事実!!
飽くなき探求心を持って挑むがよい!!
なお、この本のことが知られれば、すべては終わりじゃ!!
貴殿の健闘を祈る。”
「・・・・・・。」
絶句。それが今の俺にふさわしい言葉だった。
まったくもってよくわからんが、これから書かれて行く食物を食わなければいかんらしい。
「って、書かれて行く、のか?」
疑っているそばから何やら文字が浮かんできた。
食物の名前と、それについての説明。
一品だ。うーん、やっぱりこれから増えていくんだろうな。
様子からして、一品で終わるようには思えないし・・・。
「それにしても、知られるとすべては終わりって、どういう事だ?
でも無視してもよさそうな・・・。」
なんて考えていると、更なる文字が浮かび上がった。
わしの挑戦を拒む者には天誅あるのみじゃ!!
「・・・・・・。」
どうやら相手にしてやらないといけないらしい。
気がふれたどこかのへんくつじいさんの仕業だろうか?
しかし不可思議な書物である以上、油断はできないな。
どんな報復が待っているかわかったもんじゃない。
「仕方ない、やってやるか・・・。
そうそうわけのわからんものなんて出ないだろうし。」
諦めた俺はしぶしぶながらも食物を・・・
という前に何気なく本の裏を眺めてみた。
そこに書かれてあったのは、
『料理はこころ!』
という文字。
なんだかますますがくーんときてしまったのは言うまでもない。
更には、
『苦しいようなら他者に協力を求めても結構じゃぞ?』
という付け足しまであった。
知られるとすべてが終わるんじゃなかったのか?
まあいいや、結構なら結構でそうしよう。
かくして、俺にとってとんでもない毎日が始まったのだった。
<食物の効果>
俺から見ればまともなものだった。
「これくらいなら俺にも作れるか?」
と思ったのだが、素直に秋子さん達が帰ってくるのを待ったほうがよさそうだ。
自慢じゃないが俺はほとんど料理ができないからな。
・・・たしかに自慢じゃないな。
「これ、あいうえお順なのか?」
いきなりだがそんな考えが浮かんだ。
ならば“わ”で終わりだろう。さしずめワイン、かな?
買ってくればそれでいい・・・
「って、これも買えばいいじゃないか!!」
本には“食せ”と書いてあっただけだしな。
急いで俺は財布の中身を確認すると、コートを引っつかんで家を出た。
『●アップルパイ
生地の中に薄切りのリンゴを挟んで焼き上げたお菓子。』
なんて説明なんざ切り捨てて・・・。
十数分後、目的の物はあっさりと見つけることができた。
いつも誰かさんが食い逃げ・・・もとい、金を払い忘れているタイヤキ屋の隣に!
小銭を出して入手。余裕の笑みを浮かべて俺はそれをほおばった。
「これでOK、だよな。」
「あれっ?祐一、どうしたの?」
「ぶほっぶほっ!!な、名雪?」
不意に後ろから声がかかる。振り返るとそこには名雪が居た。
いや、正確には三人がいた。つまりは、名雪と秋子さんと真琴だ。
「留守番頼んだのに・・・。」
「ちゃんと鍵したから大丈夫だって。」
「祐一さん、お腹でも空いたんですか?しかもアップルパイだなんて珍しいですね。」
「い、いえ、これは・・・。」
しばし戸惑った俺だが、本の事をさっさと話すことに決めた。
一人で抱え込んでいたって出来そうに無いし。
何より、鋭い秋子さんの前で隠し事なんてするだけ無駄だろう。
丁度買い物は終わっていたという事なので、帰り道に事情を説明した。
「・・・というわけなんです。」
「まあ、それは大変ですね。」
「まったくそうですよ。どこの誰がこんな・・・。」
「肉まんも出てくるかな?」
「のんきだな、真琴は・・・。」
ふと思ったが、肉まんが出たときには真琴にすぐさま協力してもらおう。
もっとも、買いに行かせてそれを頂戴する、ということだが。
と、俺はここでしきりに頭を悩ませている名雪に気がついた。
真琴と同じ様に“イチゴサンデーは?”とか聞いてきそうなものなのに。
「どうしたんだよ、名雪。」
「えっ?あ、うん。なんかそんな話学校で聞いたなあって。」
「学校?」
「そうだよ。部活の先輩の先輩のそのまた先輩の話なんだけど。」
随分と昔だな。
「祐一と同じ様に本が送られてきたんだって。食べ物じゃないけど中身はおんなじ。
何かをやれ、っていう指令が書かれてるんだよ。」
「指令か?これは・・・。まあいい、それで?」
「なんとかその先輩はすべてをやったんだけど、出来なかった人は・・・。」
「「「出来なかった人は?」」」
俺だけでなく、秋子さんと真琴の声が重なった。
まだ既知のものではないみたいだ。
「たしか・・・ペンギンに変えられて、人をついたりするのに使われるんだって。
“天誅!”とか“ば〜か”とか言われたりするとその合図だって話だよ。」
「なんだそりゃ・・・。」
ますますもって意味不明になってきたが、そんなのは俺はごめんだ。
待てよ、本に書かれてあった天誅ってこの事なのか?
