「給食の恨み」

私は小学校の時、集団で殴られたことがある。その頃は集団リンチとか
呼んでた。今どきの子供のリンチほど残酷じゃなかったけどね。

小学校に限らず、子供って結構群れたがる。基本で教室とかも、2つか
3つぐらいのグループに分かれる。だいたい、仲良しグループが3つ
ぐらい出来るからたいていの子はどこかに属する。ほとんどそう。

私は昔から群れるのがあんまり好きじゃない。もちろん、とても気の
合う仲間と一緒にいるのは構わない。気を使わないし、楽しいわけ
だから。それは問題ない。ただ、そうでもないのに、ただハズれる
のが怖いだけで群れてしまうのは嫌。
気を使うのも面倒臭いし。

というわけで、私はクラスの派閥闘争に巻き込まれたことはなかったです。
仲のいい子はそれなりにいたし。普段はその子達と遊んでいればよかったし。

ただ嫌な事もそれなりにあったけど。例えば、クラスで遠足とかに
行く時、3つのグループは自分達のグループを大きくするために
仲間集めにやっきになってた。理由は、遠足の行った先でのまわる
場所を決めるのは多数決だったから。グループ毎とかでまわることは
まずなくて、クラス単位だった。だから、人数が必要だったみたい。

でも、その為にどっかにはいるの嫌だったから、仲のいい子たちと
一緒に眺めてた。それが気に食わなかったらしくて、すごい嫌味
いわれたりした。でも、別に勝手にさせればいいや、ってほっといた。

問題は遠足が終わったぐらいに起きた。その頃、給食っていうのは
各班毎に食べてた(仲良しで作るグループで、1クラス6個あった)
で、その日の日直がチェックして、片づけを6個のうちの1つに
やらせる、そういうシステムだった。理由はよくわからないけど。

で、その日は私と友人のIくんが日直。食後に教壇にあがって
全体を眺める。たまたまあるグループ(Aとする)の人が
結構残していたので、そこに片づけをお願いすることにした。

すると、そのAグループにはクラスの実力者のWがいた。
もう指名した瞬間立ち上がって私達をすごい形相でにらんだ。

「おまえら、覚えとけよ!」

そんなセリフを吐いて、イライラしながら6つの班の食器とかを
片づけてた。すると、片づけを言われていない班の人も手伝い
はじめてた。そう、Wの仲間だから、やりはじめてた。

私はその日、早く帰るつもりだった。帰りの掃除を終えて
変える方向が一緒の人と学校を出ようとしたとき、Wが
校門の前で待ってた。そこにはすでに捕まったIくんがいた。

「よう、遅かったな。ちょっとこっちこいよ」

そういうと、うしろからWの下っ端がきて、私をつかんだ。
うんざりした気持ちでIくんと一緒に体育館の裏へ連れて行かれた。

「おまえらさ、どういうつもりなわけ? おれたちに片づけさせてさ」

(はぁ? なにそれ? 別にいいじゃん、そんなの。勝手じゃん。)
とか心で思いつつ黙ってた。だって、まわりにはWの取り巻きの
仲間がびっしり。15人ぐらいいたし。そんなこといって、ろくでも
ないことになっても、はっきり言って損だし。だまってた。

「なにもないわけ? おい、I! お前はどうなんだよ!」

Iくん、体はおっきくて強そうだけど、黙ってた。たぶん、私と
同じような気持ちだったに違いない。たぶん、っていうか絶対。

「言うことないわけね。なら、お前ら落とし前つけろよ!

