『倫敦精霊探偵団』



第17話「石像の精霊」

埠頭の倉庫。
「ここに例の石像が保管されてるんだ・・・」
「なるほど。じゃ早速入りましょ」
ガチャガチャ
「あら?開かないじゃない!」
「え?」
倉庫のドアが開かない。
「おいおい、そんなのありかよ・・・」
ちょっと困るビリー。
「・・・おや?」
その時何かを発見したようだ。

ガチャッ
「開いたよー」
「全く、面倒なことを・・・」
ビリーは通気口を発見し、そこから倉庫の中に入って中から鍵を開けたのである。
「じゃ行くよ!」
倉庫の奥に例の石像があった。
「これかぁ・・・」
「見た感じなんにもなさそうだけど・・・」
と、アリエスが石像に触れようとしたその時
「いけない!!」
突然ヴァージルが叫んだ!
「え?何!?」
ブワァッ!!
「えええええええ!!」
すると石像から2体の『何か得体の知れないモノ』が飛びだした!
形は人間に似てるが明らかに人間ではない。
片方は黒くてゴツゴツしてるので男。
もう片方は白くて丸っこいので女であろう。
「な、な、な、なんなのこれはーーーーー!!!」
「石像の精霊だ・・・気を付けて。かなり気が立ってるみたいだよ・・・」
ヴァージルは落ち着いて何やら銃を取り出した。
バンッ!
ヴァージルの銃から何かが撃ち出され、精霊を攻撃した!
「これは精霊銃・・・精霊にも効くようになっている・・・」
続いて何か小さな石を取り出した。
「精霊石よ、力を・・・・ウィスプ!」
ボンッ!
今度は何かが爆発して攻撃した!
「すげぇ・・・これが精霊探偵の力!?」
しかしその時、一体の精霊が攻撃してきた!
「そうはいくかっ!!」
ビリーが渾身の力をこめてパチンコを撃つ!
ビシッ!
「よっしゃ!!」
見事に命中し、精霊を怯ませることが出来た。
「少しおとなしくしてもらうよ・・・精霊召喚!」
「えぇっ!?」
ヴァージルの精霊銃から撃ち出された何かは形を変え、何か人間ではない何かに姿を変える。
ドーーーーーーン!!

「・・・・おさまった・・・」
最後の一撃で精霊は姿を消した。
「大丈夫、少し眠っただけ・・・
この石像はアメリカから運ばれてきたものなんだ。
慣れない異国の地で不安だったんだね・・・」
「そ、そうだったのか・・・」
思わずビリーは感心する。
「おや?さっきので石像の一部が欠けてしまったな・・・」
小さな石像の欠片が床に落ちている。
「この欠片だけでも帰してあげよう・・・
もうすぐアメリカ行きの船が出るはずだから・・・」
「うん・・・・」

船長に頼み込み、石像の欠片は持って帰ってもらった。
それ以後石像の事件は二度と起こらなかった・・・・


第18話「霊園の謎 前編」

倫敦の町外れに霊園がある。
早い話が墓地。それもものすごく広い。

「霊園でおかしな音がする?」
「そう!最近聞いた話なんだけどね。
夜になると霊園から変な音が聞こえるらしいの!これって絶対怪しいわよ!」
すごい剣幕でアリエスはまくしたてる。
「それで・・・どうしようって・・・」
「決まってるじゃない!あたし達で調査するのよ!霊園の音の謎をつきとめるのよ!!」
「あにきー、じけん?おいらもいくー」
「やれやれ・・・」
結局ビリーもついていくことになる。

というわけで霊園にやってきた3人。
「昼間とはいえ、霊園ってのは気味悪いな・・・」
ちょっぴりビビるビリー。
「さぁ、行くわよ!」
一方のアリエスはずかずかと霊園の中へと入っていく。
「ああもう・・・・」

思った通り、霊園はかなり広い。歩き回るだけでも一苦労だ。
「ちょっと時間がかかりそうね・・・」
「ちょっとか・・・?」

ところが。
いろいろ調べたにも関わらず手がかりらしいものは何一つ見つからなかった。
そして3人は霊園の奥にある小さな建物の前までやってきた。
「ここって・・・死体安置所・・・」
少し身震いするビリー。
「くっ・・・開かないわ」
「そりゃ開かないでしょ」
開けて中に入ろうとするアリエスにやや呆れる。

