天国に一番近いKanon(栞編)


「相沢祐一です。よろしくお願いします」
この地方に俺が引っ越してきて数日。
ようやくこっちの学校に通うことになった俺は
新しく入ったクラスで自己紹介をすませていた。
「それじゃ相沢の席は…水瀬の後ろだ」
そうして俺は名雪の後ろの空いた席へと座った。
「あなたね、名雪の言ってた従兄弟っていうのは」
そこへ隣の席の女子が俺に話しかけてきた。
「あぁ、全く朝から大変だったぞ。名雪の奴全然起きねぇ。
おかげであやうく遅刻するところだった」
「そうでしょうね。相沢君も初日から災難だったわね」
「うーひどいよ。香里どういう意味だよー」
「言葉通りよ」
前の席からの名雪の反論を女子はピシャリとはねのけた。
「私は美坂香里。名雪とは友達ってことになるかな?よろしくね」
「おぉ、よろしく」

その日の昼休み。
「祐一。お昼どうするの?」
「学食に行こうと思う。この学校にもあるんだろ?」
「いいけど相沢君。学食の場所わかるの?」
「うっ」
香里(すでに呼び捨て)の言うとおり、俺は
この学校の構造を全く知らない。
当然学食の場所を知ってるはずもない。
「な、なぁに。なんとか見つかるだろう。
それじゃ行くぜっ!!」
そう言って俺は教室を飛び出していった。

「学食を探してどうして外へ出るんだろうな」
自分でもわけがわからない。なんでこんな寒い中
雪の降り積もる外へ出てしまったんだろう。
それも人のあまり来ない中庭に。
「戻ろうか…」
引き返そうとした、その時。
くしゅんっ
誰かのくしゃみする声が聞こえた。
「誰かいるのか?」
そう思って中庭の奥の方へ行ってみると、
そこには私服で立っている1人の女の子がいた。
「…何やってんだ?お前こんな所で」
「え?」
そいつは驚いたように俺の顔を見た。
「あ、この前のドラマチックな人…」
「は?」
「いえ、こっちの話です」
何のことだと思ったがそれはおいといて。
「で…お前は私服で学校入って何してんだ?」
「私一応この学校の生徒ですっ。病気で休んでるだけです」
「病気なら家で寝てろ」
「今日は身体の調子がいいから平気です」
ああ言えばこう言う。なんだか子供っぽい感じの女の子だな。
「私子供っぽくありません。そんなこと言う人嫌いです」
「なにっ、俺の心を読んだのかっ」
「口に出して言ってました」
むぅ、またしてもやってしまったか。
「じゃ俺はもう行くぞ。まだ昼飯食ってないんで腹が減ってるんだ」
「あ、私の持ってきた昼ご飯よければ…」
「ほぉ、どれどれ…」
そいつが持っていたビニール袋の中身を見ると大量のカップアイスの山。
「俺を凍死させる気か」
「ひどいですっ、そんな事言う人嫌いです」
「学食探すわ…お前も病気なら早く帰れよ」
「美味しいのに…」

結局校内に戻った俺はたまたま通りがかった
北川とかいう男子生徒に案内してもらって
学食に辿り着いた。
「お前こんな時間じゃろくなメニュー残ってないぞ」
北川の言うとおり、人気のメニューはすでに売り切れてしまっていた。
どうしようかと思っているとうどんが残ってるようなので
それを頼むことにした。
「ほぉ、これはなかなか」
数分後、俺は学食のうどんにありついていた。
寒い外を歩いた後だけにこれは暖かくてなかなかうまかった。
「ぷーっ。ごちそうさん」
汁も飲み干し、うどんをキレイに平らげた俺。
ふと俺は、うどんのお椀の底に何か文字が書いてあるのを見つけた。
「なんだこれ…」
その内容を見て俺はまた言葉を失った。

