やつあたり雑記帳…お出かけ記録

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Nov. '02

11/ 3 マリカミズキ Live at 木土水

11/11 築地俊造 with RIKKI Live at アイピット目白



 11月 11日 築地俊造 with RIKKI Live at アイピット目白


 今回のこの部分においては、画期的な新方式が採用される。
 どれくらい画期的かというと、これがじつに「当社比世界初」である。ここのところにお願いしてバナーか何か作ってもらおうかってなモンである。
 その画期的な新方式とはナニか?
 じつは、このパラグラフを含め、10パラグラフほどは下書きを書いているのだ。しかも、「下書き」というくらいで手書きなのだ。ああ、この水茎うるわしい手書き文字の美しさが…え〜とここは、何て書いてあるんだ?

 さて、いつものとおり速報性に優れた「やつあたり雑記帳」ですが、今回は「俊造 with RIKKI」、なんとたった四ヶ月しか間を置かない(ハイ、ツッコんでくださぁい♪)素早さです。スヴァラシィ〜(平田輝ふうに発音すること)。

 馬鹿はさておき。

 冬も近づく11/11。「十月十日(とつきとおか)」という昔からの言い伝えが真実ならば、「New Year Baby」か「姫初めBABY」のお誕生日になりそなこの日をナニユエ選んだのかはさっぱり判りませんが、私にとっては四ヶ月連続のRIKKIです。
 まぁ、何でもいいんですよ。ようするにRIKKIの歌が聴ける日、なワケです。あ、主役は築地さんですけど。

 いつも通りのシンプルなステージに向かって右手のドアが開いて、築地さんとRIKKIが入って来る。
 まずは築地俊造アカペラ・メドレーの「なつかしゃヤー〜わすれんなよ〜ナきゃとワきゃと集(ゆ)らて」で幕が開きます。

 今日のテーマは「奄美の歳時記」だそうで、「今が十一月なので、十一月からはじめましょう」ですと。
 ものもらいに罹ってしまったと、ちょっとつらそうな築地さんです。出だしは「11月は、”そうり”といいます。ナゼ”そうり”と言うのか。私は知りません。あい・あむ・そうりー」と快調そのものなのだが、やっぱり出足だけで、すぐにいつもの訥々とした「俊造節(おしゃべりモード)」に落ち着く。
 もちろん、オレを含むこの日の観客の大多数にとっては築地さんのこの「俊造節(おしゃべりモード)」は立派なエンターテメントであって、「Pentium 4 プロセッサ採用、メモリー増設で一気に高速化した築地俊造」なんてのはお呼びでない。譜面台に置いたカンペに目を凝らしながら「え〜…、何だっけな?」とか言っててもぜんぜんオッケーなのではあるが、普通に見たらどうなんだろう?
 何しろ築地さんは、絶対におしゃべりと三味線のチューニングを同時並行処理したりせず、「お正月は、まず三献(さんごん)といって…」とひとしきり語ってからおもむろにチューニングをはじめ、「よしこれで大丈夫」となってから「次の唄は…」という進行具合で、まだるっこしいっちゃあまだるっこしい。そのうえRIKKIとはかなりキーが違うのにも拘わらず、一本の三味線で唄ごとにチューニングし直し、けっきょく十五曲を弾き通してしまった。ちなみにステージ上には予備の三味線が置いてあるのだが、まったく一顧だにしないという徹底ぶり。いっしょにステージに立っているRIKKIはちょいと辛そうに見えた。
 
 もちろん、オレにそう見えただけであって、RIKKI当人にとっては納得の「俊造節(おしゃべりモード)」であったのかもしれないが、やはり所在無いというのは辛いものなんである。
 普通に暮らしていても、「何もしない」というのを意識的にこなそうとしたら、かなりの苦痛を感じるのが人間というモンであるが、こんなふうにステージ上で何もしないでいるというのは、苦痛を通り越して拷問に近く感じるときもある。10分ほどの休憩を挟んだ第二部の冒頭に、RIKKI & 菅原弘明の「島Tori ユニット」で「むちゃ嘉那」、「海ぬささ草」の二曲を演奏したのだが、そのときのRIKKIの表情に開放感が垣間見えたのは、こりゃもう仕方がないと思うオレではあった。