「はぁ・・・結局何にも見つからなかったわね」
「うーん・・・仕方ない。夜にもう一回来よう。おかしな音が聞こえるのは夜なんだし」
「夜!?」
「どうしたの?」
「べ、別に。それじゃ夜にもう一回ここに集合ね」
やけに焦った様子のアリエスであった。

夜。
「よ、よく怖がらずに来たわね」
「アリエスが一番怖がってるように見えるけど・・・」
「そ、そんなことないわよ!!」
体中震えまくったまま言っても説得力はないが・・・・

というわけで夜の霊園に入っていった3人。
「と、特に何もないみたいね」
「まだ調べ始めたばっかりだよ」
3人は手がかりを探して探索を続ける。
その時
「あにきー・・・なんかきこえるよ」
「え!?」
ボブの発した言葉にビビる二人。
「そ、そんな・・・・」
「落ち着いて。静かに」
黙って耳を澄ませてみる。

ガシャンッ・・・・

ガシャンッ・・・・

「確かに・・・聞こえた・・・」
「な、なんなのよー」
「あっちの方角だな・・・」
音のした方へと向かうビリーとボブ。
「ちょっと!おいてかないでよー!!」
慌ててアリエスも後を追っていった。 


第19話「霊園の謎 後編」

音のする方を目指してゆっくりと進む3人。
「こっちは確か・・・死体安置所のはず・・・」
疑問を抱きながら追跡を続ける。
やがて3人は死体安置所の近くまでやってきた。
「誰かいる!隠れろ!!」
すかさず3人は死角に入る。

安置所の前に4人の人物の姿があった。
一人は青いローブをかぶった謎の人物。もう一人は軍服を着た謎の男。
あとの二人は男女ペア。足に何故かスプリングを装着している。
その時青ローブと軍服が会話を始めた。
「・・・ズィッヒェル。報告しろ」
「はっ。フランシス。下水道の倉庫を発見されるというトラブルは起きましたが
計画そのものは順調であります」
「よろしい。それと・・・その名で呼ぶな」
「申し訳ありません。マシナリータ様」
どうやら青ローブは「マシナリータ」、軍服は「ズィッヒェル」という名前らしい。
「では我々は装甲兵をこれから運び出す。それまで見張ってろ」
「へーい」
そう言ってマシナリータとズィッヒェルは安置所の中に入っていった。

「ど・・・どうすんのよ!やばいわよ!
あの音って装甲兵を運ぶ音だったのね!」
「ひとまず戻って報告を・・・」
その時
「くしゅんっ!」
ボブがくしゃみをしてしまった。
「誰だ!」
その音で見張りの二人に気付かれてしまった!
「くそっ!」
開き直って前に出る3人。
「お前達の話聞かせてもらったぞ!一体何者だ!!」
「へへっ・・・聞いて驚け!俺達は倫敦を揺るがす大怪盗!
ジャンピングジョー&ジェニーだ!!」
「声大きいよ、ジョー・・・それより見つかったよ!報告しなきゃ!」
「おっしゃ、ここは装甲兵に任せたぜ!」
ジョーとジェニーは足のバネではねながら安置所に入っていった。
「待て!・・・・・げげっ!」
その時一体のロボットが姿を現した!
「こいつ・・・下水道にいた・・・」
すると装甲兵が襲いかかってきた!
「うわわわわ!!」
慌ててよけるビリー。
「くそっ・・・これでもくらえ!」
ビリーがパチンコを発射する!
ボゴッ!
装甲兵に少し傷がついた!
「うそぉ!?」
「この前の一件からパチンコを改良したんだ。これでロボットにだって傷をつけられる!」
「やるわね・・・でもあたしだって!」
アリエスはメガホンを取り出した。もちろん普通のメガホンではない。
「いっけーーーーーーーっ!!」
思いっきりメガホンで叫ぶアリエス。すると少し装甲兵の動きが鈍った!
「えーーーーい」
すかさずボブの追い討ち!
ボゴッ!
装甲兵はさらにダメージを受ける!
「とどめだ!新型の花火くらいやがれ!」
ドッゴーーーン!!
この一撃でようやく装甲兵は動かなくなった。
「よし!急いで戻って報告だ!」

翌日
「死体安置所を調べた結果、隠し通路が発見され、そこから河に通じていることがわかったよ。
恐らくそこからそのロボットを運んでいたんだろうね」
エヴァレットの報告を受ける3人。
「それにしてもあの4人はなんだったんでしょうか・・・」
「うむ。調べる必要がありそうだね」 



