やつあたり雑記帳…お出かけ記録

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Aug. '02

8/17 奄美フェスティバル at 有楽町よみうりホール


  8月 17日 奄美フェスティバル


 なんか、印象が薄いっすよ、申し訳ないんだけど。
 ちょうど怒涛の残業シリーズが終わった直後で気が抜けていたのと、とある事情により心ココニアラズ状態なのに客観的に見ようとしちゃったりという、なんか、「よおし、楽しんでやるぞう」っつーテンションに欠けてたんですね。
 いや、もったいないことをした、という反省から入ってみたりする。

 よみうりホールというのは、ビッグ・カメラの七階にあるわけで、そこに千人近くの人を収容するのに対して、ちょっと大き目のエレベーターが四台しかない。あたりまえのようにお店の入り口にあるエレベーター・ホールは他の階に行きたい人も混ざって大渋滞するわけで、二列になって並んでいる人たちの最後尾に加わってぼけっとしていると、
「チケット余ってないっすか?」と声を掛けてきた人たちがいる。
 誰かと思ってみると、ネリヤ★カナヤの二人だ。
「前売りを買ってなかったんすよー」という。「ヒデさんが余ってるって言うんだけど、ケータイが通じなくって」
 こうして文字にするとなんだか焦っているみたいなんだけど、この二人、きわめてあっけらかんとした調子で、
 「まぁ、コーヒーでも買っていきませんか」と、オレのほうが落ち着かされてしまう。
 日頃この二人、「しまぐち(方言)も喋れなければ、しまうたも唄えない。ホントおれたちって島っちゅ度が低くって…」
とか言っているのだが、イヤイヤドウシテ、些事に拘らない立派な南方人ですよ…。

 さて、受付でパンフレットとチラシの束を受け取り、席に着いて開演までの短い時間のうちにささっと確認しようとすると…、な、ない!当夜、配布してもらう予定で八百枚を委託していたはずの、「〜森田照史・芸歴五十周年記念〜美島(きょらじま)の唄遊び」のチラシがない!どおいうことだ、これは!
 完全に思考のバランスを崩してしまったオレは、幕開けに登場の築地俊造を見て、唄を聴いてはいても、アタマの中はチラシのことでいっぱいである。なぜだ、何故ないんだ。いや、これはオレだけかもしれん。たまたまオレが受付を通ったのが801人目で…、いーや、そんなことはない!えいくそ、早く休憩にならんか、確かめねば、確認せねば、うががががぁぁぁ。

 とまぁ、こんな状態だったわけで、前半はちーとも身が入らず、印象に残っていることと言えば、築地俊造のすぐ後に登場した山下聖子が、緊張してがちがちになっているのが傍目にも明らかだったこと、ぜ〜んぜん期待していなかった牧岡奈美の声が呆然とするほど美しかったこと、ぐらいかな。
 しかし、もうちょっと演出するとかなんとか出来なかったもんかね。入れ替わり立ち代わり、持ち時間分唄ったら交替、という無愛想なステージングで、エンタテイメント性は皆無と言ってもいい。
 唯一、牧岡奈美のところに来た祝電を貴島康男が読み上げた程度で、それだけでもずいぶん場がなごんだのだ。
 たしかに、顔ぶれを見渡すと大御所・築地俊造、西和美を筆頭にボケ型のキャラクターばっかりで、ツッコミが出来そうなのはRIKKIだけ、というのはどうも人材不足というか、hirataさん、ちょっと指導してやってよ、と思うのはオレだけではあるまい。あ、このひともボケ役だったか…。

 第二部は、朝崎郁恵&高橋全からだったっけ?順番とか曲目とか、ぜ〜んぶ忘れてますから。
 もともと、この奄美フェスティバルは、同年六月に奄美大島は名瀬で行われた「ジャバラ祭り」を東京でもやってしまえ、ということで企画されたのが、そもそもの発端だそうな。正確には東京版と奄美版の二つの企画がほぼ同時進行であったと思われるが、途中から東京版の主催がジャバラ・レーベルのオーナーである森田純一氏からイベンターのエムアンドアイ・カンパニーに移って、当日に至るわけだ。
 ジャバラ・レーベルというのは、元ビクター・レコード社員でジャズ評論家の森田氏が立ち上げたインディー・レーベルで、奄美のシマ唄のCDを、若手を中心にすでに十数タイトル発売している。
 当夜の出演者の大半も、このジャバラ・レーベルからCDを出しているのだが、あきらかに系統の違う出演者が二組、混じっている。それが、この朝崎郁恵&高橋全とRIKKIである。どちらも、メジャー・レーベルであるユニバーサルと契約を結んでいる。また、築地俊造もジャバラ・レーベルとは無関係だが、誰か大御所をひとりとなれば、いちばん頼みやすい人であることは確かだろう。

 裏事情の推測は置いといて、と。
 朝崎郁恵&高橋全の登場シーンを見逃したのは、ちょっと残念。後で聞いた話によれば、朝崎郁恵は鼓(ちぢん)を叩きながらの登場だったらしい。演奏に直接関わる部分ではここまでで唯一の演出ともいえる行為だったわけで、ここらへんでセルフ・プロデュース能力というのが問われるんだよなぁ、康男、孝介(←エラソーである)。

