『倫敦精霊探偵団』



第42話「最後の戦い 前編」

機械の塔内部。
「すげぇ・・・どこもかしこも全部機械だ」
妙な所で感心するビリー。
「先生はきっと最上階だよね」
「そうよね。急がないと」
とはいうものの、塔内部にはあちこちに装甲兵が配置されている。
出来ればあまり戦いたくない。3人は隠れながら塔の上へと向かっていた。

「あっ、エレベーターよ」
「よし、乗ろう」
ボタンを押してドアを閉める。
エレベーターは上へと上がっていく。
チーン
ドアが開くとそこには装甲兵が・・・
「・・・間違えました」
すぐさまドアを閉じて別の階に向かう。

最上階。
ここに結社の幹部が勢揃いしている。
部屋の端に牢屋があり、ヤングゴーストが捕らえられている。
「そんな・・・あたし世界を滅ぼす手伝いしちゃってたの?」

ズィッヒェルが逆さ吊りのエヴァレットに近付く。
「どうかね?エヴァレット君。今の気分は」
「あんまり良くないね。せめて逆さ吊りってのはなんとかしてもらえないかな?
それとも君達はいつもこうやって寝てるのかい?」
「ふん。その状態でそんな減らず口がたたけるとはたいしたもんだ」
余裕の笑みを浮かべるズィッヒェル。
「ズィッヒェル。そろそろ始めろ」
「はっ」
マシナリータの言葉を受け、準備を整えるズィッヒェル。
「装甲兵!前へ!」
数体の装甲兵が逆さ吊りのエヴァレットに向かって銃を向ける!
「構え!!」

「ちょっと待ったーーーーーーー!!」
「この声は・・・」
間一髪、ビリー達が駆けつけた!!
「先生を・・・今すぐ離せ!!」
「でないとただじゃおかないわよ!これは警告よ!」
「あうー!!」
それを見たズィッヒェルがやれやれといった表情になる。
「・・・いかがいたしましょう。マシナリータ様」
「・・・こんな子供に警告されるなどとは・・・
私もヤキがまわったかな?とはいえここまで来たという事実はうごかせんな」
「はっ。それでは・・・」
ズィッヒェルがパチンと指をならす。
「装甲兵!!」
突然周りの壁が開き、中から大量の装甲兵が現れた!!
「げげっ!」
あっという間に取り囲まれてしまうビリー達。
「これは子供の遊びではない。
邪魔者は殺す。たとえ貴様らみたいな子供でもな」
ローブに隠れて顔が見えないがマシナリータはマジだ。
「エヴァレット、せっかくだ。そこで弟子達が死ぬのを見届けろ」
「やめろ!その子達を離せ!!」
「ふふ・・・この状況でまだ他人をかばう余裕があるか・・・
安心しろ。すぐにお前も後を追わせる」
そしてマシナリータはビリー達を見つめた。
「装甲兵、構え!!」 


第43話「最後の戦い 中編」

装甲兵に囲まれ、身動きのとれないビリー達。
「構え!!」
「くっ・・・」
いよいよ装甲兵が銃を構えたその時!

ガタンッ!
「なんだっ!?」
突然明かりが消えてしまった!
「くっ、非常灯を!!」
すぐさま明かりは戻ったが、
「なっ!?」
いつの間にか全ての装甲兵がその場に倒れて動かなくなっていた!
「これは、一体・・・」
ビリー達も何がなんだかという状況。

「大丈夫か?」
「スペクター!?」
いつの間にかスペクターが現れていた!
小脇にはマリアを抱え(おいていけなかった)、すでに逆さ吊りのエヴァレットを救出している。
「この塔の中枢に蒸気を集める機関があったな・・・そいつを破壊させてもらった!!
エネルギーがなければ装甲兵はただのガラクタだ!!」
「スペクター・・・」
「エヴァレット・・・マリアを連れて離れていてくれ・・・
巻き添えをくわんようにな・・・」
スペクターはエヴァレットにマリアを託して前に進み出る。
「き・・・きさまぁ・・・・」
「私はビリー君に助けられた。今度は私が助ける番だ!!」
「おのれぇ!!じじい一人に何が出来る!!」
「一人じゃないわよ!!」
ドゴッ!
ヤングゴーストのキックがズィッヒェルの後頭部に直撃した!
「貴様!?牢に入っていたはずでは!?」
「私だって怪人のはしくれよ!これくらいの牢脱出出来なくてどうすんの!
ボーヤ達!このオッサンは私達に任せてそっちをお願い!!」