何にしても、人をどつくペンギン人生なんてまっぴらだな。
「こりゃあなんとしてでも全部を食べないとな・・・。」
「頑張ってね、祐一。」
「私もなるべく協力します。」
「ふぁいとっ、だよ。」
失敗すれば深刻な結果が待っているのに、心なしか皆の表情が明るいのは気の所為か?
ペンギンに惑わされてるんだろうか・・・。
いやいや、そんなことを考えてても仕方が無い。とにかくやる!!
気合新たに、家へと戻る俺達であった。
<HP回復25%>
「はあ・・・。」
深い深いため息が俺の部屋を埋め尽くしてゆく。
理由は簡単。とんでもないものが出たからだ。
『●いちのくら
一ノ蔵無鑑査純米。端麗なること水の如く。
肴の味を殺さず逆に殺されやすい繊細な酒。』
だってさ。秋子さんに頼むしかないだろうが、なんだか高そうな酒だ。
一番の問題はこれを飲まなければならないという事であって・・・。
「俺はまだ未成年だっつーの。」
お酒は二十歳になってから!
という言葉は、嫌というほどでもないがよく聞いた。
さすがにこの年で酒飲みにはなりたくない。
その日、一日ずっと悩みに悩んで・・・。
「え?いちのくら、ですか?」
「はい、お願いします。」
結局秋子さんに直接頼むことにした。
未成年の俺が買いに行くわけにもいかない。
こういう物は大人である秋子さんに頼むのが一番だし。
とはいえ頼んだ後ながら気が引けてきた。高そうな酒だし。
何より秋子さん自身こういうのはあまり飲まないんじゃ・・・
ドン!
「へ?」
少し考え事をしている間に、どこからか酒の瓶が出現した。
いや、秋子さんがどこかから取り出してテーブルの上に置いたのだ。
「さ、遠慮なくどうぞ。」
「あったんですか、家に・・・。ってちょっと待ってください!」
「え?ああそうだったわね・・・。」
慌てる俺の様子を見てか、秋子さんはごそごそと・・・。
そして杯を持ってきた!
「いくらなんでも瓶では飲めませんでしたね。さ、これでくいっと。」
「だからそうじゃなくて!俺は未成年なんですってば!!」
「大丈夫ですよ、祐一さんなら。」
何が大丈夫だというのだろう。
「俺が法律を犯してもいいんですか?」
「了承。」
「・・・・・・。」
一歩も引く様子はなさそうだ。
まあしょうがないか・・・。
「じゃ、じゃあほんの一口だけ。」
「ええ。」
震える手で、俺は杯を手に取った。
ちびっ
「・・・ぶほっ、ぶほっ!!」
「あら、きつかったですか?」
初めて飲む酒だから当然だ。でも自然と喉を通ったし、味も悪くないかも・・・
「って、更に飲もうとするな俺ー!」
こりずに二度め口に運ぼうとしている手を、俺は慌ててとめた。
「ご、ごちそうさまでした。ありがとうございます。」
「いえいえ。二十歳になったらまた味わってみましょうね。」
笑顔で秋子さんは酒の片づけを始めたが・・・
名残惜しそうに見えたのはなんだか気の所為か?
「ところで祐一さん。」
「なんですか。」
「肴があれば良かったですね。」
「・・・・・・。」
たしかにあの酒なら肴と一緒に・・・って俺は未成年だ!!
何度も惑わされてへとへとになってしまったな・・・。
(それだけこの酒は魅力的なのだろうか?)
<HP回復30%>
「来たか・・・。」
頭のどこかで予想はしていたが、こうもあっさりくるとは思わなかった。
フランス料理として有名な、あの、あの!!