 …う〜ん、読み直してみると、築地さんに批判的な文章になってるなぁ。しつこいようだが、オレとしてはこのモッタりとした進行は、島時間というか、俊造タイムというか、それ自体がエンターテイメントであって、もう全然ノー文句なのだというのをもう一度だけ付け加えさせてもらおう。



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 11月 3日 マリカミズキ Live at 木土水


 越谷。
 埼玉県の町であることは知っていた。
 越谷。
 「ホテル、ニュ〜(ここでタメる)こしがや」というCMを見た(聴いた?)記憶がある。しかし、ありゃ伊武雅刀の声だったような気がするからCMじゃなくて…。
 越谷。
 都心からさほど離れた町ではないと思っていた。
 越谷。
 まさか新宿まで一時間も掛かるような、交通の便の悪いところだとは思わなかった。

 世間は、文化の日の三連休であって、大勢迎合を持って旨とするオレとしては、もともとは明治天皇の誕生日であったこの祝日を積極的に受け入れて、おおいにのんびりするつもりでいた。ところが、そんなオレの小さな願いを巧みに察知した邪悪な人々は、オレに三日間のうち二日の休日出勤を言い渡してきたのだ。
 とりあえず、当初の目論見としては、2日(土)、3日(日)に予定されていたマリカミズキは2日に行くことにして、3日はRIKKIのインストア・ライブでどうだっ!と、誰にともなく見得を切るオレだったのだが、儚くもこの目論見は潰えてしまった。
 そういうことであれば、致し方あるまい。マリカミズキは午後四時頃にはじまるから、ハシゴも不可能ではなかろう。越谷から新宿までは…っと、あらま、スゴイ乗り換えの忙しさ。いやいや、瑞希ちゃん(love!)とRIKKI、双方の顔を立てるためには、この際、多少の苦労を厭ってはいられない。
 「11月3日に休みをいただきたい」重々しく周囲に告げたオレは、携帯のスケジュール機能に越谷から新宿への乗り換え駅と路線を打ち込むのだった。

 さて、当日だが、出かける直前に会場である「ギャラリー木土水(もくどすい)」の場所を確認すると、ナント、所在地は越谷ではない!その隣の、蒲生という駅だという。なんだか着々とマイナー方向に向かいつつあるような気がする。客は入るんだろうか。

 その蒲生駅に着いて改札を出ると、後ろからオレを呼ぶ声がする。振り向くと、オレと同じ「森田三味線教室」に通いはじめて六ヶ月、あまりに早い上達ぶりに「師匠」と呼ばれる女子大生がいる。
 「ナニをしとるんだ、キミは」ときくと、「ライブですよ」との答え。あ、そうですか。スミマセン。「場所、わかる?」と聞くと「地元ですから。調べてあります」と自信に満ちた返事。安心してついていくことにした。

 とっつきにコンビニがあって、途中にゲーセンがちかちかしてる以外は、なんだか由緒正しそうな商店街の中ほどを曲がると、飲み屋と雀荘をコンパクトにまとめ、都会の繁華街にあったら絶対に「しょXべX横丁」などと呼ばれてしまいそうな寿商店街に辿りつく。「木土水」はそのど真ん中。1階はオーガニックフードが売りの喫茶店。2階がギャラリーで本日のライブ会場。入ってまず、1階のレジでお金を払い、休憩のドリンクを指定する。ノートに名前を書いてくれと言われたので、名前を書くついでにざっと知った名前をチェック。あら、まだ誰も来とらんのね。
 2階のギャラリーに上がると、なあんだ、すでに顔見知りが三人も来てる。
 「名前くらいちゃんと書きなさい」懇々と言って聞かせるが、まるで聞く耳を持たない。女子大生は、急いでオレたちと距離を取る。仲間と思われたくないのだろう。正しい判断だと思う。

