Sep. '02
9/ 7 RIKKIインストア・ライブ at バージン・メガストア新宿店
9/14 RIKKI&黒田亜樹 DUO ライブ at 柏アミュゼ
9/22 〜美島(きゅらじま)の唄遊び〜 森田照史芸歴五十周年記念ライブ at お茶の水全電通ホール
9月 14日 RIKKI&黒田亜樹 DUO ライブ at 柏アミュゼ
いよいよはじまりました、”蜜”&”シマウタTrickles”の大プロモーション攻勢です。うれしいですねぇ、RIKKIがたくさん見られる&聴けるわけですよ。
”蜜”に関しては、オレなんかもうとっくにCDを買っちゃってるワケで、インストア名物のサイン会には無縁なんですが、下手なコンサートよか間近で見られる&聴けるわけですから、これはもう大歓迎なんですな。おまけに「ファイナルファンタジー」の時みたいに「混乱を避けるために平日開催」なんつー無粋な気配りもされる心配はないし、オッサン・ファンとしては、ついついニヤケつつ新宿に向かうのですのだ(<興奮してる)。
会場でありますところのバージン・メガストア新宿店の一階に着くと、おお、居た居た。いつものこの人とこの人。相変わらずですなぁ、とか挨拶すると、前者は勝利&余裕の笑みで「遅いですぞ、わたしなんか、リハーサルから見ちゃいましたから」だと。いや、気持ちは判りますがね、リハーサルってのは準備の時間なワケでして、ましてやRIKKIは女性ですぞ、と口に出しては言わなかったんだが。あ、そうそう、ちょっと遅れてこの人も来たっけ。
さらにもうひとりやってきて、いつもライブで見かけるおっさんメンバーのうち半分くらいは揃ったかのう、早うはじまらんかのう、立ちっぱなしで腰も痛いし。とか老い先の不安について想いを巡らせていると、RIKKIがギタリストの菅原弘明、大橋マネージャー、レコード会社の人らしい顔の長いおっちゃんを従えて登場。大橋Mのみミニ・ステージの脇にとどまって、三人はステージ上に。
ギタリスト菅原は、まっすぐ自分のポジションに行くと、あとはじっと黙って合図を待つ。この人は、先月の奄美フェスティバルのステージ上にもいたんだが、まったくヒトコトも喋らず、この日も自分から言葉を発するところを見た記憶が無い。まぁ、喋るのが仕事じゃないんだから、それでいいんだけど。
ところで、RIKKIは、喋りというかステージ・トークが、それほど得意ではない。黒田亜樹(以下、クロアキと略)とのデュオライブでクロアキに黙秘権を行使されて、一瞬ではあるがマイクを持ったまま石になっていたことも一度や二度ではない。
この顔の長いおっちゃんは、司会進行はもちろんのこと、苦手な(と勝手に決めつける)トークの相方要員として動員されたものであろうか、資料らしい紙束をマイクと一緒に持ってあれこれと喋っているのだが、うむむむむ…。
例えば、こんな人を会社で見かけませんか? 仕事は人一倍できて押しも強いんだけど、会議やプレゼンテーションの場になると浮いてしまうというか、空回りしちゃう人。要するに、自信がありすぎて客観性に欠けているタイプ。
RIKKIをめぐるキーワードを、とりあえず二通りに分類してみよう。
まず、一般的に判りやすい方。ファイナルファンタジー]のテーマ、宮崎駿の「千と千尋の神隠し」、久石譲と「長野オリンピック開会式」、ザ・ブームのアルバムにコーラスで参加、元ちとせの高校の先輩。
判り辛い方。奄美大島。シマ唄。最年少での民謡日本一。ワールドミュージック系のイベントでの「日本代表」の常連。
”蜜”はともあれ、”シマウタTrickles”のプロモーションとしては、判り辛い方のキーワードを多用せざるを得ない。それは判るのだが、ここは無料公開ライブの場であって、RIKKIって誰?アマミオオシマ?ナニそれ、地名??という人だって居ないとは限らない。そういう人に対していきなり「サネクの宮原老人のハチガツウタをレコーディングして、東京のスタジオでミキシングしたら、入っていないはずの声がうんぬん」とか言ったって判るわけないじゃんつーの。
あらためて考える必要もなく、”シマウタTrickles”というのはめちゃめちゃマニアックな作品である。これを全国販売しようというチャレンジ精神には、オレとしては満腔の敬意を表するものであるが、ナニも知らずにCDを買いに来た人たちに「あれ、なんだろな」と振り向かせるには、もうちょっと作戦を考えてもらいたいものである。