『●エスカルゴ
食用のカタツムリをガーリック風味で炒めた料理』
「俺が作れるわけないしなあ・・・。」
庭でよくみかける奴は、このエスカルゴとはまた違うらしい。
いや、正確にはエスカルゴに用いられるカタツムリはまた違うという事で・・・。
「ここはあの人に相談してみようか?」
そして・・・学校。
「ふえっ?エスカルゴですか?」
「そうなんですよ、佐祐理さん。お願いします。」
「うーん・・・。」
ここは屋上手前の踊り場。そして居るのは佐祐理さんと舞。
佐祐理さん。この人ならなんとかしてくれる。何故か俺はそう思った。
もちろん事情は事前にすべて話した。“大変ですねえ”と“…………”
という予想通りの反応を二人はしてくれた。
ひとまず協力の意志をすぐに見せてくれたのはありがたかった。
「わかりました。佐祐理がなんとかします。」
「ほんとですか?」
「ええ。ね、舞。」
「・・・・・・。」
佐祐理さんの視線に、こくりと舞はうなずいた。
「あ、いや、あの、俺は佐祐理さんに・・・。」
「さあて。そうと決まったら早速したくしなくちゃ。済みませんが、これで失礼します。」
いそいそと片づけを始め、佐祐理さんは舞とともにその場を去っていった。
ぽつんとそこに残された俺は、一人でただ呆然と・・・。
「一体何をするんだろう・・・。」
不安に思っていたら、早々と二人は戻ってきた。
恥ずかしそうに気まずい笑みを浮かべている。
「うっかりしてました。丁度あったんです。はい。」
「え?」
手に持っていた弁当が素早くその場に広げられた。
それは先ほどまで佐祐理さんと舞と食べていた・・・
「うをっ!?」
「今日のお弁当、たまたま昨日の残りが入っていたようです。」
「・・・かたつむりさん。」
舞が指差した先。なんかよくわからんが油っぽい肉の塊があった。
おそらくこれが・・・目的のものだろう。
無言のまま二人を見上げた俺だったが、目で急かされ、もう一度肉を見た。
「これが・・・そうなのか・・・。」
予想とはかなり違うが(その俺の予想もはっきりしたものではないが)
それはかとなく美味そうにも見えた。・・・いやそんなのは気のせいだ。
心の中で葛藤が続く。と、不意に目の前に箸が現れ、肉をはっしとつかんだ。
びっくりしてその箸を目で追った瞬間、口の中に物体が放り込まれた。
「!!??」
「・・・食べた。」
舞だ。舞が箸でつかんで、俺の口の中に放り込んだんだ。
「舞も凄い事するようになったねえ・・・。で、裕一さん。味はどうですか?」
「あんまり・・・。」
「そうですか。でもそんなものかもしれませんね。」
正直に言うと、放り込まれた瞬間に呑み込んでしまったので味わってなどいない。
それよりは、舞の行動にショックが大きかった、といえるだろう。
“頼む、これ以上変なものは出ないでくれ”と心底願う俺であった。
<HP回復5%>
「祐一、今日はわたしが夕御飯作るね。」
料理名を告げると、名雪はなんとこんな事を言い出した。
今日は秋子さんと真琴は外食。
(なんでも、真琴のバイト先でお楽しみ会なるものがあるらしいので)
俺と名雪で留守番、というわけなのだ。
そういう都合もあってか、名雪が料理を作ると言ってくれた。
ところが・・・。
「らららTELした〜♪メニューは秘密だよ〜♪」
どこかで聴いた様な歌を歌いながら、台所を封鎖してしまったのだ。
(この歌、歌詞は少し違っているが間違い無く俺は知っている気がする。
そう、名雪の声にそっくりな人がたしか歌っていたはずだ)
つまりは俺がそこに入れないようにされているのだ。
理由を聞いても教えてくれなかった。まあ作ってくれるなら深くは追求できないな。
仕方なくリビングでTVを見ているわけなのだが。
「コンビニの〜御飯に〜、頼るなんて〜、祐一の暮らしは良くないよ〜♪」
「・・・・・・。」
なんだか替え歌になってきたようだ。
しかし何故俺の名が出るんだ?しかも暮らしは良くない?
「♪おっりょおりは・・・」
ジュー!!!
歌をかき消すくらいに激しい油の音がする。
普通に揚げただけでそんな音したっけ?
まさか冷凍のものを氷がついたままなんてやってないだろうな・・・。
TVなんかもはやそっちのけで、俺は台所の音に耳を傾けていた。
楽しみと不安が混じった複雑な気分で。
しばらくして、いいにおいがしてきた。
「こんがりきつね色〜♪見とれてちゃ駄目だよ〜♪」
もうすぐ仕上がるってことなのか?
歌の調子が上がってきたようだ。
そしてその内容からも、料理の終わりが近いことがうかがえてきた。
「♪くれいじーでこんふゅーじょんなエプロンを〜♪・・・できた!!