 少しばかり駄弁っていると、大島紬デザイナー(でいいのかな?)の森エイコが登場。ちなみに、この2階のギャラリーでは、森エイコがデザインした編衣(あんぎん)の展示会をやっていて、本日のライブは展示会の附属イベント。ご挨拶と、展示された作品の紹介を軽くやって、いよいよマリカミズキのご登場です。
 ふたりとも森エイコがデザインした編衣を着ての登場で、まりかちゃん(lovely!)が淡いブルーが基調で昼の海、瑞希ちゃん(love!)が濃い焦げ茶色が基調の夜の海をイメージした衣装だとのこと。なるほど、そうハッキリ説明してもらえると、オレみたいなファッション無知にも判りやすい。
 基本的には、瑞希ちゃん(love!)が唄と三味線、まりかちゃん(lovely!)が囃子の組み合わせで、ところどころまりかちゃん(lovely!)が唄になる、という構成。また、瑞希ちゃん(love!)が鼓(チヂン)を叩く唄ではまりかちゃん(lovely!)が三味線を弾く。
 基本的には、これこれこういう意味の唄ですと説明してから唄うのだが、瑞希ちゃん(love!)は、さすがに幼稚園の先生(非常勤)らしく、ていねいにかつはきはきとした説明。一方のまりかちゃん(lovely!)は、緊張してるのがモロに伝わる完全棒読み顔面お地蔵さん状態。聞いてるこっちまで力が入り、一言ずつに握り拳をつくって「がんばれ、がんばれ」と呟いてしまう。でもってその一言がちゃんと言えると、「まりか、ちゃんと言えました!」とばかりに輝くスマイルを主として瑞希ちゃん(love!)方面に向けて放ち、それを受けた瑞希ちゃん(love!)が「がんばったね、まりか」という微笑を返し、観客も「がんばったね、まりかちゃん」と拍手で称え、会場内全域が幸せに包まれるという…。はっきり言って、この場にいた観客はほぼ全員、まりかちゃん(lovely!)の父親・母親・兄・姉になった気分ではなかっただろうか。あぁ、世界じゅうあちこちにマリカミズキがいれば、戦争や紛争、憎しみや悲しみなんてなくなってしまうのに…そんな感じである。

 ちなみに、この夜、ライブ終了後に会ったこの人に対してオレたちは「まりかちゃん(lovely!)はなぁ…」と説明を試みたのだが、心の汚れた人間には通じないらしく、「まりか派でも結成するつもりかね?」と自民党の族議員みたいなセリフを連発する。
 オレたちは、世界の平和と人類の幸福についてのささやかな発見を教えてあげようと思ったのに…。

 会場であるギャラリー木土水は、十坪強のひと部屋で、集まった観客は40人弱。半分くらいは地元の主婦や森エイコの知人だろうか。奄美出身で、越谷付近に住む人が三割ほど、残りはオレたち四人と女子大生を含む音楽ファンといったところ。
 丸パイプ椅子を隙間なく並べて、けっこう詰め込んだ状態でマイクなしの完全アコースティック・ライブである。アンプラグドじゃなくてノンプラグドだ。
 ちょうど一年前くらいだろうか、立川で全国の物産を集めた「ばっかり市(いち)」という催し物があった(今年もあったらしい。毎年やってるみたい)。特設ステージも設けられ、あちこちの郷土芸能も出演する、というイベントだったのだが、そこに瑞希ちゃん(love!)が出演するというので、オレは喜んで見に行ったのだ。
 ところが出演予定時間になっても瑞希ちゃん(love!)は来ない。本来の予定(「ばっかり市」出演は、おまけだったらしい)が長引いたそうで、タクシーの中で着替えて出演時間に四十分以上遅れてのご到着。当然の如く主催者は「出演する時間はありません」。瑞希ちゃん(love!)を呼んだ物産展の出展者である笠利町(ふたりにとっても地元)商工会が「このまま帰すのはもったいない」と「いいからこの場で唄ってちょうだい」とお願いすると、「望むところよ」とばかりに相方の山田梨香とともにノンプラグド・ストリートライブになった(後ほど、正式にステージに出て唄ったらしい)。
 そういう現場を見ているので、正直、あまり気に留めていなかったのだが、後から考えると、あの「ばっかり市」も、このギャラリー木土水でのライブも結構たいしたものである。
 で、その瑞希ちゃん(love!)といっしょにうたうまりかちゃん(lovely!)も、相対的には線が細い感じだが、小揺るぎもしない美しい声を聴かせてくれる。おそらく、機械でふたりの声量を測ったら大差ない結果が出るのではないか。このマリカミズキといい里アンナといい、エライだのスゴイだの言う前に、ちょっと恐ろしさすら感じてしまう。

