scribbles 15

扉文~technodelic/epilogue

爺さんが今日も歩いていた
ボクの目の前を歩いていた

それは、いつものことだったはずだ

爺さんはいつもの服装で歩いていた
何色とも形容しがたい服を着て

どうしてだろう、今日に限って

ボクは一緒に遊んでいた仲間たちからはずれ
爺さんの背中を追うように、歩き始めた

爺さんは後ろを振り返ることもなく
いつもの調子で歩いてゆく

爺さんの脇を、町がいつもと違う有様で動いていた
ボクは一心に爺さんについて歩いてゆく

そのとき 爺さんの背中が色を失ったと思ったら
爺さんの肩から太陽が上って、ようやくボクと爺さんを照らし始めた

ボクは思わず手をかざしてまぶしさに目を瞑った
映像がとぎれるほんの一瞬、爺さんがボクを振り向いたように思ったが
再び目を開いてみると、爺さんの背中が見えるだけだった

爺さんは今日も歩いていた
いつものように
でも今日は、その後をボクが歩いている

なぜか笑いたくなって、思い切り口を開けた
高度が上がったのか、太陽はもうまぶしくはなかった

2005.6.12

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