「バイバイ土産物」

とあるスキーツアーに参加した帰り。お金の無い私はバスツアーを
選んでいました。しかも、グレードアップなしのバスなので、狭く
て小さいというものでした。ま、せっかく安いツアーに申し込んで
いるので、バスごときに大金を払うのも嫌というのがありましたから。

で、私はバス進行方向向かって左側の座席に座っていました。
車内は当然満席。狭い座席なので、手荷物も置き場所に困る
ぐらいの状態でした。満足に座席を倒せないので尚更です。

私と通路を挟んで反対側に2人連れの女性(推定19歳)がいました。
2人は仲良しらしく、話しているときのツッコミの入れ具合も
バシッと音が響くほどのはたきよう。いかにも大阪チックな2人。

バスが走り出し夜行の為、室内灯が消えるとその2人のうちの
通路側のA子が補助席を出しました。荷物を置く為です。暗いので
なにを置いているのかよくわかりませんが、とりあえず手荷物
だろうとしか認識できませんでした。ごそごそと音がした後は
静かになり、バス全体が眠りに落ちました。

2時間ほどするとバスが最初に休憩ポイントへ到着。室内灯が
つけられたので、A子は荷物を慌ただしく取り上げると、補助席を
収納します。ま、トイレに行きたい人たちが降りますからねぇ。

で、数十分間の休憩の後、バスがまた出発します。慣れてきたのか
今度はA子は室内灯が消える前に補助席を出して手荷物を置きました。

その時、突然A子が大きな声で笑い出したのです。
「だっははー、コレ、アンタのだっけ?」

A子は笑いながら、ビニールの袋を摘み上げました。
そこには何か白い紙に包まれたモノがはいっています。
なんだろう、元々の厚さは7cmぐらい? ん~、お土産と
いえば、王道であるアレかなぁ。という感じ。

「ちょー、待ってよぉ。コレなに?」
「やっぱ、あんたの? はは、ごめん、ごめん」
「まじで? 信じらんない。コレなに?」
「ん~、饅頭?
「っていうか、饅頭っていえる?」

いやいや、慌てて暗闇で補助席畳んだもんだから、バッグの
下にあった饅頭の包みに気づかなかったんですねぇ。
ペチャンコになった元饅頭は、平べったい板状になってました。
開けずとも、中では饅頭の皮やアンコがヒトツになって
大きな一枚の新生和菓子となっていたに違いありません。

「いいじゃん、食べたら一緒だって。持っとき」
「・・・・ひどいよ」

で、B子はしぶしぶ元饅頭を受け取ると、自分のバッグへ
しまいました。(やっぱ、しまうよな)とか思いながら
笑いをかみ殺していたんですけど、いたたまれなくなって
そこでみるのをやめてしまいました。やっぱかわいそ。

なんか、それまではB子は狭い車内でタバコを吸うし(もちろん
禁煙じゃないけど、やっぱ寝てる人とかいるから止めてほしい)
深夜でも大きな声で話したりするので、(嫌な感じ)とか
思っていたけど、ちゃんとお土産買ってるし、それも饅頭だし
とか思うと、結構悪い人じゃないのかも、とか思ってしまった。

しかも、饅頭ペチャンコだし

やっぱ、暗いところは気を付けよう、って思った。

っていうか、饅頭の上にはモノを載せちゃイケナイって思った。


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