第20話「謎の敵 怪人結社」

今日は特に事件もない。平和な一日だ。
「やぁ、ビリーいるかい?」
「先生?」
そこにエヴァレットが話しかけてきた。
「探偵協会に行ってね。いろいろ調べたよ。そしたら少しわかったことがあるんだ」
「この前の連中のことですか?」
「うん。奴らは怪人結社と名乗っている。思ったより大きな組織のようだね。
そして怪人結社の総帥・・・つまり大ボスがこの「マシナリータ」。
わかったのは名前だけで素性は一切不明。
それからマシナリータの片腕とも言えるこの男が「ズィッヒェル」。
結社の参謀だ。こいつも詳しいことはわからない。
それから前にも言った武器商人の「楊宗元」。
こいつも結社に協力して何かやっているらしい。
それと、この二人。「ジャンピングジョーとジェニー」。
こいつらははっきりいってただのチンピラだ。
足のバネを利用したジャンプ力が特徴なんだけど・・・
確認されたのは空き巣やかっぱらいがほとんどでたいしたことはない。
とはいえ結社がバックについてる以上、油断は出来ないけどね」
「なんかいろいろいるんですねぇ・・・」
「組織の大きさから考えてまだいるはずだよ。
それに君達が見た装甲兵。あれも要注意だね」
エヴァレットの語りは真剣そのものだ。
「怪人結社か・・・」
なんかとてつもない敵の登場に思わず緊張するビリーであった・・・ 


第21話「屋根上の怪 前編」

今日もビリーは屋根裏の部屋で目が覚めた。
「ふわぁぁ・・・朝かぁ・・・」
ドンッ!
「ん?」
いきなり屋根の上で音がした。
「・・・猫かなんかかな?」

「やぁ、おはよう。ビリー、実は頼みたいことがあるんだ」
「俺に?」
事務所に降りた所でエヴァレットに話しかけられるビリー。
「もうすぐ万博が始まるんだけど、そこに展示される機械メイドがいなくなったらしいんだ。
僕はあいにく今日は市の会議で探せないんだよ。ビリー、代わりにやってくれないかい?」
「機械メイド探しですか・・・わかりました。やってみます!」

「というわけなんだよ」
「なるほど。面白そうじゃない。手伝うわ」
「じけんーじけんー」
アリエスとボブにも話し、一緒に探して貰うことにする。
「さて・・・探すといっても倫敦は広いんだ。普通に探して見つかるものじゃないぞ」
「さすがに機械じゃこの子の鼻も使えないし・・・」
アリエスはちらっとボブの方を見る。
「しょうがない。地道な作業だけど聞き込みしよう」
「そうね。手分けして情報を集めましょ」
「おー」

聞き込み中・・・・

「どうだった?」
「あたしは鉄パイプをねじ曲げるっていう怪力の女性の話を聞いたわ。
これって機械メイドのことじゃない?」
「なるほど。俺は屋根づたいに逃げる謎の女性の話を聞いたぜ」
「あそこのパン、すっごくおいしーんだよー」
「何の情報集めたのよあんたはっ!」
ともかく・・・・

探偵事務所の屋根裏部屋。
「ここってあんたの部屋?きったないわねー」
「うるさいなー。屋根上にはここからしかあがれないんだ」
ビリー達は数少ない手がかりから屋根上に捜索の舞台を移した。

屋根から屋根へ。
渡っていきながら機械メイドを探す。
「どこにいるんだ・・・」
「なかなか見つからないわねー」
「あにきー、あそこにこないだのひとたちいるよー」
「ふーん・・・なにー!!」
慌てて隠れる3人。こっそり様子を見てみる。
「あれは・・・ズィッヒェル!」
「それにジャンピングジョーとジェニー!」 


