「パーマン」

子供の頃の話。私が小学生の頃です。とても仲の良かった友達に
Fというのがいました。その頃は大抵一緒にいました。

私達の間でパーマンごっこが流行っていました。私と友人Fは
紙とボール紙でパーマンセットを作りました。頭のヘルメットは
紙で袋状に作りクレヨンで青に塗り、しっかり目の部分をくり貫き
まぁ、子供の工作としてはいい出来だったと覚えています。
バッチはボール紙で作り、クレヨンで赤に。マントは赤い布を
切ってつかいました。まぁ、ほどほどの出来でしたが、私達は
結構満足していて、装着してうろうろと遊んでいました。

ある日、友人Fと私は2人で遊んでいるだけでは満足出来なくなり
他人に自慢したくなりました。それも、パーマンセットを作った
ということではなく、自分たちがパーマンであるという設定で。

友人Fの家は大通りに面していて、人通りは結構激しい場所です。
私たちは外が見える場所に陣取り(もちろん、家の中で)、
外にあるインターホンの前を子供が通るのを待ちました。

しばらく待つと小学校低学年らしき男が通りました。友人Fは
すかさずインターホン越しに声を掛けました。

「そこの君! ちょっと待ってくれたまえ!」

男の子はどこから声がするのかわからず、キョロキョロとして
います。そりゃそうです、普通、インターホンで中から声を
掛けるやつなんて、広い世の中を探してもそうそういません。

F:「そう、君だよ、君。実はね、僕らはパーマンなんだよ。
ちょうどパトロール中なんだけど、ちょっと休憩してたんだ」
男の子:「そのパーマンが、僕に何のようなの?どこにいるの?」

私は横で声を出して笑いそうなのをこらえていました。友人Fは
さらに追い討ちをかけました。私たちが出て行くキッカケ作りです。

F:「是非とも君と平和について話したいんだ。君は嫌かい?」
男の子:「そんなことないです。話してみたいです」

私たちはすばやくパーマンセット(自作)を装着し、家から出ると
おかしいので、裏口から出て、塀の上を歩き、その男の子の前に
飛び降りました。男の子は相当びっくりしていました。

F:「やあ、こんにちは。パーマンだよ。最近平和だね」
私:「平和っていいと思うでしょ? 私たちのおかげなんだよ」
男の子:「へぇ、すごいや。パーマンだね・・・・・」

男の子はもじもじしています。本物だと思って恥ずかしがっています。

F:「君の為にサインを書いてあげるよ。紙と鉛筆を出してごらん」

男の子はランドセルから紙と鉛筆を取り出しました。
私たちは2人して、同じパーマンセットを作っていましたので
当然、2人とも「パーマン」と書いていました。

男の子:「ありがとう! みんなに自慢出来るよ」

私たちは話すこともなくなってしまったので、そろそろ引き上げる
ことにしました。それもすべて相談済みでした。

私:「あ、どうやら何か事件みたい。バードマンが呼んでるみたい」

私はボール紙のバッチを耳にあて、友人Fへ伝えました。

F:「それは大変だ、いますぐいかなくちゃ。それじゃ君、また会おう」
男の子:「はい、がんばってください」

私たちはそのまま走ってその場を去り、近くのマンションへ
駆け込むと塀を乗り越え友人F宅へ戻りました。

F:「信じてもらえたかなぁ、サインまでしたけど」
私:「大丈夫、大丈夫。でもね、パーマン2人はマズイかもね。」

という反省会をもとに、他の3人分のパーマンセットを作り
ましたが、それ以降、同じことはしませんでした。

その当時の子へ。
「ごめんなさい」


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