祐一〜、できたからお皿並べて〜。」
「よしきた。」
待ってましたとばかりに、俺は名雪の元へと向かった。
台所は開放された。もはやなんびとたりとも妨げる事は・・・
「ざーんねんでした。既にお皿も並べられてました〜♪」
勝ち誇ったように名雪が告げた。
見ればなるほど、配膳は既に終わっていた。
俺を台所から離したのはそういう理由からか?
上機嫌な名雪と共に、早速えびフライを食べはじめる。
衣はさくっとしていて、なかなかいい仕上がりだ。
一緒に盛り付けされているサラダも申し分ない。
ちなみに本の中身は・・・
『●えびフライ
エビに溶き卵をつけ、パン粉をまぶして油であげた料理。
冷凍エビは固さですぐバレる。』
だそうだ。なるほど、このエビは固いな。冷凍ものか。
「祐一、密かに頭の中で分析してない?
わたしはちゃんと作ったんだからね。」
「分かってるよ。美味い美味い。」
満足しながら、俺はその日の食事を堪能したのであった。
<HP回復10%>
学校。そこは頼りになる人物がたくさん集まる場所である。
授業の合間の休み時間。いつもながらに寝ている名雪の横をすりぬけ、
俺は香里の元へと駆け寄った。
「香里!」
「びっくりした・・・。どうしたのよ、相沢君。」
「俺に奇跡を見せてくれ!」
「・・・何?それ。」
「おおとろが、おおとろが必要なんだよ!!」
「は?」
まくしたてる俺に、香里は未だもってわからないといった表情。
何故俺が香里に頼み込んでいるかというと、それは勘からだ。
なんていうか、動物的なひらめきが・・・
待てよ、良く考えたら事情を説明してなかったな。
「どうしたんだよ相沢、そんなにせっぱ詰まって。
よければ頼もしきオトコマエの俺に話してみなって。」
「北川・・・。丁度いいや、一緒に聞いてくれ。」
俺とした事がかなり動揺していたみたいだな。
こんな近くの友に気付かなかったなんて。
そんなわけで訳を話す。本も見せた。
今回の中身は、
『●おおとろ
伝説の大とろ。』
となっている。(最初に俺が奇跡だとか言ったのはこの所為だ)
すると・・・
「頑張ってね。あたしは関与しない事にするから。」
「な、なんだってー!?」
香里は冷たく言い放ったかと思うと別の作業をし出した。
くうう、俺の動物的勘はこんなものだったということか?
「北川!お前がたよりだ!!」
「心配するな。俺がなんとかしてやろう。」
「おおっ、き、北川!!」
「放課後空いてるな?俺に黙って付いてこい!!」
なんて頼もしい奴なんだ!!
この日、俺には北川が光り輝いて見えた。
そして放課後。
俺は北川に、とある寿司屋に連れてこられた。
いつも行ってる商店街とは随分離れた、辺ぴな場所にある。
「こんな寿司屋があったのか・・・。」
「さあ入ろうぜ。言っておくが代金は相沢持だからな。」
「この際しょうがないか・・・。高くないだろうな?」
「大丈夫、小遣い3ヶ月分以内で収まるはずだ。」
「なんだと?」
給料3ヶ月分という言葉をよく聞くからってそれはあんまりじゃないか?
第一何故俺の小遣いを北川が・・・。
「冗談だ。気にするな。なあに心配するな。4桁で済むさ。」
「・・・・・・。」
4桁と言われても幅が広いぞ。
本当に北川に任せて大丈夫なんだろうか?
などと心配しているうちに寿司屋に入って注文を取った。
店の中には木造のカウンターがあり、そこに腰掛けた。
待つ事数分。果たしておおとろは姿を見せた。
「これが、伝説の・・・。」
しかし外見は普通のとろとどこも変わらないように見える。
いったいどこが伝説なんだ?
「伝説のウニ1つ!」
「へい!」
いぶかしげに見ている俺の隣で北川が自分の分を注文した。
なに?伝説のウニ?
「おい北川。」
「なんだよ。聞いてびっくりしたか?
ここはすべてのメニューに“伝説の”が付いてるんだ。
あ、ちなみにこれは“伝説のあがり”な。」
「なんだそりゃ・・・。」
得意そうに湯飲みを見せ付ける北川だったが、俺はがっくりと力が抜けた。
ともかく目的のものは手に入ったんだ。それをしっかり食すとしよう。
味はなるほど、たしかになかなかのものだ。
しかし伝票を見て目が飛び出た。4桁だが・・・ギリギリの4桁だ!!
満足してる北川にさよならを言い、家に帰る。
夕飯時に名雪から出たのはこんな言葉だ。
「別に普通のお店でおおとろを注文すれば良かったんじゃないの?」
言われてみればそうだー!!
