scribbles 17

扉文~Grateful Days

こうしていると
なにかを思い出すことができる気がする

でもなにを思い出せばいいのか
ぼくには思いあたるあてがない

こんなときにはあの歌を聴けばあれかな
でもそれがどの歌だったか

すっかり呆けてしまっている

そう
エレベーターのはなしをしていたのだ

エレベーターの箱の中で
自分が上昇しているのか下降しているのか
わからなくなってしまった男のはなしだ

それは階段健康法のキャンペーンだったのか
思弁一般に対するさりげない忠告だったのか
あるいは
レギュラーの没になった例のネタだったのか

すっかり呆けてしまっている

ここらで一度やり直したほうがいい

なにをだ
考えろ
胸に手をあててみろ
果たしておまえはやり直すなどと言えるようななにかをやってきたのか

ちいさな手を見てもだめだろう
言っておくが
それはいままでなにもしてこなかった手だからな
なにもしてこなかったことすら語ってくれない手だからな

きれいな手だろう
ほんとうにきれいな手だ
赤ちゃんのようにきれいな手だ

よせよせよせ(笑)
そんなことを思いだそうとしたのじゃない
そんな歌を聴こうとしたのじゃない
起きるんじゃなかったな

すっかり呆けてしまっている

 

2005.10.20

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