明日がないって、どういうことかわかるかい?
・・・今日死ぬってこと?
そうじゃない
何もかもはじめからわかってる、って
そういうことさ
誰かが何かを燃した炎が街の闇を焼いていた
材質中の水分が爆ぜるのだろう、ときおり鋭い音がする
そのたびに火の粉が季節はずれに散る桜の花びらのように黒い空に舞った
熱せられた空気は見えない色で上昇し
さらに上空にある星と月をなまめかしく揺らめかせている
雲が出てないようだね
唇を閉じて僕はそうつぶやく
どこかで懐かしいクラクションが鳴った
君は隠れるようにその唇にそっと触れる
そのとき君の頬は熱く濡れていて
指先も沈みそうなその水面には炎の花が咲いている
ちらちらと
ちらちらと
やがて鳥たちの羽音が聞こえてきた
もうすぐ曙光が僕らに追いつくだろう
大きく息を吸うとあたりが澄み切ってゆくのがわかる
僕は目を細め、思いきりアクセルを吹かせた
君もいっしょに、行くかい?
・・・ないはずの明日へ?
わかっていることなど何もない明日の
その先へ、さ
2005.8.1