すっかり説明書きに騙されてしまったな。
俺のあの小遣いは一体なんのために消えていったんだ・・・。
<HP回復3%>
きたきたきたきたきた!!
こういうのを待っていたんだ。
今までは人に頼ってばかりだったが、これなら自分で作れる!
なあに、米を使って握って海苔で巻くだけだ簡単簡単。
学校から帰宅した後、夕飯も兼ねた気分、俺は早速台所で作業を始めた。
もちろん秋子さんに断って。恥ずかしい気もしたから入ってこないように頼んだが・・・。
「教えてもらいながら作った方が良かったか?いいや、たまには一人で頑張らないとな。」
袖をまくってやる気十分。俺は作る準備に取り掛かった。
あらかじめ炊き上がっていた御飯。
それをしゃもじで炊飯器から別の容器、ボールへと移す。
保存状態がいいのか、見た目にも申し分ない。
米粒のつやが、立ち上る湯気が食欲をそそる。
「おしっ、握るぞ!」
塩をちょちょいっと手につけて、ご飯を手に取る。
「あ、あちあちあちっ!!」
あまりの熱さに思わずご飯を落とす。幸いそこはボールの上なので助かったが。
くっ、油断したか・・・。
再度ご飯を手に取る。左手と右手にそれを素早く持ち替えながら、熱を冷ます。
大丈夫そうになったところで、ぎゅっと握った。
おし、これであとは形を整える!!
ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ、
「・・・できた!よし、これに海苔をまいて、と。」
あっさりとおムスビは完成した。俺は大満足だ。
得意になって、複数個をつくりにかかる。
あっという間にボールに移したご飯は空っぽになった。
「ま、これだけ作れば上等だろう。
あ、そういえば料理名だけ見て説明書きの部分読んでなかったな。えーと・・・。」
『●おムスビ
さんかくおむすびです。』
「・・・・・・。」
そう、さんかくだ。俺ももちろんそれを意識して作った。しかし・・・
「これ、四角形?n角形?少なくともnは4以上だね。」
「な、名雪!」
突然声がしたかと思ったら名雪がそこにいた。
しかもいきなり形に物言いをつけてきた。
仕方ないといえば仕方なかったのだが、それは理不尽というものだ。
「なにやってんだよ!入ってくるなったら!」
「いいじゃない。わたし今帰ってきたところなんだから。」
そういえば部活だったんだっけな。
「って、入ってこないように秋子さんに言っておいたのに!」
「もういいじゃない祐一。食べてもいい?」
「だ、駄目だ駄目だ!」
「もう遅いよ〜。」
ぱく
「あっ!」
既に名雪はおムスビのひとつを手にとっていたのだ。
それに小さくかぶりつく。
「たく・・・。」
「・・・ねえ祐一。」
「なんだよ。」
「今日の料理は甘いおにぎりだったの?」
「は?・・・あー!!これ砂糖だ!!!」
お、俺とした事がなんという初歩的なミスをおかしてしまったんだ!!
「頑張って全部食べてね。」
「おい、だからって自分がかじったやつを置いて去ろうとするな!」
「う〜、今日は厄日だよ〜・・・。」
名雪は仕方ないとあきらめ、手に持っていたものをもって台所を後にしていったが・・・。
厄日はこっちだ。けなされるわ失敗するわ。
だいたい俺の手料理なんていう珍しいものを口にする前にもうちょっと何か言うとか・・・
・・・やめた。こんなこと考えててもむなしくなるだけだ。
「それにしてもどうすりゃいいんだ?これ。」
テーブルの上に大量のおにぎりが残っている。
それらは甘い。砂糖で味付けされているからだ。
自業自得、ってやつなのか?これは。
夕飯時に、結局俺がすべてを片づける事となってしまった。
<HP回復30%>
「わかったわ。百花屋に丁度あるから相沢君のおごりね。」
香里の唐突なこの言葉により、俺と名雪と北川と香里と、百花屋へ・・・
「って、なんで俺のおごりなんだよー!!」
「贅沢言わない。あたしが教えてあげたんだからそれくらいはやってもらって当然よ。」
「納得いかーん!!だいたい俺は少し言っただけで・・・」
「ふうー、おいしかった。イチゴサンデーおかわり〜」
「あ、俺もチョコサンデーおかわりー!」
「お前ら遠慮しろ〜!!」
くっそう、このところ俺の財布の中身は減る一方じゃないか!
改めてほんの中身を見てみる。
『●オレンジシェイク
クリームや砂糖などにオレンジ果汁を加えて混ぜた粘状飲料。』
よく考えたら、自分で作ったほうがよかないか?