 朝崎郁恵&高橋全に続いては、お待ちかねのRIKKIだがや。唐突に名古屋弁まで繰り出してしまったが、なにしろ、アルバム”蜜”に関わる初ライブなのだ。期待するなというほうが無理というものだがや。
 セット・チェンジの間にちょっとロビーに出て、手足を伸ばしてから戻ってみると、ステージ上にはノートパソコンが一個、ぽつねんとおいてある。あら、さびしいのね。ほんでもってステージに出てきたのは、RIKKIとギタリストの二人だけ。
 二曲ほど”蜜”からの新曲をギターとパソコン(のソフトウェア)で歌った後、かなり傾向の似たアレンジで奄美のシマ唄「むちゃ加那」を唄う。”蜜”でシマ唄が一曲取り上げられているのは知っていたので、ああこれね、とか思っていたのだが、その後のMCでRIKKIが
「最初の二曲は今週発売の”蜜”からの曲で、いまの『むちゃ加那』は、来月発売のニューアルバム”シマウタTrickles”からの曲です」と発表。
 言っちゃ悪いが平均年齢の高い客席からはたいした反応もなかったが、全曲シマ唄のアレンジだという「その次のニュー・アルバム」”シマウタTrickles”は、RIKKI自身かなり気合が入っているらしい。まだ発売前の”蜜”を差し置いて、”シマウタTrickles”のプロモーションが優先されているみたいな感じ。うーむ、気持ちは判るんだけど、”蜜”だって丁寧に売ってほしい感じなんだけどなぁ。
 奄美のシマ唄を新しいアレンジで、という試みは、今年は朝崎郁恵がらみで二作品(「詩島」と「うたばうたゆん」)、中(あたり)孝介が一作(諸鈍)、マリカミズキが一作(ソングフルーツ)とあったわけで、他の作品がわりと地味なのに比べて、「やるならとことんやらんかい!」というベテラン(こんなに可愛いのに…)の心意気は感じられるのですが、いやしかし…。とかナンとか理屈を捏ねているのはすべて後日の話で、この場このときのオレは、単純に「わーい、いっぱい出るんだ」と喜んでいただけですだよ。そんでも一応、「もうちょっとハジけるのがほしいよな」と人間の欲望の際限の無さを図らずも露呈しておりますと、ナニやらスパニッシュっぽいリズムがはじまります。
 おっ、なんだこれは、八月唄か、と思ったら「豊年節」。あ、ここでは「ホウネン」ね。いえいっ、じゃなくて「オーレッ」とか声を掛けたくなるようなアレンジで、でも”シマウタTrickles”の他の曲と同様、唄そのものはシマ唄のボーカルラインをきちんと踏襲している。いいですなぁ、踊り出したくなっちゃう。
 じっさい、舞台上、向かって右奥の端っこに孝介、瑞希ちゃん(love!)、まりかの三人が出てきて踊りはじめるんだけど、これがまぁ口の悪い人に言わせると「ドリフのズンドコ節かと思った」という踊り。いや、踊りはいいんだ、どうせ練習したわけじゃないんだし。楽しそうに見えたよ、よかったね、とオレは言ってあげたい。だがしかし、問題はだな、おまえらもうちょっと前に出てこんかい、後ろのほうでせせこましく踊るんじゃない。却って見苦しいわい、と爺むさく文句をタレてみたりする。
 そうは言いましてもこの「ホウネン」をラストナンバーに、大喝采のうちにRIKKIが引っ込もうとすると、築地俊造御大が出てきます。
 「RIKKIちゃん、シマ唄を盛り上げてくれてありがとね」とヒトコトだけで済ませてくれりゃいいのに、その後がイケません。
 「ああいうぶんちゃかするのと、昔からのシマ唄とどっちが好き?」という発言は、ちょっとイタダケない。
 「どちらもわたしにとっては大切です」と応えたRIKKIを、オレは大いに支持する。

 さて、ノートパソコンとギタリストがRIKKIとともに去った後のステージには、築地俊造と西 和美が並ぶ。客席の約76.2%を占めた熟年・高年層にとっては至福の時間だろう。いや、オレだってけっして嫌いじゃない。とくに西 和美は円熟の境地というか、安定した唄が耳に心地よい。
 築地俊造の三味線は、どうもこの人が弾くのに慣れてしまったのか五月雨式でさびしいのと、六調にもうちょっとビート感があったらなぁ、という感想なんですが、だからといって不満ではない。声量、音域が落ちてきたとの声もあるようですが、全盛期っちゅうのを知らんからね。ビギナーの幸せっちゅうことでしょうか。

 ステージ上とはなんの関係も無いところでハラハラドキドキのライブだったわけだが、最終的には満足して新宿まで飲みに行ったと、そういうことです。
 あ、チラシ?なんかねぇ、オレと隣の人以外は、みんな受け取ってたみたい。泡喰って損しました。ちゃんちゃん。



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