とか文句をつけつつも、やはりRIKKIのうたごえには、身も心もとろけさせられてしまうのである。とくにシマ唄は、長年うたってきたからもう縦横無尽、自由自在である。「ドラム’ンベース」のサウンドが賛否あるようだが、むしろ現代人であるオレには馴染みやすい音作りだ。そこにあの声。もはや為す術なし、である。
また、”シマウタTrickles”という野心作に対して、ちょっと扱いが軽いような気がする”蜜”からの曲も、長くうたい続けてほしい佳作がそろっている。ああ、またスターパインズあたりでライブをやってくんないかなぁ…。
「バージン・メガストアにてCDをお買い上げの皆様のみ、サインと握手ができます」というので、いそいそと並んだひとりが喜色満面で戻ってくるのを待って、オジサン四人は黒糖焼酎を飲みに夜の街へと歩むのであった。
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9/22 〜美島(きゅらじま)の唄遊び〜 森田照史芸歴五十周年記念ライブ at お茶の水全電通ホール
むはははは、まさか一ヶ月に二回もRIKKIネタが続くとは思わなかっただろう。八月の「奄美フェスティバル」も、「RIKKIとその他」みたいな文章になったから、三回連続のRIKKIネタなのだ。
おまけに奄美フェス以降の、てーか”蜜”発売による再始動以降のRIKKIはじつに好調である。
メジャー・レーベルとの契約で苦労が減ったのか、FFの印税で生活が楽になったのか、はたまた恋の魔法にでもかかったか、とにかく絶好調である。
これだけ絶好調だとこちらも足取り軽く、と言いたいところだが、残念なことにあまりコンディションは良くない。とくにこの数日、関東地方はとつぜんの冷え込みでくしゃみと鼻水が止まらない、イヤよキラいよ寒いのなんてっつー状態で柏への道を辿る。なんかアタマが朦朧としているので、乗換えが少なくてゼッタイ座れる電車で寝ながら行こうと心に決め、上野駅から常磐線に乗り込んだ。発車前に柏駅へのおよその到着時刻を見込んで携帯のアラームをセットし、うつらうつらしながら電車の揺れに身を任す。
すこし眠ったかな、と思った程度でバイブレータの振動にハッと目を覚ますが、ひとつ手前の駅にもまだ着いていない。計算ミスか、と悔やむが、すこしは良くなったようだ。
柏アミュゼは、オレがナニも考えずにふらっと出た改札口からはいちばん遠い位置にあって、十分ちょっと歩いたのかな?てんやがあったら天丼でも食べようかな、と思っていたが、これぞというお店を発見しないまま到着。当日券で見るつもりだったから、開場までじゅうぶんすぎるほどの余裕がある。とりあえず、受付で当日券を買って、隣のコンビニでおにぎりとウーロン茶を仕入れて列に並ぶ。この時点で並んでいるのは四十人前後か。
受け付けまわりのスタッフの動きなぞを見るともなしに眺めていると、よく慣れているようだが、なんとなく素人くさい。そう、野球で言えば都市対抗野球、サッカーだったらJFLって感じ。あさ、当日券の有無を確認するために電話したら、なんか個人の家みたいな感じだったし。
入場時にもらったチラシを見たら、たしかにそのとおり。柏市民のボランティア団体で、けっこうコンスタントに活動しているみたい。
こういうのっていいよね。今のコンサートというのは、デカいホールでスポンサーをつけて、とにかく人を入れないと商売にならなくなってるみたいな感じ。そんなんじゃなくて、小さなホールでそこそこの観客数で、こぢんまりとってのが似合う人だっているんだからさ。
おいおい列も長くなって、この人とかが到着して、「じゃあ席は取っとくから」とか言ってたら開場時刻となりまして、中に入ったら、おぉこれはクラシックのそれも小編成楽団専用ホールではないですか。
ははぁ、さては黒田亜樹(以下、クロアキ)のソロ・ライブが企画の発端で、さびしいからRIKKIも呼んじゃえって流れかな?などと推理してみたりする。入場時にもらったプログラムを見ると、第一部がクロアキのピアノ・ソロで、第二部がRIKKI&クロアキのデュオになってる。