 あえてこのふたりの違いを挙げると、瑞希ちゃん(love!)が口を大きく開けてはっきりした発音をしているのに対し、まりかちゃん(lovely!)はおおよそ自然な口の開け方で、ちょっとこもらせ気味の唄い方だ。
 「民謡」というのをオレなりに解釈すると、こもらせ気味の方がより古典的な唄い方だと思うが、瑞希ちゃん(love!)の場合、その職業柄そうした唄い方になるのは仕方がないともいえる。また、まりかちゃん(lovely!)もまた同じ職業(保育士になるため短大在学中)を目指している以上、いずれは唄い方も変わるのかもしれない。
 瑞希ちゃん(love!)に関してもう一点。一年前の「ばっかり市」では雑踏の中だったせいもあるかもしれないが「力で捻じ伏せる」ような唄い方だったのが、より弾力性に富んだ、より深い唄い方になったように思える。いいぞいいぞ。

 そんなことを聴きながら考えていると、「じゃあ、つぎは第一部の最後の唄です」ときた。
 ここまですでに一時間ちかく、十二、三曲は唄っている。
 ナニナニ?そんなにレパートリーがあったんかい。

 そして休憩時間、オレは悩んだ。
 今からダッシュで蒲生駅に向かえば、RIKKIのインストア・ライブに間に合う、かもしれない。
 しかし、それでいいのか?。
 思い起こしてみよ、つっかえつっかえしながら健気に唄の紹介をするまりかちゃん(lovely!)を指して瑞希ちゃん(love!)がなんと言ったか。
 「いっぱい拍手をしてもらって、まりかも昨日よりたくさん喋ってます」。
 そんなまりかちゃん(lovely!)を見捨てて、RIKKIを優先させていいのか?う〜ん、困った…。
 悩んでいると入場時に選んだドリンクが配られ、瑞希ちゃん(love!)のお母さん手作りというさーたーあんだーぎー(奄美では単に「ドーナッツ」と呼ぶそうだ)が登場。さらに黒糖で作ったというカステラだの、いろいろ出て来て、食い物に弱いオレはいよいよ腰が上げられなくなる。
 ええい、こうなりゃ決断するしかない。

 数分間にわたる苦悩の末、この日はマリカミズキに集中することにした。RIKKIは、翌週に築地俊造との島唄ライブがある。二兎を追うものは一兎をも得ず、という諺もある。

 三十分ほどの休憩を挟んで後半がはじまる。こちらも約一時間、十二曲ほどの唄と演奏。最後のワイド節と六調では、不肖、このオレも踊った。
 アンコールは、中村組アレンジの「曲がりょ高頂(たかちぢ)」。前日のライブでは唄いだしのハーモニーが合わなかったそうで、事前にいちど合わせてから唄いだす。きれいに唄えて、瑞希ちゃん(love!)もまりかちゃん(lovely!)も嬉しそう。
 終わってみれば足掛け二時間半。平然とした顔で唄いきった彼女たちにあきれつつ持参したマリカミズキと中村組のCDにサインを貰おうと待ってると、あれこれ片付けなどしながらまりかちゃん(lovely!)はまるで小鳥のように歌いつづけていた。なんだかお伽話でも見たような気分で、オレは越谷を後にした。



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