奥多摩へいってみよう、そんな気持ちで多摩川を川上へ
向かいました。事前に予定していたので、水筒やお菓子、
ちゃんとお弁当まで用意してもらい、とても楽しい旅でした。
結局、奥多摩までは行かず、その手前のダムみたいな場所で
遊んでいるうちに日が傾いて来たので、帰ることになりました。
帰りがけ、3人はそれぞれいろいろな話をしながら走って
いました。くだらないことから、真面目なことまでいろいろでした。
そんな中、当時「たこ八郎」という人がいました。元ボクサーで
耳が試合で変な形になっていて、前髪がクルリと曲がっていたのが
当時の私たちのもっていた印象でした。
友人Fがモノマネが出来るというので、やってみることになり
自転車に乗ったまま「たこで〜す」とか言ってました。
なんだか、むしょうに面白くて、何度もやってもらっていました。
その時です、たまたま河川敷で中学生ぐらいの人たちが野球を
やっていました。その人たちが居た時に「たこで〜す」と友人Fが
やったとき、突然、その中学生たちが怒り出したんです。
中学生達:「お前ら、ちょっと待て〜!」
私たちは何がなんだかわかりません。慌てて自転車を立ち漕ぎに
切り替えて、全速力で逃げました。別に悪いことしてないのに。
中学生のうち、何人かが自転車に乗り追いかけてきました。
私たちは無我夢中で逃げました。中学生達がバットを持って
追いかけてくるので、それが怖くてひたすら逃げました。
でも、ついてません。友人Nのサイクリング車のチェーンが
はずれたんです。バーン、という音と共に友人Nがこけました。
私たちは急いで友人Nに駆け寄りチェーンをつけようとしますが
そんな簡単にはまりません。なにしろ、6段変速の自転車です。
ギアがややこしくて、全然わかりません。
そうこうしている内に中学生に追いつかれました。
中学生A:「なにお前ら逃げんてんだよ」
私:「怖いからです」
中学生B:「怖いだと? なめてんの? お前ら」
そういうと、中学生Bは私と友人F、友人Nの自転車を
もちあげて、土手から河川敷へ放り投げたんです。
そのあとは、聞くも涙、語るも涙。中学生3人にぼこぼこです。
中学生C:「おれたちのこと、たことかいうから悪いだからな」
友人F:「たこ八郎の真似しただけなのにぃ・・・」
中学生B:「まだ言うのかよ、ぶっころすぞ」
そういうと中学生達は私たちをそれぞれ蹴ると、
自転車で去っていってしまいました。
友人F:「ごめんね、みんな。僕のせいで・・・・」
私、友人N:「いいよ、いいよ。しょうがないよ」
3人は土手を下りて行くと、ひっくりかえった自転車を
立て直し、友人Nのチェーンをはめました。
ちらばった水筒や弁当箱を拾い、わずかに残ったお菓子を
拾い上げてカゴにいれると、黙った自転車をこぎました。
帰り道は涙が止まりませんでした。悔しくて悔しくて。
唯一の救いは水筒や弁当箱の中身がカラだということ。
これで弁当箱に中身が入った状態だったら、どうなったことか。
非力な自分がすごく嫌でした。悔しくて悔しくて、いつか
絶対に見返してやろう、と心に誓ったのでした。
とはいえ、結局、悪知恵ばかりの大人になりましたけど。