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基礎知識編その4


7 活着を促進させるその後の管理

  定植後、活着までの管理を怠ると、その後の生育に大きく影響します。
 スムースに活着するように、次のことをおこなうといいでしょう。

(1)誘引(ゆういん)
 苗を定植したあとに支柱などをたててヒモでしばり固定することを誘引といいます。

誘引の一例。

 誘引をしないと植物内のホルモンバランスが崩れたり、地際の根が切断されて活着が遅れ
たりします。また強風時に茎葉が傷んだりすることもあるので、定植したら早めに誘引しま
しょう。背丈の低い葉菜類はそのままでもいいですが、背が高くなる果菜類は特に重要な
作業です。支柱はその後の生育を考えて長いものを使用する場合と、一時的に短い仮支柱
に誘引しておき、活着後に本支柱を立てる場合の2通りの方法があります。
注意点としては、支柱を立てる際に根を切らないよう注意(茎から10cm以上離してうねに
さす)すること、ヒモをきつくしないこと、しばるときに苗を極端に斜めにしないことです。苗が
小さい場合は仮支柱を45度くらいの角度に斜めにさすと、根も切らずにヒモでしばりやすく
なります。

(2)保温・防風
 夏野菜の生育適温は20~25度くらいと比較的高温なので、4~5月定植は地域によって寒
すぎる場合が多いです。そこで大規模に作る場合はビニールトンネルを利用しますが、家庭
菜園ではなかなかそこまでできません。次のようにすると簡単ですよ(^-^)

ア ホットキャップ(苗帽子)
 1株ごとに保温するやりかたに、「ホットキャップ」という方法があります。透明なプラスチック
製で1個100~300円くらいで売られているものを利用する方法と、U支柱や短い竹やグラス
ファイバーでU字にたわませながら、透明ビニールで覆う方法の2通りあります。
支柱を立ててスーパーの半透明袋を活用する場合は、風にとばされないようしっかりと周囲
を土で抑えるか、針金などで留めてください。トマトなど大型の苗は45リットルの市販透明袋
が丈夫です。
      
(トマト保温例)      

 とくにスイカやメロンなど地這のウリ科作物に利用されることが多く、種の直播でも保温効果
により初期生育が促進します。つるが伸びてきたら除去するか、ビニールを割いてつるを伸
ばしてあげます。
 注意点としては高温による葉焼けが発生することがありますので、だいたいの目安として葉桜
の頃から1月間くらい活用できます。あまり早くから設置しますと、除去したとたんに夜の冷気
にさらされて枯れてしまうこともあります。畑が遠くて毎日の管理が出来ない場合は、不繊布
など活用するとビニールほどの保温効果はありませんが高温障害を受けにくくなります。(^-^)

イ アンドン(風よけ)
 肥料や米のビニール袋などの下を切って筒状にし、1株ごとに苗の防風をする方法で、見た
目が昔の行灯に似ています。やりかたは袋の内径の間隔に苗のまわりに3~4本の短支柱を
たてて袋をスッポリと下まではめます。しばらくして苗が伸びてきたら除去します。薄いビニール
(例:スーパー等の袋)では、強風時にまくれてしまう危険がありますので、少し厚手のビニール
がいいでしょう。ホットキャップほど保温効果はありませんが、背の高い苗(トマト、なす等)には
大変簡単で効果が高いので、やったことがない人はぜひ試してください。

(3)芽かき(定植直後)
 活着するまでは、基本的に主枝の摘芯やわき芽かきはしないほうが良いでしょう。まだ小さい
うちから摘芯(つまり生長点をつみとること)を行うと、発根力が弱くなり、活着がおくれます。
ただし接ぎ木苗の台木からでる芽は見つけ次第かくのが鉄則です。
 詳しくは後述します。

こんなことも…(できたらいいなあ…(^-^)/)

防風網(ぼうふうもう)
 青い色の防風ネットを見たことはありませんか?地域によって方角は違いますが、一
定の方角から強い風が吹いて支柱ごと倒されたり、枝が折れてしまった経験はだれでも
あるはず。
 収穫終わり頃ならまだあきらめられますが、これから収穫しようというときは、がっくりし
てしまいます。

 そこでプロの農家だけでなく家庭菜園にも欲しいものが防風網です。防風網を風上に
設置しますと風下に約10mほどの防風範囲が期待できますし、5年以上は保ちますので
けっして高い買い物ではありません。
 費用計算してみると支柱(直径5cm長さ2.5~3.0mの鋼管500円/本)、防風ネット
(4mm穴、幅1.8m×30m、3,500円)、穴堀り器や針金(3,000円)となります。仮に鋼管を
2mおきに配置すると、30mで約14,000円くらいになります。
 設置にあたっては、支柱がぐらつかないよう50cm以上深く埋めるとともに、場合によっ
ては石をうめこんだり、ブロックを埋めたりします。専用資材なども各種売られています
ので、園芸店やホームセンターなどでご相談ください。

