☆☆☆うちゅーじんの地球探検記☆☆☆

<だいななかい>



 ドアの向こうは雪国だった。
 そんなわけないのだった。ごめんね、カワバタくん。
 さあ、僕は台所へ急ぐ。
 こんなときこそこれだ。
 『牛歩戦術ver2』!
 アパートに着くまでに使った牛歩より進歩した代物 である。
 何しろすり足で歩く。腰を落とす。
 ちょっとやそっとではヘーシンクや山下泰裕なんか に投げられないのである。
 いつかは黒帯が欲しい。
 僕は酒気帯びでUFOを操縦したことはあるが黒帯は まだないのである。

 そんなこんなでガスコンロの前に。
 やかんは煮えたぎっている。
 ガスはまんまとついていた。
 やかんは僕の心に問い掛けてくる。

"よお、こっちの生活には慣れたか?"

 僕は心で答える。
"なれたなれた、なれーたーになれーたー。"

"そうか、よかったな。まあこれからもがんばれや"

 地球のこのやかんはなかなかの好青年だった。
 正確にはやかんは錆びていていかにもちょっとおっ さん入っている風だったがそこはそれ、僕なりに気を 使って青年とみなしてあげることにした。

 さて、行くか。
 三角巾を頭に装着し、僕は部屋を出た。

 30分後、完璧主義の僕がガスを消し忘れに戻ろうとは このとき、お釈迦様でも気づかなかったことだろう。

(つづく)


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