<二日目-2002.5.4
(3)>
大池の前で、連れと「やっぱり池の中から脚が逆さまに二本でていないといけないんじゃないか?」「いや、『犬神家の一族』は岡山の事件ではないので、そこまでやったら邪道である」などと話していると、どこから現れたのか、一人の男が我々の横に立ち、声をかけてきたのであった。 |
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「あの〜、すいません。…この辺に廃寺跡(陣屋跡だったか?…よく聞き取れていなかった)というのがあるらしいんですけど、さっきからずっと歩いてみているんですけど、よくわからなくって…知りませんか?」
知りませんかって言われても、こちらも通りがかりの旅行者である。そう言えば所々にミステリー遊歩道の案内には載ってなかった白い「〜跡」といった標識を見かけたような気がしたが、あまり気にとめてなかったからなぁ…。 男の人にその旨伝えると、「そうですか…。どうも」とだけ言い残してひとり脇目も振らずに我々が来た『疎開先宅』の方へスタスタと歩いて行ってしまう。 …おィおィ、場所探しているにしては足取り軽快に歩き過ぎじゃないの?どうもおかしい。おかしいと言えば男の登場の仕方が気になってくる。あの不意の現れ方は、あるいは池の横に駐車してあった車の中から出てきたのではないかと思われるふしがあるのだが、だとすると、あの軽快な歩調で歩いて行ってしまうのは不自然ではないか?それに車は岡山ナンバー。男は流暢な標準語で話していたではないか。 …ううむ。謎だらけだ。一体何者だったのだ?あの男は? |
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あ、もしかしたらこの男も実は三本指だったかして真備町が用意してくれた観光客向けキャラだったのだろうか?だとしたら完全に見落としてた!せめて「水を一杯…」とかメモを渡してくれるとかしてくれれば判り易かったのに…。
第二の事件とはこれだけの話しである。 謎に包まれたまま大池の回りを歩きだすと、目の前に突然現れた一枚の警告案内(!)。…「発砲危険」って。こんな町中で発砲することなんかあるの?ここらじゃ? 看板に視線を奪われてしまっているわれわれの背後の丘を多治見要蔵 が頭に懐中電灯を付けて駆け抜けて行ったような気がしたのは気のせいだったのだろうか? いや、それだけではない。発砲されてしまう恐怖にすくみ上がりながらも再び歩き始めて『ふるさと歴史館』へ向かっていくと、突然横の薮の中から一人の少女が飛び出してきて、我々に気付くとハッとして、そのまま逃げ出すように駆け出して去って行ってしまったのだ。 少女の行動からして何やら怪しい。いくら「空蝉処女」のモデル地とは言え、これとどう結びつけて考えたらいいというのだ? 途方に暮れながら、『ふるさと歴史館』に来てみると…。ほらね。やっぱり。何かあると思ったとおりだ。今日は土曜日…しまった〜〜!ここの開館は日曜と水曜だけだった〜〜。…と、いうわけで、ここも敢え無く見学できず。 ゴールデンウィークの土曜くらい開館してくれてもいいのに…。と、仕方なく外観とガラス越しに見える範囲だけ見学していると、どこからともなくクスクスと笑う声。 ギョッとして周囲を見回すと、小学生くらいの女の子が二人、楽し気に笑いながら駆け抜けて行く。 |
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これで謎の少女は三人になった!!まさか 月・雪・花の三姉妹じゃないだろうなっ!!少女の後を追っていくと…なんてことはない。駐車場横のスペースで缶蹴りをして遊んでいた地元の子供たち…というだけだった。 さすがにここまで来るとそろ そろこっちも一杯一杯である。ネタ考えることすら面倒臭くなってきた。 遊歩道は整備されていたが、『ふるさと歴史館』には横溝グッズがお土産用として発売されるようになったという話しも聞いてないし、もうここはいいでしょう。 ボチボチ時間も時間だし、車に戻って次に向かおうか…。 一柳家推定地を横目に駅方面へ向かって歩いていると、途中の民家の庭先で、まるで歩き方の練習でもしているのか、庭の中をぐるぐると歩き廻っていた『腰の折れ曲がった老婆』の姿があったのを見逃すことはなかった。 |
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きっとあの『老婆役』の人も出演時間であったなら、きっと我々の横を通り過ぎる瞬間にあの名台詞を聞かせてくれていたに違い無い。 注)繰り返しますが、ここにある文は私の主観であり、実際に真備町でこのような“住民一体型サービス”を実施しているかは確かなところではありません。 |