『明日午後5時までに誰かを心の底から笑わせなければ即死亡』


放課後。
「うふふー」
「何よ名雪。随分嬉しそうじゃない」
「だってこの3人で百花屋に行くの楽しみだったんだよー」
俺は名雪に誘われ、商店街にやって来ていた。
名雪の友人である香里も一緒だ。
「百花屋ってのはそんなにうまい店なのか?」
「当然だよー、特にイチゴサンデーが絶品なんだよー」
「なんだそのイチゴサンデーってのは…」
「うぐぅーっ!」
その声が聞こえた瞬間、俺はタイミングを計って身を翻した。
ずべしゃあっ!!
「うぐぅっ」
俺が身を翻すと同時にそいつは背中をかすめていき、
雪の降り積もる地面の上にうぐぅが見事に横たわった。
「うぐぅ、祐一くんが避けたぁ」
「出たな、うぐぅ系ポケモン、あゆあゆ」
「わ、びっくり。あゆちゃんポケモン?」
「名雪、信じるなって」
俺のボケにさらに名雪がボケてくる。
天然はこれだから困る。
「うー、ひどいよ祐一。私天然じゃないよー」
また口に出して言っていたらしい。
「本人に自覚がないのは困りものね」
「ひどいよ香里どういう意味だよー」
「言葉通りよ」
香里の名雪を扱う様子は手慣れたものだ。
さすが友達を自称するだけはあるな。
「わりぃ、名雪、香里。先行っててくれるか。
俺はこのうぐぅに用がある」
「いいけど相沢君、百花屋の場所わかる?」
「それは問題ない。この前名雪に案内してもらってるから」
「そう、それじゃ行くわよ名雪」
「祐一早く来てねー」
しばらくして名雪と香里の姿は見えなくなった。
「おい、あゆ。あれはなんだ?」
「あれって?」
「『明日午後5時までに誰かを心の底から笑わせなければ即死亡』、
あれはお前の仕業だな?」
「よかった。届いたみたいだね、新しい命題」
「ざけんな。なんで俺がそんなことしなきゃいけないんだ」
「でもクリアしなきゃ即、死亡だよ?この前体験したじゃない」
「んなもん偶然に決まってる。大体お前が天使ということも信じられん」
「うぐぅ…ホントに天使だもん。その証拠に少しだけど超能力もあるもん」
「ほぉなんだ?食い逃げ能力か?」
「違うもんっ。予知能力だよっ。ボク少し先の事なら何が起こるかわかるんだよ」
「じゃ言ってみろよ。外れてたら腹抱えて笑ってやる」
「んっとね…名雪さんの隣りにいたあの女の人。
あの人に祐一くん、怒られちゃうよ」
…香里のことか?なんで俺が香里に怒られるんだ?
「もう俺は行くぞ。2人を待たせているんでな」
「あっ…」
俺は言いたいことだけ言ってさっさとその場を立ち去った。
「祐一くぅん…」

百花屋にて。
「よっ、待たせたな」
「待ってたよゆういちぃー。こっちこっちー」
名雪に誘われ、その隣りに座る俺。
向かいには香里が座っている。
「イチゴサンデーお待たせしましたー」
そこへ店員さんがでっかいパフェを持ってやってきた。
「って名雪。イチゴサンデーって…この巨大パフェがか?」
「そうだよー。美味しいんだよー」
そう言って名雪はその巨大パフェをすくって食べ始めた。
「この季節にパフェなんて…昼間の中庭の奴といい、
なんで寒いのにこんな冷たいものを…」
「中庭の奴?」
その単語に何故か香里が反応した。
「どんな女の子だったの…相沢くん?」
「あぁ、このくそ寒い中、昼飯にアイスを勧めてきやがった。
一応生徒らしいが病気で休んでるって言ってたな」
「そ、そう…」
「ん?香里知ってる奴なのか?」
「いえ…そういうわけじゃ…」
「そういえば俺一言も女って言ってないのに
さっき『どんな女の子』って…」
「その話はもうやめてっ!!」
「うっ」
いきなり怒鳴られてしまい、俺はやむなくその話はそこで終わりにした。
名雪も驚いたのか一瞬イチゴサンデーを食べる手が止まっている。
(なんだったんだ…)
気になる所はあったがこの場は考えないようにした。
それよりもあゆの予知が当たってしまった事の方が
微妙に悔しかった。

