〜炎多留〜


あらすじ

 主人公は一人暮らしの男子大学生。サッカー部の活動やら家庭教師、宅急便のアルバイトなどで、忙しいが充実した日々を送っている。しかし若さゆえ抱える悩み事もあった。それはこの夏を共に過ごしてくれる恋人が居ない事である。『よーっし、今年の夏こそ素敵な彼氏を捕まえるぞ!』……と、誤植ではない本当にこの通りのストーリー。つまり男性同性愛がテーマの18禁ゲーム。作画もシナリオも本物のゲイの方達が手がけ、販売は通販とゲイバー店頭置きのみという流通形態でありながら大ヒットを博したという、とことんリアル嗜好のアナザーワールド。リーマン、マッチョ、デブ、イケメン等の出会いを経て、君は素敵な男たちの中から誰をチョイスする?


 各方面から物議を醸し出し、『ザ・ガッツ!』と並んで色物エロゲーとしてその名を轟かせている炎多留。もっとも昨今男性同性愛をテーマにした18禁ゲームなどはほいほい発売されていて、それ程突出して取り上げられるものでもないだろう、とお思いの方、貴女は甘すぎます。そのような美男美少年が乳繰り合う小娘向けの夢の世界など鼻にもかけず、もうエエっちゅうぐらい本物路線を貫いたそのフロンティア精神たるや他のゲームの追随をこれっぽっちも許しておらず、そして現在もなおぶっちぎりの独走態勢で走っておられるゲーム、それが炎多留なのです。
 さて、あらゆる意味で革新的だったこのゲーム、まずはCDを入れた瞬間から試練の時は始まります。もう筋肉繊維の一本一本までが丹念に練り込まれたイヤっちゅうほどリアルな逞しい裸体を惜しげも無く晒した男たちがビキニいっちょでカメラ目線! ここでCDを出してしまうかインストール画面に進めるかで貴女は試されていると思って下さい。何とか踏ん張って次の画面に進むと、主人公の属性を『攻(タチ)』or『受(ネコ)』と選べるんですが、実に万人の嗜好を鑑みた親切な仕様…と感心したのもつかの間、先ほどの絵を思い出せば掘りたくも掘られたくもない面構えの皆様ばかり。ここでひとしきり悩み倒すハメになります。しばしモニタ前で唸った後、自分が男だとしたらこいつら相手にチ○ポが立つ自信が毛頭無い、と震えるポインタで『受(ネコ)』を選択し、めくるめくリアル・ゲイワールド(掘られ側)へとうとう突入です。
 一人寂しい夏を克服するため、主人公は生活費兼出会いを求め、ネットでアルバイトを探すのですが、ゲイの皆様が集う『チャットルーム』もお気に入りに登録されているので、ちょいと覗いてみますと……。
『今日スゲーでかい奴と便所でエッチした! 23センチぐらい! 俺ケツもろ感じなんだけど、そいつ根本ハンカチで縛ってバンバン押し込んでくる訳!』
『良いね〜何回イッた?』
『何かもうわからないぐらいイッた!2度目からはワセリンいらないぐらい汁出てきて、トイレ中、音響いて恥ずかしくて俺もう『死ぬ───っ』って感じ!』










  _, ._
( ゚ Д゚)
 ……気を取り直してアルバイトを探す事にし、宅急便業を選択、早速外の世界へと飛び出すのですが、嘆かわしいことに外界もホモ・サバイバルワールドと化しています。道を歩けばホモ同士の『結婚だって? 俺の尻でしかイケないあんたが!』と罵り合う痴話喧嘩にハチ合わせ、電車に乗れば見知らぬ男に痴漢の辱めを受ける事に。果ては宅急便のバイトに顔を出し、早速請け負った仕事をこなすべくある会社にお伺いすれば、昼休憩を利用し、天井からぶら下げた男を囲んでの役員社員入り乱れた乱交プレイの真っ最中という有様です。もっとも、就業手当が欲しい程、仕事してるより疲れそうなハードな昼休憩をお過ごしのサラリーマンズに勤労意欲が燃え立ったのか、負けじと主人公も参戦した次第ですが。かような情け容赦ないホモイベントは場所を移動すれば異様なレベルでこまめに発生する脅威のフラグで、これが美少年美少女が群れ集い、『自分の存在意義』だの『星の運命』だのに頭を悩ますRPGならば、エンカウント率を下げるアイテムのひとつでもあるんでしょうが、今作はあくまでリアル・ゲイ・ワールド。律儀にそれら楽しいハプニングをひとつずつ噛み締めて行きましょう。
 かと言って、余りに過酷な外の世界に耐え切れず家に居れば、テレビで『くぱじゅる占い』が始まり『あなたの好きな飲み物は?』と尋ねられ、『1.精液  2.小便  3.ガマン汁』と拷問に等しい選択肢の数々に、プレイ何十度目かのシンキングタイムが始まることと相成りますので安住の地はどこにも存在しません。
 要するに日本中の野郎どもがホモになった世界という事でファイナルアンサー? と言いたい所ですが、狙える皆さんの中にはノンケ(ノーマル)の人々も居て、救いを求めるかのようにサッカー部の池谷先輩とお近づきになります。この池谷先輩、とても真面目な方で、サッカーにかけるその真摯な態度には実に感心させられるばかり。こんな先輩が居たらどの部も伸びるだろう、というぐらい時に優しく時に厳しい、スポーツ好きの好青年です。
『バイトばっかりしてないで、真面目に部活もしろ。お前は伸びる人間なんだから』との先輩のお言葉に舞い上がり、サッカー部の合宿に参加なんぞしてみたのですが、その夜『野郎が集えば69%の確立で行われる』というデータもある(嘘)『オ○ニー大会』が始まってしまいました。『濃い展開になったなあ』と驚きつつも内心喜んでいる主人公に、不快感を隠せぬ様子で外へ行ってしまう池谷先輩。『俺ああいうの嫌いなんだ』月明かりの下、ストイックな先輩の横顔が素敵です。ああ先輩、貴方だけがこのホモワールドのオアシスです! ありがとう先輩! 『だからお前は俺が抜いてやるぜ!!』池谷よ、お前もか!!!
 そんなこんなでうっかりちゃっかりプールに連れ込まれ、憧れの池谷先輩からしこたま精液を抜かれながら楽しい合宿の夜は更けていくのでした。
 ま、このように余すところ無く繰り広げられる生々しいゲイの世界に、目をひとしきり白黒させてはみましたが、今(こん)ゲームの作り込みと真面目さには何を置いても脱帽です。根性が足りないため『受(ネコ)』サイドのみのプレイで終わってしまいましたが、よく考えればこれらシナリオもグラフィックもすべて『攻』『受』の2通り用意されているのです。珍妙に紹介なぞしてしまいましたが、ゲーム自体はこれ以上ないほど真摯に作られており、ゲイの方々への並々ならぬ尊敬と敬意の表しっぷり、そしてそれら世界と妥協も媚もなく真っ向向かい合い、がっぷり4ツに取り組んだ誠実さは、『色物』だの『ゲテ物』だのと言った無責任な評価をも跳ね返し、限られた流通ルートでこれほどのヒットを飛ばした上『2』まで発売された所以でもあるのでしょう。
 おもしろ半分で始めたノーマル男性プレイヤー達の眠っていた本性を呼び起こし、ホントにゲイに転向させてしまったほどのその威力(実話)、ぜひ一度味わってみては?