第22話「屋根上の怪 後編」

こっそりズィッヒェルとジャンプコンビ(たった今命名)の会話を聞き取るビリー達。

「お前達。機械メイドを探すのにいつまでかかっている。
あれについてある歯車式演算機能があれば装甲兵をさらに強くすることが出来るのだぞ!」
「はぁ・・・・」
「いいか、なんとしてでも見つけるのだぞ・・・」
そう言ってズィッヒェルはその場から消えた。
「・・・そうは言ってもねー・・・」
「みつかんねーもんはしょーがないよなー」
なんだかやる気のないジャンプコンビ。
そこへ、
「話は聞かせてもらったわ!機械メイドはあんた達には渡さない!!」
アリエスを先頭にビリー達が出てきた!
「げげっ!お前ら!こんな時に出てきやがって・・・
しゃーねー・・・カモーン!装甲犬、ロバート&アントニオ!!」
ジョーが口笛を吹くと突然2匹の犬が飛びだした。
ただの犬ではない。機械で出来た装甲犬だ!
「よっしゃあ!やっちまえ!!」
二体の装甲犬が襲いかかってきた!!
「うわっと!」
慌ててよけるビリー。どうやら犬と思ってなめてかかると痛い目にあう。
「えぇい!速攻でかたをつけてやる!!」
ビリーはおなじみのパチンコを連射しまくる!
「オッケー!後は任せて!」
そこでアリエスが思いっきり傘でぶん殴る!
これで一体の装甲犬を倒した!
「えいっ!」
もう一体もボブよってすでに倒されていた。
「あ・・・あら?やられちゃった・・・」
「どうすんのよジョー!」
「こうなったら・・・逃げる!!」
ジャンピングコンビは得意のジャンプで大慌てで逃げていった。
「あっ、待ちなさい!!」
「ほっとけよ。今は機械メイドを探そう」

屋根上の捜索を続けることしばし。
「あっ!あれは・・・」
一軒の屋根の上に人影が見えた。それは・・・
「ヴァージル!?なんでここに!!」
しかもヴァージルと向かい合うようにして座っていたのは探していた機械メイドであった。
メイド服を着てはいるが機械らしく体は鉄で出来ている。
「なんでヴァージルと一緒に・・・」
「それより、先生から預かった歯車を入れよう。これで収まるはずだから」
そういってビリーは機械メイドに歯車を取り付ける。
元に戻ったのか、機械メイドは立ち上がった。
「・・・大丈夫かい?」
ヴァージルが機械メイドに話しかける。
機械メイドは黙って首を縦にふって、そのまま帰っていった。
「ヴァージル。なんであんたがここにいるのよ」
「・・・彼女の中で何かが生まれようとしている・・・
心配になって追いかけていたんだ・・・」
「・・・・なんなのよそれ・・・」
ヴァージルの言ってることはさっぱり理解出来なかったものの、
どうにか機械メイドは見つかり、事件は解決した・・・ 


第23話「万博開催!」

かねてから準備されていた倫敦万国博覧会がついに開催された。
世界中から集まった展示が会場をにぎわせている。
「すごーい!いろんなものがあるー!」
「アリエス、はしゃいでるね・・・」
ビリーとアリエスもまた万博にやってきていた。
実はエヴァレットが万博の警備主任になったのでつきそいで来たのだ。

「広いわねー・・・植物園、水族館、恐竜展。さすがだわ・・・・」
「次は機械展示だね」
広い会場内を歩くことしばし。
「ここが機械展示場・・・すごい・・・」
「まぁ・・・確かに・・・」
大きな機械が所狭しといろんな所に置かれている。
冗談のような機械から本格的なものまで様々だ。
「あっ、あれこないだの機械メイドじゃない?」
「ほんとだ」
展示場の中央あたりの柵の中に機械メイドが立っていた。
「よっ」
軽く挨拶をかわすと機械メイドは黙ってお辞儀をしてくれた。
「すげー・・・よく出来てる・・・」

「さぁて、万博に来たならあれを見なきゃ」
「あれって?」
「あら知らないの?人工太陽よ!」
会場のエレベーターを使って上がっていった先にそれはあった。
「でっけぇ・・・・」
複雑な機械が集合して造られた人工太陽。常に光を放ち続けている。
「すごいわよねー。機械で太陽造っちゃうなんて。
蒸気の発展もここまで来たかって感じ」
「こんなもの誰が造ったんだか・・・・」

大体見て終わった二人は会場の広間で休憩していた。
「開催前から期待されてただけはあるわ。来てよかったー」
アリエスは満足そうだ。
「あれ・・・・」
その時ビリーが何かを発見した。
「う゛・・・ヴァージル!?」
なんと万博会場にヴァージルが来ていた。
「どうしたの?ヴァージルも万博見に来たの?」
「・・・気になることがあってね・・・調べてるんだ・・・・」
「え?それって・・・・」
ヴァージルは幽霊や精霊などの事件が専門だ。
彼が調べているとなったらその類しかない。
「まさか・・・何か出るの?」
「・・・・今はまだ姿を現さない・・・・
夜にもう一度来るよ・・・・」
そのままヴァージルは去っていった。

