爺さんが今日も歩いていた
ボクの目の前を歩いていた
それは、いつものことだったはずだ
爺さんはいつもの服装で歩いていた
何色とも形容しがたい服を着て
どうしてだろう、今日に限って
ボクは一緒に遊んでいた仲間たちからはずれ
爺さんの背中を追うように、歩き始めた
爺さんは後ろを振り返ることもなく
いつもの調子で歩いてゆく
爺さんの脇を、町がいつもと違う有様で動いていた
ボクは一心に爺さんについて歩いてゆく
そのとき
爺さんの背中が色を失ったと思ったら
爺さんの肩から太陽が上って、ようやくボクと爺さんを照らし始めた
ボクは思わず手をかざしてまぶしさに目を瞑った
映像がとぎれるほんの一瞬、爺さんがボクを振り向いたように思ったが
再び目を開いてみると、爺さんの背中が見えるだけだった
爺さんは今日も歩いていた
いつものように
でも今日は、その後をボクが歩いている
なぜか笑いたくなって、思い切り口を開けた
高度が上がったのか、太陽はもうまぶしくはなかった
2005.6.12