 このほか、ライグラス・ライムギ・エン麦の仲間には、防風効果に優れるものがありま
す。これらを前年秋や春にまいておくと、春~秋までの防風効果が期待できますし、翌
年の敷きワラ代わりにも、堆肥原料にもなります。(^-^)
 種の単価はだいたい1000円/kg以下ですので、畑の周囲に50cm幅にまいてもかなり
の面積をカバーすることが可能です。




8 栽培管理のいろいろ(活着後)

 苗を定植して新葉が伸びてきたり、葉の縁に露がつくようであれば、うまく活着したと判断でき
ますので、次にいろいろなことをしましょう。

(1)芽かき
 果菜類のわき芽かきはつい手を抜がちになりますが、草勢コントロールのために芽が小さいうち
に早めに行いましょう。芽かきをしないと、
①実が大きくならない。形が悪くなる。
②通風がわるくいため病害虫が発生しやすくなる。
③受光体制がわくるなり、無駄な葉が多くなる。


  作物ごとの芽かきの注意点は以下の表のとおりです。
野菜名 時期及び内容
トマト類 大・中玉、ミニトマト
 1本仕立ての場合…わき芽は全部かく。
 2本仕立ての場合…第一果房すぐ下のわき芽を第二主枝として伸ば
            す。あとのわき芽は全部かく。
 3本仕立ての場合…第一果房すぐ下のわき芽2本を第二、第三主枝と
            して伸ばす。あとのわき芽はかく。
なす類 第一花すぐ下の2本のわき芽を第二、第三主枝としてのばす。それ以下
のわき芽はかきとるが、第一~三主枝から伸びるわき芽は基本的に放任
し、混んでいる枝を間引く程度とする。
きゅうり 立ち仕立て
 5節までは子つるをかく。6節以降の子つるは1~2節で芽をつむ。孫つ
るもおなじ。1~2本の子つるは遊びつるとして摘まない。
 放任する場合は混んだところのつるを間引く程度とする。
地這い仕立て
 親つるは5~6節で摘芯し、子つるを4~5本伸ばす。子つるの5節まで
は孫つるをかく。6節以降の子つるはや孫つるは基本的に放任する。そ
れ以後は混んでいるつるを間引く程度とする。
ピーマン類 第一花までのわき芽はかきとるが、それ以後は混んでいる枝を間引く程
度とする。
かぼちゃ 親つるは4~5節で摘芯する。子つる3本を主つるとして伸ばす。12節目
で着果させるので、それまでは孫つるはつみとる。着果したら孫つるは放
任し、混んだところを間引く。
スイカ 親つるは5~6節で摘芯する。子づるは4~5本確保。着果節位は15~16
節をめやすとし、着果節位まで孫つるをつみとる。着果したら孫つるは放
任し、混んだところを間引く。
メロン 親つるは4~5節で摘芯する。子つる2~3本を主つるとして伸ばす。9節
までの孫つるはつみとり、10~12節の孫つるを伸ばす。この孫つる1節目
には雌花が咲くので着果させ、次の葉を残してつむ。12節以降の孫つる
は放任し、混んだところを間引く。
オクラ 1ヵ所3本立ち…わき芽は全部かく
1ヵ所2本立ち…50cmまでわき芽は全部かき、あとは放任する。
1ヵ所1本立ち…わき芽はかかない。

*注意 節とは、下から数えて何枚目の本葉のところかという意味                 

 1回の芽かきに5本以上のわき芽はかかないよう、1~2日おきに2本などと、定期的にかき
とると野菜に負担がかかりません。また、雨天時や早朝の朝つゆがついているときにかきとる
と、傷口がふさがる前に病原菌が侵入しやすくなっちゃいますので、晴天日の午前中に行うよ
うにしましょう。
 またハサミや爪の先で行うと、ウィルス病などの病気が移ることもありますので、指でポキッっ
と折り取ってください。芽が長くなると折りにくくなります(▼▼メ)

⇒芽と根の関係…
 芽(生長点)は植物にとって重要な働きをしています。簡単にいうと芽の数が多いだけ、根の量
も多くなります。つまり植物は地上部と地下部のバランスをとろうとするのです。そこで芽かきを
わざとしないで、根を張らせる栽培方法も研究されており、面白い方法がいろいろあります。
 苗の発根力が弱い場合、寒い時期に植えて苗が弱った場合、土が固くてなかなか丈夫に育た
ないお庭などは、若い苗を植えたり、芽の数(枝やつるの数)を多くしたほうが根が伸びて収穫量
が増加します。
 注意点は、実がたくさん着きやすいので、小さな実が増えてしまいやすいことです。

(2)本支柱立て
 なす科など背が高くなる野菜やきゅうり(立ち仕立て)は支柱を立てて誘引します。いろいろな
方法がありますが、これからじょじょに画像などで紹介していきますね。
 いつできるかは、聞かないでね。(^-^;)

(3)葉かき
 古くなった葉をかくことにより、いろんなメリットがあります。
①通風が良くなり、病害虫が少なくなる。防除もしやすい。
②若い活動葉に光があたりやすくなるため、実の太りが良い。
③いちごなどは葉かきで発根がよくなる。

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