「何を調べてたのかしら・・・
よし、ビリー!あたし達も夜に来るわよ!」
「はいはい・・・」
断っても無駄というのがわかってるのか、ビリーはあっさり承諾した。 


第24話「愚者の女王」

夜。
「よーし・・・来たわよ・・・」
本当に夜の万博会場へやってきたビリーとアリエス。
「気を付けた方がいいよ・・・ヴァージルがいるってことはただごとじゃないからね」
「わかってるわよ・・・」
石像事件で本物の精霊を目の当たりにした印象は今でも残っている。
「さて・・・どこを探したらいいものか・・・」
「ヴァージルを探せばいいんじゃない?」
「なるほど」

会場内を歩き回ること数分。
「うーん・・・なかなか見つからないわねー」
ヴァージルも事件も発見出来ない。
「ちょっと疲れたし、休憩しようか」
というわけで二人は広間で休んでいた。

「二人とも気を付けろ!!」
「え?」
突然の叫び声にびくっとするビリー。
「きゃーーーー!なにこれー!!」
見るといつの間に現れたのか、広間中にスライムのようなものがあふれかえっていた!
「いやーーーー!!」
「くそっ!」
すかさずビリーがパチンコでスライムを撃退する。
「大丈夫か?」
「ヴァージル・・・」
叫び声の主、ヴァージルが駆け寄ってきた。
「よさないか、罪もない人間を傷付けるのは」
『うふふ・・・』
スライムが合体すると次第にそれは人の形になっていった。
「ぴ・・・ピエロ?」
それはピエロのような姿をした女性であった。
もっとも、宙に浮いてる時点で人間じゃないのはわかってるが。
『私はフールズクィーン・・・傷つけるなんて人聞き悪いわ。
ちょっとからかいに来ただけよ』
「な、なんで・・・」
『だっておかしいじゃない。人間なんてすぐに死んじゃうくせに
文明だ、発展だ、って・・・挙げ句にこんなものまで作っちゃって・・・
バカみたいじゃない?私はそういう者達をあざ笑う愚者の女王なの・・・』
「よくわかんない・・・」
アリエスにはクィーンの言ってる意味など理解出来なかった。
「とにかく君は元いた世界に帰るんだ」
『いやーよ。まだまだこれからよ』
そう言ってクィーンはいきなり攻撃してきた!
「わわっ!」
「くっ・・・仕方ない。精霊銃!」
ヴァージルが特殊な銃でクィーンを攻撃する。
「俺もやるぜ!」
ビリーもパチンコで応戦する!
「このこの!」
アリエスも負けじと傘で殴りまくる。
『いたた・・・やったわね!』
クィーンが強烈な全体攻撃を放ってきた!
「うわーっ!!」
「きゃーっ!」
「くっ・・・」
それぞれダメージを受けてしまう3人。
『ほほほ・・・人間なんて所詮こんなもの・・・』
「そうかな・・・」
ヴァージルが精霊銃を上に向けた。
「精霊召喚!」
呼び出された精霊がビリー達のダメージを癒していく。
「すごい・・・」
『あ・・・あなた精霊使い!?』
「さぁ・・・ね」
『ちょ、ちょっとー!?』
「精霊召喚!」
ドゴーン!!

ヴァージルの呼び出した精霊の力でクィーンは元の世界に帰された。
「なんとか勝ったけど・・・なんだったんだあいつは・・・」
「さぁ・・・でもあの人の言っていたことが正しかったのかどうか・・・
僕にはわからない・・・・」

「なんとかなったんだしいーんじゃない?さ、帰ろ!」
こうしてビリー達の不思議な夜は終わった。 


第25話「盗まれた人形 前編」

「ふわぁぁ・・・」
今日もまた屋根裏部屋で朝を迎えたビリー。
「ふぅ・・・」
「やぁ、おはよう」
早速事務所へと降りていくとエヴァレットが挨拶してくれた。
その時
「エヴァレットさん。お客様がお見えです」
「?通して」
しばらくすると正装をした中年男性が入ってきた。
「あなたは市議会議員の・・・」
「ええ、実は依頼があって来たのです」
「・・・話を伺いましょう」
「先日私の家に泥棒が入りまして、いくつかの金品と
娘の大切にしている人形が盗まれたのです。
金品の額はたいしたことなかったのでまだいいのですが、
人形を盗まれたおかげで娘が元気をなくしてしまいまして・・・」
「それで・・・人形を取り返すのですか?」
「いえ。同じ人形を探していただいてもかまいません。
とにかく娘をこのままにしておけなくて・・・」
「なるほど・・・しかし困りましたね、私はこれから万博の警備の仕事が・・・
そうだ!ビリー、やってみないかい?」
「えっ?俺ですか?」
「おぉ、この子がビリー君ですか、最近のご活躍聞いていますよ。是非ともお願いします」