「おのれぇぇぇ・・・・」
「マシナリータ・・・観念しろ!」
孤立したマシナリータと対峙するビリー達。
「許さない・・・全員殺してやる!!」
バサッ・・・
マシナリータは着ていたローブを脱ぎ捨てた!

「げっ!!」
マシナリータの姿を見たビリーは二つの理由で驚いていた。
一つはマシナリータが『女性』であったこと。
しかも結構な美人。ただそこに暖かみはない。
冷たい美貌というべきか。
もう一つはマシナリータの体の半分以上がバネやら歯車やら機械部品になっていたこと。
顔の半分も機械だ。なまじ美人なだけに余計怖い。
「邪魔者は・・・殺す!!」 


第44話「最後の戦い 後編」

「死ねぇぇぇぇぇ!!」
マシナリータが突っ込んできた!!
「おっと!」
マシナリータのパンチをすんでのところでかわす。
ドッゴーン!!
ビリーが立っていた場所に大きな穴があく。
「うわ・・・・」
青ざめるビリー。まともにくらったら本気で死ぬ。
「おのれぇぇぇぇぇ!!」
怒りに震えるマシナリータは連続で攻撃してくる。とても近付くことは出来ない。
「くそっ!」
ビリーが遠くからパチンコで応戦するがなかなか決定打が出ない。
「ここはあたしの出番ね!」
アリエスがメガホンを取り出す。
「これでもくらえーーーーーっ!!」
思いっきり大声でマシナリータを怒鳴る!
「なめた真似をっ・・・」
ガシッ!
「キャッ!!」
しかし、たいして効かなかったのか、マシナリータがアリエスに掴みかかってきた!
「うっ・・・くっ・・・」
ゴンッ!
「おねーちゃんだいじょうぶ?」
「くはっ・・・あんたに助けられるとは・・・」
ボブが鉄パイプで思いっきりマシナリータをどついて、なんとかアリエスは脱出する。
ちなみに鉄パイプはそのへんの壁からひっぺがしたものである。
「このやろ・・・」
ドグッ!
「くっ!」
ビリーの渾身の一撃でなんとかマシナリータにダメージを与える。
しかしまだまだマシナリータは倒れる様子がない。
「おのれぇぇぇぇ!!」
マシナリータの機械の体から何かが現れた!
それは直径20センチほどの筒・・・
「まさかっ・・・大砲・・・」
「死ねっ!!」
ドッカーーーーン!!
「ひぇぇぇぇぇ!!」
直撃は避けたが衝撃で吹っ飛んで壁に叩きつけられてしまう。
「ここまでするか・・・」
非常識なマシナリータの攻撃に驚きを通り越してあきれてしまう。
「次ははずさん・・・バラバラにしてやる!!」
再び照準を合わせるマシナリータ。本気で撃つ気だ!!
「ちょっ・・・本気でまずいわよ!」
「こういうときは・・・」
ビリーはボブを抱え上げる。
「困った時のボブ頼み!!頼むぞ!!」
「あうー!」
マシナリータに向かってボブを投げつける!
ドガッ!!
「ぐはっ!」
ボブはマシナリータの顔面に直撃し、一瞬マシナリータをひるませる!
「今だ!こっちも大砲を!!」
そう言ってビリーが取り出したのは「おまつり花火」。
普通の花火とはわけが違う。
「よーし!いっけーっ!!」
アリエスがメガホンで後押しする。メガホンは味方のパワーを上げる効果もある。
ドーーーーーーン!!
おまつり花火がマシナリータに直撃した!!
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ガシャンッ!!
衝撃で吹っ飛んだマシナリータは動きの鈍くなった体を無理矢理起こそうとする。
「何故だ・・・何故こんなガキどもに!」
「もう諦めろ、マシナリータ」
「ふざけるな・・・私を・・・こんな体にした世界に・・・
復讐するまでは・・・・・」

ガタンッ!!
「なにっ!?」
突然マシナリータの足元の床が開いた!!

