☆☆☆うちゅーじんの地球探検記☆☆☆

<だいじゅうよんかい=さいしゅうかい>



 交通安全カルタでの激闘は過酷を極めた。
 僕もケロッピ博士も長期戦になると思い、お互いお泊りも可能な ように歯ブラシを購入した。そして、ジーンズメイトで以前ジーン ズを買うとついてきた1個のマグカップに二人の歯ブラシは置かれた。
 僕の歯ブラシは水色。みずみずしい僕にぴったりだ。
 ケロッピ博士の歯ブラシはショッキングピンク!ケロッピ博士の 優雅な趣味の一面を僕は垣間見た心境だ。
 或いはケロッピ博士はかつてはピンクパンサーその人だったのか もしれない。
 そしてその頃の僕はプエルトリコの大統領だった頃かもしれない。 ・・・はずがない。

 戦いは・・・やはり1日でカルタの決着はつかなかった。深夜に戦 っても残業手当が出る訳でもない。労働基準法は僕らを守ってくれる とは限らないのだ。僕は一時休戦を申し出た。
 ケロッピ博士は快諾してくれた。
 僕はうろたえた。物事がうまく行き過ぎている。うまい話には訳が あるはずだ。

「ケロッピ博士の謀略は一体何ナノダ・・・?」
と言う言葉を、僕は僕の中だけのたった一人のかけがえのない僕の為 に僕の心のカルタに1枚追加した。

 ケロッピ博士はそんな僕の動揺など知ってか知らずかメイク落とし に夢中だ。
「ふんふふーん♪きゃぴきゃぴ」
ケロッピ博士は何だか上機嫌だ。メイクを落とすと、ケロッピ博士は 「ふう、化粧が落ちた分、体重が減ったぞ☆」
などとぬかしやがった。
 僕の堪忍袋の緒が突然、切れた。
「あったまきた!もう外務大臣なんかやめてやる!後で泣いて頼んで、 も、むぅだぁ」
訳もわからず、僕は怒りながら北の地へと向かった。
 しかし、僕の中のもう一人の僕は怒れる僕に
『落ち着け』
と叫んだ。
「なんだとー!あったまきた!でも、仕方ないから落ち着く」
 僕は意外と素直だった。まだまだやわらか頭だったのだ。

 それから僕は引き返すことにした。
 ケロッピ博士、まだ待っててくれるだろうか。
 幸せの黄色いハンカチはそこにあるのだろうか。

 僕は走った。そして、疲れて休んで、家に一旦帰って留守電を聞いた。 すると驚くべきメッセージが入っていたのだ。
『もしもし、ケロです。うちゅーじん君。あの勝負、君の勝ちだ』
 それは紛れもなくケロッピ博士の声だった。僕は耳を澄ました。
『君は逃げた。しかし、地球ではこんなことわざがある』
 ケロッピ博士は一呼吸間を置いた。
『逃げるが勝ち。そう、君はあの勝負を続けていたら無限の不毛な時間を 過ごすことになった。と・お・も・わ・れ・る。逃げることで君は大切な 何かを失わずに済んだのだ。それからな、・・・まあいいや、眠い』
 メッセージはそこまでだった。
 僕はしかし、それでわかった。そして胴上げをした。上げたのは自分の 胴体だ。

★エピローグ

 僕は犬を飼うことにした。柴犬だ。名前は「メヌエット亜流」。元服し た暁には名前を「徳川埋蔵金発掘丸」と替えてあげたい。
 この犬はとっても可愛い犬と社交辞令サークルではもっぱらの評判だ。
 あの時、ケロッピ博士が言いたかったけど眠くて言うのをやめたセリフ、 それは
「犬を飼って動物自慢をする方がカルタ大会に勝つより意味がある」
と言うことに違いない。
 だってこの地球[ほし]には犬が居るからだ。猫も居るが猫の手は忙しい 地球人が借りることもあるらしいことを僕は独自の情報網で掴んでいる。

 僕はこう見えても地球での国語のテストで好成績を収めている三嶋君が 頭の上に鳥のフンを落とされたのに気付かず国語のテストを受けたことが あるのを知ってる程、国語と言うものに精通しているのだ。

 この犬に僕は僕のできうる限りの情熱をかけてみたいと思う。
 犬がブルドッグソースになるその日まで。

(おわり)


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