<二日目-2002.5.4 (2)

 2号線を東に走り、一路真備町へ。
 途中でやっと遅い朝食を取り(瀬戸内海の魚を味わう夢よサヨウナラ〜。…どうも今回の旅は食事に関してうまくいかない)、玉島から左に折れてやっとのこと念願の真備町である。
 
川辺宿駅に辿り着くと、いきなりの感激の対面である。

 この旅行の前にいろいろと、この真備町の『名探偵金田一耕助 ミステリー遊歩道』に関しては、名立たる横溝正史/金田一耕助ファンの方々のHPなどのオフレポなどで目にし、あるいは真備町のHPではこの1月から3月にかけて整備をしていたと言う告知までは知っていたのだが、果たしてどんな風になっているのだろう…と思っていたら高架線になった駅のホームから降りて来る階段のすぐ目の前にこの看板である。
 おぉっ!!素晴らしいっ〜! 丁寧な作りじゃないか!
 更に、何気に1階待ち合い室のベンチには、この看板の縮小印刷されたパンフレットまで無料で置いてくれているではないか!…ここまで力をいれていたとは。
 正直、横溝ファンとまでは言えない連れにしたところでこれには「凄いねェ〜」と感心したくらいである。
 しかし、まだこのあと数々の驚きが待ち受けているであろうとは、この時点では知りようもないまま遊歩道を歩き始めたのであった。

 金田一耕助にも横溝正史にも興味のない人にとっては、何の変哲もない普通の道でしかない。

 ところが、下津井以来、すっかり頭の中がグズグズになってしまっている者にとっては、遊歩道脇の用水路に浮かんでいるビニールボールも『毬』としか見えないし、道路に埋められたコース案内に描かれた靴跡はどれも『軍靴の跡』なのだ!!
 放り捨てられているタバコの吸い殻すら英語の辞書で播かれているのではないかと拾ってみたくなってしまう。
 横溝ファンなら気になってしまうちょっとした小道具の数々…。
 しかし、こんな小道具の配置くらいで喜んでいたのでは、まだまだ甘かったのだ!…なんといっても今いる所は「ミステリー遊歩道」だったのだ!
  遊歩道を半分ほど過ぎた辺りであろうか、やはり道横の用水路に用水路のゴミを掻き出すためのものらしい機械が設置してあった。その横をトボトボと歩いて通り過ぎようとした時である、一人の一見労務者風のオジサンが前方より自転車でゆったりと走ってきたなぁ…思っていると、そのオジサンが我々の目の前で自転車を止め、こう声をかけてきたのであった。
「昨日ここで事件があったの知ってるか?」
!? じ、事件!??

 いや、『事件』もさることながら、普通に談笑しながら歩いてる無警戒の旅行者に、突然地元の人としか思えないオジサンがこんなことを話しかけるというシチェーションの方にも驚かされてしまった。全く、片岡千恵蔵版の演出並ではないか!
 事件というのは、そのオジサンが「いやぁ、パトカーやら救急車とかが来てな…」という台詞から語って聞かせたところではこういうことらしい。
 用水路に付けられたゴミ汲み上げ機(?)の汲み上げられたゴミを集めておく部分には囲いがしてあるのだが、機械本体には囲いがつけられておらず、どうやら子供がそこで遊んでいて、あやまって怪我をしたらしいのである。・・・・・・・・・・・。なぁ〜んだ。
 否、子供の怪我とはいえ、「なぁ〜んだ」とは不謹慎か。
 でも、普通そういうのを『事件』だなんて言うか? この遊歩道でいきなり『事件』だなんて言われたら、普通もっとトンでもない『事件』を想像しても仕方ないだろう…。そう言えば、あまりにも唐突なことだったので、『事件』現場の写真を取るのも忘れてしまった…。
 ともあれ、いきなりの事件報告にドギマギしながらも、親切な(!)オジサンと別れを告げ、またしても遊歩道を歩き進めたのであった。
 別れ際、オジサンの洩らした「こんなキンダイチ的なモンつくったってキチンと管理してなきゃしょうがない…」という言葉を耳にし、「きっとこれは横溝ファンの観光客へのアピール演出に違いない」と確信したのだが、それともあれは「近代的」と言っていたのだろうか…でも、今時普通の機械を指して『近代的なモン』なんて言葉使いますかねェ…?それに、演出でないとしたら、一体あのオジサンは何だったというのだろうか?…真相は果たして…?。う〜む。まさしく「ミステリー遊歩道」! 恐るべし真備町!

 『事件』の興奮も覚めやらぬまま、案内地図の順路に沿って再び火の見櫓の『釣り鐘』やらの小道具を楽しみつつ(疎開先宅裏にある寺には普通の釣り鐘が…。おぉ!歩く釣り鐘ネタまで!!)『役場跡』『濃茶の尼の祠』『疎開先宅』などを見つつ、のどかな町並みのなかをゆっくりと歩いて廻る。
 『疎開先宅』は雑誌「宝石」に掲載されていた“疎開時代の写真”で見たイメージより狭く感じたのだが、これは庭の手入れの差なんだろうな…。
 『千光寺』は、連れを背負って階段登るのが嫌だったので行かず、大池へ。
 そしてまた第二の『事件』と遭遇するのである。
 
 
注)以上の文はあくまでも私の主観であり、実際に真備町でこのような“住民一体型サービス”を実施しているかは確かなところではありません。

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