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そのままマシナリータは機械の塔の内部を落ちていった!
「フランシス!!」
それを見たズィッヒェルがスペクターとヤングゴーストを振り払い、
なんと自らも穴の中に飛び込んでいった!!

「グスタフ!なんであんたまで!」
「お前を一人にはさせん!!」
ズィッヒェルは空中でマシナリータを抱きしめた。
「グスタフ・・・」
「フランシス・・・」
そのまま二人は落ちていった・・・・

ドーーーーーーーン・・・・・・
「マシナリータ!!ズィッヒェル!!」 


第45話「怪人結社の最期」

マシナリータとズィッヒェルが目の前で落ちていった。
そのことで一同は呆然としていた。
「マシナリータ・・・ズィッヒェル・・・・」

「怪人結社ももはやこれまでか・・・」
「マン・オブ・スチーム!!」
この男の存在を思いだし、慌てて身構えるビリー達。
「まさか・・・お前がマシナリータを!!」
「二人の野望はついえた。だが・・・・」
マン・オブ・スチームはガラスのケースに入ったいかにも危なそうなスイッチに手を掛ける。
「私は私の野望を貫くまでだ!!」
ガシャーン!!
ガラスをぶち破り、謎のスイッチは押された!!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・
「まずい!塔が崩れ始めたぞ!!」
「なんだって!?」
「すぐに脱出しないと!!」
「ダメだ!あの男、通路を塞いで自分だけ逃げやがった!!」
「みんな、こっちだ!!私が用意しておいた脱出口がある!!」
「さすがスペクター・・・」
「逃げ道を確保しておくのは当然さ。急ぐぞ!時間がない!!」

ドゴーーーーーーーン!!
派手に壊れていく機械の塔。
ビリー達は間一髪脱出することが出来た。
「これで終わりだな・・・怪人結社も・・・・」
「エヴァレットさん。怪我とかしなかったですか?」
「僕は大丈夫。ありがとう・・・・君達。スペクターも・・・・」
「ふっ・・・礼を言うのはこちらの方だ。ありがとう・・・」
その時、
「おっと、警官隊がこちらに近付いているようだ。では私達は失礼するよ」
「おにーちゃんありがとー」
「それじゃまたね」
バサッ
マントを翻し、スペクターはマリアとヤングゴーストを連れて去っていった。

「エヴァレットさん!!ご無事でしたか!!」
「ああ、この通りピンピンしてるさ」
「すいません、ジャンピングジョーとジェニーを取り逃がしました」
「あの二人なら大丈夫なんじゃない?
結社もなくなったことだし、どうせたいしたこと出来ないさ」
「そ、そうですか?」
「でもまぁ、捕まえておいた方が後々楽かな?」
「ですよね!みんな、次はあっちを探すぞ!!」
警官隊はジャンプコンビを追っていった。

「あっ・・・もう朝だ・・・」
「ほんとだ。ふぁぁぁ、そういえば眠い・・・」
「そうだね。それじゃ・・・帰ろうか」
「はい・・・」
「大丈夫?」
「はは・・・疲れた・・・・」

こうして怪人結社は壊滅し、倫敦に平和が戻ったのであった・・・・ 


第46話「蒸気の反乱」

「うーーーん・・・・」
数日後の朝、やけに蒸し暑くなり、目が覚めてしまった。
「まだこんな時間・・・・」
「あにきーーーーーーー!!」
どんっ!
ベッドのビリーの上にボブがのっかってきた。
「く、くるし・・・どいて・・・」
「たいへんだよー!すぐきてー!」
「?」