「あら、ビリーどこ行くの?」
「ああ、アリエス。これから骨董屋に行くんだよ」
町中でばったり会ったアリエスに説明するビリー。
「ふーん、人形探しね・・・」
「うん、依頼人は骨董屋で人形を買ったらしいからそこで聞けばわかるかなって」
「わかったわ、あたしもついていく!」
「やっぱりね・・・」

骨董屋。
「ああ、あの人形かい?あれは世界に2つしかない特別な人形でね。
確かに1つはその人が買っていったよ」
骨董屋の主人は丁寧に説明してくれた。
「あと一つ誰が買ったか御存知ですか?」
「ああ・・・蒸気管理局に勤めるガストンって男が買っていったよ」
「じゃガストンさんに頼んでそれを譲ってもらいましょ」
「ちょっとまった。気を付けたほうがいい・・・ガストンは見た目は善良な市民だが
裏では結構悪いことやってるらしいからね・・・」
「・・・そうなんですか?」
主人の最後のセリフに不安を覚えながらも二人はガストンの元へと向かった。

蒸気管理局。
「君達かい?俺に用ってのは・・・」
早速ガストンと対面する二人。確かに見た感じいい人に見える。
「あの・・・実は・・・」
事の顛末を話し、人形を譲って欲しいと頼む。
「・・・わかった。人形は埠頭の倉庫にある。
そこに俺の知り合いがいるからこの手紙を渡して入れてもらってくれ」
「ほんと!?ありがとうございます!」
意外にあっさりオーケーがもらえて喜ぶビリーだった。

埠頭の倉庫前。
「なんか用かよ・・・」
やけに柄の悪い二人の男が倉庫前に立っていた。
「あの・・・ガストンさんから手紙を・・・」
「ん・・・どれどれ・・・」
男はしばし手紙を見つめる。
「わかった。中にあるから取ってきな」
「それじゃ・・・」
早速倉庫に入るビリーとアリエス。

「あれ?人形はどこにあるんだ?」
倉庫を見回すが人形は見つからない。その時!
ガチャッ
「え!?」
外から鍵を閉められた!
「ハッハッハー!ガストンの旦那の邪魔するからこうなるんだよ!
せいぜいそこで泣きわめいてな!!」
「しまった・・・閉じこめられた!?」 


第26話「盗まれた人形 後編」

「どうしよう・・・閉じこめられちゃった・・・」
不安な表情のアリエス。その時ビリーが口を開いた。
「ねぇ、アリエス。ここって前にも来たことあるよね?」
「?・・・・・あぁ、呪いの石像事件の時ね。それがどうしたのよ」
「あの時どうやって入ったか覚えてる?」
「・・・・・あっ!!」

その頃外ではガストンとチンピラ二人が話していた。
「馬鹿野郎!かぎつけられちまったじゃねーか!!」
「すいやせん、ガストンの旦那」
「いいか!あの人形の中には俺がエジプトで見つけた宝石を入れてあるんだ!
ばれねぇうちに国外に逃げるぞ!!」
「そうはいかないわよっ!!」
「なにっ!!」
いつの間にかビリーとアリエスがそこに立っていた。
以前中に入る時に通った通気口で今度は外に脱出したのだ。
「なるほど・・・人形を盗んだのは中に隠した宝石目当てだったんだな!」
「くそっ・・・中にいりゃいいものを、こうなりゃ生かしておけねぇ!!」
チンピラ二人が襲いかかってきた!
「それが・・・」
ビリーがパチンコを構える。
「どうしたってんだよ!!」
連続でパチンコを撃ちまくる。
装甲兵とも戦える特注パチンコ。今更チンピラなんて相手じゃない。
「いてっ!いててててて!!」
「じょっ・・・冗談じゃねー!!」
慌ててチンピラは逃げていった。
「こ、こら!お前達!」
バキッ!
「かはっ・・・」
ドサッ
すかさずアリエスが持っていた分厚い本の角でガストンを思いっきりぶん殴る。
たまらずガストンはその場に倒れた。
「やったわ・・・」
ちょっと得意げなアリエスであった。