と、オレンジシェイクをすすりながら悩んでいる俺を見てか、
香里は食していたフルーツパフェを置いてこう言った。
「作るなんて自爆行為はやめておいたほうがいいと思うわよ。
奇跡はね、そう簡単に起こるようなものじゃないんだから。」
「う・・・うおおおー!!」
「祐一、うるさい。」
「ほっときなって水瀬さん。相沢は叫びたい年頃なんだよ。」
わけのわからないまま、その日の食物騒動は幕を閉じた。
こんな理不尽なことってあるかー!!
<HP回復15%>
『●かたいステーキ
焼きすぎて固くなった超台無しのステーキ。』
「・・・???」
最初俺はこの説明が、料理名がまったく理解できなかった。
今までは名詞だけだったのだが・・・“かたい”という形容詞付だ。
繰り返し繰り返し読む。しかし、それはやはり変わらなかった。
「焼きすぎて・・・要はこがせばいいってことか?」
普通に考えればそういうことだろう。
となると、適任が居るな。
「え?ボクがステーキを作るの?」
「そうだあゆ。お前しか頼れる人物は居ない!!」
「うぐぅ、ボクそんなの作ったこと無いよ・・・。」
商店街。いつもどおりタイヤキを盗んで・・・
もとい、食い逃げしているあゆを発見した。
いや、正確には俺が探したんだけどな。
「うぐぅ、これはもらったんだもん。ちゃんとお金もはらったもん。」
「お金払ったんならもらったとか言わないだろうが・・・。
とにかくあゆ!うちに来てステーキを!!」
俺があゆに頼もうとしているのは、あゆなら立派なかたいステーキを作ってくれると確信したからだ。
だが、もちろん事情を話すと引き受けてくれなさそうだから、隠して頼んでいるわけだけどな。
「あんまり気が進まないけど・・・祐一君がそう言うならいいよ。
でもどうして急に?」
「それは企業秘密だ。」
「・・・・・・。」
あゆの目つきが、途端に疑惑をはらんだそれに変わる。
うっ、さすがに言葉を間違えたか?
それでもなんとかごまかし、うちまで連れてきた。
秋子さんに頼んで台所を借りる。
早速フライパンと、商店街で買ったステーキ用の肉(安いやつだけどな)を用意した。
「じゃああゆ、始めてくれ。」
「うぐぅ・・・。」
今更ながら困った顔だ。
無理もないな。もしも俺が“家に来てステーキを焼いてくれ!”
なんて頼まれたら、戸惑うに決まってる。
それ以前にしつこく理由を問いただすだろうな。
うーん、あゆに頼んで良かった。
「・・・?祐一君、どうしたの?」
「あ、いや、なんでもない。」
無意味に視線を送ってしまっていたようだ。危ない危ない。
そんなこんなでステーキは焼きあがり・・・。
「うぐぅ、まっくろ・・・。」
「見事に焼け過ぎだな。ウェルダンプラス5くらいか?」
「ひどいよ、祐一君。」
「ははは、そうふくれるなって。ちゃんと俺が食う・・・あーっ!!!」
うかつだった。良く考えたら最後に食さないとダメなんだったな。
すっかりそれを忘れていた。作ることしか考えていなかったぞ。
「くっ、自分で作ったほうが良かったか・・・。」
「自分で作る?」
「あ、いや、うーん・・・。」
ついつい出た自分の言葉はよろしくないものだったろう。
なんと言ってもあゆの目がだんだん潤んできたからだ。
さすがにこれ以上は隠すわけにはいかないと俺は思った。
正直にすべてを話す。本も見せた。すると・・・。
「酷いよ祐一君、ボクをもてあそんだんだね。」
「人聞きの悪いことを言うなって。心配するな、ちゃんと食うから。」
「当たり前だよっ!!」
やはりというかあゆは怒った。
まあ怒るだけで済んだのは幸いだったかもしれない。
しかしそれは、これからかたいステーキを食う俺を同情してのことだろう。
「じゃあ食べてね。」
「お、おう・・・。」
ご丁寧にお皿にステーキが盛り付けられ、フォークとナイフが置かれ・・・。
「いただきます!!」
半ばヤケになって一口食べる!
