私がやっと鍵をはずして行こうとした時、声を掛けてきた。
「あのぉ、すみみませんが・・・」
オジサンはパッと見で「住所不定者(なちゅらる・サヴァイヴァー)」
であるとわかる。年は50ちょっとぐらい。下は青のスラックスで
上は白いTシャツ。一応靴ははいてるけど古そう。手にしているのは
下のスラックスとセットと思われる青いジャケット。かなり年期が入ってる。
「これ、いくらでもいいんで、買ってもらえませんか?」
とっさに口を出たのが次の言葉。
「すみません、今、お金持ってないんで・・・」
そそくさとその場を立ち去った。振り返るのも嫌だったので
一目散に立ち去る。なんだか情けなくて、なんか怖くて・・・。
やっぱりモノを貰わずに幾らかでも恵んであげるべきだった
のでしょうか。この話を後日友人Sに話したら反対意見が出た。
「その人の雰囲気に寄るけど、可哀想なら恵んであげたなぁ」
・・・やっぱそうなのかなぁ。恵むという行為自体に抵抗がある
から、どうもやりづらい。別にそんなに自分が偉いと思わないし。
「いくらぐらい?」という質問に友人Sは間髪入れず
「1000円ぐらいじゃない」という答えが・・・。
ぐ、ぐむむ。1000円ねぇ。なんか大変なんだろうけど、そうやって
簡単にお金が手に入ると思われていいのだろうか、と思ってしまうし
基本的にケチだから300円とか考えてた自分がちょっと嫌になった。