しばらくして駆けつけた警官により、ガストンは逮捕された。
「お手柄だったね君達。ガストンは前から目をつけていたんだが証拠がなくてね。
あ、そうそう。君達が探していたのはこれかい?」
そう言って警官は一つの人形を差し出した。
「盗まれていた人形だよ。ほんとは証拠品として警察で預かるんだけど
持ち主に返してあげてくれ。証拠はもう十分にあるしね」
そこへ依頼人の議員とその娘とおぼしき女の子がやってきた。
「あたしのお人形!!」
人形をその手に握りしめ、喜ぶ女の子。
「ありがとうございます。娘も元気になってくれたようで・・・」
「よかったですね・・・」
事件が解決してほっとするビリー。
こうして波乱の人形探しは終わったのであった。


第27話「壁に記された想い」

ひさびさに探偵協会に行ってみたビリー達。
「あら、いらっしゃい。依頼が一つ来てるわよ、やってみる?」
「どんな依頼なんですか?」
「幽霊騒ぎよ」
「え・・・・」

ビリー達は早速依頼人と会ってみた。
「最近寝ると必ずメアリって女の子の声が聞こえてくるんだ。
ただ一言「かべ・・・」って言ってくるんだ。気になってさ・・・・」
「かべ・・・ねぇ」
幽霊事件もいくぶん慣れたがやはりビリー達には荷が重い。彼の力が必要だ。

「というわけなんだ・・・」
ヴァージルに事件の顛末を説明するビリー。
「・・・かべの一言だけではわかりづらいね。何かそれらしいものはないのかな・・・」
「うーん・・・・」

というわけで問題の壁を探してみることにする。
「壁に何の思い入れがあるってんだ?」
「きっと特別な壁なのよ。それらしいものがないか聞き込みよ」
「おー」

聞き込み中・・・

「どうだった?」
「ダメ、なんにもわかんない」
「俺も・・・」
「あのねー。こーじげんばのかべこわされるんだって」
「そっか・・・・・えっ!?」

早速ヴァージルを連れて問題の壁に向かう。
「ここは・・・たくさんの想いがつまってる・・・」
「でしょうね・・・聞いた話じゃここの壁は恋人達がお互いの名前を書き合う場所なんだって」
「あったよ!メアリって!相手はオーウェルって書いてる!!」
「きっとここの壁を壊してほしくないのね・・・どうしたらいいのかしら・・・」
そこへ工事の作業員達がやってきた。
「こらこら、君達、これから作業するからどいてどいて」
「ま、待って!この壁を壊さないで!」
アリエスが必死で食い下がる。
「メアリさんも壊さないでって言ってるの!お願い!」
「メアリ・・・」
一瞬顔色を変えた作業員。次の瞬間。
「お前ら・・・名前の部分は壊さずに掘り出せ。慎重にやれよ」

「よかった・・・話のわかる人で・・・」
「うん。これでメアリって人も喜んでくれるよね」
そこへ一人の作業員がやってきた。
「よく頑張ったね。実は俺もこの壁壊すの気が進まなかったんだよね。
ところでさっきメアリって・・・」
「はい、依頼人の人が聞いた名前です」
「・・・実は俺オーウェル主任と幼なじみなんだけどさ。
もう一人幼なじみでメアリって子がいたんだよ・・・
5年前に死んでしまったけどね・・・」
「オーウェル主任!?それじゃ・・・・」

それは壁に記された想い・・・・ 


第28話「ヤングゴースト再び」

「警備?」
「うん。長年行方不明だった天体運行観測器がアメリカで発見されてね。
万博に期間限定で展示するため運ばれてきたんだ。
それを警備することになったんだ」
そう言うとエヴァレットは一枚の紙を差し出した。
「これは!ヤングゴーストからの予告状!?」
「そう、どうやら彼女がその観測器を狙ってるらしいんだ。
どうだい、ビリーも来るかい?」
「はい!!」

というわけで埠頭の倉庫へとやってきた、ビリーとアリエス。
倉庫にはたくさんの警備員が並んでいる。
「なんでアリエスまで来るの・・・」
「当然でしょ!あたしが機械を守ってみせるわ!」
やる気満々のアリエス。そこへエヴァレットがやってきた。
「そういえば今回はアメリカから来た警備員も一緒なんだけど・・・」
と、その時
「ハーイ!お待たせしたネー!ミンナごくろうさまデース!」
大きな声をあげてやってきたのは、
「お・・・女の人?」
「女性と思って甘くみちゃいけないよ。彼女はホルスタインさん。
アメリカの優秀なガードマンさ」
「へぇぇぇ・・・」
「ドウモー、ホルスタインデース。よろしくネー!」
「よ、よろしく・・・」
警備員とは思えないほど明るい、陽気な印象。
そして、それ以上に強烈なインパクトを与えるもの。
それは彼女の「胸」。大きい・・・・
他の男性警備員の注意が集中してるのは言うまでもない。