・・・後は何も語りたくない。
そう、少なくともあれはステーキと呼べる代物では決して無かった。
自業自得という言葉をひしひしと感じた日となった。
<HP回復1%>
「祐一、あたしが作ってあげるよ!」
言うなり本をかっさらっていったのは真琴だ。
今日は果たしてどんな料理が?と思って開けたとたんにこれだ。
まだ俺は見てないのに、勝手に作られても困る。
というかあいつに任せていい結果になるわけがない。
そんなわけで、俊足で台所へ降りていった真琴を追っていったのだが・・・。
「まあまあ祐一さん。たまには真琴にも任せてみましょう。」
なんと秋子さんからとおせんぼをくらってしまった。
くっ、真琴め。家主を利用するたあ大胆不敵になったものだ。
しかし!この俺がそう簡単にお前のたくらみを許すと思ったら大間違い・・・
「できた!祐一、早速食べてみて!!」
小麦粉で真っ白になった手が持つ皿の上には、一つのお菓子が乗っかっていた。
「なるほど、ケーキ、か。」
しっかしこれ出来上がるのが異常に早くないか?
「祐一さん、さあ早く食べてください。」
「そうだよ。祐一、早く早く!」
なんとなく最初から二人にしくまれていた気もするが・・・まあいい。
出来上がった物は仕方ないから食べてやるとしよう。
ケーキをつまみ、一口かじる・・・
「・・・か、辛いー!!!!」
「やった、成功!!」
「な、何が成功だ真琴ー!!!!
ケーキってのは普通甘いもんだろうが!!!!」
「だって、これ見てよ。」
得意げに真琴は本を目いっぱい広げて見せてきた。
『●からいケーキ
調味料を間違っているとしか思えない甘辛いケーキ。』
「ね?」
「ね?じゃねー!!!!これは甘辛いケーキじゃなくて、ただ辛いケーキ・・・ごふっ!!」
水も飲まずに叫んでいると、とたんに目の前が真っ暗になった。
どうやら俺は気絶してしまったようだ・・・。
あとで真琴を問い詰めると、トウバンジャンだとかタバスコだとか、
とにかく辛い物を大量にいれてこしらえたケーキだとわかった。
くっ、むざむざとあんなものを食べてしまった俺が馬鹿だったんだ・・・。
<HP回復1% >
「また酒か・・・。」
俺は未成年だ。酒は飲めない。
もちろん酒にも色々あるから、あからさまに拒否というのもかんがえものだろう。
しかし、しかしだ!
「なんで日本酒でまとめないんだよ!!」
以前も日本酒が出てきた。酒の違いなんざ俺にはわかるはずもないから、
日本酒と呼べるものは一括してもらいたいのだ。
だいたい全種類出されてたらそれこそどうしようもなくなるぞ。
それにこの酒、かなり高そうだし・・・。
『●こくりゅう
黒龍火いらず。年間数百本の貴重酒。
損得ぬきでやればこんな凄いのができるという例。』
という説明がき。はっきり言って簡単に手に入るような物じゃないようだ。
「くそー、どうすればいいんだー!!」
「まあまあ祐一さん。これでも飲んで落ち着いてください。」
「おわあっ!あ、秋子さん、いつのまに・・・。」
知らぬ間に隣に居た。たしかに階段に座りこんでいたのが原因だろうが。
「さ、これをどうぞ。」
「あ、ああ、すいません・・・って、これ何ですか?」
「お水ですよ。ささっ、ぐいっと。」
手にしたコップを無理矢理口元に近づけてくる。
水とは明らかに違うにおいを感じ取り、俺は抵抗した。
が、結局なすがままに・・・
ゴクゴクゴク
それをすべて飲み干してしまった!
「どうですか、こくりゅうの味は。」
「・・・・・・。」
バタン
「あらあら。祐一さんにはまだ早かったようですね。」
飲んだのはごく少量だったものの、俺には十分こたえた。
次に気がついた時には翌日の朝、ベッドの中。
頭が割れるように痛いのは二日酔いというやつの所為だろう。
あんな希少的な酒が家にあったのも驚きだが・・・
「俺に無理に飲ませようとするのも驚きだ。」
そういえばいつのまにかこくりゅうであるという事もばれていたし・・・。
改めて秋子さんが何者か考えてしまいたくなる出来事であった。
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昼休みがおとずれた学校。俺は何気なく中庭に出てみた。
そこにはいつもの、ストールを羽織った少女が居た。
「栞・・・って、何やってんだそんなとこで?」
「お昼ご飯を作ってるんです。いつもバニラアイスを買ってきてもらってるばっかりですから。
たまには私が作って祐一さんにご馳走しようと。」
「そ、そう・・・。」
昼飯を作ってくれるという好意は嬉しい。
だがしかし、そこにあったのは・・・
「それ・・・七輪?」
「はいそうです。こういうものしかなくて。」
七輪の中にはたくさんの炭が赤色の光を放っている。
栞は手にしたうちわでそれをぱたぱたと扇いでいた。
贅沢に見ればバーベキューに見えたりするかもしれない。
しかしそんなものとは程遠い。せいぜいもちを焼くくらい。
「祐一さん、お餅を焼くとかお約束な事考えてませんか?」
「す、するどい・・・あ、いや、考えてないぞ。」
「お餅じゃなくてこれを焼くんですよ。」
にこやかに栞が取り出したのはなんとサザエ。生だ。
良く見ると彼女の後ろに、網に入ったサザエがぎっしりとある。
病弱な彼女がこんなものやら七輪やらをどうやって持ってきたのかは聞かないでおくとしよう。
「サザエのつぼ焼きです。」
「へえ〜、サザエのつぼ焼きねえ・・・って、なにー!!?」
慌てて俺は例の本を取り出し、今日の分を見た。
なんと都合良く、今日はサザエのつぼ焼き!!
