〜雫〜


あらすじ

 毎日のつまらない授業を漫然と受けながら、僕は考える。この下らない現実世界を壊したい。どいつもこいつもぶち壊してやりたい。そんなある日、クラスメイトの少女が、授業中突如立ち上がり、卑猥な言葉を叫びながら、自分の顔をかきむしるという事件が起こった。顔面血まみれで笑いながら運ばれていった彼女は、生徒会副会長というきわめて真面目な少女だった為に誰もが驚いていたが、僕は羨ましいと思っていた。
 良いなあ…このつまらない世界を抜けて、彼女は向こうの世界へ行けたのだ……。
 そう思っていた矢先、僕はおじでありこの学校の教師である長瀬に屋上へ呼び出され、この事件の真相をそれとなく探るよう依頼される。そして、渋々承諾した僕の前に現れたのが、学年一の美少女でありながら、奇怪な言動が目立つ月島瑠璃子だった。「月島さん? ここで何をしているの?」「君を待っていたんだよ」「いつから?」「半年前から。ねえ、長瀬くん」「何?」「電波、感じてる?」


 リーフサウンドノベル3部作の記念すべき幕開けは、この異色作『雫』です。エロゲーとしては余りに革新的なテーマ『電波』という精神世界をモチーフにして描かれる狂気のエロスは、やはり賛否両論あったようで、それでも尚『リーフという会社がタダ者ではない』というインパクトを与えるには充分すぎるほどでした。ストーリーは上記の通り、おじに頼まれた主人公がこの事件を捜査するべく深夜の学校に潜入するのですが、3人の女の子の内誰を相棒に選ぶかでシナリオが変わります。尚、やはりオススメはメインヒロインである所の電波少女・月島瑠璃子シナリオかと存じます。短いあらすじなので紹介してしまうとネタバレとなる事必至なのですが、電波を発する事の出来る力を持つ彼女の悲劇、そして余りに哀しい最期はやはり必見でしょう。
 実はエロシーンがそう多くなく、後半になって忘れた頃やっと出て来るといった有り様ですし、ヒロインも3人とボリュームも食い足りない印象を受けますが、短いながらも全体的に電波が漂う枯れ果てたシナリオ(誉め言葉)はやはり暗い物好きにはこたえられない仕様となっております。それほど時間も取らず、サクッと『電波世界』に浸ることの出来る手軽な暗黒ファンタジー、ちょっと疲れた時などに如何でしょうか?