「それじゃ僕達は外を警備してるよ。君達は中を頼む」
というエヴァレットの指示を受けて、ビリー、アリエス、ホルスタインは倉庫の中へと入った。
ここに例の観測器が保管されている。
「これは明日になったら万博会場に移されるネ。
だからたぶん今日中に来ると思うネ」
と、ホルスタインが言ったその時、
「ご名答ー!」
「その声は・・・ヤングゴースト!」
天井を突き破り、ヤングゴーストが現れた!
「そいつは頂いていくよ!」
と、素早く観測器に近付いたその時!
「そうはいかないネ!」
すかさずホルスタインがガードする!
「どきなさいよ!」
ヤングゴーストが攻撃する!
「あまいネッ!!」
が、軽くかわしてすかさず反撃!
「うぐっ!!」
ホルスタインの攻撃をくらって少し後ずさるヤングゴースト。
「アナタまだまだネー。たいした腕と胸じゃないネー!」
グサッ!
「き・・・・気にしてるのに・・・・」
なぜだか思いっきりショックを受けている。
「お・・・・覚えてなさい!」
そのままヤングゴーストは何も盗まず去っていった。
「すげぇ・・・強い」
「アメリカの優秀な警備員ってのは伊達じゃないのね・・・」
ホルスタインの活躍で全然出る幕がなくって呆然とするビリーとアリエスだった・・・。

しばらくしてエヴァレットがやってきた。
「やぁ、さっきヤングゴーストが逃げていく姿が見えたよ。
さすがだね。明日は万博会場で警備だ。頑張ってくれよ」
「はい!」 


第29話「時計技師ホイヘンス」

翌日。
万博会場にやってきたビリーとアリエス。
観測器の警備をするため展示場にやってきたが・・・・
立っていたのは数人の警備員。
「あれ?ホルスタインさんは?」
「あぁ、大事な帽子をなくしたって必死で探してる。だから昼は我々が警備してるんだ」
「おいおい・・・」
「だから警備は今はいいよ。夜にもう一度来てくれ」
「はーい」
というわけでビリー達は夜の警備となった。

「相変わらずすごい人数ねー」
ビリーとアリエスは広間で休憩をとっていた。
以前フールズクィーンと戦った場所とは思えないほどにぎやかだ。
「あれは私のご先祖の発明であります、チクタク!!」
「ん?」
どこからかおかしなしゃべり声が聞こえてきた。
「まさに芸術であります。是非とも手に入れたいであります、チクタク!!」
声の主は片方の目にレンズのようなものを取り付けた、いかにも科学者らしい格好をした男だ。
「やぁ、ビリー、アリエスくん。どうだい調子は?」
「あっ、先生。あの人・・・誰ですか?」
ちょうどエヴァレットが通りがかったので聞いてみる。
「あの人はホイヘンス。時計技師だよ。かなりの技術者だと言われている」
「へー・・・・」
ちらっとホイヘンスの方を見つめる。
「いずれ私の作品をすばらしさを世に知らせるであります、チクタク!!」
「・・・・先生、あのしゃべり方は・・・」
「あれは単に彼の癖」
「癖ですか・・・」

そして・・・夜になった。
「さぁて、警備警備」
万博会場へと再びやってきたビリーとアリエス。
「さすがに夜は静かだなぁ・・・」
そう言いながら会場へと足を踏み入れたその時!
「これはっ・・・・!!」
あちこちに警備員が倒れている!!
「だ、大丈夫ですか!?しっかりしてください!!」
呼びかけるが目を覚まさない。命に別状はないみたいだが・・・
「まさか・・・あの観測器に何か!?」
大急ぎで機械展示場へと向かう!!

「早く運び出すであります、チクタク」
「わかってるわよ・・・でもこれ重い・・・・」
「ホイヘンス、わかっているな。我ら怪人結社に協力するのだ!!」
「ぬかりはないであります、チクタク」
例の観測器の周りに3人。ヤングゴースト、ホイヘンス、そしてズィッヒェル!!
「まてーーーっ!!」
「そいつは渡さないわよ!!」
ビリーとアリエスがその場に駆けつけた!
「ありゃりゃ、邪魔が入ったであります、チクタク!」
「またあんた達なの!?」
「ふん・・・」
立ちはだかるようにズィッヒェルが前に出た。
「貴様らか・・・いつもいつも邪魔をしているというのは・・・
ちょうどいい、この場で始末してやる!!」