きょとんとしている栞に早速事情を説明する。
すると彼女は、快く協力を申し出てくれた。まずはこのサザエのつぼやき。
『●サザエつぼやき
サザエを炭火の網の上で焼いたもの。
これを食べるたびに感涙にむせび泣く御仁も多い。』
俺はまさに別の意味でむせび泣いていた。
ここんところろくな料理が出てこなかった所為もあるかもしれないが、
しかし、しかし・・・!!
「どうしたんですか?祐一さん。」
「な、なんでもない。」
「遠慮しないでどんどん食べてくださいね。」
「ああ。ありがとう栞。」
今日は最上の昼食を味わった、そんな気分だった。
<HP回復10% >
『●サラダ
生野菜を主としたあえ物。』
「・・・ふつーのサラダ、だな?だな?」
本に語りかけてるこの俺の姿はもしかしなくても変に見えるだろう。
だがそんなことはどうでもいいことだ。
まともの王道たるべきものが出現したのだから!
「それもサラダ♪俺の心を〜包むサラダ〜♪」
なんて歌ってる場合じゃないな。
ちゃちゃっと自分でつくって食すとしよう。
野菜なんか切れるのかって?ふん、馬鹿にするない。
・・・と思ったけど、やばいかもしれない。
「なあに、何事も挑戦だ!」
「何を挑戦するの?」
「な、真琴!?」
なんと偶然にも真琴と出くわしてしまったのだ!
「驚くことないでしょ。同じ家の中に居るのに。」
「それもそうか・・・ってそんなことはどうでもいいんだ!
いいか真琴、俺はこれからサラダを作る。邪魔はしないでもらおう。」
「いいよ。あたしは見てるだけにするから。」
「へ?」
やけに素直だ。だが目は嘘を言っていない。
本当に見ているだけのつもりのようだ。
「って、待て。見てるだけにするってなんだ。なんで見る必要がある。」
「いいじゃない。見たいんだから。」
「・・・まあいっか。」
むげに追い出すのも気がひける。
普段の行動からあらぬ疑いをかけたくはなるが、ここは本人の意志を尊重しよう。
そんなこんなで台所にやってきた。
冷蔵庫から野菜を取りだす。レタスにトマトにキュウリに・・・。
材料がそろったところで、水に少しさらした包丁にまな板を取り出す。
必要な分だけの大きさをとり、野菜を切り出した。
トントントントン
「ギャアー!!」
「なんだ!?」
隅っこで立っていた真琴が突然叫び声をあげた。
驚いて俺は手を止め、振り返る。
「どうした真琴?」
「切られてる野菜の代わりに叫んであげたの。」
「・・・・・・。」
何考えてんだこいつわ。
くそ、“見てるだけ”とか主張したこいつをやっぱり信用するんじゃなかった。
その後も俺が包丁を動かすたびに咆哮をあげる真琴。
“ぎえー!”とか“うぐあああー!”とか“あうあうあうー!”とかうるさくてしょうがない。
秋子さんや名雪が居たならば、絶対にとんできたことだろう。
それでも、野菜はなんとか切り終えた。
ボールにそれらを入れ、マヨネーズであえる。
皿に盛るのも面倒だったので、そのまま箸で食した。
「もぐもぐ・・・おっ、結構いけるじゃん。」
「・・・祐一、あたしにも。」
「ぎゃーぎゃーわめいていた奴にはあげられないな。」
「あうーっ。」
「冗談だよ、冗談。ほら、自分の箸とってこいよ。」
「う、うん。」
自作のサラダの予想外な美味さに、俺はすっかり上機嫌になっていた。
やがて、箸を手にした真琴も一口。
「・・・うん、美味しいね。」
「だろだろ!?」
「随分ご機嫌だね、祐一。」
「まあな。」
自分の料理を美味しいと言われて悪い気などしない。
今回みたいな食事が続けばいいな、とつくづく思う俺であった。
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