翌日。
「また来てたのか」
「また来ちゃいました」
休憩時間に中庭に来てみると、昨日の女の子が
変わらぬ姿でまたそこに立っていた。
「そういえば名前を聞いていなかったな。
俺は2年生の相沢祐一。お兄ちゃんと呼んでくれ」
「嫌です」
即答だった。一瞬傘をさした三つ編み少女の影が…気のせいか。
「私は美坂栞、1年生です。しおりんと呼んでください」
「やだ」
「そんな事言う人嫌いですー」
口癖なのか…もしかして。
「美坂…ってことは俺の同級生の美坂香里の妹か?」
「…それは…」
「それとも…弟か?」
「どういう意味ですかっ」
「いや、女の子にしちゃ胸が…」
「そんな事言う人大嫌いですっ!!」
「何やってんのよあんた達…」
「香里!?」
いつの間にか背後に香里が立っていた。
「授業終わったと同時に教室飛び出したかと思ったら…
ここに来てたのね…」
「ははは…」
どうやら俺のあとをつけてきたらしい。
「お姉ちゃん…」
「私に妹なんていないわっ!」
話しかけた栞にきつく言い放つ香里。
「いつまでこんな所にいるつもりよ…
さっさと帰りなさいっ!」
「…わかりました。じゃ祐一さん。私はこれで…」
そう言って栞はその場を立ち去っていった。
そしてその場には俺と香里だけになる。
「なぁ…香里…あいつってお前のいもう…」
と、そこで休憩終了のチャイムが鳴ってしまう。
「戻るわよ。相沢君」
「あぁ…」
香里はあえてその話題を避けるように足早に教室へ帰っていった。

放課後。
「イチゴサンデーは昨日も食べただろうが」
「私イチゴサンデー大好きだもん」
「いくら好きでも毎日は飽きるだろ」
「私イチゴサンデーなら毎日でも食べられるよぉー」
またしても俺は名雪と商店街に来ていた。
昨日と違うのは香里がいないことだった。
「香里なら気分悪いからってさっさと帰っちゃったよー」
やはりあの栞という妹…本人は認めてないようだが…
それが気になるのだろうか…
「なぁ名雪…香里って妹いるのか?」
「香里に…うーんそういう話は聞いたことないけど…
香里って自分の事あまり話さないから…」
むぅ、香里ならありえる。名雪にも話していない
香里の事情って何だろう…
よその家庭の問題に首をつっこむべきではないのかもしれないが
俺はどうにもひっかかるものがあった。
「あれ?」
ふと、気が付くと通りすがりのコンビニからちょうど栞が
出てくるのを俺は見掛けた。
栞の手には中身のつまったビニール袋が下げられている。
「どうしたの、祐一?」
「わりぃ、待ってろ」
名雪を残して俺は栞の元に走った。
「よぉ、しおりん」
「あ、お兄ちゃん」
なかなかノリのいい奴だ。
「どうした、買い物か」
「えぇ、アイスの買い出しです」
「寒いのによく食うな」
「そんな事「言う人嫌いですー、か?」
「えぅー、先に言わないでください」
よし、心の中でちょっとした勝利感。
「これから公園に行きます。祐一さんもどうですか?」
「そうだな…名雪を待たせてるんで聞いてくるわ」
名雪の元に戻ってその事を説明すると、
「うー…イチゴサンデー…」
「わりぃ、また今度な」
ちょっと寂しそうな顔をされたがどうにか承諾はもらえたようだ。
俺は栞と一緒に公園へと向かった。

「ここも雪積もってるなぁ」
公園についた俺はなんとなくそうつぶやいた。
「祐一さん。雪合戦しませんか?」
唐突に栞がそうたずねてきた。
「ほぉ、雪合戦か。面白そうだな」
「では早速雪玉を作りましょう。石つめておきますね」
「やめんか」
何さらりと恐ろしい事ぬかしやがる。
「楽しいのに」
「遊びで死にたくないわ」
「そうですよね…死ぬのは嫌ですよね…」
不意に栞の表情が暗くなった。
「アイスでも食べながら…お話でもしましょうか…」
そう言って栞は作りかけの雪玉をその場に置いた。