事務所に降りるとアリエスとエヴァレットがすでに集まっていた。
「何やってんのよ、ビリー!大変よ!」
「ど、どうしたんですか?」
「よく聞いてくれ。万博に展示されている人工太陽が・・・
暴走を始めた・・・・とてつもない熱を放出し続けている・・・」
「・・・・・それで?」
「このままでは倫敦は人工太陽の熱で溶けてしまう・・・・
最悪の場合人工太陽が爆発して倫敦はこっぱみじんだ・・・」
「え・・・えええええええええ!!!!!!」
「万博会場から離れてるここでさえすでに暑いのよ!
このままもっと暑くなったら大変なことになるわ!!」
「で、でも、どうしていきなりこんなことに!?」
「それはさっき警官が来て教えてくれた。
暴走する直前にマン・オブ・スチームが人工太陽に向かったらしい」
「マン・オブ・スチーム!この前の鎧男が!?」
「彼の本名はダンテ・ガブリエル。かつてこの倫敦に蒸気を普及させた蒸気技師なんだ!!」
「ええっ!?それじゃそいつが蒸気を発明したんですか!?」
「そうだ。だがしばらくして市と話が合わなくなり、市議会を脱退した・・・・」
「な、なんで?」
「彼はこの倫敦を蒸気のパラダイスにするつもりだった・・・
つまり、倫敦から人間を追い出して蒸気機械で埋め尽くそうとしていたんだ!!」
「それじゃ誰が機械使うんだよ・・・」
「さぁね。ああいう偉いさんの考えることはわかんないよ」
バァンッ!
その時事務所のドアが思いっきり開けられた!
「エヴァレット君!君の力が必要だ!」
「市長さん・・・わかりました。最善を尽くします」
エヴァレットは出掛ける準備を始めた。
「まず市民の避難が先ですね。
港は避難する人で一杯でしょうし・・・・地下鉄の駅なんかいいかもしれません。
あそこなら振動に強いから爆発に耐えられるかもしれません」
「なるほど。出来ればそんなことになってほしくないが・・・」
「同感です。では行きましょう。事態は一刻を争います」
そのままエヴァレットは出掛けてしまった。

「俺達はどうする・・・」
「わかんない・・・でもやれるだけのことはやりましょう!」
「おー!」
「そうだな・・・行こう!!」
ガチャッ
「おわぁっ!?」
「ヴァージル!前にも同じことやったわね!
いるならいるって言ってよ!!」
玄関を開けた先にはヴァージルが3人を待っていた。
「また・・・俺達の力がいるの?」
「あぁ・・・きてほしい・・・」

「人工太陽の暴走が精霊の世界にも影響をおよぼしている・・・
このままでは精霊の世界は滅びる・・・」
ヴァージルの説明を聞きながら4人は万博会場に向かう。
近付くにつれ、暑さもだんだんひどくなっていく。
「暑い・・・もうこれ以上は・・・」
「そうだね・・・ちょっと待って・・・」
キィン・・・
「?・・・・暑くなくなった?」
「これで少しは耐えられるよ・・・急ごう・・・」
「う、うん!」
ヴァージルの魔法?のようなものでビリー達は暑さへの抵抗力をつけてもらった。

万博会場前。
「なんて暑さなの・・・みんな溶けちゃいそう・・・」
「あうー・・・・」
人工太陽を展示している会場はすさまじい暑さだ。
耐熱の魔法をかけてもらっているビリー達でさえ暑い。
普通の状態なら生きていられないだろう。
「これから精霊の世界に行くよ・・・・準備はいいかい?」
「え!?ヴァージル今なんて・・・」
「行くよ・・・」
キィン・・・・
「わわっ・・・・」
その瞬間、ビリー達の姿が消えた。 


第47話「滅び行く世界」

「・・・ここは・・・・」
ヴァージルの力でビリー達は一瞬にして全く別の場所に移動していた。
辺りは岩肌が露出している荒野といったところだ。
「見ての通り・・・ここは君達の世界じゃない・・・
いや、君達の世界になるかもしれなかった世界・・・」
「どういうこと?」
「人間が違う選択をしていればこうなっていたかもしれない世界だ・・・
今は別の世界として存在している・・・・」
「・・・よくわかんない・・・」
「とにかく行こう。こうしている間にも君達の世界は危機にさらされている」

