<二日目-2002.5.4 (4)

 車に戻り、真備町を後にすると、総社から岡山自動車道に乗り、山陽自動車道を東に一路備前へ。
 総社からコースを北にとり、高梁市・成羽町・新見市といったところを廻ることも考えたのだが、今回の岡山旅行でどこよりも一番に行きたかったのは、吉永町…それも、『悪魔の手毬唄』の鬼首村の想定されている辺りであるところの、兵庫県との境に立ってみたかったこともあって、北コースへ向かってしまうと鬼首村(実際にはないですけどね)に入るのが逢間が時を遥かに過ぎてしまい、夜間撮影になってしまう…との懸念から、今回は北を見送ることにしたのだ。
 和気I.Cを降り吉永町入りしてもよかったのだが、ここはあえて備前から一度兵庫に出て、小説中に出てくる『仙人峠』とどことなくネーミングが似ているといくつかの“鬼首村探索案内”でも見かける『山伏峠』を越えて吉永町入りをするのだ!
 生憎、山陽自動車道で岡山市を過ぎたあたりからこれまでなんとかもってくれていた雨がポツリポツリと落ち始めてきたのだが、ま、これくらいならなんとかなるでしょ。
 はやる気持ちとアクセルを押さえつつ、上郡町から山道を掛け登っていくと、そこには山伏峠が…。

 …ここが山伏峠なのか?
 
“山伏峠”と表示された道標なりは何もない。県境であることは間違い無く、青木功ゴルフコースの横を上がってきたのだから、間違ってはいないはずなのだが…。あるいは、この道からはずれたところに本当の“山伏峠”はあるのかもしれない。しかし、そぼ降る雨の中、山の中をウロウロするのも辛かったので、「ま、こんなモンでしょう、現実は…」と一人納得して車中に戻る。

 山裾一面の葡萄畑も見当たらなかったけど、いいのだ。ここに来れたことこそが自分にとって必要だったのだから…。
 吉永町中心部へ降りて行きつつ、途中の民家の風景を堪能し、鬼首村イメージの想像ロケハンを楽しむ。…雨が降っていなければ、もう少しゆっくりと歩き廻ってみたかったところだが、雨の中、怪し気人物が歩き廻っていても周辺住民の方々の不審をかってしまうかもしれないので車中より楽しむだけにする。

 野性の藤の花なのだろうか?薄い紫色の花が山の木々の所々に簪の飾りのように垂れ下がっている様子なども楽しみながら緩やかな山道を降りて行くと、町のHPで案内もあった『八塔寺ふるさと村』への道路案内があったので、“峠”の風景に今一つ満足しきれていなかったこともあった為、急遽同じ県境でも上郡町との境ではなく、上月町方面へ抜ける方の峠も見ておこうか…という気になり、もう一度山を登ることにする。
 さすがに道路は舗装されていたものの、個人的感覚ではこちらの“峠”の方が、イイ感じかもしれない。ここなら人力車に乗ってやってくるのにも良さそうな感じしませんかね?
 
 この“峠”にある程度満足してしまうと、そこそこ疲れも感じ始めてきた。助手席の連れもさすがに真備町を出て以来、元々それほど口数の多い人ではないもののメッキリ無口になってしまっている。

 今回の岡山訪問はこの辺で充分満足もできたことだし、昨日ついに入ることができなかった“温泉”にでもちょっと浸かって帰ろうか…ということにする。連れがいやに湯郷温泉を気に入っていたので、英田町から美作町を通って湯郷温泉へ。
 湯郷温泉で 湯郷鷺温泉館という入浴施設で一息いれる。混んではいたが、昨日の無念さも少しは晴らせたような気もする。
 折角岡山県に来たのだから、記念に岡山県の本屋さんで横溝正史の本でも一冊買って久し振りに読んでみようかな…などと連れが泣かせることを言うので、近くの本屋に立ち寄り、連れが「本陣殺人事件」を購入するのをニヤニヤしながらも、つられて自分もこれまで購入躊躇していた『毬(!)』版の文庫を買ってしまう。やれやれ…文庫が700円もするなんて…。
 さて、いよいよ岡山県ともお別れである。時間の関係で、ほとんど“行っただけ”という旅であった上、何カ所かは行けずに残念な思いもあるが、概ね満足である。
 中国自動車道を大阪方面に向かい、某所にて連れと別れを告げる。お疲れさま〜。

 さ、あとはひたすら関東へ帰るのみである…はずなのだが、気紛れなアドヴェンチュラーでもある者としては、この後少し大阪界隈を徘徊し、更にもうひとつの横溝聖地、信州諏訪を通り抜けて某所へと向かうという
、とんでもない行動をとるのであるりますが、それはタイトルの岡山奇行とはあまり関係ないことでもあるので、この旅行記はこれにて「終幕」とさせていただきたく思います。お付き合いありがとうございました。

 


◆この旅行にあたり勉強させていただいたHPなど一覧◆

(順不同・敬称略)

横溝World http://www7.ocn.ne.jp/~yokomizo/

金田一耕助博物館 http://www.yokomizo.to/

金田一耕助の庭(幻想ミステリ博物館より) http://www1.odn.ne.jp/cil00110/kindaiti/kindaitihome.htm

横溝正史エンサイクロペディア http://member.nifty.ne.jp/jiichi_kakeya/ys_pedia/ys_pedia_index.html

 

晴れの国おかやまへようこそ − 岡山県 − http://www.pref.okayama.jp/

ようこそ横溝正史ワールドへ(MOMOちゃんのおかやま観光すとーりーより) http://www.optic.or.jp/MOMO/plan/E002/E002.html

真備町ホームページ http://www.town.mabi.okayama.jp/

 

『金田一さんの岡山』 かもよしひさ プレジデント社刊 名探偵読本−8 金田一耕助 より

 

ほか、数多くのHPや書籍などでいろいろと教えを乞うことが出来ましたお蔭で、大変楽しい旅行をすることができました。
改めましてここに心から限りない感謝を申し上げたいと思います。【襟裳屋】