「アイスクリーム、美味しいです」
「冷たいっちゅーに」
ベンチに座ってアイスを食べる栞。
美味しいと勧められたので仕方なく俺も一個
食っているがやはり冷たくてかなりきつい。
「祐一さん。もし自分がもうすぐ死ぬって言われたらどうします?」
唐突な栞の質問に俺は、
「とりあえずうぐぅと言う」
「なんですかうぐぅって」
「秘密」
「えぅー、気になります」
そう言いながら栞は二つ目のアイスに手をつける。
「私、もうすぐ死ぬんです」
栞の告白はいきなりだった。
「私が病気だって昨日言いましたよね?
なんでもすごい難しい病気らしくて…
今の医学だと根本的な治療法がないんです。
お医者さんは私は次の誕生日まで生きられないって…」
「栞の誕生日って…」
「2月1日です」
「もう一月もないじゃないか…」
「えぇ、そうですね」
栞は笑ってみせたがどこか悲しいものに見えたのは気のせいではないだろう。
間が持たないと思った俺は苦し紛れに話し始めた。
「…俺ももうすぐ死ぬかもしれん」
「え?」
俺の言葉に栞はきょとんとした表情を浮かべた。
「天使と名乗るうぐぅに言われたんだ。
今日の5時までに誰かを笑わせなければ即死亡、ってな」
「今、4時50分…あと10分ですよ」
「あぁ、所詮はうぐぅの言うことなんで気にしてはいないが
万に一つでも当たったら俺は10分後に死ぬことになるな」
「…怖くないんですか?」
「俺はうぐぅの戯言を真に受けるほど間抜けじゃないんでな」
「…そうなんですか?」
「まぁ確かにこの前の名雪の時は一瞬死ぬかとは思ったが
あれは偶然だ。そう何度も死にかけてたまるか」
「…祐一さん」
「なんだ?」
「私の事、笑わせてください」
「はぁ?」
今度は俺がきょとんとする番だった。
「そうしたら祐一さん、死なないんでしょう?」
「おい、話聞いてたか?それはうぐぅのたち悪い冗談だって」
「でももし死んだらどうするんですか?」
「いや、死なねぇって」
「私より先に死ぬ人は嫌いです」
どうやら本気のようだった。まいったな…
「しょうがねぇ。やるだけやってみるか…えーと」
考えてみるが俺は芸人じゃあるまいし、人を笑わせる術なんか知らない。
とにかく適当に何かやってみる。
「が、がちょーん…」
「……」
寒かった。二つの意味で。
「だっちゅーの」
「……」
「物真似シリーズ、長嶋監督。ん〜そうですね〜」
「……」
「ショートコント、喫茶店。『コーヒーお待たせしましたぁ』
『おい、これコーヒーじゃなくてコオロギじゃねーか。コしか合ってねーよ』」
「……」
虚しい。やってる俺も何やってるんだと思い始めたその時。
「あんた達また…」
「香里?」
「お姉ちゃん?」
いつの間にかそこに香里が立っていた。
むぅ、ちょっと恥ずかしい所を見られたかもしれん。
「まぁ、相沢君の奇行については今はおいといて…」
奇行て、ひどいなおい。
「栞…家にいないと思ったらこんな所に…」
「お姉ちゃん…」
「ほぉ、やっぱりこいつはお前の妹だったんだな?香里」
「うっ…」
言葉に詰まる香里、どうやらビンゴのようだ。
「…栞、こんな所にいないで帰るわよ」
「えぅー…もう少し遊びたいですー」
「あんたね…自分の状態わかってるの!?」
「これくらい平気ですー」
「何言ってんのよ!下手な事して体調悪化したらどうするの!」
「お、おい、香里…」
「相沢君は黙ってて!!」
おぉう。その迫力にさすがの俺も一歩引いてしまったぞ。
「お姉ちゃんひどいです。別に祐一さんは悪くないです」
「関係ない人を巻き込むんじゃないの!」
「そういうお姉ちゃんは何にもしてくれないくせに…」
「なっ!」
明らかに香里の顔色が変わった。
まずいぞ、栞。香里の逆鱗に触れたんじゃ…