荒れた大地を歩き続けるビリー達。
「あっ、建物が見えてきた!!」
しばらくすると幾分緑が生い茂り、いくつかの家が立ち並ぶ場所に来た。
最もどの家にも住む人はいないが・・・・
「これはこれで良いところね・・・」
都会の倫敦ではこんな光景はなかなか見られない。
自然の緑というのは人の心を落ち着かせるものだ。

「だんだん都会っぽくなってきたわね・・・」
しばらく進むと近代的なビルが立ち並ぶ場所にやってきた。
もちろん誰一人として住む人間はいない。
「この街・・・全然蒸気を使ってない・・・すごい・・・・」
そう、この街には蒸気機関がない。
それでなおこの都会ぶり。
ビリー達には想像出来ない世界だ。

「あにきー、あれー」
「あぁ・・・なんかでっけぇ建物が見えてきた・・・・」
さらに進み続けるビリー達の目に大きな建物が見えてきた。
「感じる・・・あそこにいる・・・・」
ヴァージルがぽつりとつぶやく。
「行こう・・・もたもたしてられない・・・」
迷う暇もなく、ビリー達は建物を目指して歩いていく。

「ここって・・・内装が少し違うけど・・・・」
「万博会場!?」
建物の内部は多少の違いはあれど、万博会場で見覚えのあるものが次々と目に飛び込んできた。
「もうすぐだよ・・・みんな心の準備をしておいてね・・・」
「な・・・何があるってんだよ・・・・」
ヴァージルを先頭に建物の中を突き進む。

「ここだ・・・・」
最深部と思われる場所でいよいよビリー達は最後のドアを開けた!!

カッ!!
「なにこれー!!」
「あにきー。なんにもみえないよー」
「まぶしい・・・なんだこの光は・・・」
ドアを開けた途端に辺りは光に包まれ、まぶしさのあまり何も見えなくなった。
「間違いない・・・彼だ」
「彼って?」
「人工太陽だ・・・この光が精霊の世界に影響をおよぼしている・・・」
「えぇっ!?」
「今はまだ彼には意思がない・・・だがこのままではこの光の前に全てが焼き尽くされてしまう・・・・
止めなくては・・・・」
ヴァージルは不思議な力で光を消し、あたりを真っ暗にする。
でもビリー達はお互いの姿がはっきり見える。
「・・・・来た!!」
ヴァージルが真剣な表情になる。
そしてそれは現れた!! 


