〜不確定世界の探偵紳士〜


あらすじ

  俺の名前は悪行相馬(あぎょうそうま)。職業は私立探偵だ。と言っても素行調査や浮気調査でメシを食ってる探偵じゃねえ。国際探偵機構(アイドラー)内で、世界に30人しか居ないと認定されているAランクのディテクティブ(探偵)だ。だが好きでランクなんぞ貰ったんじゃない。何せ俺はそういう星の下に生まれたのか、厄介ごとが向こうから大挙して飛び掛かって来る身上で、身にかかる火の粉を払っているウチに、協会が勝手にAランクを付けたってだけだ。お陰で難物な事件ばかり持ち込まれ、ますます災難が続きやがる。まったく迷惑な話だぜ。おっと、電話だ。こんな朝早くから鳴り出すなんて、またロクでもない事件に決まってる。鬱陶しい、誰がなんと言おうと断ってやるからな……。


 と、道を歩いてもコーヒーを飲んでいても災難が降って沸く主人公・悪行探偵を操って事件を解決していく、謎解きミステリー物の御紹介です。舞台は横浜っぽい港町(行った事無いんで分かりませんが)で、そこに次から次へと事件が重なり、主人公の元へと解決するよう依頼される形式で話は進みます。しかし主人公がAランク探偵という御大層な肩書きを持っているわりに、捜査の基本は足で稼ぐという松本清張刑事系の地味かつ地道な努力を要するのがチト辛い所。ですが特筆すべきはこの主人公、1ヶ月ぐらい一睡もしなくても大変元気ハツラツなところで、もしやこれがAランクの実力なのでしょうか?
 さて内容はミステリー、となると肝心の事件の方はと言いますと、アイドラー所属Bランク探偵殺害事件、郊外の大富豪殺害事件、カップル失踪事件、幽霊事件他諸々……と怪しさ&歯ごたえ満点の数多い謎は、ミステリ好きの私にはこたえられない楽しさ。実はストーリー上には、さりげなくいくつか大きなヒントが置かれており、謎が解けた瞬間『ああ、あそこでそう言えば!』と推理小説好きを喜ばせるツボの配置もぬかりありません。その上周囲のキャラクターも魅力的かつ個性的な連中ばかりで、各々の事件を盛り上げるのに非常に役立っています。
 ところでこのゲームの素敵に無敵なところは、エロゲーですので当然要として出てくるギャルの皆様なのですが、コレがまた全員すこぶるイイ感じなのです(メイドロボット除く)。どこらへんがポイント高いかと申しますと、揃いも揃って大人系の美人ばかりで、少女漫画も真っ青の昨今流行の目デカロリ顔のアニメ娘など欠片も出てきません。しかもこのセクシー美女軍団、何と全員主人公に嘘を付いているという所も魅力のひとつでしょう。つまり皆さん、自分の目標達成の為に凄腕敏腕の主人公を利用したい、それにはこのナイスボディで釣ってやろうじゃないの、と、本当の目的を隠して色仕掛けを挑んでくるという、正に総峰富士子状態で迫って来るのです! この辺りの彼女達の狡猾さや腹黒さは実に爽快で、犯られるだけオンナばっかのエロゲーに比べれば遥かにセクシー度200%増だと思います。これら油断ならない美女達との、暴き暴かれ駆け引きも必見だと申し上げておきましょう。その上エロシーンのグラフィックも安易にモザイクを使用せず、上手い具合に角度やら目線やらを調整して見えそで見えないギリギリ感を演出し、『恥ずかしい所なんぞありゃしないぜ! 全部見せてやろうじゃねえか!』とばかりにどこもかしこもフルオープンされている昨今、薄れてきた真のエロを追求しているかのようで、その前向きな姿勢に激しくエールを送りたい次第であります。
 それはともかく、そうこうしているウチに少しずつ明らかになっていく謎を辿って行くと、一本につながる大犯罪へと突き当たり、公安の特別部隊まで乱入し、クライマックスに向けますます我らが探偵が絶好調に大活躍と相成るわけです。潜入、銃撃、格闘、決闘と、息つく間もない、めくるめくピカレスクハードボイルドな展開は、無条件でハラハラ必至です!
 恐ろしく強い上に頭も切れて、おまけに美男子で女にまでモテモテなどという、正にフィクション世界にしか存在しない名探偵、悪行の七面六臂の大活劇は、昔懐かし東映映画のようで、これぞエンターティメント(娯楽)作品の見本と言えるでしょう。
 ちなみにこのゲームは、あの名作『EVE』シリーズや『この世の果てで恋を唄う少女−Yu-no』を作られた剣乃ゆきひろこと菅野ゆきひろ氏の、待ちに待たれた作品だったのでした。かつてのこれら傑作をプレイされていた方も、特にオススメです。
 純粋にミステリーを楽しめる上にアクションもてんこもりという美味しい仕様に、満足満腹間違いのない事保証付き。皆様、少々つまらない日常から抜け出したいと思った時には、悪行探偵の活躍に付き合って見てはどうでしょうか?