こりゃあ、いかんぞ。今のコンディションからすると、ピアノ・ソロを30秒も聴いたら完全にお休みタイムだ。しかも第一部の後半は、ピアソラ特集ではないか。ピアソラのCDを一枚だけ買ったことがあるが、オレのような雑な性格の持ち主には極めて縁遠い音楽だったもんなぁ…。前半のなんだかへんてこりんなタイトルの曲は、「ファイナルファンタジー」のBGMなのね。オレにとってゲームというのは、ピアソラ以上に縁の無いシロモノだからなぁ…。なんだかパニック映画みたいなタイトルの曲もあるけど、まさかクロアキがジェリー・リー・ルイスをやるとは思えんし…。とにかく、イビキまでかいたら悪いよなぁ。
そんな不安の中、クロアキがいかにもクラシック畑のピアニストらしいドレス姿で入ってきて、はじまりはじまり。 まずはタンゴから(タイトル?忘れちゃった…。あはは)。一曲目から早くも夢心地のオレであったのだが、最後の一音が鳴るや否や、真後ろの席から「ブラヴォッ」という声が…。とりあえず、この一発で目が覚めた。
あのさぁ、気持ちは判らないでもないんだが、ちょっと早くねぇか。「早押しクイズ」じゃねぇんだからさぁ。せっかくいいホールなんだから、最後の一音の余韻てやつも味わわせてくれよ、なんて、半分意識をなくしてた奴が言っていいセリフじゃないか…。
で、この後は、同じパターンの繰り返し状態。曲間のクロアキのトークが意外なほどスムーズで、いつもRIKKIとのライブでの「口にチャック」状態がウソみたい。ピアソラのエピソードやら「ファイナルファンタジー・コンサート」の話もけっこう楽しく聞けて、演奏がはじまるとまた徐々に夢の世界に引きずり込まれて、終わるか終わらないかのうちに「ブラヴォッ!」で、あわてて拍手する。
「それでは休憩です」って言われて、まず思ったのは、「断片的とはいえ、三分の二くらいは聴いたかな?」…反省せぇ。
休憩の間にロビーに出て鼻をかんで、くしゃみをして、もういちど鼻をかむ。コンディションはだんだん上向き加減になっているようだ。
席に戻ると、さっきまでなかったマイクとモニターがステージ中央に用意され、第二部のはじまりだ。
この柏アミュゼのクリスタル・ホールは、一方の壁に穴をあけて穴の中にステージを設けたプロセニアム式と呼ばれる形状ではない。ホール全体をひとつの部屋と考えるなら、部屋の中にステージをぽんと据えつけた形である。
だから、出演者が登場するときは、壁の向こうからすっと出てくるのではなく、文字通り部屋にドアを開けて入ってくる形になる。そのドアも、一部の壁際の席を除けば、客席から丸見えである。いつ見ても「物怖じ」という言葉に無縁そうに見えるRIKKIも、ちょっと勝手がちがって見えたのはオレだけではあるまい。
RIKKIに続いて、ちょっと間を置いてクロアキ登場。
まずは、この時点では最新のアルバムである”蜜”から「掌」と「星の降る夜」。”蜜”にも収録されているが、このふたりにとってもスタンダード・ナンバーである「俊良主(しゅんじょしゅ)」。いちおう”シマウタTrickles”からという認識でいいのかな?それとも、幻のデビュー・アルバムとして再発される同名アルバムの曲として披露されたのか「むちゃ加那」。学生料金が設定されてたから、これを目当てに来た若いファンもたくさんいただろう「素敵だね」。ふたたび”蜜”から「月に咲く花」と「からたち野道」。アンコールに「ウティキサマ」。
途中、クロアキが結婚してイタリアに移住したことを暴露(?)した時は、「許さんゾ、いつか見返してやるぅ」的なやりとりで、それが却って場内に一種独特な親密さを醸し出してしまう。先週のインストアライブでの「口下手」ぶりが嘘のようで、やはり年季が入ったコンビネーションというのはええのう、と感心するオレである。
こういう「クラシック、それも小編成の室内楽専用ホール」初体験のオレとしては、「なんかずいぶん小っちゃいけどヘーキなのかしらん」サイズのPAを入れての今回の「DUOライブ」は、「大丈夫なのかなぁ」と心配もあったのだが、ちょっと小さ目の音量が楽曲の美しさと可愛らしさを引き立てているようで、「なンか超お買い得ぅ」気分に浸ってしまった。埼玉の川のほとりにあるオレの塒(ねぐら)から柏は遠いが、来るだけの価値はあったってぇモノである。
終了後のサイン会で、持参の”蜜”にサインをもらい、風邪ひいてる奴がいいのかなぁと躊躇しながらも握手して、遠回りだけど絶対に座れる武蔵野線で寝ながら帰ったのであった。
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やっぱ、やめときます。
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