第48話「人工の精霊」

真っ暗闇の中、それは現れた!
「で・・・でけぇ・・・・」
それはとてつもなく大きな光の玉だった。
回りにはいくつもの小さな光の玉を纏わせている。
「あれは・・・人工太陽から生まれた精霊だ・・・」
「えぇっ!?」
「人工太陽の暴走に合わせて彼も・・・・」
「じゃこいつを止めれば人工太陽の暴走は治まるの?」
「ああ・・・そのはずだ・・・」
「よぅし!!」
早速パチンコを取り出して、
「くらえっ!」
バシッ!
気合を入れて撃ち込む!!
が、ほとんど効いていない。
「このーっ!」
アリエスが傘で殴ろうと近付くが、
ボンッ!!
「キャーーーーーッ!!」
「アリエス!」
強烈な一撃をくらい、吹っ飛ばされてしまう。
「むいー!!」
ボブもまた突撃するが
ドグッ!
「あうー!!」
同じように攻撃をくらい、近付くことは出来ない。
「くっそぉ・・・強いぞこいつ・・・」
「みんな離れて・・・ウィスプ!!」
ドンッ!
ヴァージルの精霊石が人工太陽を攻撃する!
ちょっとは効果があったらしいが、ほとんど焼け石に水状態。
「くっそぉ・・・これでもダメか・・・・ヴァージル!こうなったら精霊召喚を!」
「ああ・・・・」
そう言ってヴァージルが精霊銃を構えたその時!
ドンッ!ドンドンッ!ドガガガガガガッ!!!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
いきなり人工太陽が小さな光の玉を連続で放ってきた!!
雨のように降ってくる光の玉をよけることなど出来ず、
ビリー達は大きなダメージを負ってしまった!
「くっそぉ・・・・・」
ボロボロになりながらもなんとか立ち上がるビリー。
「・・・これはっ・・・・」
ビリーの目に飛び込んできたのはヴァージルの精霊銃であった。
さっきの攻撃で落としたのであろう。
思わずビリーはそれを拾って確かめてみる。
「すごい・・・火、水、風、土、聖、邪・・・・いろいろある・・・・」
どの精霊を呼び出せば一番強いか考えるビリー。そして出た結果は
「めんどくせぇ!!いっぺんに全部呼び出してやる!!」
そのままビリーは精霊銃を構えて召喚を試みた!
「う・・・・・おおおおおおおお!!」
しかし精霊召喚というのは非常に難しいもの。
素人のビリーにしかもたくさんの精霊をいっぺんに呼び出すなど無茶である。
召喚の際に発するエネルギーに耐えられない!!
「くそぉぉぉぉぉぉ!!」
ガシッ
「!!アリエス!ボブ!」
「一人で出来るわけないでしょ!手を貸すわ」
「あにきー、おいらもがんばるー」
3人で精霊銃を構え続ける!しかしそれでもまだエネルギーの方が強い!
「くっ・・・精霊石よ・・・力を!!」
その時後ろで倒れていたヴァージルが精霊石の力を放出した!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
精霊銃を構えるビリー達に力がみなぎる!!
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
ドーーーーーーーン!!
召喚のエネルギーに耐え、ついに精霊銃は撃ち出された!
全ての精霊が一斉に人工太陽に向かう!!

バッコーーーーーーーーーーン!!!!!
そしてその攻撃は見事に命中した!!
さすがの人工太陽もこの攻撃でついに消滅した・・・
「や・・・やった!!」 


第49話「さよならヴァージル」

人工太陽の精霊を倒したビリー達。
「手強い相手だったな・・・・」
ビリーのつぶやきには安堵が感じられる。
アリエス、ボブも同じであった。
その時ヴァージルが口を開いた。
「彼は・・・人間が作りだした機械から生まれた精霊・・・
昔から存在する精霊とは違う・・・・
彼は生まれてくるべきではなかったのかな・・・・・
いや、僕にはわからない。それを決めるのは君達だから・・・」

ポォォォォォォォ・・・・・
「!?なんだっ!!」
ビリー達の元に2つの光が現れた。
でも人工太陽のようなまぶしい光ではなく、どこか安らぎを与える光であった。
『ヴァージル・・・やっとあなたを見つけました・・・・
あなたは本来はこちら側の存在・・・・』
『もはや我々は人間を恨みはしない。
我々に滅びが待つならそれも定めだ・・・』
『でも人間の未来を祝福するか呪詛するか・・・
私達にはわからない・・・・』
『人間の未来を決めるのは・・・人間だ・・・・』
「そうですね・・・・でもきっと大丈夫です、人間は」
そう言うとヴァージルは光の方に向かって歩き始めた。
「見届けましょう・・・・人間の未来を・・・・」
するとフッとヴァージルの姿が消えた。
「ヴァージル!?」

ハッ!
「ここは!!」
いつの間にかビリー達は別の場所に移動していた。
「ここは・・・どこだ?」
「あにきー、あれ・・・・」
「ん?あぁっ!」
それは溶けて形が変わっているが紛れもなく人工太陽の巨大スチームだった。
「ということはここは万博会場・・・・そうか、元の世界に帰ってきたのか・・・」
「キャァァァァァァァァァ!!」
「どうしたの!?アリエス!!」
「あ、あれ・・・・」
「げげっ!!」
よく見るとスチームに一体の人骨がくっついていた!!
「みんな大丈夫か!?」
「先生!?」
するとそこにエヴァレットが駆けつけてきた。
「無事でよかった・・・人工太陽の暴走も治まったみたいだよ」
程なくエヴァレットもスチームの人骨に気付く。
「間違いない・・・・マン・オブ・スチームの物だ・・・
自分を生きた機関として人工太陽を暴走させたのか・・・・
失敗しちゃったけどまぁ、彼らしいといえば彼らしいな・・・・
恐らく彼の中では実現されている理想を抱いて死んでいったんだ。本人は幸せかもね」
ふっとため息をついたエヴァレットはビリー達の方を向いた。
「さて・・・人工太陽がなくなって、それを造った人も死んじゃった。
これから倫敦はどうなるのかな・・・・
また同じ道をたどるか・・・・あるいは違う道を選ぶか・・・
考えてみるいい機会かもね」