Wが叫んだ。その頃「落とし前」とかそういう言葉、学校で
流行ってた。強そうとか、かっこよさそうか、思ってんのかな。

「なら、そこに並んで立てよ。二度と思わないようにしてやるよ」

そういうと、Wはグループのやつら全員に指示して、ひとり
1発ずつ、私とIくんを叩かせた。ビンタのやつもいたけど。

痛い、っていうより悔しい、方が大きかった。絶対許さない。
そんな決意だけを胸にしてた。最近の子供じゃこんな程度じゃ
ないのかもしれないけど、その当時はこれで充分だった。

私とIくんは15発ずつ叩かれた。Wはいい気な顔してる。
心の底からムカついた。死んでも許さない、って決めてた。

「わかっただろ? もうふざけんなよな」

そういって、Wは帰った。Wのグループのやつらは、ニヤニヤ
しながらWの後を追っていく。馬鹿な金魚のフンのクセに!

私は泣いた、悔しくて悔しくて泣いた。Iくんに謝った。
もともとWの班を指定したのは私だったから。巻き添えだし。

Iくんは「いいよ、気にすんなよ」と言った。そのまま
スッと立ち上がると帰っていった。私はそこで一人残った。

この悔しさ、どうしたらいいのか。許せない、でもだからと
いってケンカなんかじゃ勝てるわけ無い。でも悔しい・・・。

もともと性格のよくない私です。そこでふと思い付いた。
Wに辛い思いをさせてやれ。その為なら手段なんて選ばない。

私は立ち上がると、汚れたランドセルをはたいて背負うと
まず教室へ向かった。Wの机をひっくり返して中身を全部
出すとすべてゴミ袋に入れた。笛も教科書も道具箱も全部。

で、下駄箱へ行ってWの上履きを出すとそれも入れた。

そのまま校舎の裏にまわって焼却炉に火がついているのを
確認して
から、中に全部入れた。夕方ゴミ燃やすから丁度いい。

まだ全然スッキリしない。当たり前か。Wは知らないから。
で、Wたちがよく集まる公園まで行くことにした。

その公園は江川と呼ばれるドブ川の側にあった児童公園。
いつもWのグループの大半はここで集まってなんかしてた。

私が通るとWはニヤニヤしながらこっちを見てた。
その顔が一気に私の気持ちを後押しすることになった。

私はすかさず公園の外に止めてある自転車を見て
Wのものを見つけた。しめた、一番外側においてある。

私はWの自転車を川縁まで持っていく。鍵がかかって
ないから楽勝だった。Wは気づいて走って出てきた。

「お前! なにしてんだよ! ぶっとばすぞ!

私は聞く耳持たず、全エネルギーを使って自転車を
持ち上げた。当然カゴにはランドセルとか荷物が
はいっているし、自転車自体も結構重たい・・・。

Wが公園の入り口まで出てきた。私が何をするか
わかったらしい、焦って走って来てる。ざまみろ!

私は一気に力をいれるとドブ川の低い柵を越えて
自転車を落とした。荷物もろともドブ川の中へ。

「ああ〜!! なんだよぉ!!」

Wは慌てて川縁に駆け寄る。私はかなりスッキリ。
Wにとっては、もう私どころじゃない。当然だけど。

私は悠々と自転車にまたがるとその場を後にした。
うしろからWの怒鳴る声が聞こえたけど、忘れた。
どうせ、「ぶっとばす」とかそんな程度の事だし。

翌日、学校にいくと朝から先生に呼ばれた。やっぱり
とか思いながら職員室に行くと、Wとその親が来てた。

何をしたか言ってご覧、と先生に言われたのでやった通りを
話した。なんでそんなことしたの?と聞かれたから、放課後に
Wのグループに袋叩きにされたことを包み隠さず話してやった。

すると、Wと親は気まずい表情になり、もういいです、と
いうと職員室から出ていった。先生は「ヤレヤレ」という
顔をしていたけど、特別それ以上私はいわれなかった。

その日からはWからは何も言われなくなった。
キレルとやばいから、ということが伝わったらしい。

殴られたのは痛かったけど、自転車捨てたら気持ちがよかった
からスッキリした。やっぱ群れるやつなんてロクなやつがいない。
群れるやつは、群れないと駄目だから群れるわけだしね。

小学校5年でそんなこと思ってた。


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