「ガチャガチャ」

小学生の頃の話です。ある時、私と友人A、友人Gで工事現場で
遊んでいました。そこはトラックの荷台部分だけがたくさん
置かれている場所で、工事の人がよく出入りしている場所です。

ボールで遊んでいた時、たまたま荷台の下にボールが入って
しまいました。私達3人は荷台に潜ってボールを捜していました。
すると、見つけてしまったんです、1万円札を!

小学生の私達にとって1万円はとんでもなく高額です(今でも
そうですけどね・・・)。交番なんて発想は微塵もなかった
私たちはそのお金を持ってゲームをやりにいくことにしました。

当時、ゲームセンターは近くにありましたが、すっごいワル(古い?)
の集まる場所だったので、行くことはほとんどありませんでした。
で、どこに行くかというと「西友」という西武系列のスーパーが
あるんですが、ここの屋上にゲームコーナーがあり、親と買い物に
行った時とかに、時々行ける場所があったんです。

ですが、小学校低学年ですから、子供だけでそんな場所行ったこと
ありません。場所だって、かなり適当でした。自転車で20分以上の
場所でしたから。ただ、唯一の手がかりは駅の側だっていうこと。

私たちはとりあえず近くの線路までいくと、スタンドバイミーよろしく
線路に降りて、とことこと近くの駅へ向かって歩きました。

数十分も歩くと、目的の駅が見えてきました。そして、その駅の
向こうには「西友」の大きな看板が見えています。

私たちは線路から出ると、一目散の「西友」の屋上へ向かいました。
屋上へ行くと、まずは両替。ここで第1の関門でした。以前、私達
3人は親と来た時に「かつあげ」にあっていました。親がいない時を
狙って、中学生ぐらいのやつらにお金を巻き上げられていたのです。

そこで、私たちはまず文房具売り場でお金を両替してもらうと、
3人でそれぞれバラバラに持ち、さらに靴の中や靴下の中など、
飛んだり跳ねたりしても、音がしない場所、わかりづらい場所へ
お札をしまいました。小銭なら、とられたって構いません。

で、遊びはじめたのが2時だか3時ぐらい。そこでは、大抵のゲームが
1ゲーム20円や30円。使っても使ってもお金が減らないので
私たちは狂喜乱舞して遊び呆けていました。

夕方になっても、お金はいっこうに減りません。このままお金を
持ってかえったら親に怒られるのは目にみえています。なんとか
しなくては!ということで、本屋さんへ向かいました。

ところがここでも問題が。当時の私たちにはそれほどたくさんの
種類の漫画を集めるという習慣がなかったので、3人ともせいぜい
3冊程度しかかえません。これじゃ1000円そこそこ。
まだまだたくさんお金が残っています。夕方も6時近くなり
このままだと親に遅かったということで怒られてしまいます。

帰路途中にガチャガチャ(場所によってはガチャポンでしょうか)が
ありました。普段は20円のやつしかやりませんが、今回は違います。
あまりに余ったお金を使わなくてはなりませんので、100円のものを
メインにやりました。当時流行っていたガンダムの金属のモデルの
入ったガチャガチャでした。3人でひたすらやりました。次から次へと
まわして、いつしかそのガチャガチャの機械はカラになりました。

A:「駄目だよ、お金まだあるよ」
G:「早く帰らないと絶対怒られるよぉ」
私:「じゃ、そっちの20円のやつをやろう」

もう、使いまくり、まわしまくりでした。足元にはおびただしい数の
カプセルが転がり、出された消しゴムやらおもちゃやらがちらばります。

やっとの事で使い切った私たちはお店の人に袋をもらい、
それぞれいれて、走って家に帰ったのでした。

さて、3人はとても近所に住んでいました。とりあえず急いで
いたので、別れてすばやく帰宅しました。でも、時間は7時過ぎぐらい。
当然、玄関には母親がまっていました。

母:「何してたの?!」
私:「ごめんなさい、遊んでたら遅くなりました。」

ここで重大なミス。当たり前ですけど、私の手には新品の漫画3冊、
そして袋にはおびただしい限りのガチャガチャのオモチャたち。

母:「なんなの、それ?」
私:「・・・・・・・」

これはマズイ、なんでもいいから言い訳しなくちゃ。

私:「本はね、ちり紙交換のおじさんの貰ったの。」
母:「ふぅん。じゃ、そっちの袋は?」
私:「拾ったの」

駄目だ、言い訳にならない。母の顔はあっという間に怒りモード。

母:「また盗ってきたの?あれほど駄目だったいったのに!」
(また盗ったという発想の理由に関しては、またの機会に)
私:「もう盗ってないよぉ。ちゃんと買いました!」
(もう盗ってないという発想の理由に関しては、またの機会に)
母:「そんなお金、誰が持ってるのよ。また盗ったの?」
(また盗ったという発想の理由に関しては、またの機会に)
私:「盗ってないって、本当だよぉ」

ピンポーン

そこへ救いの神か、玄関の呼び鈴の音が。

母:「そこにいなさいよ。は〜い。」

黄色い声で応対すると、友人Aと友人Gの母親らしき声が。

A母:「お宅のお子さん、漫画とか持ってなかった?」
G母:「おもちゃとかも、いっぱい持ってなかった?」
母:「え〜?! お宅のお子さんも?!」

万事休す。駄目だ。AもGも来てる、しかも泣いてる。
終わった、すべてが終わった。真実を話す時が来たんだ。

私:「拾ったお金で買いました。」
A母:「いくら拾ったの?こんなに買えるぐらいなの?」
A:「1マンエン〜(泣きっぱなし)」

母:「・・・・・・・・・・」
A母:「・・・・・・・・・」
G母:「・・・・・・・・・」

私:「ね?言ったでしょ、盗ってないって」

そこへすかさず母の平手が私の頬へ2発。

母:「やっぱり盗ってたんじゃない。届けるもんでしょ」
私:「・・・・・・・・・・」

届けるなんて発想、今の今迄なかった・・・・。

その後、3人はそれぞれの母に付き添われ近くの交番へ。

おまわりさん:「お、今度はどうしたんだ?」
(今度は、の発想の理由に関しては、またの機会に)
母:「今度は1万円も拾って使い切ったんです」
(今度は、の発想の理由に関しては、またの機会に)
おまわりさん:「1万円かぁ、いいなぁ。ずいぶん贅沢したな」
母:「いいな、じゃないですよ。なんか言ってやってください」
おまわりさん:「いいか、その1万円は誰かが落としたものだ。
それを使うのはよくない。ちゃんとここへ届けるようにしなさい」
私:「でも、見つけたんだもん。落ちてたんだもん。誰も居なかったもん」

母の平手1発。

おまわりさん:「まぁまぁ(母をなだめて)、今度からは
やっちゃ駄目だぞ。大人がやったら、捕まるんだからね」
私、A、G:「はい」

一応、それで話は終わり、3人とその母たちはそれぞれの家に
帰っていきました。でも、私はそこで終わりませんでした。

母:「あんたみたいな子はうちの子じゃありません。」

といって、私を家から締め出しました。どうせ、すぐにあけて
くれるはずだ、と思い私は自宅の駐車場へいくと止めてある
車のボンネットに寝そべりました。それからしばらくしても
いっこうに扉があく気配がありません。私は私で、悪いことした
くせに悔しい感じがしていたので、謝りもしませんでした。

そのまま朝が来ました・・・・・。


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