「あ、あれ?」
その時ビリーはこの場にヴァージルがいないことに気付いた。
「先生!?ヴァージル知りませんか!?」
「ヴァージル?誰だい?」
「えっ・・・・先生が紹介してくれたじゃないですか!!」
「はて・・・・僕にそんな知り合いはいないはずだけど・・・・・」
「嘘・・・・・」
信じられなかった。でもエヴァレットが嘘をついているとも思えない。
あまりのことにビリーは呆然としていた・・・・ 


最終話「新たなる日々」

翌日。
「おはようございまーす・・・」
眠い目をこすってビリーが事務所に降りてきた。
いつものようにエヴァレットが迎えてくれる。
「やぁ、おはよう。いろいろあったけど万博も終わりだね。
君達もよく頑張ってくれたよ。ありがとう」
「へへ・・・どうも・・・」
エヴァレットに誉められ嬉しくなるビリー。
「あ、そうそう。アリエス君とボブ君が下に来てるよ」
「あ、そうですか?じゃ早速行ってきます」
すぐさまビリーは一階へと降りていった。
「ふむ・・・霊魂の存在について王立アカデミーが対立・・・
人工太陽の復旧委員会設立・・・・
ドナルド・ミニプリオ降板宣言・・・・
いろいろあるねぇ・・・・」
エヴァレットはそのまま部屋で新聞を読んでいた。

「あっ!ビリー!!」
「あにきー。こっちこっちー」
一階のリビングにアリエスとボブが来ていた。
「どうしたの?」
「あれからね。ヴァージルのアパートに行ったの。
でも部屋の中には誰もいなかったし何もなかったの。
聞き込みもしたけどみんなあそこには昔から誰も住んでないって言うのよ?
これって絶対変よねー?」
「結局・・・ヴァージルのこと覚えてるのは俺達3人だけかぁ・・・・・
なんか淋しいなぁ・・・・・」
「あにきー・・・またあのおにーちゃんにあえるよね?」
「・・・そうだな・・・きっとまた会えるさ・・・・」

バタンッ!!
「エヴァレットさんはいますかな!?」
「市長さん?どうしたのですか?」
その時いきなり事務所に市長がやってきた!
また何か事件かとビリー達にも緊張がはしる。
「とにかくこれを見てください!!」

『このたびの貴殿の活躍、拝見いたしました。
さて、小生老いた身ではございますが、このたび倫敦の闇に復帰することになりました。
その手始めとして先日至らぬ弟子の不備にてお返しした王家の首飾りを再度頂きに参ります。
ひさしぶりに貴殿と勝負出来ることを楽しみにしています。
                                          スペクター』

「スペクターからの挑戦状!?」
「すごい・・・本物だわ・・・・」
「あにきー、だいじけん?」
「お任せください、市長。僕がいるかぎりそんなことはさせません。
それにこっちには頼りになる助手がいますからね。大丈夫です」
「そうですか。では早速行きましょう!馬車を用意しております!!」

こうしてエヴァレット、ビリー、アリエス、ボブは出発の準備を整えた。
「それじゃ、みんな行くよ!!」
「おぉーっ!!」


Fin


あとがき(?)

最初はほのぼのとしていたけど
後半結社がからんできて結構マジになったり・・・
なかなかすごいストーリーだったなぁ、と。
ボブが結構なんでもありなんで面白かった。