「あ…あんたに何がわかるのよ!!
たった一人の妹が死ぬって聞かされて
私はどうすればいいっていうのよ!!」
「そんなこと言ったら私はどうなるんですか!!
実際に死ぬのは私なんですよ!つらいのは私の方なんですよ!」
「残される家族の身にもなりなさいよ!
つらいのはあんただけじゃないのよ!!」
「だったらなんで何もしてくれないんですか!」
「何をすればいいのよ!何かした所で
何も変わらないじゃない!だったら…
いっそ妹なんていないと…思って…」
「そんなのお姉ちゃんのわがままじゃないですか!」
「うるさいわねっ!!」
べしゃっ
「あ…」
俺の投げた雪玉は見事に香里の顔に命中した。
いきなりの冷たい感覚に香里は唖然としている。
「雪合戦しようぜ」
「はぁ?」
「いいじゃねぇか。怒って喧嘩するより
笑って遊んだ方が楽しいに決まってる。
俺はお前らの事情なんか知らないがな、
香里、別に難しい事しなくてもこうやってただ
楽しく遊んでやればそれでいいんじゃないか?
自然に、ただ普通にやればいいと思うぜ?
栞だって変に気ぃ使われるよりいいだろ?」
「相沢君…」
一瞬、沈黙する香里。
「ぷっ…あは…あははははっ!」
その次の瞬間に、香里が笑い出した。
「あー…なんか気ぃ抜けたわ。
私としたことがムキになっちゃって…
ごめんね、栞、ひどい事言っちゃって…」
「ううん、私も言い過ぎちゃった…ごめんねお姉ちゃん」
「…こんな私でもお姉ちゃんって呼んでくれるのね…」
「当たり前ですー」
「どうだ、香里。さっきの雪で頭冷やせたか?」
「うん…ありがと。相沢君。でも少し痛かったわよ?」
「はは、わりぃわりぃ」
「だーめ。おかえし」
そう言って香里は足元の雪玉を拾ってそれを俺に…
「あっ、お姉ちゃん!それは駄目っ!
さっき私が作った石入りだから!」
「え゛」
投げようとした香里の手が止まった。
「し〜お〜り〜。あんたまた懲りずにこんなことをぉ〜」
「えぅー、お姉ちゃんごめんなさい〜」
怒ってはいるがこれはじゃれ合ってるレベルだろう。
どうやらうまくおさまったみたいだ。
「さて、もう5時だけどどうする、栞?」
「アイス食べたいですー」
「もうっ…しょうがないわね、今日だけよ」
「わーい、それじゃ祐一さんまたねー」
栞は香里に連れられて去っていった。
…って、5時?
「危なかったねー。祐一君」
そう思った瞬間、後ろに例の奴が現れた。
「あゆ…」
「香里さんが笑ってくれたおかげで命題クリアできたね」
「命題は関係ないだろうが」
「ううん、あの時香里さんが笑ってくれなかったら
祐一君あの石入りの雪玉が当たって死んでたよ」
「そんなこと…」
「ないって言える?」
むぅ、あゆのくせに鋭いぞ。
「それじゃ、また近いうちに命題届けるから楽しみにしててねー」
「あっ、こら!」
「祐一君ばいばーい」
あっという間に去っていきやがった。
くそっ、なんか悔しい…
今日はもう帰るか…


その夜、学校にて。
誰もいない廊下で剣を持った少女が立っていた。
「私は魔物を討つ者だから…」


後書き
笑わせるという命題で栞を笑わせるのかと思わせて
実は香里だったという我ながらそこそこ意表はつけたんじゃないかと。
前半のかけあい漫才?は楽しく書けましたが
後半が難しかったですね、香里を笑わせる展開は
少し強引かもしれませんがこれが精一杯です。
ちなみにあゆの予知能力は元ネタのドラマからの引用です。

それはそうとこの「天国に一番近いKanon」。
略して「天近Kanon」と私は呼んでますが
もっと縮めて「天かの」と呼ぶ人もいるみたいですね。
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